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第六章
風が導く先には
長い時間、走っていたアンディベルと紫音。さすがに少女も目を覚ましたようだ。 「あ、あれ?あ、アンディベル?!」 起きた事に気付き、落ちたら危ないと足を止めるアンディベル。 「アンディベルの友達?」 「クゥーン。」 「そっか。ありがとうね、黒猫さん。」 「ニャオーン。」 本当に、会話が成り立っているかのように見える。 「そう言えば、ここ何処?」 自分は男たちに連れて行かれる前は学校の体育館裏にいた。 「そっか、二人が助け出してくれたんだね。」 そう、笑顔で少女が対応しているとき、紫音とアンディベルは耳を立てて、同じ方向を向く。
紫音がいなくなって一時間はとうに経過している。 「本当に、どこいっちゃったんだろうね、紫音。」 「魅音さん、紫音、帰ってくるよね?」 「たぶん・・・、でも、こんなことははじめてですね・・・。いや、二度目、ですか。」 魅音も心配している。 そんな時、魅音はふと下げていた頭を上げて、どこか遠くの方を見た。 そこにいた彼等は何事と思ったが、麻美は魅音が紫音の行方がわかったのだと理解できた。 「魅音さん、紫音さん見つかったんですか?」 「ええ、間違いはないと思います。彼の気配を感じましたから。」
離れることを知らない、離れる事のない四つの魂はどんなに離れても再び出会う。 神が、同じ日に四つの魂を創った。一つの魂から四つの魂に分けて、創り出した。 四つの魂は見えない糸によって繋がっていて、離れる事を知らない。 だが、失うことを知った時、彼らは繋がりのまま、探すだろう。 失うことを知った時、その繋がりの絆によって、探し出す。
魅音と麻美が走っている途中、車に乗った男たちが隣を通った。 今は、あんな男達よりも、紫音の無事の方が、気になるのだ。 今はまだ、わからないが、紫音と会えば、何かわかるかもしれない。そんな感じがした。 走って走って、バス停が見えてきた頃、黒い猫が一匹、躍り出てきた。 間違いなく、紫音だった。 「紫音さん!」 「魅音さん、すみませんでした。」 と、飛びついてくる猫。猫のはず・・・、麻美と南はあれっと思う。 「お、本当に魅音か。すっげー、女に見える!」 と、犬も飛び出してくる。しかも、間違いなく言葉を話している。 だが、麻美は何故かこの光景に違和感がなかった。当たり前のように思えたのだ。 「あれ?彼女は行方不明の方では?」 「あ、赤谷さん?!え、どうして?」 「あ、そういえば・・・。誘拐、されたままでした。」 ならばはやく戻ってなんとかしないとと手をつかんでいこうとする麻美に、赤谷は困ったように行けないという。 「実は、誘拐した相手が、車で学校の方にいってしまったのですよ。」 「それは大変ですね。しかし、どうして紫音までつれていかれたんですか?」 「あのまま彼女をつれていかれると厄介だと思いましてね。」 「でも、俺としては紫音と魅音にあえたから良かったけどな。」 「それもそうですね。一番うるさいのと先に出会ってしまって困りましたね。」 「おい、それはないだろう?」 なんだか、この三人の感じを知っている。そう思う麻美。 「でも、戻らないとあの小さなお嬢さん達に心配させてしまいます。」 「あ、そういえば、忘れてた!」 思い出せば、自分たちは兄と兄の友人達と一緒にいた。つまり、今とても心配していると思われる。 「ど、どうしよう?」 「困りましたね。魅音、どうします?あまりつかうのはよくありませんけど・・・。」 「そうなんですよね。」 「俺は無理だぞ。」 なにやら紫音と魅音とアンディベルが話を進めている。 「何か、戻れる方法があるの?」 あまり心配させたくないということは、赤谷にもあるので、戻れるのなら何でもするよと、今は犬や猫が話すことは忘れて魅音に聞く。 「そうですね。今回はしょうがありません。とにかく、戻って誰かに頼みましょう。」 「付近に気配はありません。今です。」 「安全にやってくれよ。」 紫音とアンディベルの言葉のあとに、魅音は人の言葉でない言葉をつぶやき、視界がぼやけた。 「行きますよ。」 そういって、五人はその場所から姿を消した。電線にとまった雀だけが、その光景を見ていた。
戻った先は全ての項目が終った体育館の舞台裏。 「あとはグラウンドでのパフォーマンスだから、今は誰もいないね。 「私も、まさか自分がこんな体験するとは思ってなかったわ。 「魅音ですよ。で、こっちが紫音。で、彼女は知っているかもしれないけど、麻美さん。」 「皆さん、本当にありがとうございました。」 頭をさげて、感謝の気持ちでいっぱいで、これ以上どう現せばいいのかという感じだ。 「頭をあげてください。それより、麻美さんはお兄さん達と合流しないといけませんね。」 「でも、どうするんだ。南、もしあいつらがいたら・・・。」 「そこが問題ですね。」 そうやって考え込んでいたとき、部屋の扉が開いた。入ってきたのは、美葵だった。 「あれ、どっかいってたんじゃなかったの?お兄さん達探してたけど。」 「ちょうど良かった。その兄を呼んできてほしいの。今すぐ!緊急事態なの!」 「いいけど・・・って、なんでいるの赤谷さん?あなた誘拐されてたんじゃ・・・?」 「だから、緊急事態。兄呼んできて!」 「わ、わかったわよ。大人しく待ってなさいよ。」 そういって、友人は急いで走っていった。 「これで、兄の問題は解決。」 「・・・いいんですか?」 「いいの。私が劇の役になったときに助けてくれなかったから。」 何のことかよくわからないが、彼女がそれでいいのならいいのだろう。 そうやって、兄を待っているだけでよかった。だが、男達も必死だった。 「ここか?!」 男達は兄が来る前に現れてしまった。 「やっと見つけたぜ。しかも、余計な奴が増えてるし。」 「どうします?」 「そりゃ、全てが終るまでは黙っててもらうつもりだよ。」 今度は強硬手段にでるつもりらしい。 「少しでも動いたら、穴を開けるから覚悟しろ!」 カチャリと向けられたのは片方は拳銃で片方はナイフ。 「お、威勢がいい姉ちゃんだな。」 その言葉に、魅音が一瞬だけ顔を曇らせた。 一歩、と近づいてきた男に、魅音はすばやい動きで、男を蹴り飛ばし、床に落とした。 麻美と赤谷はすごいと尊敬しているが、紫音はやってしまったという感じだ。 「なにを見ていっているのかしらね。その口は・・・。」 顔は笑っていても、目は笑っていない。 「確かに、姉に見えないことはないけど、貴方のような人に言われたくはないね。」 とても、怒っていると麻美もわかった。だが、どうして怒っているかはわからない。 「誤解しているようだから、一つ教えておいてあげるわ。私は女ではなく男よ。以後、間違えないで下さいね。」 と、もう一発けりをいれた。だが、それよりも、魅音が男だということに驚きの麻美と赤谷だった。 「嘘、男の人?」 「え、嘘?」 二人とも信じられないと思うが、よく思い出せば、劇で兄と名乗っていたなと思い出した。 「魅音、それくらいにしておきなさい。 「・・・あ、またついつい・・・。」 顔だけではなく目も笑顔を戻し、男に背を向けて、紫音を抱き上げる。 「でも、どうしましょうか。」 「片方はのびて、片方は戦意なくして・・・。放っておいても問題はないんじゃない?それに、誘拐犯だし。」 「あ、そう言えばそうだった。とりあえず縛っておこう。危険だし。」 麻美はどこからか縄を取り出して、気を失っている方を縛り始める。 そこへ、ぺたぺたと足音が聞こえてくる。きっと、呼んでおいた兄達が来たのだろう。 「麻美お姉ちゃんー!」 桜華の声が聞こえた。 「うわー、何―?」 「桜華ちゃん!」 「桜華!貴様、離せ!」 部屋から飛び出して、廊下に出て、悪化した状況を見た。 「いやー、離してー。」 手足をばたばたする桜華。そして、腕にかみついた。がぶりと深く、力を込めて、逃げ出すために。 男がひるんで、逃げ出そうとする桜華に再び襲いかかろうとする男。 だが、男が桜華を捕らえる事は出来なかった。 ビュオー―――っと、風が吹き、男と桜華の間に人影が現れた。 「許さないよ・・・。」 現れたのは、うっすらとしか見えない、亡くなったはずの友人、春華だった。 |