昔々のお話です。世界では様々な種族が暮らし、それぞれ国を建て、平等な関係を築いていました。

けれど、王族と平民との差が激しい国もあり、平民と国との争いが絶えません。

国同士の領土の取り合いによる争いも同じように活発化していました。

そしてここ、白ウサギ達が権力を持つ国と隣の黒ウサギ達が権力を持つ国とで争いが起きました。

切欠は一人の黒ウサギから始まりました。

黒ウサギの王族の姫君がある日誘拐され、行方知れずになりました。もちろん、双方国際問題になりかねないということで探しましたが結局足取りがつかめませんでした。

それから月日が流れ、そのお姫様に子どもがいたという噂が流れ始めました。

もちろん、黒ウサギ達にとっては大事なお姫様の忘れ形見です。探しましたが、簡単には見つかりません。

そして、見つけたという報告が国に入りましたが、その子どもは戻らないと告げて使者を送り返してしまいました。

何せ、今まで知らなかったことですし、堅苦しいことが嫌いで自由に走り回ることが好きだったからです。閉じ込められるなんてごめんです。

そして、周囲も連れて行くことを反対したのです。それだけ、そこの者達にとっては大事な家族のようなものだったのでした。

けれど、黒ウサギ達は諦めません。そしてとうとう誘拐するという暴挙にでたのでした。

それを知った白ウサギの皇子の一人エステルは立ち上がりました。彼にとって青年は大切な仲間であり、親友だったのです。

何より、何処の誰だかわからない奴等に連れて行かれてよくわからん連中との政略結婚なんてことになったら大変です。彼に毎日好きだと伝えて早幾年月・・・横取りなんて許しません。

「待っていて下さいね、ユーリ!」

お供にさらわれたお姫様、ユーリのお友達で騎士団長のフレンと仕事仲間のカロルとジュディスをつれて黒ウサギの城へと乗り込む旅が始まったのでした。

 

 

 

「どうです?」

すごくきらきらした期待の目で俺を見つめるエステルに、少しばかり引き気味になりながら、必死に言葉を探す。

「なぁ、エステル。」

物語は書く人の自由だ。だからこそ面白いとは思う。それに、エステルが旅のことも形にしたいと言っていたことを覚えている。

けれど、これはどういうことだろうか。

「何です?」

「何で、俺がさらわれてるんだ?」

とりあえず、いろいろ突っ込みたいところがあるが、遠まわしにしながら確信へ近づこうと聞いてみた。

「私はユーリにたくさん助けてもらいました。生きることは選択することだということも知りました。だから、今度は私自身がきちんと選択してユーリを助けたいと思いました。」

私もユーリの助けになりたいんです!と力強く言われた。

けれど、それでどうして俺がどこかのお姫様みたいに明らかにあの旅におけるボスクラス達にさらわれなければいけないのかわからない。

配役として以前やった劇のようにリタがお姫様でも良かったのではないだろうか。

というか、俺は姫というよりも魔王の方があってる。うん、間違いない。自分に言い聞かせて納得させてみる。

「それで、どうでした?」

「あー・・・話としては面白いんじゃねーか。俺はあんまり本読まないけど。」

「そうです?では続きをこれから書いてきます。そしたら、また最初に読んでくださいね。」

うれしそうにそういって、かつてのとらわれのお姫様は俺の側から走り去っていった。

もう、どうでもいい。忘れよう。そう思った。けれど、仕事が忙しくなって忘れた頃、再びお姫様の襲撃にあって凹む羽目になることはまだユーリは知らなかった。