八章       夢の終わり

 

 

 花火が終って、ほっとする九人。今日は、本当にいろいろな事があった。

 麻美は役に当たって舞台に出て、そしたら照明が落ちそうで危ないから助けようとして。

そこで魅音が劇に入ってなんとか無事に終って。

そしたら今度は紫音がいなくなって、赤谷がいなくなったのも気付いて、探した。

見つかったら見つかったで、今度は猫や犬が言葉を話して驚くし、魔法というもので戻ってきたのも驚いた。

誘拐犯に見つかって危ないと思ったし、切れて蹴り飛ばした魅音は、本当は男だという。

そして、復活した犯人が桜華に襲い掛かったら、今度は春華が現れて、撃退する。

そして、自分は紫音達と時をともにした友人だったという。

 そんないろんなことがいっぺんに起こって、この先退屈な生活を送る羽目になるのかと思った。

今日で、冒険のような素敵な奇跡の運を使い果たした気分だ。

 だけど、今日があって良かったと思う。

何せ、夜会の事を思い出せたからだ。

 自分はあれだけ忘れないと自分にいいきかせたけど、結局忘れてしまったのだと思わされた。

 麻美はフェンスにもたれかかって、空を見上げた。

「もし、願いを叶えてくれるのなら、ここで別れても、また紫音達と会わせて下さい。」

そういって、目を瞑った。

その時、ガシャンと音がして、何事と目を開けると、自分の視界が傾いている事に気がついた。

「あ、麻美さん!」

「麻美!」

「麻美お姉ちゃん!」

フェンスが傾いていく。

どうやら、緩んでいたボルトが、もたれかかった重力に耐え切れずにはずれてしまったらしい。

「麻美さん!」

何もない空間に投げ出されようとする麻美に、黒い猫が飛びつく。

「紫音!無茶です!」

だが紫音には聞こえていない。聞いている余裕がなかった。

誰もが、最悪を予想した。魅音は力を使うのが遅かったので、間に合わないと思った。

「麻美さん、紫音!」

 

 

  フワッ―――――――――

 

 

 七人の視界には白が広がった。暗いその空間に光があるかのように、白が広がった。

「し、紫音!」

「すごーい。」

七人の前に姿を見せたのは、知らない男だった。

麻美を右腕で抱え、左腕でフェンスを持って、真っ白の翼を広げて、屋上に戻ってきた。

 麻美は、落ちたはずなのに、落ちないし、いつの間にか現れた知らない男に抱えられて、かなりパニックを起こしていた。

「はぁ、なんとか助かりましたね。」

男は麻美を下ろして、フェンスをおろした。

「し、紫音?どうしたんですか?確か、長い間戻らなかったせいで戻れないといっていたはずでは?」

「え?紫音なの?」

「嘘・・・。それこそ嘘だ・・・。」

「紫音さんが変わっちゃったの?」

「すごーい。」

兄二人は言葉なし。まさか、人の姿になるとは思っていなかったからだ。

「やっぱり、麻美さんは恩人さんですね。昔から。」

「無意識でも・・・ね。やっぱり、根本的な元はかわらないみたいね。」

「私達もかわらないのですから、いいんじゃないですか?」

「ったく、なんなんだよ。戻れるなら戻って現れろよ。俺はわからなくてかなり警戒したぞ。」

アンディベルも駆け寄ってくる。赤谷も一緒に。

 紫音は、純白の翼をしまい、再び猫の姿に戻った。

「どうして、戻るんですか?」

「この方が、動きやすいんですよ。それに、ここではこれの方がいいですし。」

これが紫音の言い分。

 自分にかけた呪いのような魔法が解けなくなっていたが、今はもう、完全に解けた。

だから、今は変化という魔法を使っているだけ。

だから、いつでも戻る事は出来るのだという。

「それに、私はこの姿も結構気に入ってますしね。」

そういって、魅音の肩に飛び乗った。

「下に戻りましょう。麻美さん達は友人方が探していらっしゃるかもしれませんよ?」

「あ、そうだ。」

「げ、片付けやってない。」

「大変だな、会長殿。」

九人は仲良く、魅音の魔法によって屋上から体育館へと姿を見せた。

 麻美と和利と赤谷は友人たちのもとへ走り、片付けに行った。

三人が戻ってくるまで、紫音達は待つことにした。

「夢の終わりは皆で一緒が一番ですからね。」

「え、終わりなの?」

「何で終わりなの?もう会えないの?」

心配そうに見上げる二人に違うよと優しく答える。

「違いますよ。今日という夢の終わりを一緒に迎えましょうという事ですよ。」

「そっかぁ。」

「うん、一緒にね。」

数分たって、三人は戻ってきた。いなくなって、怒られたといいながら。

皆、可笑しくはないけど笑って、そして、夢の終わりを告げる。

「今日はこれでお別れですね。」

「また、会えるよね、紫音。」

「大丈夫ですよ。アンディベル・・・璃音に会いに来るように、私達は、友人に会いに来ますよ。」

そういって、姿を消した。

 残った彼等は体育館を後にしようとして、ふと振り返った。

 

 そこには、無いはずの木々とその間にある白いテーブルと、四つの椅子にそれぞれ腰掛けた四人の人影があった。

 

 

 

「あ、紫音!」

振り返ると、そこには魅音の姿があった。

「お茶の時間だよ。璃音も異音も待ってるよ。」

「ああ、そう言えば、時間ですね。」

「はやく行こうよ。」

手をつかんでひっぱる魅音。それに転ばないようについていく紫音。

「あ、やっと来たぜ。」

「遅いよ。せっかく、今回はクッキー頑張って作ったのに。」

「すみません。」

四人はそれぞれ自分の席に腰をかけて、手をあわせた。

 

『 今日も、四人一緒にいる時間を持てたことを、幸せに思います。

  これからも、四人一緒でいられることを願う。

  四人を出会わせてくれて、一緒にいられる時間を下さった事を、神に感謝します。 』

 

誰が見ても仲の良い四人。離れる事を知らない四人。

四人が一緒にいたら、何も怖くない。何もいらない。

四人が皆、この笑顔を失わなければ大丈夫。

 

 今はもう遠い、楽しかった頃の思い出・・・。