二 桜と写真

 

 

 

 懐かしい、あの日となんらかわらない、会いたいとずっと願っていた相手がそこにいた。

「紫音、魅音さんも!」

どうして急にと、三人は驚いて動けずにいた。

 あの日から何処にいるかさえわからなかった相手が急に現れたのだから仕方ない。

 二人は少し困ったように苦笑し、少し前へ進んで用件を言った。

「卒業祝い、しようと思いましてね。」

「何より、貴方方が私達に会うことを望みましたから。」

どれだけ離れていようとも、思いは届く。

二人はそういって、三人におめでとうと祝いの言葉を贈った。

 

 

 少しだけ、話をして紫音は本題だといって、三人を見上げた。

「実は、ここに千代さんと桜華さん、そしてお兄さん方も呼んでいるんですよ。」

突然そんなことを言われて、いったい何をするつもりなのかとお互いの顔を見て悩む。

これでは、文化祭のメンバーがそろう。

「それぞれ進む貴方方や彼等との思い出を一つ、残しておこうと思いましてね。」

魅音は古いが高そうなカメラを一台とりだした。三人は二人が言いたい事が理解できた。

ようは、皆で記念に写真を撮ろうということだ。

「私達のような人にとってはあやふな存在。貴方方や彼等は私達と関わり、近くに来すぎました。

確かに、私達は楽しかったし、このような日々が続くのがうれしく思いました。

ですが、ずっとは無理なのです。」

人とは違い、なかなか年をとらない体なのだから。

麻美も前世は紫音と魅音と同じ存在だったが、今は違う。

「私達は人に多く知られる前にその土地を離れます。

人が愚かな夢としてみる、不老不死のような存在が目の前にあってはいけないのですから。」

「ですが、皆、そういった考えを持つ方々ではない。私達と良き友人であろうとしてくれました。」

だからこそ、何も形にも残らない、記憶だけの思い出。いつかあやふやになっていく。

 納得いかない事。

思い出として、無理に何かに残そうとする必要はないが、自分達は例外だと思う。

簡単に記憶を操作することも出来る力を持つ者なのだから。

「・・・卒業の旅立ちに、思い出を一つ、形に残そうと思いました。

誰もが、先を進むにあたり、立ち止まる事がないように。

私達はいつも、貴方方のすぐ近くにいると。」

「紫音・・・。」

掟だからといって、過去に自分の記憶を操作した紫音。

その行為がどれだけつらいことだったか、知るのは本人だけ。

だが、忘れられて哀しくないものなんていないのだから、つらかったということはよくわかる。

そして何より、いくら記憶が戻っても、あれが本当のことだったかなんて、麻美には確かめる術はなかった。

もし、夢だと言われたら、夢と思うだろう。それだけ、不思議な出来事だったのだ。

二人は、思いが届いたから来たといった。

せっかくだから思い出に形を残そうと写真を撮ろうといってくれた。

きっと、思いが届いたときから、麻美達の言えなかった言葉を感じ取っていたのだろう。

皆で一緒だった思い出を忘れたくないという、あの日そろったメンバー全員の願い。

「・・・もうそろそろ、来ますね。」

魅音はポケットから綺麗な細工が施してある丸い時計を取り出して時間を見る。

「来ましたね・・・。予定より、皆さんはやいですねぇ。」

紫音が感心していた。

三人は、先に会ったことをやってきた彼等に対して悪かったかなと思ったりもしたが、自分達の卒業式の思い出だからいいかと、今は気にしないでおく。

「紫音―。」

大きくなった千代と桜華が紫音のもとへとかけてきた。

後ろから兄の二人と、アンディベルもやってきた。

「あ、アンディベル・・・。」

「そういえば、忘れてたわ。」

「ちょっと、美葵・・・。」

これで、文化祭以来の再会ですねと、紫音が微笑んだ。

 この先、このメンバーが全員そろう日はそうないだろう。

だからこそ、今日は価値があるというものだ。

「魅音。」

「わかっていますよ。すぐに用意しますよ。」

紫音にカメラをあずけて、まだ咲いていない桜の木の前に立つ。

背後では何をするつもりだと、興味を魅音に向けて静かに成り行きを見ていた。

「アーディナ・ターロット・ノ、時を早め、我等に見せよ。」

魅音は言葉とともに、指で前に模様を描く。

指先からは光があふれ、それによって、桜の幹にその模様が描かれている。

「サーティ・カーティ、春の目覚めよ、春の精霊よ、我願いを聞きいれよ。」

魅音の長い髪が風に舞う。

目の前で繰り広げられる魔法というものの発動の瞬間を見て、すごいと思うものもいれば、こんなことまでと思うもの、格好いいと思うものと、人の数だけ感想は様々だった。

 気がつけば、目の前のまだ咲くには早かった桜の木は満開の桜の花をつけていた。

風に揺れて、花びらを散らす。

 他より早い、春が届けられた。

 

 

 桜にいつまでも見入っているわけにはいかない。

「とにかく、桜の木の前に並んで。」

「お兄ちゃん達は端っこの後ろ。」

「アンディベルと紫音は前だよね。」

「魅音さんも同じ場所?でも、身長からして後ろ?」

などと、賑やかに立ち居地を決めるのにも時間がかかった。

だが、そのかかる時間の分だけ、一緒にいられるのだったら、いくらでも時間を引き延ばしただろう。

「紫音、せっかくですから、戻ったらどうですか?」

という魅音の提案にこのままでいいという紫音。

だが、数名がもう一度しっかり見たいというものがいたために、紫音は元に戻ることにした。

もちろん、背中に生えている純白の翼は邪魔なのでしまっておくが。

 こうして、全員それぞれ立ち位置に立ち、魅音が魔法でカメラの位置を設定して自動で押せるようにした。

「撮りますよ?」

全員に確認を取ると、千代と桜華がいいよと返してくれた。

 それならと、魅音はスイッチを押した。

 彼等はやっと、たった一枚の写真だが、思い出を形として残す事が出来たのだった。

 いつまでも出会った日を、そしてこの日を忘れない為に。

つまずいてもこの日を思い出して、目標に向かって進む為に、この写真を大事にしようと全員が思った。

「写真は明日、それぞれ家に届けますよ。」

そういって、まずは今夜ある夜会で騒ぎませんかと紫音は彼等に提案した。

 もちろん、全員行くと返答した。

 






          あとがき

 思い出残しの再会と写真。前作のキャラ集合!と、大変でしたよ。
 え?一人足りない?そんな事はないはずです。いるはず…。
 え?足りない事はない?あれれ?
 最後まで読んでいただければ疑問はなくなるはず。というか、私が疑問を増やしてる?