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「お兄ちゃん。」 「どうした、麻美。」 先程まで隣の部屋で寝ていたはずの妹が起きてきたことに、どうしたんだと、勉強を一時中断して妹の方へ向いた。 「あのね、夢をみたの。」 「どんな夢だい?」 「あのね、四人の人が机を囲んでお菓子を食べたり、お茶を飲んで楽しくしてるの。」 「へぇ。そうなの。」 知らない四人というのが気になるが、そのまま話を聞く。 「それでね、その一人が、お母さんに似てたの。」 すごいでしょ?そういう妹に何かを感じ取った。 母に似ている夢の人物は、間違いなく妹の事だと思われた。実際見ていなくても、そう思えた。何故かはわからないが、少し前から妹の周りで起こっている信じにくい事態を見てきたので、なんとなくそう思ったのだ。 いつか、妹が成長した、いや、前世というべきか。他の三人が迎えに来るのかもしれないなと、予感がした。 その、机を囲んでお菓子を食べてお茶を飲む場所へと、他の三人が連れて行くのではないのかと。 「ほら、まだ朝には早いから寝なさい。お母さんが怒るぞ?」 「あ、それ困る。」 だから寝てくると、妹はぺたぺたと部屋から出て行った。 可愛いものだなと、思う自分。そして、いつか自分の前から去っていくのだろうなと、哀しく思う自分。 今は、もうすぐあるテストに向けてもう少しだけ勉強をしよう。 それから兄は、しばらく可笑しな現象に立ち会うことも聞く事もなかったために、妹と同じように忘れていた。その予感と妹の話を。 再び、可笑しな、猫や犬が言葉を話すという事態が起こるまで。 夢の四人は、間違いなく妹の前世で、その他の三人と自分も顔をあわせるなんて、思ってもみなかった。 もし、そんなことが予想できていれば、もっといろいろと対策を考えていただろうに・・・。 そんな事を思っていた自分。 「・・・急に懐かしいことを夢にみたものだな・・・。」 うるさく鳴り響く目覚ましのスイッチを切って、布団をはいで起き上がった。 現在の時刻は朝の7時。休みの日でも、これぐらいに起きるようにしている。 部屋の唯一光が入る窓のカーテンをバッと開け、窓を開けて空気を入れ替えた。 「あれから、何年たったんだろうな・・・。」 文化祭で出会った謎の多い人と猫。そして、誘拐された妹の知り合いと飼い犬。 「あいつが人である限りはこのまま・・・か・・・。」 そこまで深く、そして強い絆というものが少しうらやましかった。それだけ、信頼できる相手がいるということが。 「麻美が人ということを捨てる日は、いつなんだろうか。」 それがイコール死ぬ日とわかっていても、気になる。人という器の寿命を操作することも可能のような力を持つ、得体の知れない相手。 だが、あの誘拐犯のようなどろどろした暗い負のものをもっていない相手。 「自分は、もしあいつ等と関わるのなら、どういった関係なんだろうな・・・。」 気になっても答えてくれる相手はいない。 「さて、朝飯でもつくるか・・・。」 今日の朝ごはんを作る当番は自分だ。 下へ降りていき、台所で調理を開始した。簡単で質素なものだが、味は保証付。 テーブルに家族全員分並べ終わって、つけていたエプロンをはずす。 「さて、我が家の姫を起こしに行きますか。」 そう呟いて、上へと上がる。自分の部屋の隣にある、妹の部屋へと。 「あいつも、同じ夢を見ていると、面白いな。」 クスクスと笑いながら、階段を上る。 部屋の前に来たときには、もう笑わず、軽くノックをして、朝ごはんを知らせた。 扉の奥では眠たそうな声ですぐいくと答えた。 なら、今はいいだろうと、下へと戻る。 カップに暖かいコーヒーを入れて、眠気覚ましに一杯飲む。 今日も、朝が始まる。 今は、前世も未来も気にしないでいよう。 この幸せが続いている間は、自分も麻美も今まで通り変わらないのだから。 コーヒーが呑み終わった頃、髪が少々乱れたまま、麻美が入ってきた。 「おはよ、和兄・・・。」 まだ、麻美は眠そうだった。 「・・・そういえば、今日懐かしい夢見たんだよ。」 「どんな夢だ?」 「あのね、私が小さい頃、和兄に自分の夢のことを聞いている夢。」 「へぇ。」 そういいながら、自分と同じ夢を見るのは珍しいなと思っていた。本当に同じだとは思わなかったから。 「今まで忘れてたけど、あの時から…。違うな、生まれる前から紫音達のことを知っていて、探してたのかもしれないな。」 そういって、いつも自分が座る席に着いた。その机の上にはもちろん、おいしそうな朝食が並べられている。 「また、会えるかな?」 「来年の文化祭には来るんじゃないのか?今年のように、劇に乱入してくれるかもしれないぞ?」 「それ、いいね。」 そう楽しく会話しながら、朝食を進めた。 今日も一日が始まる。変わらない日々が・・・。 |