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ひらりと、白いものが宙を舞う 正月という区切りで、騒ぎ出す集団 少し離れて影が一つ歩いていく どんどん人から離れていく
<< 番外編 >> 〜 物語を語る黒い猫
ぎぃっと、鈍い音を立てて扉が開いた。 暗いその塔の中に、扉から光が射す。 入ってくるのは小さなもの。音もなく中を進む。 そして、彼は壁の前で止まって上を見上げた。 「…もう、今日で何年目でしょうね…。」 あの日からと、小さく壁に語りかけるもの。黒い猫だった。 「貴方も変わらず、私も変わらず、ですね。今のまま、残りの二人を探す旅には、出られそうにありませんしね。」 黒い猫の顔は、苦笑するかのように、壁に語りかける。 通常考えれば、可笑しな事だが、ここでは何も問題はない。何せ、ここは猫の集会と呼ばれる、猫の集まりの為に用意された異空間という所。 ここに集まる猫は言葉を話す。もちろん、魔法という力を使う事もある。 元々、猫や他の動物達は言葉を話す事が出来る。だが、それは人を驚かし、脅かすので、言葉を話さずに、泣き声という言葉で人と会話をする。 そして、黒い猫が語りかけている壁には、壁から出てくるようにある、石像の人の姿があった。 彼こそ、この黒い猫の大切な友人。失ってしまった友人。願っても、この何十年、戻る事はなかった。 そして、黒い猫、彼もまた、同じ人の姿を持つ者であった。それを、ここへの出入りがしやすいようにと、己自身に呪いをかけたのだった。 今となれば、移動や動き回るので、こちらが便利なので気に入っていたりもするのだが、やはり友人に早く目を覚ましてほしいものだ。 この友人は、とても強い力を持つ友人だったし、そう簡単に殺そうとしても死なない相手でもある。だから、余計にこの待つ時間が長く、辛かった。 もしかしたら、このまま言葉を交わす事ができないのではないかという、絶望が胸を貫く。 だが、信じていなければいけないと思う。いつも、自分の事を信じて、側にいてくれた人だから。他の二人とはまた違う、暖かさを持つ人だから。 「ねぇ、魅音。今年も、来ましたよ。ちょうど、魅音があの日止めて、ここでこうなった日。」 遠くの方で、騒ぐ声や音楽が聞こえてくる。 「いつになったら、また話ができるのでしょうね?」 そう言うと、石像の表情が少し困ったように、そして優しくなった気がした。 「貴方も頑張っているみたいですから、私も頑張りますよ。」 黒い猫、紫音は石像となって今は動かない魅音に精一杯の笑顔で言う。 ここで負けていたら、きっと戻ってきた魅音にいろいろ言われるだろう。 紫音はそっとその場から離れて、少し開いていた扉から外へ出る。そして、ゆっくりと扉をしめた。 紫音は宴会で騒いでいる席には戻らずに、真っ直ぐ人の世界へと戻った。 次の集まりまで閉じるこの場所。それまでに後の二人を探す為に、戻った。 物語が始まったのはいったいいつだったのだろうか。 それを決めるのは自分自身。そして、自分を知る人達。 きっと、あの場所で四人が出会った瞬間から、自分と言う物語は始まっていた。 こうなる事も全て、仕組まれた運命というものだったのだろう。 だが、四人の絆は強いと信じているから、運命の中で、もう一度会う事が出来ると、紫音は信じていた。 だから、探す旅を続けるのだ。
いつか、また四人一緒にそろう日を夢見て…。 今年の初夢は四人一緒にお茶会をしていたあの日常だった。 今年こそ、四人そろう事が出来るのかと少し期待しながら、紫音は町へとそっと降り立った。
そして、二人のうち一人と再会するのはもう少し先の物語…。
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