逸れたまま会うことがないせいか、忘れられているフレン。

リタが仲間に加わったことで、戦闘面での問題がないことも原因かもしれない。

「やぁ、可愛いお嬢ちゃん達。」

軽いノリでとある道の真ん中、それも人気のない木々生い茂る中、おっさんがいた。

「ちょ、ちょっと!無視はないんでないのー?!」

胡散臭いと小さくぼそっと呟いたリタは無視を決め込み、エステルを引っ張って先へと進もうとした。もう勝手にどうぞというカロルはまた叩かれたら痛いのはわかっているから大人しく着いて行こうとして、ジュディは面白そうと思いながらも先へ進もうとした。

そんな四人の行動に必死に引きとめようとする怪しい男。名前をとりあえずレイヴンとか言って、しかも勝手に話し出した。

「それで、何の用よ、おっさん。」

「お・・・おっさん?!ちょ、これでもまだ・・・え、あ、何かわからないけどその足元消して下さい。オネガイシマス。」

とりあえず必死にお願いして降参を訴えるレイヴンに、とりあえず用件だけはきいてあげようということになった。

「おたくら、町行く毎に聞いて回ってるでしょ?」

「何よ。盗み聞きしてたわけ?趣味悪いわね。」

「聞いてる連中がいるっていう話をきいただけ。盗み聞きはしてないからね!」

これ本当よ。嘘ついても何の特にもならないからとまたやられても困ると先に必死に訴えるレイヴン。

「実はちょいとばかし協力してくんない?そしたらさ、おたくらにとっては必要な情報あげられるかもよ〜。」

どうどう?と交渉を持ちかけてくる。

「条件にもよるわ。」

「私が欲しい情報のこと、詳しいんです?」

「黒髪の黒ウサギちゃん。だよね。行方知れずの黒ウサギ皇族のお姫様の子ども。」

「何を協力したらユーリのこと、教えてくれます?」

「商談成立ってことでいいのかな?」

「さっさと言いなさいよ。私の気が変わらないうちに。」

「だから、それやめて!気が小さいのよ。死んじゃう!」

そんな三人のやりとりを、やっぱり第三者のように見ているカロルと楽しそうなジュディ。

「ねぇ。ぼく達いなくてもよくない?」

「そうね。でも、ここにユーリがいないのが残念ね。」

きっと面白いことになると思うわと本当に面白そうに言うから、カロルもろくなことにならない気がして遠い目をする。

とりあえず、一行はレイヴンを一時的に仲間にして、とある魔物討伐に向かった。

何でも、その魔物の角を手に入れなければいけないらしい。その為、人手が欲しいのに、今日と言うチャンスにも関わらず人がそろわなかったのだという。

まぁ、その魔物は一人で倒すにはあまりに大物で、さすがのカロルもレイヴンが哀れに見えたようだ。

そして、ひたすら賑やかに騒いでいたら、お目当ての魔物と遭遇した。

全員武器を構えていざ勝負と飛び出そうとした矢先のことだった。

突如当たり一面を眩しい光が包み、倒れた魔物の地響きが聞こえた。

光が収まった時には、長い白い髪をなびかせた誰かがそこに立っていた。

「デューク・・・。」

「今回だけだ。」

それだけ言って、さっさとその場から立ち去っていった。

「あら、残念。せっかくやる気になったっていうのに。」

ちらりとレイヴンを見て、お手合わせに誘ってみたが、遠慮されてしまった。

「どうしましょう。協力できませんでした。」

「あー、いいよ。巻き込んで時間とらせちゃったしね。」

角とるのだけ手伝ってくれる?と聞けば任せてとカロルとエステルが走っていった。

「それにしても、彼は何者かしらね。」

「何が?」

「何でもないわ。」

ただ、あのデュークとどちらがとはわからないが、逸れ相応の実力を持っていながら協力を求めてきた怪しい男をじっと見つめるジュディ。

角の回収が済み、最近黒髪の黒ウサがお城に来て、兵士と追いかけっこをしているのを見たことがあるという情報を聞き、お城に入るにはこれを使えば入れるよと、一枚のチケットを受け取り、お礼を言って別れた。

それは、国内を自由に出入りできる旅券のようなものだった。確かに、国境を通る際に門番に足止めされる可能性はある。しかも、白ウサギで皇族なんてばれれば、何を企んでるんだ?と騒ぎになりかねない。

この券をタダでしかも城への入城を認められるほどのものを持っているなんて何者?とジュディは思ったが、誰も気にしていないようだったのでそのままにしておくことにした。悪意を感じなかったから、たとえ何か裏があっても、どうにかすればいいだけ、と。

その後、彼等が立ち去る背をこっそり見ている影があった。

「盗み見なんて趣味悪いね。」

「・・・平気で嘘ついて連中の中に紛れるような奴に言われたくはない。」

「言うようになったね、デューク。」

「・・・ふん。」

「私としては、ユーがビジネスに貢献してくれてうれしいデス。」

渡された、先程の角を受け取る。

「イエガー。そんなもの、何に使うわけ?」

「ノンノン、ビジネスにはシークレットもたくさんありマース。」

「別にいいけどさ。」

ひょいっと背筋を伸ばす。

「とりあえず帰るわ。あまり帰らないと『お姫様』が怒るからね。」

「そうデスね。私も帰ることにしましょう。では・・・シーユーミスターデューク、ミスターシュヴァーン」

「あと、シュヴァーンじゃなくてレイヴン。間違えないでよ。」

振り返らず手をひらひらと後ろにいる二人に向けてそのまま国への道を歩き出した。

 

 

 

もう、どこからコメントすべきかわからない。

「なぁ、エステル。」

「何です?」

「もしかして、レイヴンのこと嫌いなのか?」

「そんなことありませんよ。」

けれど、この話のままいけば、間違いなくレイヴンは敵側の人間じゃないだろうか。いや、人間というかウサギばっかりだから敵側のウサギと呼ぶべきか。

何でもいいが、このまま行くと明らかにかつて自分たちが戦った面々と衝突する展開になる。

「・・・裏切ったこと、怒ってるのか?」

「そんなことありません。」

綺麗な笑顔がそこにあった。けれど、どうしても笑ってるように見えなかった。

「俺らの中でレイヴンだけ、敵なのか?」

「そんなことありません。」

その答えの真意は何だろう。もしかして、最初いたのに突然逸れて消えたフレンも入ってるとか言わないだろうな。

「それで、今回はどうでした?」

「まだ話がどうなるかわからないけど、今後楽しみ、って奴だな。」

本当、いろんな意味で今後どうなっていくのかわかったものじゃない。あれが自分じゃないって開き直ればいいだけだ。きっと。

「わぁ、ありがとうございます。それではがんばって次書きます!」

待ってて下さいねと今日もまた元気にお姫様は去っていった。

「もしかして、完結するまで何度も感想求められるのか?」

そして、恥さらしのようなあの耳にお姫様って・・・エステルにとっての自分はいったい何なんだろうかと真剣に悩む羽目になるユーリだった