<< 番外編 >>

    〜 たりない記憶の欠片

 

 

  日常で、変わらない記憶の中で、何かがたりないと感じる時。

  あの日、覚えていない空白の間に何があったのか。

  思い出したくても思い出せないそんなこと。

  形が完成した記憶がばらばらになって、いくつかの欠片をなくしちゃったんだ。

  あの日、公園に出かけた日もそうだった。一時間ほど、空白が出来ていた。

  それに、次の日見かけた黒猫と長い髪の人が、知らないはずなのに、どこかで懐かしく感じた。

  だけど、日常は変わりなく流れて過ぎていくから、私はその流れに沿って進んでいく。

  美葵と一緒にいると、たりないことに違和感がなくなるから。

  きっと、一緒にいる間は、そのことを忘れているから・・・。

 



帰り道、二人はいつもの道を歩いていた。

「文化祭、頑張れよ。」

美葵はあたってしまったお姫様の役に、くすくすと意地悪な笑みを向けながら言う。

今日、役決めで、運悪くあたってしまったのだ。

「美葵は乗り気だったのに、どうして裏方なのよ。」

「そりゃぁ、演じるより見る方が良いからに決まってるでしょ?

それに、こういったことは、とくにお姫様とか、台詞が多い奴とかは麻美が一番でしょ?」

「それは・・・。」

「中学のとき、演劇部で、今も演劇部。

もう、何年やってるの?だいぶ、劇といったものにはなれたものでしょ?」

そんなことをいわれても、緊張するものはするのだ。

「それに、私は麻美が演じているのを見るのは好きだから、楽しみだけどね。」

「なんで?」

「そりゃぁ、私は見る事は好きだから。

それに、麻美は上手いもん。その役になってるから、麻美だって、わからなくぐらい。

だからか、よけいに演技の話に入っちゃうんだよ。」

「そうなんだ。」

知らなかったなとつぶやきながら、空を見上げた。空は相変わらず青い。まるで、あの翼のよう・・・。

と、考えて、ふと何を考えているのだと自分で自分に驚く。

一瞬頭にイメージで入ってきた空色の翼。それを広げる、人。

少しだけ見えた顔が、自分に少し似ている気がする。

だが、すぐに気のせいだと、頭をふって追い出し、美葵の話に戻る。

「ねぇ、話が変わるんだけど。」

「何?麻美が何か悩み事?」

珍しいものもあるものだという感じで、それでなにと、聞いてくれる姿勢にはなってくれたが、信用して良いのか少々際どい所。

「あのね、もし、もしもの話。

私の記憶の欠片がどこかへ落としてきて、どうしても思い出せない事があったとしたら、どうしたら、欠片を拾って記憶を戻せると思う?」

突然な問題ねという具合に見てくるが、真剣に考えてくれるのがわかった。

相手が真剣にいっているのだから、真剣に考えるのが友人として当然の事だから。

「・・・そうね、時間の流れにまかせるかしらね。

人は時間の流れに逆らえずに流れるままに進むでしょ?

記憶もまた、必要だったら、何かきっかけがあったら、思い出す日がくるんじゃない?」

「そっか・・・。」

もうすぐ、家に着くなと、見えてきた家を見て思った。

「大丈夫よ。麻美なら、忘れたまんまにはしないだろうから。

だって、気になる事は知ろうとするし、中途半端は嫌いでしょ?

まぁ、昔は結構いろいろあるけど、今はそうでしょ?」

「うん。」

「じゃぁ、大丈夫。ほら、しっかり気をもって。じゃぁ、また明日ね。」

そういって、麻美は美葵とわかれた。

「ばいばい。」

少し先にある家に向かって歩いていく美葵に大きく手を振る。

ごたごたして整理のつかなかった自分の話を聞いてくれて、少し楽になった。

「・・・その日がきたら・・・。じゃぁ、あの人と猫にまた会えるのかな?」

なんとなくだが、あの人と猫は関わっているような気がした。

そして、また会えるような気もした。

 


それは、もう少し先の事・・・。