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白の魔法使いが降る夜に その日、寒くなった夜に、仕方なくコンビニに出かけていた。 いつもと変わらない夜のはずが、帰り道、僕はおかしな事態に遭遇した。 本来ありえない空から、女の子が一人、落ちてきたのだ。 意識がない女の子を、どうするか迷い、ひとまず寒いので家が近い為に連れ帰った。そして、ちょうど家に来る予定だった友人が来て、呆れられた。 「で、結局どうするつもりだよ?」 「どうしようか。」 はぁとつかれるため息。 「警察とかに保護してもらえばいいのに、なんで連れ帰ってきたのさ。犬や猫じゃないんだぜ?」 「わかってるさ。」 だが、この町は困ったことに、役所も警察も、遠い。寒くなったこの頃、意識のないこの子を連れていくには不便だ。そして、すぐそこのコンビニだからという理由で携帯を持っていなかったため、連絡入れるにも家に帰る必要があったのだ。 「で、話がまた戻るが、結局どうするつもりだよ?」 連絡もできない状態で凍死されても困るから連れ帰ったが、まだ警察にも連絡して引き取ってもらう予定ではないんだろ?そういう彼に、とりあえずうなずく。 「でもさ、お前はこれみて、この子、警察に連絡するか?」 「…。」 問われて、改めてその子を見て、しないなと否定の言葉を返す相手に、そうだろと言って、僕はがっくりとうなだれる。 もう一つ、彼女を連れ帰った大きな理由が、その格好のせいだ。 「何もない空から落ちてきたこともだが、この上から下まで白のよくある映画みたいな魔女スタイルだったら、本当は関わりたくもないからおいてくるからな。」 けど、今は真冬。寒い夜道に放置するほど、僕は鬼ではない。 そんな会話を続けていると、その子が動き、目を開けた。どうやら起きたようで、ぼんやりと周囲を見ている。 「どこからきた誰か知らないけど、いきなり落ちてくるのは非常識だからやめた方がいい。あと、行くとこあるなら、止めないし、ないなら今日ぐらいそのまま止めてあげるけど、どうする?」 どこだとつぶやいたその子にそういうと、少し考え、しばらくここに置いてほしいと言ってきた。しばらくってどれぐらいだ。話を聞いていなかったのか。今日ぐらいならと言ったはずだ。 「どうやら助けて下さったようで、ありがとうございます。」 そう深々と頭を下げる少女に、僕は名前を尋ねた。話をするうえで、呼びにくくて不便だったし、そもそも同じ国の人間なのかもあやしかったからだ。 「私は細波珊瑚と言います。」 「僕は水島聖治。こっちは友人の…。」 「吉山竜胆。」 自己紹介をし、事情を聴くことにした僕は、彼女の語る内容に耳を疑った。 「えっと、もう一回…。」 「ですから、私は雪の魔術師見習い。四季を司る冬将軍と雪の女王にお仕えする者です。この区域が私の担当になったので、見習いとはいえ、仕事をすることになったのですが、不慣れでして、落下してしまいました。」 幻聴を聴いている気分になった。 「えっと、家は近くなの?」 「いえ、離れて行ますし、帰る場所という概念であればありますけど、冬の間はこの区域が担当になりますので、帰るわけにはいかないです。」 つまり、警察に連絡したところで、どうしようもないということだ。家なしだし、住所不特定の不審者。 むしろ、仲間と思われて僕達まで捕まってしまうかもしれない。 「えっと、一応僕等の生活の中で、そういった職業もないし、話の内容はわかったけど、理解できるものじゃない。」 だから、僕はその子に尋ねた。今後はどうするつもりで、どうしたら、帰れるのか、と。 「基本、区域担当者はずっとその範囲内にいます。ですが、上への報告の為、季節の初めと終わりにそれぞれ帰ります。」 見習いで、一人前になる為の試験でもある為、第一段階として聖夜までは仕事としてすることがあるのだと彼女は言った。そして、バレたのでこの際だからと、僕に言ってきた。 ある程度状況から予想はついていたけれど、どうしたものかと思う。 「聖夜、次の試験が発表されるまで、ここにいさせて下さい。」 空はいろんなものが飛んだり、いろんな人が見ていたりして、隠れるのは限界なのだとその子は言った。 「わかった。いいよ。その代り、食事や洗濯掃除、その手伝いぐらいはしてくれよ。」 「はい。ふつつか者ではありますが、頑張らせていただきます。」 「ま、がんばれ。」 じゃ、帰るなと、事がひと段落ついたことで帰る友人。白状ものめと思ったが、あいつは意見変えて泊まるということをしてくれる奴ではないことは知っているので、考えないことにした。考えたら負けな気がするからだ。 こうして、僕は聖夜の前に、空から落ちてきたおかしな冬を司る白い魔法使いと出逢った。 |