星に願いをかけた


  叶わないかもしれなくても、何か形や約束がほしくて、願いをかけた


  綺麗な満月の夜に流れた星に、たった一つ、願いをかけた




 

 星に願いをいいましょう

 


星は願いを叶えてくれない。わかっていても、一度はやってみたくなる。私もそうだった。

「星華、また授業聞かずに窓から外見てたでしょ?」

私の背後にたって、友人の彩乃はあきれたようにいう。私にも、彼女にもこれが日常だったからだ。

「でも、本当、あきもせず、何もない空ばっかり見てるんだよね。」

たまにはいいけど、とつけたして、彼女はどこかへいった。

それを確認して、私はまた、いつものように空を見ていた。


私が空を見るようになったのは、幼稚園の卒業式の日から。その日、私は不思議な少年と出会ったのだ。

少年は、空から落ちてきた。私の目の前に。

もちろん、私は人が落ちてきて怪我してないかと慌てた。

だけど、それだけだったのだ。

彼は、私と仲良くなって、いろいろ話をしてくれて、友達になった。

今思えば明らかに人間離れしていると思うが、あの頃の私には、同じ人だと認識していた。

だから、いつでも会えると思っていた。


だけど、彼は帰ってしまった。

彼は、私の住む場所と違う場所に住んでいるから、これ以上はここにいられないのだといって。


別れた日は、綺麗な満月の夜だった。

それから私は、必死にお願いした。先生が教えてくれた願い星の話を聞いて、実行した。

毎日毎日頑張って、星が流れなくてもお願いした。


もう一度、あわせて下さい、と。




だけど、叶わなかった。




そうやって、八年が過ぎた。




私は半分あきらめていたが、どうしてか空を見上げるのはやめなかった。

もしかしたら、また、彼が落ちてくるのではないかと心のどこかで思っていたからだと思う。


授業が始まるチャイムが鳴っても、私は空を見上げたままだった。

教師達は、何度いってもやめない私を、今ではほっておくようになった。


彩乃は、原因が解決しない限り、直らないわねといっていた。知らなくても、何か感じているのだと思う。

原因、それは、叶わない願いのせい。

どうして、星は願いを叶えてくれなかったのだろうか。

彼は、今何処で何をしているのだろうか。そんなことを考えていた。

 

 

毎日、空を見るだけの学校。友達とつるもうとしない私に、話しかけるのは彩乃だけ。

皆、変わり者だといっているのを知っている。自分でも、変わり者だと思っているから、気にしていない。

昼休み、ぼんやりしながら昼食をとっていると、彩乃がやってきた。

「まったく、よくそんなので食べれるわね。」

よそ見して手元を見ずに、パンを食べている。弁当のときも同じ。

まったく器用ねと毎日彩乃がいうのを聞いている。

「ほら、たまには前向いて食べなさい。」

そういって、彩乃は私の顔を自分の方に向けて、前の席があいているから、そこの席に座って、買ってきたパンを出した。

「で、いつも聞いてみようと思ってたんだけど、空を見ている理由って何?」

彩乃は小学校からの友人だから、少年の事を知らない。

必死に星に願いをかけている私のことは知っているが、肝心なことは知らない。

「答えたくないときには答えなくてもいいけどね・・・。」

何も話してくれないと、寂しい事もあるのよという。

二人で、黙々と昼食を食べて、片付ける頃、私は彩乃には話してもいいなと思い、話し始めた。

「私、幼稚園の卒業式の日に、一人の少年と会ったの。」

それは初耳と、話してくれるのがうれしいのか、聞いてくれる彩乃。

「人と別のものの違いなんて、幼い私にはわからない。

だから、彼が帰らなければいけない日、どうして会えなくなるなんて、わからなかった。

彼は、人ではないもので、人が住まない場所に住んでいるっていってた。」

一息ついて、お茶を飲む。初めて人に話すこともあってか、少し緊張する。

「それで、私は星に願いをかけたら叶うって話を知って、ずっと願った。

彼と別れた満月の夜はいつも以上に長い時間願った。

星が流れようと、雲で隠れていようと、願った。

もう一度、彼に会いたいと、願い続けた。」

そして、今にいたる。結局叶わなかったのだと、苦笑しながらいう。

「それで空なわけ?星は基本的に夜のものよ?昼にあっても見えないから。」

「あ、それは、出会った日、彼は空から落ちてきたから。」

なるほど、と彩乃は納得した。それと同時に、おいていくなんて、嫌な男ね。嫌味を一言。

「私ね、考えて考えて、わかった気がするんだ。」

「何が?」

「彼はね、お星様だったんじゃないかって。」

相変わらず夢見る少女なのねと言葉にはしなかったが、彩乃はうれしそうに、星華を見た。

やっと、話してくれたから、うれしかった。

自分にも、他の子達と同じように一線引いて対応されていた気がしたから。

「だってね、流れ星はどこかに落ちるんだよ。彼も、たまたま私の前に落ちたんだよ。

で、やっと帰れたんだ。

だけど、今度は落ちることがなくて、来られないんだよ。」

中学生にもなって、そんな夢話を信じているのは珍しいが、星華だと、違和感ないかもしれないと彩乃は思った。

もし、他の子だったら、冷たくあきらめなさいといっていそうだと、わかるから。

「星華、彼も会いたいと願いながらもこれないのかもしれないなら、貴方が今でも会いたいと願うのなら、その心のまま、願ってあげたらどう?」

「そうだね・・・。でも、あまり長い間だと、親が心配するしなぁ・・・。」

「いいのよ。親は心配する生き物なんだから。心配させて、いつかお返しをしたらいいのよ。」

理解してくれる彩乃。いてくれて、本当によかったなと思う。

ずっと、心の中だけにおいておいた思い出を話せて、良かったと思う。

一人だけで持っていると、夢のように思えて、いつか消えてしまいそうだったから。

「じゃぁ、今日はお月見でしょ?私も付き合うから、お願いしにいかない?

そうね、ちょうどお月見にもってこいの場所があるから。」

そういって、約束した。やっと、友達なんだと思えた瞬間だった。

 

親に出かけることを告げて、私は待ち合わせの場所に向かった。

「来たな、遅かったじゃない?」

「ごめん・・・。」

「まぁ、いいわ。ほら、月見するんでしょ?」

「うん・・・。」

人気のない夜の公園。この公園は昼間も人気はほとんどない。人口の光もほとんどない。

だからこそ、月や星が綺麗に見える場所。

少し高い場所にあるので、不便だが、見晴らしはいい。

「・・・こんなところがあったんだね・・・。」

私は正直驚いた。あれだけ、人口の光で空が明るかったのに、ここは月と星の光で空が明るく見えるのだ。

「こら、今日は願うだけじゃないんだぞ?」

「え?じゃぁ、何するの?」

あきれたと、彩乃は苦笑する。

「だから、月見でしょ?だから、お月様みて、なごんで、お団子食べるのよ。」

「何それ?」

「だから、毎日願うんじゃなくて、たまには月や星に楽しんでいるところを見せびらかしてやるのよ。

そしたら、彼もうらやましくて落ちてくるんじゃない?」

冗談目かしく言うが、月を見てお団子を食べるのは本気。お団子とお茶を用意しているのだ。

「でも、私なにも用意してないよ?」

「いいのよ。今日は私のおごり。星華が話してくれた日なんだから、私にとって特別な日だから。」

「ありがとう。」

私は彩乃から団子をもらい、一口食べた。今まで食べてきた団子の中で、一番おいしいと思った。

そうやって、時間をつぶした。はじめて、これだけ長い時間、話したと思う。それが新鮮で、楽しかった。

そろそろ帰ろうかと食べた団子の箱を片付けていると、背後で何かが落ちる音がした。それも、鈍い音。

私と彩乃は後ろを見ると、木の下に、腰をさすっている男がいた。そして、目が合ってしまった。

「「「あ・・・」」」

三人とも同じような反応。男はへんなところ見られたなと言いながら、立ち上がった。

その男は、どこか懐かしい感じがした。

「二人でお月見?」

「あなたこそ、落ちてきたけど、木の上で月見でもしていたわけ?」

「うーん、当たらず違わず・・・。

たまたま着たら、月が綺麗でさ、そういえばお月見だなって思って、一人で月見してた。」

「結局お月見じゃない。」

そういって、彩乃は最後の一つの団子を男に渡した。

「え?くれるの?ありがとう。」

向けられた笑顔が、あの少年と重なった。

「・・・お星様・・・。」

「え?」

その言葉に、彩乃は反応した。そして、男を見やる。

「あ、あの。」

私は確かめようと、男に話しかける。

「ん?何?」

「えっと、その、貴方は、えっと・・・。」

言葉につまって言えなくなる。

まったくどうしてこういうところで言えなくなるのかなと思いながら、助けてくれる彩乃。

「貴方、八年前に上から落ちてきて、女の子と出会わなかった?」

「えーっと、あ、あの子?」

「あんた、何者?」

「うーん、夢見る青年かなぁ?君が知っているってことは、あの子の知り合い?」

「わからないの?星華があんたが落ちたみっともない格好を目撃した少女よ!」

と、いうと、目をぱちくりさせて、君がそうなんだとうれしそうに笑顔を向ける。その笑顔は変わらなかった。

「そっかぁ。じゃぁ、二回も間抜けに落ちた姿を見られちゃったわけかぁ。」

 

 

少年は一人になって泣いていた。

大好きなお母さんを亡くして、弟を迎えに行くといって身内から離れて、一人で泣いた。

だから、気付くのが遅かった。バランスを崩して、少年は落ちた。

今まで座っていた木の枝から、まっさかさまに落ちた。

そして、少年は少女とであった。

少年は少女と出会って、笑顔を取り戻した。

 

「つまりは、あんたは二回とも木の上から落ちたわけね。まったく、どじで迷惑な話ね。」

そういわれると、言い返せないなぁといいながら、ペットボトルのお茶を頂く。

星華の好みがどれかわからなかったために、彩乃はいくつか買ってきたのだ。

だから、あまった一本ぐらい、あげられる。

「でもさ、本当に、どうしようもなく悲しくて、会えないってことが辛くて、逃げようとしたんだ。

だけど、あの子に会って、自分を取り戻せたんだ。」

「私も、貴方と会えて、楽しかった。」

「はいはい。何年たっても仲は良いみたいね。」

楽しそうに笑顔を見せる星華を見て、彩乃もうれしかった。

笑顔をこの男が取ると思うと、親の気持ちがわかるかもと思ってしまって、おかしかった。

「でも、貴方は・・・。」

「ストップ、名乗り忘れたけど、貴方はやめて。俺は里人だよ。」

「りひと?」

「里に人で里人。覚えてね、星華さん。」

彩乃がいっていた名前を覚えてくれていたようだ。

「えっと、里人・・・さん・・・。私に人の住まない場所に行くっていってたけど・・・。」

「ああ、あれね。人は住んでいるけど、俺にとってはそこは人が住んでいないのと同じ。

母さんはいないし、星華さんがいないし。

父さんと弟がいても、満たされる事はないから。」

どういう意味と首をかしげると、苦笑しながら答えてくれた。

「実はね、星華のこと、一目ぼれだったんだよ。それも、あのであった日より以前から。」

「ふーん。それで、一番みっともない日に出会ってしまったってわけね。」

「みっともないっていわないでくれる?」

なんだか、二人の会話は楽しいなと思えた。二人にとってはライバルだが、当の本人は気付いていないのだ。

彩乃には大切な友人で、里人には初恋の人で。

今まで散々置いてけぼりにした男にそうやすやすと彩乃は渡すつもりはないらしい。



「あの日もだけど、本当に初めて出会った日、その日も救われたんだよ。」

 


少年は悪くもないのに怒られて、悔しくて、家でした。

そして、少年は少女と出会った。

「どうしたの?なにが悲しいの?」

これあげるから元気出してと飴玉を一つくれた。

少年は少女を抱きしめて、泣いた。怒られてもけんかしても泣かなかった少年が始めて人に涙を見せた。

「どうしたの?どこか痛いの?」

「ううん、痛くないよ・・・。ただね、何でかわかんないんだけど、うれしかったんだ。」

ありがとうと小さな声でいって、少年は少女から飴をもらって、家に帰った。

そして、数ヶ月して、少年と少女は再び出会った。

少女の目の前に少年が落ちてきて、出会った。

そして今、少年だった彼は落ちてきて、少女だった彼女は見つけて出会った。

 


 星に願いをかけました

 何回も何回もかけました

 そしてやっと、星は願いをかなえてくれました

 星に願いをいいましょう

 信じていれば、いつか星は願いをかなえてくれますよ

 貴方が心から願って行動すると

 星はきっかけをくれます

 

 

     あとがき

 

 お誕生日おめでとうございます、由梨sama

 いきなり思いついたもので、しかも誕生日から過ぎてしまって申し訳ないのですが、よければお受け取り下さい。

 実は、これはもともと星に願いをかけたならで、別で話を考えていたものを、由梨samaのサイト風に仕上げてみました。

 ほんわかがイメージなのでそう感じていただけるとうれしいです。

 ちなみに、考えていた過去のものは没になっています(え?)

 

  星に願いをいいましょう

  星は願いを叶えてくれなくても

  きっかけをくれるから、行動しましょう

  人の思いの大きさが、願いを叶えるのだから

 

  李瀬紅姫






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