何がどこでどう間違ってしまったのか。

俺の名前はユーリ・ローウェル。両親はすでに他界していない。けれど、後継人や近所の奴等がいい奴等ばっかりで、不便なこともなく、今まで生きてきた。

確かに、俺は本来人が見えないものが見える。だから、別にそれに驚く事は早々ない。

何故なら、一々驚いていたらきりがないからだ。それだけ、この人の世の中には変なものが多い。もし全員見えたら驚くだろうな、と他人事のように思う程、そこらじゅういた。

だが、別に俺からどうこうするわけでもなく、向こうも見えてないと思っているからか、何もしてこない。

中には人に化けて普通に生活して、人と関わってる奴等もいるから、そっとしておくことにした。

別に、弱っている犬を拾って、それが実は犬じゃありませんでしたといわれても、別に驚きはしない。神狼でそこそこ有名な奴だと後で知ったし、成り行きでそのまま契約主にもなって、今も一緒に二人で暮らしている。

たまに幼馴染のフレンという奴と神狼のラピードが喧嘩してるのを見ても、またやってるのかとか、犬相手に何やってんだよ程度にしか思ってなかった。

だから、こいつと同じ学校へ行くということになっても、別になるようになれとしか思っていなかった。

なのにどうだ。ついた先は見間違いでなければ、人の人数以上に『変な奴等』と俺は認識しているのだが、それが多かった。

ちらりと、こいつは大丈夫かとフレンの方を見るが普通にしている。きっと、奴等も人に見えるように普通にやってるから気にしちゃ駄目なんだとその時は思うことにした。

それなのに、この学園では基本はゼミという少人数での授業によって全てが進められるカリキュラムで、フレンと離れることになった。フレンもかなり寂しそうだったが、こればっかりは仕方ないとあの時は思った。

今でこそ、慣れると言えば慣れるのだが、あの時どうしてそのままお断りしなかったのだろうかと思う。

あの日、はじめてフレンと別れて指定されたクラスの先へと足を運んだ。

すると、そこにいたのは手乗りサイズの鯨のような魔物がふよふよ浮いていて、それに話しかける女がいた。しかも、目のやり場に困るような服を着ていた。そのスタイルのよさから、確かに似合ってはいるが、男に対してはある意味害のような気もした。まぁ、それで変な気を起こすような奴がいれば、彼女が笑顔で仕留めるのを知ってからは気にしないようにしているが。

そして、次に目に入ったのはぶつぶつと何かを言いながら本と機械と睨めっこしている少女がいたが、その頭には黒い猫のような三角の耳があるし尻尾が二本ある。しかも、動いている。そして、大きな鞄を持った少年が椅子の上で少女とは別の意味でぶつぶつ何かいいながら魘されているらしく、居眠りしていた。

本当、何なんだろうな、このクラス。あれは見なかったことにしたらいいんだろうか。扉を開けて固まった俺ににっこり笑いかける鯨連れてる女。

「貴方もこのクラスの人かしら?」

「え、ああ。たぶん。シュヴァーン教授のクラス、だよな?」

教室間違いでしたでは笑えない。その為の確認だ。というか、違っていて欲しかったかもしれない。

「ええ。はじめまして。私ジュディス。で、この子はバウルよ。」

あーやっぱりあれ、見えていいんだ。でもって、お友達だったんだ。手乗りサイズのそれがジュディスの肩に乗った。

ちょっと可愛いかもしれない。

「あ、俺はユーリ。えっと、言いにくいからジュディでいいか?」

「勿論。」

そこで、ちらりと他の二人を見る。それに彼女はにっこりと相変わらず笑みを浮かべて二人の紹介もしてくれた。

「彼女はリタ。向こうのあの子はカロルよ。」

そう言って、彼女は二人に声をかけた。すると嫌そうに俺の方を振り向いた少女と目があい、どうしたものかと考える。そして、魘されていた少年は起きたら速攻元気に俺に自己紹介を始めた。何か、いろんな意味で変な奴等だなと思う。

もしかしてこのクラスこれだけか?と思った時、後ろから声をかけられた。

「はいはーい。中に入ってね。」

振り返ると、そこには胡散臭いおっさんが立っていた。

思い切り嫌そうな顔をしたつもりはないが、顔に出たらしい。何かおっさんが凹んだ。もしかして、この人も生徒なのか。それとも、このおっさんが担当なのか。もしくは、見た目老けているが実際はそこまで歳をとっていないとか・・・だが、それは何か少し嫌だ。

おっさんが急に出たせいで、後ろにいた女の子に気付くのが遅れた。

「教授、入らないんです?」

「あ、そうね。とりあえず教室に入ってはじめちゃおう。」

とりあえず時間は時間だ。おっさんが扉を閉め、ここにいるメンバーを見てはじめようかと言うところからして、やはりこのおっさんが担当のようだ。

「とりあえず、俺のことはレイヴンって呼んでね。好きなのは女の子。趣味は・・・秘密ってことで。今日から卒業まで皆の担当教員だからよろしくね。で、彼女はエステリーゼ。いろいろ特殊なことになってるけど、仲良くしてあげてね。」

「エステリーゼと言います。よろしくお願いします。」

急に勝手に自己紹介をはじめたおっさんこと、レイヴンという男。間違っていてほしいが、やはりこの男がこれからの俺の担当教授のようだ。

「で、皆からも順番に自己紹介お願いしてもいい?やっぱり、お互い知らないと仲良くできないもんね。」

すごくいい笑顔で言うおっさんを胡散臭く眺めながら、右から席順に名乗ることになった自己紹介。

「私はジュディス。この子はバウル。趣味はこの子と旅をすることと格闘技かしら。」

「リタ・モルディオ。」

「僕はカロル。えっと、よろしくね。」

そして、全員が俺の方を向いた。何か居心地悪い。

「ユーリ・ローウェル。」

さっきも自己紹介をしたからもういいだろう。このおっさんとお花みたいにふわふわした少女にはしてないが問題もないだろう。

「えー、ちょっとちょっと〜。もうちょっと何かないのー?」

親睦深めようよーと言うこのおっさんと何を深めろというのか。むしろ近づきたくない。

「そもそも、クラス発表で配られた書類では、担当がシュヴァーン教授ってなってたのに、あんた何で名前違うんだ?」

「ん?青年俺に興味持ってくれたの?わーうれしー。」

「うざい。」

「バカっぽい。」

「何か・・・この先不安になるね。」

「元気なおじ様ね。」

四人から散々な言われ様だ。まったくもって、威厳のかけらもない男だ。

「ちょ、何それ。おっさんに対する好感度低い?」

「うさんくさいしな。」

「ちょっ、それ酷いよ青年!」

本当、担当は変なおっさんだ。こんなのと卒業まで一緒とか、何か卒業できる気がしない。

「おっさんその名前あまり好きじゃないのね。けど、書類上ではしょうがなくね。偽装したらいろいろ問題あるでしょ?周囲の奴等にはそっちで認識されててもいいんだけど、皆は俺様のことレイヴンって呼んでね。」

「それはどうでもいい。」

「え、どうでもいいって、これ、重要よ?」

本当に、名前が嫌でかえるだけなら実際問題どうでもいいため、無視することにした。そうしなければ、話が進みそうにない。

「ここは、本当にこれだけなのか?」

「ん?あー、これだけよー。俺様、本当は担当持つ気なかったんだけど、このメンバーならって引き受けたの。」

と、エステリーゼがどこぞのお嬢様で丁重に扱うように上に言われただの、リタが実は天才で人とのコミュニケーション的に問題あるから行き先なくてここになっただの、どこからも追い出された少年だの、実は学校サイズにまで大きくなるバウルとその姫巫女様だの、何か一癖も二癖もある面々を揃えたらこうなったらしい。

つまり、行き先のない連中の集まりのようなものではないか。

本気でやめたくなった。

何故そこに俺が入ってるのかが疑問だ。

「じゃあ、何でそれに俺が入ってるんだよ。」

「え、そりゃもちろん。あー今はナイショじゃ駄目?」

可愛い子ぶるおっさんが気持ち悪い。これがふりでなく本気でやっているのであれば、ぶっ飛ばしてた。これが担当教師でなければ間違いなくぶっ飛ばしてた。大事なことだ。しょっぱなから問題起こして退学なんてことになるわけにはいかないからだ。

「ま、何でもいい。」

実際どうでも良かった。元から、学校で真面目に勉強ということ自体、俺の本意ではない。

後継人名乗ってくれたハンクス爺さんや近所の皆にいつまでも世話になるわけにいかず、適当にバイトするなり働くなりするつもりだったのだが、行けと送り出してくれたのだ。

すごく今すぐ辞めたい気がするが、彼等の思いを考えると少しばかり我慢だと言い聞かせる。

「本当、青年って変わってるわね。」

そんな時、俺のことをじっと見ていたレイヴンがポツリと零す。

「何が?」

「だって、ただの『人間』なら、そこのバウルだけで驚くだろうに。」

「・・・。」

「それとも何?何かあるわけ?」

興味津々に聞かれ、うざいと思いつつも、同じように不思議に思っていたらしい他の四人から注目の的にされた。

はっきりいってそんなに見られると居心地が悪い。

はぁっと溜め息をつく。

確かに、彼等は隠そうとしていない。だから、本来見えない人間にとってもリタの尻尾やバウルは見えるだろう。明らかに人ではないそれが。

「別に、驚いてるぜ。これでもな。」

「あれま。青年ってば反応薄いのね。」

「慣れてるからな。」

「ん?」

少し考えるそぶりをするレイヴンに、よく考えれば、この言い方でははじめから見えてますと言っているようにとられる可能性がある。だが、向こうも隠す気がないのなら、別にいいかと思ったのだ。

明らかに人ではない連中ばかりだから、見えるようにしている時点で。

「あ、もしかして、青年ってば見える『人』なわけ?」

「・・・。」

「だんまりってことは肯定ってことよね?」

好きに思っておいてくれ。そう思ってこの話は終わりと言わんばかりに無視した。

すると、何故か目があった、バウルという手乗りサイズの生き物の飼い主である女、ジュディ。

本当、目のやり場に困る。彼女の種族はそういう格好が普通なのだろうか。

「皆バウルを見ると逃げちゃうから・・・でも、面白い人ね。この子もユーリによろしくって言ってるわ。」

この子、とバウルを見て言う。何か鳴き声が聞こえるが、何を言っているのかさっぱりわからない。

だが、ラピードとのことを思い出せば、一緒にいるうちにわかるようになるかもしれないなと、すでにこのクラスでこのメンバーとやっていく気になっている自分に苦笑する。

「それはご丁寧にどうも。」

もはや棒読みに近い返答だが、あまり気にした様子はなかった。本当に、おかしな連中だ。

「見える人間ね。久々に会ったわ。」

何か今まで感情の薄かった猫耳二又の少女が興味を持った。何か危険な気がするのは何故だろう。

「ユーリって人だったんだね。僕、人と話するのはじめてかも。」

こっちはこっちで何かわからんが喜んでる。

「よろしくお願いします、ユーリ。ここにきて初めて知り合った人です。」

あー、まとめると、こいつら全員人でないってこと決定ってことだろうか。カロルとエステリーゼあたりはもしかしたら人かもしれないと思ったが、どうやら反応からみて違うようだ。

本当にやめようかなと、少しだけ思った。

半ばフレンに引っ張られるように来てしまったところがあるわけだが、これならもっと下見しておくべきだったかもしれない。

「で、おっさんはどっちなんだよ。」

「ん?何が?って、おっさんって何?」

「俺に人間かどうかってことわざわざ言うからさ。おっさんはどっちなんだって聞いてるんだ。」

「ま、おっさんでもいいけどね。おっさんのこと知りたい?いいよ。でも、ここからは有料に・・・。」

ごすっと頭を殴った。一応手加減はしておいた。

「酷い・・・おっさんに対してだけ、何か扱い酷くない?」

ねぇねぇと煩い男をもう一度叩いて、もう一度部屋の中にいるこれから卒業まで共にするであろう面々の顔を見た。

無視したことで、諦めたのか、全員の顔を見てにっこりレイヴンは言った。

「とりあえず、基本的に活動はこの部屋ね。とくに青年はこの部屋にいた方が安全よ。」

「どういう意味だ?」

「だから、ナイショ・・・あ、痛い。やめて。ごめんなさい。」

うざいので頭の後ろで無造作に縛られている髪の束をつかんで引っ張った。

「えっと、あのちっちゃいの見てわかると思うけど、ここは人じゃないのがたっくさんいるわけ。だいたい教師生徒合わせて八割ぐらいはそうよ。」

「へぇー思ってたより多いな。」

「まぁ、創立者が親友の遺言だからといって・・・まぁ、引きこもっちゃってるんだけど、学校だけ作ったわけよ。」

一応、社会を学ぶ為の場なわけよ。コミュニケーションは大事!何かそんなことを言ってるが、このおっさんにもコミュニケーション能力をもう一度学びなおす必要があると思う。

何にしても、とりあえずそろそろ離れて欲しい。

「だから、種族ごといろいろあるけど魔物ってことで区切って話進めるけど、卒業必須が人との契約になるわけ。なるんだけど・・・契約しちゃうといろいろ不便なこともあるわけ。だから、大概契約しないで居座ってる奴もたくさんいるんだけどね。」

そして、この部屋の中には人間はユーリ君だけですと、何か笑顔で言われた。流れからして何となくそんな気はしてた。

明らかに胡散臭いからな、このおっさん。同じ人ではあまりいたくない気がするな、うん。

「ジュディスちゃんは人ではあるけど、バウル・・・ああいう特殊な魔物を使役する一族でね。全員が使役するわけじゃなくて、巫女って呼ばれる人達だけなわけ。で、契約したら異能手に入れちゃうから、人という括りではなくなっちゃうのね。」

だから、今この部屋において人であるのはユーリだけなのだと言う。

「別にそんなことはどうでもいいが。」

「え、大事なことなんだけど・・・。」

「それで何故俺がここにいた方が安全なんだよ。」

どこにいても対して変わらない気がする。

「青年、すでに契約済み、よね?」

「ん?」

「おっさん達みたいなのは、人間がすでに誰かと契約を済ませているかどうかがわかるわけ。やっぱり、契約するならご主人様独り占め〜みたいにしたい奴もいっぱいいるからね。構って〜って感じで。」

「へぇ。何か目印見えるのか?」

「アンタ、本当に何も知らないのね。」

黙っていた少女に馬鹿にされた。少女に見えても、もしかしたら俺なんかよりも年上である可能性はあるが。

「そうね。少なくとも、契約済みならここのことも契約の意味も、ちゃんと知っているものだと思っていたけれど。」

「ユーリは、知らないで契約したの?」

「契約相手はどなたなんです?」

とりあえず、説明の為だったのか、大人しかった四人が急に話しだす。何か興味津々といった感じで、目が輝いている。

人外で実年齢いくつかわからない連中だが、見た目通りまだ子どもなのかもしれない。

「知らないぜ。そもそも、契約って言っても、たいしたことしてないし。アイツはそういうことわざわざ話す奴でもないしな。」

そう言えば、全員が俺の契約相手に興味を示したようだ。何でも、彼等は未契約で、契約について興味があるらしい。

まぁ、卒業必須なら、興味を持たないわけがないのだろうけれど、何か変な感じだ。

「何だよ。契約してるかどうかわかるなら、相手もわかるんじゃねーの?」

「まぁ、階級ってものがあるわけよ。」

「何だそれ。」

「下級の奴なら、それ以上の奴等は知ることができる。だが、それ以上の奴等は互いに知ることができないようにしている。」

「名前は一種の束縛でもある。クラスが上になる程、対立関係にある種族の場合、『人』の方に危害を加えることもある。これは、守る為の措置でもある、です。」

つまり、下級、中級、上級と三つのクラスに能力でわけられる。下級は中級と上級の魔物に使役される存在でもある為、誰と契約なのかわかるのだ。だが、中級と上級は使役関係は相手の力を認めたり負けたりした時に発生し、上下関係がいろいろ複雑なところがあり、通常はどの人間に誰がとはわからないようにできるのだ。とくに、対立関係にある種族同士はお互い相容れないところがあり、その攻撃の矛先が契約主へと向くことがあり、守る為に隠すようにしているのだと言う。というか、それを最低限するのも含めて上級クラスの連中は契約の儀式を行なうのだ。

相手への契約に対する礼儀らしい。

「一種のルールみたいなものよ。干渉しませんっ干渉するなってね。手を出したら黙っちゃないぜ、みたいなね。」

「なら、別にいいじゃねーか。」

「問題があるのよ、青年。」

これ、関わることだから重要よと、人差し指をびしっと立てて真剣に言うレイヴンに、知らないままでいたら何かと面倒そうなので聞いておくことにした。

「人は複数の契約を交わすことができるわけ。魔物もそうだけど、一に対して一じゃなく、一に対して複数っていうことが可能なわけよ。」

「へー。」

「契約済みだからといって除外されるわけでなく、むしろ契約済みだからこそ、こちらのことを知っているとして狙われるわけ。」

卒業かかってる連中なんて見境ない場合あるから危険なのよーと言われ、せっかく入学させてくれたハンクス爺さん達には悪いが、やっぱり今すぐやめるべきかと考える。

「で、このクラスでは、全員契約相手自由にして誰でもいいけど、基本は青年だから。というか、人と仲良くするため、クラス分けて均等に人を分けて仲良くしましょうってことになってるんだけどね。全体の二割しかいないし。で、青年も認めてくれるならお友達にしてあげてね。」

「・・・はぁ?」

「だって、皆いろいろ曲者ぞろいだし?天才魔導少女とか特に。」

「何で俺が。」

「何よ。そもそも、私はっ・・・っ。」

「素敵です。最初から人と知り合いになれて、お友達になれるなんて。」

「天才魔導少女は、彼以外じゃ卒業できなくなるわよー。だって、問題児だし?自覚はあるでしょ?」

「うっさい、おっさん!」

「あら、私は結構彼のこと気に入ってるわよ。面白そうだもの。」

「僕も、・・・けど、まずはユーリと仲良くなりたい。」

「あら、人気者ね。おっさん焼けちゃう。」

「気色悪いからやめろ、おっさん。」

げんなりとする。何か、やめること出来ないような状況になっているのは気のせいだろうか。

「あ、でも、青年が本当に契約してもいいって思ったら、だからね。無理強いは駄目だもの。契約は大事な儀式!だから、おっさんも頑張ろうと思います。」

最後の言葉に、俺は聞き間違いかもしれない余計なことを抜かした男の顔を思い切り見た。それはどういう意味ですか。

「教員もね、気に入った子いたら契約していいってことになってるわけ。」

何でも、何年も学園に居座る生徒は卒業抜きで就職という形になることもあるらしい。それで、契約相手見つかるまで、外に出ることができないらしい。

ある意味、契約は人が魔物の首輪つけて悪さしちゃダメだと躾けて外のやり取りを学ばせることのため、らしい。

確かに、好き勝手されたら困ることが多いだろうから、知ってる奴が人の世界とやらを教える必要があるのはわかる気がするが。

「おっさん青年のこと気に入ったから、覚悟してね。」

にっこり笑顔で言われた。最悪だ。

あれから一年がすでに経った。学年が一つあがり、毎日賑やかに彼等と過ごしている。

何だかんだと一年。結構面白い連中で、楽しんでいる自分に驚きだ。そして、実はフレンも人ではないということを聞いて、一発殴った。黙っていたことに対してだ。

これで、やっとわかった。ラピードと仲が悪い理由。同じイヌ科同士、縄張り争い的なもので仲良くできなかったのだろう。実際のところ、彼等はユーリを巡って睨み合っていたのだが、本人は知らない。