第四章        連れて行かれた紫音

 

 

 麻美と入れて、魅音達は和利のクラスがやっている喫茶店のような場所にいた。

「で、注文いちよう聞くけど、何がよい?」

和利が言うと、小学生二人組みは手を上げて同時に『桃ジュース』と言う。

タイミングも声の大きさも動作も同じ。

「だって、好きなんだもん。」

「いいじゃん、同じでもー!」

と、言えば文句を返す。それを流すようにはいはいと答えて他のメンバーの注文もとる。

「これでいいんだね。じゃ、用意してくるよ。」

和利は近くに来たクラスメイトに注文を言い、一緒に奥へと入っていった。

「大変ですね。私達までご一緒して、よろしかったのでしょうか?」

「いいですよ。貴方のおかげで、あの照明の件、他の誰も気付かなかったですから。」

麻美がそういってくれるのなら、本来の目的は麻美だったのでまぁいいかと、もうしばらく彼等に付き合う事にした二人。

 

 喫茶店で、ジュースを飲み、いろいろつまんで、満足できた頃。

喫茶店に入ってから出るまで、二時間も経過していた。

「・・・時間の早さには驚かされますね・・・。」

「確かにそうですね。魅音の時もそうですけど・・・。」

そんな二人の会話に、早く行こうよという千代の言葉。桜華も呼ぶ。

二人は返事を返して、急いで追いついた。

 

 

 体育館裏では、怪しい二人組がいた。

「おい、あとどれぐらいだ?」

「この舞台はもうすぐ終わる。そして、客が動いた後、あのガキはこっちへ来るだろうさ。」

何かを企む会話。お互いに聞こえる程度に話される。

「・・・もうすぐ・・・だ。」

「あ、拍手・・・。どうやら終わったようですね。」

「もうすぐだ・・・。あのガキは必ずここへ来る。あれを持ってな・・・。」

男はにやりと口元に笑みを浮かべた。

 

 

 その頃、麻美達はもうすぐ、自分たちのあとにやる舞台が終わり、吹奏楽の演奏が始まるから、体育館へ向かっていた。

「なんかねぇ、次の大会の前に披露するんだって。」

和やかな会話。

そのときふと、紫音は何かを感じ取った。

動物、猫だからだろうか、かすかだが何か音が聞こえた。

 そして、その正体に気付き、紫音は慌ててそこへ向かった。体育館の裏へ。

誰にも言うことなく、一人で行った。

「・・・あれ?紫音・・・?」

「どうしたの?魅音さん。」

ふと、魅音はそばに居たはずの気配がない事に気付いた。

「紫音・・・知りませんか?」

「え?紫音さん?」

麻美もそう言えば黒い猫の姿が見えない事に気付く。

「・・・おかしいですね。彼、私に何も言わずに消える事はないのですが・・・。」

「じゃぁ、探してみますか?お兄ちゃん、紫音さんいないから探しに行ってくる。

千代ちゃん達と先に中で席の確保してて。」

「ああ、わかったよ。あまり時間がないから早めに戻って来いよ?」

「わかってるって。じゃ、魅音さんあっちの方を、私は体育館の裏から回って見てきます。」

「すみません。」

そういって、二人は別々に紫音を探す事にした。

 

 

 魅音達の前から姿を消した紫音は、こっそりと影で黒い二人組みを見ていた。

 明らかに何かをたくらんでいる様子の二人組み。

このままほおっておけば、きっと何かしでかすだろう。

「・・・来たぞ!」

片割れの男がもう一人に知らせる。

紫音は神経を張って、獣の持つ鋭い感覚を持って、あたりに気を配らせる。

「・・・よく来たな。」

「・・・アンディベルは無事なの?」

現れたのは麻美と同じ制服を着ている女の人。

つけているバッチから、麻美と同じ学年だとわかる。

「あの犬っころだろ?ああ、問題ないさ。あんた次第だがな・・・。」

そういったあと、『赤谷 南』さん。といっていた。

それが、彼女の名前だろう。

状況を整理しつつ、紫音は片割れの男が彼女の腕を縛ろうとしたのを見て、まずいと判断し、三人のもとに姿を見せた。

「ニャオーン」

その鳴き声に、三人とも肩をピクッと動かして、紫音の方を見た。

「脅かすなよな・・・。ほら、あっちいけ。」

しっしっとおいやろうとするが、ただの猫ではない紫音には通じない。

「ニャー」

と、反対に機嫌よく返事をしてやる。

「何なんだよ。とにかく、お前はそいつをさっさと縛れ!」

「はいはい。」

命令を下した後、男は紫音に近づき、小さい子供に言い聞かせるように、あっちへ行くんだと言う。

それでも、紫音は言う事を聞かず返事を返すだけ。

紫音は、この二人の企みに、彼女を『手中におさめる』ことが、必要なのだとわかったので、時間をつかわせているのだ。

魅音が急にいなくなった自分を探しに来るとわかっていたからだ。

 だけど、こっちへやってきたのは魅音ではなかった。

「紫音―、何処いったのー?」

麻美が来たのだ。魅音も探しているだろうが、別の方向にいったようだ。

 聞こえてきた声に、この猫を探しに来たと判断した男たちは、慌てて南を荒っぽく引っ張って、紫音を脇に抱えて走り出した。

 このまま、猫をここにおいておくのは危険だったからだ。

 男は、どうもこの猫が普通ではない・・・自分が話している言葉を理解しているようで怖かったのだ。

「紫音―!」

麻美が来たときにはそこには誰もいない。

「もう、何処いったのよ。」

麻美は別のところも探そうとそのまま名前を呼びながら探した。

 だが、結局見つからなかった。

 

 そして、生徒の一人が消えた事も、魅音と合流したときに知った。