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静かな廃墟の中に響く銃声音。 「これで38匹!」 「こっちは40匹だ。」 「敦に負けてる?!」 「今はそんなことは問題ではない。さっさと終わらせるぞ。」 「へいへい。」 廃墟に足を踏み入れた彼等を突如襲い掛かってきたのは、街で聞いた情報と同じで、確かにオバケだった。ハロウィンというイベントのせいか、それはカボチャの頭に胴体が空洞でマントを着たような変なオバケだ。 隼人が銃で打ち抜けば、オバケカボチャはただのカボチャと成り果てて床に散らばる。 暑しが斬れば、真っ二つになったカボチャが床に落ちて砕ける。 おかげで、カボチャで足元には進む道筋が残っている。帰り道はよくわかるが、これでは誰かが通ったのがバレバレである。 しかし、今の彼等はここがゲームの世界だということであまり気にしていなかった。それに、誰かが来てもわかる自信があった。そこらにいるような一般人にやられるようなら、今頃死んでいてもおかしくない。 それだけの場数を踏んできたのだ。時には、殺す相手が知り合いであり、戸惑い、迷った。それでも、そんな奴等を押しのけて自分達は進んできたのだ。 生きるために。 選んだ以上は、止まるまでは進む。そうしなければ、押しのけてきた奴等の意味がなくなってしまう。 なので、気にせず足跡が残るカボチャを放置してきたのだ。それに、ゲームの中なので、勝手に処理されて明日の日付に変われば自動的に撤去されていると思ったからだ。 何より、自分達以外にお試しやってるような奴がいるとも思えなかったし、いたとしてもNPCだと思っていた。 とりあえずは、目の前の敵を全て倒すことに専念していたのだ。 「後ろ油断しすぎだぜ?敦。」 敦の背後を狙って飛び込んでくるカボチャに気付き、太郎で打ち抜く。自分のところにきたカボチャは反対の左手に持っている花子で打ち落とした。 「うるさい。御気楽隼人。」 しゃべって油断して潰されても知らないぞと、一向に減る気配を見せないカボチャを切り落とす敦。 その時だった。 何かの気配がし、そちらを向いた際に一瞬響く音。戦闘の際に聞き覚えのある、空気を裂くような不吉な音。 次の瞬間にはその壁が爆破し、ガラガラと音をたてて崩れていった。 そして、大きな穴ができたそこから何かが飛び出してきた。 「新手か?」 「意外とカボチャ大王みたいなのじゃない?カボチャオバケいっぱいだからな。」 と、二人が言うその背後に一気に詰め寄る気配。 だが、その二つの気配と同時に、カボチャオバケも一緒にときた。 「チッ。」 敦は舌打ちをし、カボチャオバケを一気に三体切り倒す。 いつも、攻撃の際に背後が手薄になる敦。それをカバーするのが隼人。しかし、今回はそうはいかなかった。小さな何かが足場に飛んできたのだ。 それを避けた際、二人は同時に何かに床上に押し倒される形になったのだった。 カチャッと、それは隼人がよく聞く音だった。 コメカミにしっかりと突きつけられた銃。腹の上に乗りかかるようにいる見知らぬ男。 「押し倒されるなら女が良かったぜ。敦が女でなんで俺は男なんだ!」 「今はそれどころではないだろう!」 そう、敦も隼人と同じように銃を突きつけられていたのだ。それも、隼人とは違って女であった。 こんなことになっても、確かに少々油断していたところもあったが、切り抜けることは簡単だ。しかし、おかしなことに相手が引き金を引けば言いだけだというのに動かないのだ。 「・・・お前等・・・白城が言っていた『イチ』と『マキ』か?」 「・・・何だそれは。ってか、白城って白城雪華のことか?」 「やはり、『イチ』と『マキ』か。どうする?」 「今回は手違いだからどうするもこうするもねぇよ。」 攻撃してこない二人におかしいなと様子を伺っていると、いきなり意味不明な言葉を言われる。だが、白城という名前は二人はよく知っていた。このゲームを寄越した人物であるし、何より二人に仕事屋厄介ことを持ち込んでくる人物であるのだ。 「あら〜?ターゲット間違いでしたかぁ?」 そんな不思議な沈黙を破るようにその場に現れたのは、金色の髪をしたそれはかわいらしい少女だった。 だが、その右腕には先ほどその壁を破壊したのに使ったであろう、鉄製の筒状のものを持っていた。 「美咲。こいつら、白城の言ってた、フリーの仕事屋だ。」 「あらまぁ?じゃあ、噂の一匹狼さんですね?」 「おいこら。俺らは一匹じゃねぇ!」 「でもぉ〜二人は一緒でも他とはつるまないから、まとめて一人扱いで一匹狼ってうちでは呼ばれてるんですよぉ?」 知らないみたいですねとわざわざ教えてくれるこの少女は、見た目には似合わず言い方は残酷だった。見た目で騙されてはいけないという言葉が実感できる存在そのもののようだと、すぐに二人は理解することとなる。 「とりあえず、どけっ。さもなくば、殺す。」 隼人の言葉に、男はのき、女もすぐに敦を解放した。 「で、いったいどういうことなわけ?」 「説明していただきたい。」 「まずはカボチャを始末してからだ。そうしたらあの女が・・・桜木が説明する。」 「わかった。まずはカボチャの始末だな。」 上等だと、仕事を再開させるのだった。そして、ちょうど仕掛けてきたカボチャを一体撃ち抜いた。 「で、お前ら白城の知り合いなのか?」 やっと出てくる気配のなくなったオバケカボチャにほっと一息を入れ、途中乱入の三人に話しかける隼人。こういうとき、敦のように警戒せずフレンドリーに話すところがいいところかもしれない。 「俺達は白城の部下だ。でもって、桜は連れ子同士の血のつながりはないが、戸籍上では姉妹ってことになってる関係だ。」 「その説明は余計だ、蔵人。」 ペシッと頭をはたかれる赤茶色の癖のある髪の青年を怒る女。 「そういえば、ちゃんと自己紹介してませんでしたよね?僕は春日美咲って言いますぅ。」 よろしくお願いしますと可愛く言うが、間違えてはいけないのが彼は男であるという事実である。 「間違えないように言っておくが、こいつは男だからな。」 「クロちゃん、それはどういう意味ですか?」 文句でもあるのと怒る少女。 「お前は絶対詐欺だろ?」 「失礼ですー!見た目で人を判断するのはよくないことですよ!」 蔵人の時とはまた少し違った感じで、ぷんすかと頬を膨らせて怒る姿は確かに可愛いとおじさん達には言われるかもしれないが、男とわかれば隼人と敦にとっては変なガキでしかない。 「私は桜木舞華だ。こっちは桃宮蔵人だ。」 「俺は牧村敦。こっちの馬鹿が一之瀬隼人だ。」 「おい。馬鹿は余計だ。それに何勝手に人の名前教えてるんだよ?」 「お前がしゃべると話が進まないからだ。」 それは言えてると、隼人の性格を知っていたらだれもが思うだろう。 「それで、説明はあるのだろうな?」 「ああ。私達はこのゲームの戦闘条件の設定調整のために来ている。お前等もお試しで入ってるということは、白城に言われたんだろ?あと、最近不法に侵入する馬鹿がいるようでな。仕事もかねて馬鹿を探していたところだ。」 そうしたら、銃声やら物が壊れる派手な音がし、挙句にあらされるように散らばったカボチャが散乱しているときた。早々に仕事が片付きそうだと仕留めにきたというわけだという説明を受けた。 どうやら、自分達以外にもいることがわかり、しかも間違われたとあればいい迷惑だ。 「あとはな、お前等の戦闘相手もやれと白城に言われてるんでな。ゲームキャラでは相手にならんそうだからな。」 「成る程。とにかくは邪魔するものがいれば斬れというわけか。」 「その通りだ。」 「おたくらとは、お互いが死なない程度にやりあえるってわけか。」 「ああ。」 その返答に、ニヤリと隼人の口元に笑みが浮かぶ。新しい玩具を見つけた子どものように、手に入れるために手を延ばし、手に入れようとする無邪気な子ども。 こうなると性質が悪い。はぁと小さくため息をつく敦に、やる気ないなと隼人に言われ、お前が無駄に元気なだけだと言っておく。 「じゃあ、とりあえずやろうぜ。そっち三人でもいいし。」 「いや。今は無理だ。まだ、このカボチャの親玉が出てきてねーだろ?」 舞華の言葉に、カボチャオバケの始末だけにとらわれ、忘れていたことを思い出した。 カボチャオバケを始末しても、その『原因』を潰さなければまた出てくる。依頼は、オバケがでないようにするということだ。こんな雑魚を始末しても意味はない。 「あ、ほら。来たみたいですよ、カボチャ大王さん。」 にっこり楽しそうにそれを指差す美咲。 「わぁお。」 「・・・何だこれは。」 二人それぞれの反応を見せたその物体。今まで倒したカボチャオバケの比ではない、かなり大きなカボチャのオバケだった。見るからに親玉ですと主張したような奴だ。 「さすがに刀じゃあれは切れないぞ。」 「銃でも一発で仕留めるには厳しい奴だな。」 すげーと騒ぐ隼人と面倒だと言いながら刀を構える敦。 その後ろから、巻き込まれるから避けてねという可愛らしい声が聞こえた。 だが、振り返ったそこに立っていた声の主は可愛らしいという言葉で片付けるには、違いすぎた。 一歩間違えれば確実にあたっていた。それぐらいギリギリでカボチャに向かって投げられた数本の針。そして、蔵人の短刀が二本カボチャのマントと壁を刺した。 足止めはそう長くはないが、それだけあれば十分だった。 「いっくよ〜・・・死ねぇ〜。」 と、声は可愛いが言ってることは可愛げがまったくなく、容赦なくその引き金を引いた。 思い音と足元が少し響くのを感じると同時に、カボチャのいた場所が壁ごと破壊された。 「美咲。毎回言うが、やり過ぎだ。建物崩れるだろうがっ。」 蔵人が怒るが、反省の様子は一切ない美咲。 なにやらひたすら言い合いをしている二人はおいておいて、舞華は隼人と敦の側へ近づいた。 「それで、ここではあいつがやったあれでこの状況だ。やり合う気があるなら移動するぞ。」 「そうだな。お前ら面白そうだからな。殺し合いではなく、手合わせをしてみたくなった。」 「あっちの男は短刀を使うのか?」 「ああ。なら、銃同士と刀同士でやるか?」 「それいい。とっとと移動してやろうぜ。」 かなりのりのりの隼人に考えずに勝手に決めやがってと内心でぶつくさ言いながらも、久々に殺し合いではなく剣を振るえる手合わせに、自然と高なる鼓動を感じる。 「ならば・・・・・・悪いが、今日は無理そうだ。」 ピピピ・・・と、呼び出し音が鳴っているのが聞こえてくる。 「私だ。・・・わかっている。すぐ戻る。・・・悪いな。せっかちな客の仕事の呼び出しだ。明日もこの時間にここへいるか?」 「ん?明日?敦〜明日仕事ないよな?」 「明日はなかったな。」 「いいぜ。明日やろうぜ。」 「悪いな。・・・ほら、お前等はいつまで馬鹿をやっている?一度出るぞ。」 「了解。」 「わかりました〜。」 舞華は二人のいい争いを止め、ゲームの接続を切断する。 うっすらと消えていく彼らを見送り、俺等はどうすると敦がアイコンタクトで訴えると、隼人はもちろんゲーム続行だと言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべた。 何だかんだ言いながらもそれに付き合う自分はお人よしなのかもしれない。 仕事の依頼完了を町へと伝え、次の依頼を受けるのだった。 その後 「はぁ〜大分やったな〜。敦、カフェオレ。」 「お前の二言目はだいたいそれだな。糖尿病になるぞ?」 「お前もだいたい返事はそれだな。」 「・・・。」 珍しく隼人に言い返され、しかも自分が言った言葉を返されたので複雑だ。 しょうがないと、敦はカフェオレを入れにキッチンへと入る。 そこで見つけた、カボチャの煮物。 「そう言えば残ってたな。」 味に飽きたと言って、めちゃくちゃに隼人が調味料を昨日入れたもの。食べる気がせず、敦は一切口にしていないけれど。 食べれるものなのかと、一口食べてみた。 やはり駄目だ。 「隼人には料理させてはいけないな。」 そうやって、今日も敦が食事を作るのだった。
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