|
一 先輩と後輩
深呼吸をして、目の前の扉をノックする。そこには、二人の女の姿があった。 ゆっくりとノブを回し、扉をあける。 「こんにちは。今日からお願いします。」 二人は息ぴったりで中の人に聞こえるように言葉を言う。 中では、来たねと、面接をしてくれた人が迎え入れてくれた。そしてもう一人。 「よく来てくれたね。さ、挨拶は後にして、こっちにおいで。」 そういって、二人を奥へと迎え入れる人。 ここの関係者だろうが、あいにくまだ二人は今日からここで働くので、知らなかった。 「本当、タイミングよく来てくれて良かったよ。ほら、今から麻美・・・沖田の演技練習を始めるところだったんだよ。」 部屋の奥にある舞台としてテープで囲んである場所を指差した。 「確か、君達は彼女のファンだったよね?」 そういって、これに座って見学しておけばいいと、椅子を二客出してくれた。 「ありがとうございます。」 二人は同時に言葉をいい、頭を下げた。 相手は、知り合いだというだけの赤の他人でありながら、ここまで行動や性格が似ているとややこしいなといいながら、自分の持ち場へと戻ろうとした。 「あ、あの。」 「何か?」 「お名前を教えてもらえませんか?」 「お願いします。」 そう二人に言われて、どうしようかと少しだけ考え、答えてくれた。 彼女は『北原 夏夜』だと答えた。その答えに、二人は大いに驚いた。 北原とは、ここの総まとめ役で、責任者だったのだから。 ここでする演技の内容の半分は、彼女が脚本したオリジナル。 すごいと思い名前だけは知っていたが、まだ顔は知らなかったのだった。 着て早々、今から演技する彼女以外に会ってみたいと思っていた人と出会えて、興奮気味の二人。 その後、始まった練習をみて、さらに興奮した二人だった。 あの日はじめてみた日、そして、不思議な人と出会った文化祭で演じていた彼女。 あの時以上に上手くなっている今の彼女を見て、追いつくのはほど遠いと実感した。 それと同時に、すごいという思いがいっそう二人の中で上がった。 練習とはいえ、演技が終わったあとなんて、自然に拍手をしていたぐらいだ。 「やっぱり、すごい・・・。」 「うん。お姉ちゃん、すごいね・・・。」 他のメンバーと簡単に話をして、麻美は二人のもとへやってきた。 「おはよう、桜華ちゃん、千代ちゃん。もう、如月さんと柳田さんという方がいいかな?」 もう、会わずにいて五年かなと思い返す。 麻美は、この二人とは兄との関係で出会った。その後、卒業してからしばらくは会っていたが、お互い忙しくなった為に、それだけの間、会わなかったのだ。 なんだか、三人でここで会うなんて思っても見なかったので、不思議な感じだなと、三人それぞれ思っていた。 「今日から、先輩後輩だね。よろしくね、二人とも。」 「こちらこそ、よろしくお願いします。」 麻美と握手をして、二人は来月ある舞台で簡単な役をやってもらう予定だからと、別室へと連れて行った。 「一時間後、戻ります。」 それだけ言って。どうやら、麻美が簡単に指導をしてくれるようだ。 尊敬し、麻美を目指してここまで来た二人にとっては、とてもうれしい思い出と残るだろう。 控え室のような小さな部屋で三人は、演技の練習をした。 桜華と千代は麻美の指示に従って、簡単な役だが、いかに自然に動き、それを見せるかということで、一時間めいいっぱい練習をした。
|