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黒い猫は落ちてくる
ある日突然、黒い猫が落ちてきた。 「うわ?!」 驚いて、ひっくり返ってしまった。 「いたた・・・。何なの?」 少女、桜華は自分にぶつかったものを見て、驚いた。 なんと、自分にぶつかった、いや、正確には落ちてきたものは、黒い猫だったのだ。 「すみません。」 と、道の向こう側から髪の長い綺麗な人が走ってきた。 「はぁ、どこかにいかなくて良かった。」 桜華から黒い猫を受け取って腕に抱きかかえる。 「えっと、彼、拾ってくれてありがとうございました。 そういって、にっこりと笑顔付で自己紹介してくれた。 悪い人ではなさそうなので、桜華も自分の名前を名乗っておく。 「本当に、すみませんでした。怪我がなくて良かったですよ、桜華さん。」 そういって、わかれた。 だから、それ以後、何の関係もない顔見知り程度だと思っていたが、どうやら違ったようだ。 次の日、学校の帰りに、再び何かが自分の上から落ちてきたのだ。 それは紛れもなく昨日の黒い猫だった。 「なんで?」 「ニャー。」 猫は鳴き声を返すだけ。わかっていても、もう一度なんでと聞いてしまう。 すると、今度はニャーではなく、言葉で、いろいろとありまして、と答えた。 「・・・え?今・・・???」 「ええ、言葉を使いましたよ、桜華さん。」 猫はにっこりと笑っているようだった。どうやら、本当に言葉を話すようだ。 呆然としている時、昨日会った、魅音がやってきた。 「あ、いたいた。また、彼女にご迷惑をかけてしまったみたいですね・・・。」 「しっかりと手順を踏まない貴方が悪いのですよ、魅音。」 「そうですね、わかってますけど・・・。」 どうやら、この猫は本当に言葉を話すようだった。
それから、この奇妙な二人とたまに公園や道端であっては、たわいもない話をするようになった。 そして、けんかしたまま別れて、今も会いに行こうとしてすんででやめてしまって会う事が出来ないことをぽつりぽつりと話した。 出会ってから一月も経った頃だった。 「それは、大変ですね・・・。」 「・・・仲直り、したいのですよね?」 「・・・だけど、どうしても、病院の前で・・・。」 一言を言いに行くだけが、どうしても建物の前で中に入れなくて言えなくなる。 拒絶されて追い返されたらどうしようと、考えたら入れなくなったのだ。 「病院?」 「・・・喘息を持ってて、酷い時は発作を起こすから・・・。最近ひどいみたいだし・・・。」 「そうなのですか・・・。」 「たいへんなのですね。」 今日はその話で終わり。 次の日、今度の休みの日、一緒についてきてもらえないか、最近よく話をしている公園のベンチに向かった。 「・・・そろそろ、来る頃だと思っていましたよ。」 そこにいたのは魅音だけだった。 「紫音は?」 「彼なら今、貴方の友人のもとにいますよ。」 「え?」 「週末に私達が付き添いとして、会いに行こうと考えているのでしょう? 何故か全て知られている。だが、別に勝手に調べた事に対して怒りはなかった。 「勝手に知っている事に関してはお詫びします。ですが、その前に聞いていきたい事があるのです。」 「何ですか?」 「貴方は始めて会ったときから、二度目も猫が言葉を話すことを知っても、私達のことについて、おかしいとか思わないのですか?」 確かに、普通に考えれば可笑しなことかもしれない。 「でも、私は貴方や紫音と出会えて良かったと思うよ。 最後につけてくれるのには微妙なところだが、仲良くしてくれることにはうれしいものだ。 何せ、自分達は人ではないものなのだから。 本来あるべき場所に戻らねばならないが、戻らずにここにいるのだから。 普通ならば、人は不振がって気味悪がり、追い出そうとするんごあ常だった。 「・・・仲直り、出来ると良いですね。」 「うん。これ以上後悔を続けたくないから。」 しばらく魅音と話をしていたら、もう日は傾いて帰る時間だ。 「じゃぁ、ばいばい。紫音によろしくね。」 そういって、桜華は家へと帰って行った。 魅音はそれを見送った後、力を使って紫音がいる病院へと向かった。
「迎えに来ましたよ。」 小さな声で部屋の中にいるはずの猫に伝える。 どうやら、部屋の住人は夢世界へと旅立っているようだった。 どうやら、好かれることには成功したらしい。 「あなたが猫から兎に姿を変えるとはね・・・。」 「別にいいじゃないですか。これぐらいならば出来ますから。ただ、もとの姿に戻れないだけでね。」 「それが、厄介なのだよね・・・。いつ、その枷をはずす事ができるのだろうかね?」 「さぁ?それこそ神のみが知るのでは?」 「それもそうだ。」 そういって、病院の外へと出た。 辺りはもう街頭があってもくらかった。 あとで聞いたが、この日、病院の側で落ちて窓をたたいたらしい。 これで落ちたのは三回目だなと、苦笑する。それも、小さな彼女達の前で。 あの日までの彼ならばこのようなことは絶対にしなかっただろう。 「でも、紫音は紫音ですからね。」 「何がいいたいのですか?」 「さぁ?あ、桜華がよろしく伝えてほしいって。」 「彼女も律儀ですね。」 「早く仲直りできるといいですね。」 「週末には仲直りできるに決まってる。」 そういって、二人とも一度言葉を切る。 二人は知っていたから。もう、これ以上はチャンスがないことを。 それでも、彼女達は受け入れて前に進むだろう。 「強いね。人って。」 「いい勉強になるからいいんじゃない?」 明日は早起きかなと思いながら、二人は休んでいる場所へと帰って行った。 |