|
七章
帰る場所
確かに赤谷は幽霊ともいえるものが現れて驚いたが、事情知らない赤谷とアンディベル以外は、それ以上に現れた相手に驚いた。 「な、なんだ、お前は?!」 男もパニックを起こしている。それはそうだろう。 「貴方こそ何?桜華に何かしたら許さないから!」 その間に、紫音は男の頭にドスっと飛び乗って、気絶させた。 だが、今は男の事などどうでも良かった。 「春・・・華・・・なの・・・?本当・・・に・・・?」 「うん、そうだよ。ごめんね。せっかく、会えたのに、仲直り出来たのに、もう会えなくなって。」 抱きつきたくても、触れられない。春華にはもう、体がないのだから。 「千代ちゃん、最後にお見舞いに来てくれて、ありががとう。うれしかった。 千代も桜華も泣いた。そして、涙が流れるはずがない春華の目にも涙が流れた。 「会いたかった・・・会いたかったよ。」 「置いていくなんて、ひどいよ。」 「ごめんね、二人とも。約束、守れなくなってごめんね。でも、約束は忘れていないから、必ず戻るから。」 待っててと、いって、魅音に向きなおす。 「あの日は本当にありがとうございました。」 「そんなことありませんよ。」 「そうですよ。あれは、きっかけをつくっただけで、春華さんが生み出した奇跡なんですから。」 もう一度、ありがとうといって、二人に再び向き直った。 「私の帰る場所はあの家で、二人のもとなんだよ。だから、待ってて。 そういって、春華は消えていった。跡形もなく、消えた。 「・・・どうやら、これをもっていてほしいということでしょうね。」 「どういうこと?」 「それが、目印なんじゃないんですか?」 そっかと、二人は魅音に渡されて、それを大事に握り締めた。 そこでふと、今になって気になった事を兄達は口にした。 「・・・猫と犬はしゃべれるのか?」 今更だからどうしようかなと思う。説明するのは面倒であるし、今はこの男達をどうにかしたい。 「後に、お話しますよ。今はこれをどうにかしたいですし。」 兄も忘れていた男の存在を思い出し、慌てて職員室へと走っていった。
警察に、目立たないように来てくれと頼んで、男達をつれていってもらった。 彼等は、赤谷の父親がある会社の社長だということで、犯行に及んだらしい。 「これで、ひと段落すみましたね。」 立ち入り禁止の屋上に集まる紫音、魅音、麻美、赤谷、アンディベル、桜華、千代、千広、和利の九人。 「フィナーレを飾る花火ですね。」 あたりは日が沈んで暗くなっていて、花火が綺麗に見えるだろう。 「特等席!」 「花火花火!」 はしゃぐ二人。うれしそうに見る兄二人。 「で、話してくれるの?」 赤谷の言葉で、誰もが魅音に視線を向けた。 「話しますよ。他言しないと約束して下さるのでしたらね。」 全員、うなずいて、誰にも話さないといった。それを聞いて安心しましたと、魅音は話し始めた。 「私と紫音、そして彼はもともと同じ場所にいた、俗に言う幼馴染というものです。 「四つ子だったら、もう一人、いるんじゃないの?」 「四人は、神によって一つのものから四つにわけて創られました。 そう話して、麻美の方を見た。 「でも、どこかで覚えていますよね? その言葉に、麻美はゆっくりとうなずく。 「そして今日、私達はもう一人、璃音と再会できました。」 と、アンディベルの方を向く。 「アンディベルと麻美さん、そして私と紫音の四人が、神が同じ日に一つの魂から四つにわけて創り出された魂です。」 すっと、紫音が魅音の前に出て、話をしだした。 「私達四人は離れる事を知らなかった。 黙って聞いていた赤谷は、アンディベルに近づいて、頭をなでながら聞いた。 「ねぇ、貴方は私のもとから離れて、彼等とともにいたい?」 「・・・わからないが、犬の寿命で考えると、人の世で俺は残りは二、三年。 「そっか、ありがとう。」 赤谷はアンディベルの首に抱きついていった。 「じゃぁ、麻美もいつか、帰るのか。四人がいた場所とやらに。」 「それは、麻美さんが決める事。 「そう、私達には長い、いらないほどの時間がありますから。」 その時、ドンと音がして、花火が始まったことを告げた。 「うわぁ、綺麗。」 「すごいな・・・。相変わらず。」 「費用、大変だろうな。」 「わーい、花火―!」 「花火花火!あ、あれすごいよ。」 「・・・四人そろって花火見られたのはいいですね。」 「そうだな。」 「帰る日はまだ先だけど、今は忘れるのもいいな。」 「ごめんなさい、覚えてなくて・・・。」 九人それぞれ思いを胸に秘めて、今は時を忘れて花火に見入った。 暗い空に赤や黄の光が照らし、人々を楽しませる。人口の光の中で、花火だけは綺麗だなと、紫音は思った。 もう少し、待ってくれていたら、春華もこの花火をあの二人と楽しめたかもしれないなと思ったが、お楽しみに帰って来てからの方がいいのかもしれないなと、考えると、早くその時がくればいいと願った。 この空に輝く月と星、そして花火に、いつか帰れますようにと願った。春華も、自分たちも。
|