会いたくて ただ、それだけを願い、時の流れの中を行き続けてきた 会いたくて、会いたくて ただ、貴方に会いたくて 今度はずっと一緒にいられたらいいなと夢を見ながら 今度こそ、離れ離れにされることはないようにと願いながら
そんな夢を見た。 知らない女が、自分に会いたいと訴えてくるのだ。 会いたい。ただその女は自分は知らない誰かに会いたいという。 かつて、愛し合い、引き離された大切な人に会いたいと。
そんな事を夢で訴えられても、どうすればいいというのだ。
夢路案内人
昨夜の夢は忘れよう。きっと、ただの夢だと言い聞かせ、工藤新一はいつものように学校へと向かう。 今日は幼馴染は、空手の大会に出るから迎えに来られないといっていたし、それで休もうかと思ったりもしたが、生憎今の自分には出席日数という危ない存在が付きまとっているので、大人しく行く事にした。 何より、不健康な生活をして家に篭っていると、お隣の小さな主治医に怒られてしまう。 それだけはごめんだ。 それにしても、忘れようと思ってもはっきりと覚えている夢。 すでに何度もあったこと。なんだか、悪い予感がする。 何より、嫌な予感がするのだ。自分の人生に大いに関わるような。 取り憑かれて殺されるのかなぁと少々のん気ながらも物騒な事を考えている新一。 そんな事を口に出せばきっとお隣の主治医に先に殺されてしまうような気がするが・・・。 今は気にせず、そのうちわかることだと、忘れたフリをしておく事にする。 だが、彼の予感は当たっていた。 人生最大の不本意な事に巻き込まれてしまうのだから。 夢の事はしょうがない。それによって、まさかあんなものが家に居つくなんて、思いもしなかったのだから。
今日も、昼休みごろに鳴る携帯の音。 授業の事を考えてか、珍しくメールだった。 いったい何の用だろうかと中身を見ると、それはいつもと違った物だった。 「・・・どういうことだ?」 メールの内容はとっても簡単だった。だが、問題は最後に添えられた差出人の名前だ。 「何考えてやがるんだ?」 とうとう、馬鹿になったのかと首をかしげる。 だが、その時に警部からの呼び出しがあったので、考えるのは後だと放っておく事にした。
今回の事件は至って簡単なトリックで、面白みも何もないようなものだった。 だから、余計に昼間のあのメールを思い出させた。 謎の塊とも言える、世間を騒がせる大怪盗、怪盗KIDからのメールであった。 内容はシンプルに、今夜10時に○×ホテルの屋上でお待ちしています。怪盗KIDと書かれたもの。 本物か偽物かわからないが、このメールアドレスを知っているものは数が少なく、限定されている。 つまり、偽物ならば、何者かに知られた可能性があると思ってもいい。 それなら、一早く対処しなければ、自分は探偵としていることでいろいろと厄介な事を持っているということと、お隣の主治医を危険にさらす事になるので、気をつける必要があるのだ。 とりあえず、呼び出されたのなら行ってやると、張り切って出かける事にした新一。 そこで、本物と会うとは思ってもいなかったが。 まぁ、何でこのアドレス知ってるんだってことの方が新一にとっては大きかった。突っ込むところはそこではなく、他にあるというのに・・・。
さて。場所は変わって呼び出された屋上に新一はいた。 すると、すでに待ち構えていたかのように、奴はすんなりと現れた。 やっぱり、登場の仕方からして、むかつく。やっぱり気に喰わない奴だと、相手を睨む。 だが、かなりへらっとした奴がそこにいた。偽者じゃないのかと思うほど。 すると、突然腕を伸ばして抱きついてきた。 「もう、探したんだよ。美笠さん〜。」 なにやらわけのわからん事を言っている。とうとう壊れたか?馬鹿になったのか?そうなのか?! とりあえず、誤解っぽいのではがして話を聞く事にした。 「あ、ごめんごめん。ついうれしくって。」 あははっと笑っている男。何だか気味が悪い。 「あ、僕はね、日笠。美笠さんの婚約者。ちなみに、これは身体借りてるだけ。頼んでカードは作ってもらったけど、今は借りてるんだ。」 「・・・。」 「あ、ちなみに、俺が会いたい美笠さんは君の背後にいるからね。」 つい、一緒に抱きついてしまったよと笑っている男。 整理すると、どうやら怪盗キッドに寄生(ちょっと違うけど)した日笠と名乗る男は、新一の背後にいる美笠(たぶん、夢に出てきた少女)に会うために呼び出した。 けど、カードは怪盗お手製のもの。 「なぁ。」 「何?」 「そんんだけ陽気なのは別にいいが、なんでその衣装まで?」 そうなのだ。いくら正体を隠す事があるといっても、簡単に別人に身体を貸したあげく、其の目立つ格好はどういうことだと聞きたい。 「これ?目印にちょうどいいんじゃないかって、彼が言うから。」 殴っていいですか? それよりも、蹴り飛ばして帰ってもいいですか? 「とにかく、やっと会えてよかったよ。」 すっと差し出される手。とりあえず、新一もそれに答える。 すると、二人の身体からすうっと上に現れる人影。 「・・・。」 「ありがとな。」 少女はぺこりと頭を下げて、仲良く天へと上っていった。 きっと、互いが好きでありながら死んだあとに見つからなくて探していたのだろう。 そこでふと、自分を抱きしめる腕に気付いた。 「キッド?」 そう。あの男が消えたとなると、これは間違いなくキッド本人だ。 「まったく。何無防備にあんな男に抱きつかれているのですか?!」 何故か怒ってる。あんだけへらへらと笑っていたのに、怒ってる。 まぁ、中身が別人だが、いったい何が彼を怒らせているのかまったくわかっていない新一。 「とにかく、離せ。」 「嫌です。」 一向に緩むことのない腕の力。抵抗しても無駄なのは今までの経験から実証済み。 相変わらずわけのわからん奴だと、現実逃避したくなる新一だが、今は好きなようにさせておく。 すると、それで気をよくしたのか、少しご機嫌になっている。 まったく、何なんだというんだ。わけがわからない。 さすがに、力が強すぎて離してもらえるように頼んだが。 目の前にいた怪盗は、さっきとはうってかわり、かなりご機嫌な顔をしていた。やっぱり、謎。 「とにかく、帰りましょう。」 と、突然がばっと抱き上げられて、何処に用意しているのだ思う、ハンググライダーを広げた。 「さて。帰りましょうね。」 何処にだと言えば、新一の家。 どうやら、家に来るつもりらしい。 「すぐ帰れ。」 もう、暴れないでよと言いながら、なんだかにやけている妖しい男。 このときすでに、家に居座って余計な奴が来ないようにしようと、彼は計画実行すると決意した。た。 「今日から、名探偵の家で厄介になるから。」 「はぁ?」 わけがわからん。何考えてやがるんだこの怪盗は! 「馬鹿か、お前。大人しく家に帰れ!」 「だって。いいじゃない、別に。それに、名探偵は危ない。あんな男に・・・。」 「あれはお前だろうが!」 「俺であって俺じゃないの。まったく、むかつくよね。」 「何がむかつくだ。俺はお前がむかつく対象だ。」 「やっだーひっどーい。」 やっぱり、あのヘラヘラ男と似ている。詐欺だ。どこが怪盗紳士だ。これはどこぞの馬鹿と一緒だ。 そこで、気付いた。本当なら遅い気もするが・・・。 「お前、まさか快斗か?!」 「正解〜。やっとわかったんだ〜。でも、新一だからわかるんだよね。」 「というか、何ばらしてやがるんだ!てめぇ。ふざけてんのか?!」 「のんのん。ふざけてなんかないよ。新一にならいいと思ったの。それに、同居するなら、自己紹介もしっかりしておくべきでしょ。」 うんうんと何やらにこにこしている男。本気で居座るつもりだ。 快斗も毎日好きだとか言いながら家に泊まっても言いかといったり、同居してもいいとか言ってくる。 「好きな人の側にはいたいし、やっぱり新一が心配だし。」 食生活も睡眠もめちゃくちゃだから、しっかり普通の生活になるように頑張るといってる。 「というか、降ろせ。」 家についても相変わらず抱きかかえられたまま。 「やだ。もっとくっついてる。」 「はぁ?鬱陶しいんだよ。は〜な〜せぇぇ〜〜〜〜。」 強引なのは出会ってからわかっているが、本気で居座るつもりだ。なんとしてでも追い出さねば。 何だか身の危険を感じる。(その通り。) 「覚悟しててね。絶対新一に俺の事が好きって言わせてみせるから!」 「誰が言うかー!」 「またまた〜。照れちゃってぇ。」 「誰が照れるか。このバカイト。」 「やだ〜。バが余計だよ、新一。」 ちゅっとキスされた。それも口にだ。よくできるなと感心してしまうが、それどころではない。 それに、この男から二度目だ。 「てめぇ。ファーストキスだけじゃあきたらず・・・。」 「え?あの時のファーストキス?やったぁ。」 「何がやったぁだ、このバカイト。」 蹴りを入れようにもさすがは怪盗というか、避けられる。 「避けんな!」 「だって、新一の本気の蹴りは本当に痛いからね。遠慮したい。」 そんなお隣の声を聞いて、とうとう強硬手段をとったのねと、只今実験中の少女が溜息一つ。 いつまでも馬鹿をやっている二人。 「ま、生活習慣は少しよくなるかもしれないからいいけれど。」 実は、嘆く怪盗の相手をさせられていた少女だが、しっかりと見返りを頂いている。 それに、新一も何だかんだいいながら完全に拒んでいないので、好きは別としてお隣に居座っても問題はなさそうだと考える。 「相手は彼だから、簡単にはいかないだろうけれどね・・・。」
天に昇る前に、一度振り返って見た二人の光景 「仲良くできるといいね。」 「うん。」
夢で訴えれば、導いてくれる案内人 器なき者達の間で知られる噂 そんな噂が出回っているなんて、彼等は知らない だから、また巻き込まれる事になる
だけど、それもちょっとした人助け 面倒だといいながら手助けする新一を、しっかりとサポートする快斗の姿が見られるのはもうすぐ
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