第五章        紫音と魅音の友人

 

 

 いつもこの場所で、いつもの顔ぶれで、たわいもない話をして楽しんでいた。

平和という名の空間にいて、大切なものを失うことを知らない彼等は、失って気付くまで、仲のよい友人として、この場所でたわいもない話をして時間をつぶした。

 平和という名の時間は、突如崩れる事を、そのときまで知らなかった。

だから、そのときまで、変わりなく話をして別れて、また同じ明日がくると信じていた。

 そして、彼等はばらばらになった。

仲のよかった彼等四人はばらばらになって、それぞれがその場所で、再び四人そろえることを夢見ながら、日々を過ごした。

 はなればなれになって、始めて、自分たちはお互いが大切で、離れられないほど長い時間、一緒にいることが当たり前になっていたのだと思わされた。

「ねぇ、もし私達がそれぞれ別の場所で時を過ごす事になったらどうする?」

「そりゃぁ、ばらばらになっても再会してまたこの時間を過ごすのさ。」

「私もそう思いますね。神が、私達の事を思って下さるのでしたら、きっと、会えるんでしょうね。」

「人でいう、運命って奴ですね。」

四人で話した事は、現実になった。四人ともばらばらになってしまった。

だけど、四人はまた会えるという運命というものを信じて、今を生きた。

 

 

 気がつけば、知らない場所にいた。そんな感じ。

「困りましたね・・・。」

隣には眠っているあの少女がいる。どうやら、自分も連れてこられてしまったみたいだ。

「とにかく起こして・・・。」

少女を起こそうとした時、少女の隣で寝息を立てて眠っている犬を見つけた。

「え、まさか?!」

紫音は信じられないという感じで、犬のそばに駆け寄って、犬を起こした。

「起きて下さい。起きて・・・、起きなさい、璃音!」

紫音の声に驚いて、犬は飛び起きた。

「え、あ、あれ?」

犬は周りをみて、状況を見つつ、黒い猫と目があった。

「えっと、あんたどちら様?」

「今はそんなボケている場合ではないでしょう?」

「あ、そういえばそうだ。俺とした事が、どじ踏んでつかまったんだったなぁ。で、お前も巻き込まれ組か?」

いたってマイペース。ああ、間違いない、彼だと確信する。

それと同時に、変わっていないとうれしいが、こういった場所ではしっかりしてほしいものだ。

「貴方、璃音ですよね?」

その名前に、犬は猫をにらむようにみて、なぜ知っているとうなる。

「間違いないんですね?良かった。やっと、会えましたね。璃音。」

相手は知っているようだが犬にはわからない。

「あ、もしかしてわからないとか?」

「う、うるさい。お前誰だよ!」

本当にわかってもらえていなかったのかと少し悲しい気分だが、この姿ではしょうがないかもしれないと思いつつ、名前を名乗った。

「私は紫音。覚えているでしょう?璃音。まさか忘れてしまったってことはないでしょう?」

紫音という単語に反応し、お前かと猫の小さな肩に大きな手を載せて、うれしそうにいう。

「なんだぁ、お前だったのか。しっかし、えらく変わったなぁ?」

「いろいろありましてね・・・。」

だが、今はそんな思い出話に花を添えている場合ではない。

「・・・逃げますよね?」

「ああ、もちろん。俺もいつまでも大人しくしているのは性にはあわないからな。」

そういって、立ち上がる。といっても、犬であるから四足で立つのだが。

「あ、そうそう。ここではいちよう、アンディベルって言うんだ。で、このお嬢さんが飼い主。」

「へぇ、そうなんですか。では、私はともかく、魅音には気をつけてもらわないといけませんね。」

「え?あいつもいるのか?」

「ええ、いますよ。今頃私を探しているんでしょうね。少々悪い事をしましたね。」

その間に、アンディベルは飼い主の少女を背中に乗せる。

「とにかく、外にでましょう。」

「わかってるよ。」

男達が気付かないうちに、逃げ出した三人。目指す先は文化祭。少女を確実に守ってもらう為に。

「あー、こういうときに魔法が使えてたらなぁ。」

道路を走る犬と猫。犬の背中には少女がいる。だが、人がいないために、誰も不審に思わない。

「しょうがないでしょう。今こちらにいる四人の中では、使えるのは魅音ぐらいですよ。」

「へぇ、四人ともそろったってわけか。本当、運命っていうか、腐れ縁だな。」

「でも、彼女はまだ、記憶がありませんよ。何せ、私達とは違うんですから。」

その言葉に、察するアンディベル。

「転生したってわけか。人に。」

「ええ。異音は今、人として過ごしていますから。

始めは気付きませんでしたけど、間違いなく彼女ですよ。」

「へぇ、そうかい。ま、人だろうと化け物だろうと、結局はどこかで繋がってるんだろうよ。

だから、会えたんだ。」

「そうですね。」

そういいながら、一刻も早く、少しでも遠くへいこうと走った。

 その頃、男達は三人がいないことに気付き、慌てて周辺を探した。だが、見つからなかった。

このままではいけないと、車を出して、周辺を探しに出た。

 そして、魅音達も、いなくなった女子生徒とともに、紫音を探していた。

 どちらも、三人の行方を捜していた。

 

 

 探している最中、麻美に誰かがささやいた。

『もうすぐ、帰ってくるよ。』と。

 だが、近くにはその声の主がいないし、魅音がいったのかと聞いても違うという。

 

 

 四人が再会を果たせるのはもうすぐ。もう、そう遠くない未来に・・・