「おや?」
「げっ…!」
とある路地裏の暗闇で同時に発した言葉は疑問符と驚愕だった。
片方は内心でラッキーvと驚喜しながら涼しい表情を浮かべている。
もう片方は内心で最悪だ…と舌打ちをしながらポーカーフェイスを貼り付けた。
驚喜しているのは世間を騒がし魅了している、言わずとも知れた怪盗KID。
舌打ちをしたのは「迷宮なしの名探偵」として全国の人を虜にしている、名探偵工藤新一。
お互い、なぜこんな所にいるのかは気にならない。
怪盗は名探偵が潰した組織の残党が未だに彼を狙っていることを知っている。
探偵も怪盗がどこかの組織に狙われていることも、パンドラなる宝石を探していることを知っていた。
だからそんなことはどうでもよくて。
―――問題は。
「テメェどっか行けよなっ!俺が見つかっちまうじゃねぇかよ!」
「嫌ですよ。名探偵こそどこかへ行っていただけませんか?警察と奴らに見つかってしまうではありませんか」
ヒソヒソと声を潜めて言い合う彼らは、ハタから見れば怪しい人間と勘違いされても仕方がない。
だがこの場所にいるのは彼ら2人だけだった。
どこからか街の喧噪が聞こえてくるが辺りはひどく静かである。
しかし、その静かな場所に突如として聞こえてきた多くの足音。
微かだが焦ったような声も聞こえてくる。
その足音は徐々に新一とキッドのいる場所へと近づいてきているようだった。
+-+-+- 逃亡の果て ―怪盗と探偵の逃亡劇― +-+-+-
「やべっ!もう追いついてきた!」
「どうやら名探偵を追っている連中のようですね。組織の残党ではないようですが…一体何をされたんですか?」
「あー…ちょーっと殺人現場なんぞを……」
乾いた笑みを浮かべながら頬を引っ掻く新一はバツが悪そうに視線を彷徨わせる。
彼の言葉を聞いてキッドは小さな溜息を零した。
どうしてこの人は自ら事件を呼び寄せてしまうのだろうか……
追われているということは多分相手はマフィアなのだろう。
一般人ならこうまでしつこく追いかけてくることはない。
偶然でも彼に会えてよかったとキッドは思う。
彼がマフィアなんぞに負けるとは思わない。
腕につけている時計は彼が偽りの姿をしていた時から使用しているものだ。
以前よりも改良されているそれは、麻酔針を連射できるようになっているらしい。
それに、麻酔針がなくとも彼には黄金の右足という強力な武器があった。
あれを喰らえば半日は意識を戻すことはないだろう。
それは身をもって体験しているので確証済みだ。
だが、しかし。
いくら彼が強いとはいっても相手は複数いるのだ。
さすがの新一でも1人で複数を相手にするのは骨が折れるに違いない。
それに彼らは拳銃を持っている。
新一が怪我をする姿を、キッドは絶対に見たくはなかった。
「まったく……。自分から事件に突っ込んでいかれてどうするんですか」
「……うるせぇ。別に好きこのんで自分から突っ込んでるわけじゃねぇよ」
むすっとした表情で上目遣いに睨まれるが、そんな表情をしてもキッドには誘っているようにしか思わない。
かわいいなぁ〜vと思わず頬を緩めそうになるが、すぐさまポーカーフェイスで覆い隠す。
怪盗紳士たるもの、意中の人の前であれポーカーフェイスを崩すことなどできない。
……今のところは、だが。
「しょうがありませんから、お手伝いしますよ。私を追っている組織と警察がもれなくついてきますが」
「う゛〜…。まあ、しょうがねぇか、背に腹は代えられねぇし。言っとくけど!警察とはバッティングするなよっ!俺がお前と一緒にいる所を中森警部に見られでもしたらなに言われるか分からねぇんだからな!」
「分かってますよ、名探偵にご迷惑はおかけしませんから」
ラッキ〜v名探偵とデートだ〜vv
飄々とした態度をとりながらキッドは内心で嬉々としていた。
追っ手から逃れることがデートになるとは言わないが、彼にしてみれば新一と一緒にいることだけでデートになるのだ。
喜ぶキッドとは反対に、新一は悪寒に襲われていた。
おそらくキッドの邪な喜びを無意識に察知してしまったのだろう。
両腕をさすりながらきょろきょろする姿はとても可愛いのだが、自分からオオカミの群れに飛び込んでしまったことには気づいていない。
群れと言ってもたった1匹だけしかしないと言われればそれまでだが。
とにかく、怪盗と探偵という相反する2人の逃亡劇が今ここに始まったのだった(笑)
+-+-+-+-+-+-
とりあえず先に、新一を狙うマフィアたちを撒いてみることにした。
足音を立てずに複雑な路地裏を走っていく。
日頃鍛えているキッドはちょっとやそっとのことで息を切らすようなことはしない。
だが、APTX4869という毒薬を飲んで小さな姿になっていた新一は、元の姿に戻ると同時に以前よりも体力が減ってしまった。
おかげで、20分ほど走った今では肩で息をしている状態だ。
このままではマフィアを撒くどころか、反対に追いつかれてしまうかもしれない。
「しょうがありません。作戦変更といきましょう」
「はぁ…はぁ……変更…って?」
キッドは壁に凭れて息を整えている新一に近づき、白いマントで彼の全身をすっぽりと包み込んだ。
視界を白で遮られた新一は一瞬なにが起こったのか理解できない。
だが、それがキッドのマントであると気づき、思わず声を荒げてしまう。
「おいっ!なんのつもりだっ!」
「シッ!静かにしていてください、名探偵。これから奴らをおびきだすために一芝居打ちます。申し訳ありませんが私に凭れて気絶しているフリをしていてください」
「一芝居って…ナニするつもりなんだよ……」
「説明しているヒマはありません。奴らのお出ましですよ?」
キッドの言葉どおり、こちらへと近づく足音が大きくなっていく。
大丈夫なんだろうなぁ…と心の中でボヤきなが、新一はキッドに凭れて気絶しているフリをする。
瞳を閉じただけの簡単な仕草だが、さすがは女優の息子。
微妙に呼吸の仕方まで変えていた。
さすがは名探偵、惚れ直しちゃうじゃないのv
初めて己の腕で彼を抱けたことに、キッドは感無量である。
芝居とはいえ瞳を閉じて無防備に身体を預ける様はまさに恋人同士!
他人には見えないだろうが、キッドの全身にはハートマークと音符マークが飛び交っていた(笑)
それほどまでに浮かれていて大丈夫なのだろうか?
しかし、その心配は無用だった。
追っ手が現れると同時に気配を一転させ、キッドは不敵な笑みを浮かべて彼らを迎えたのだ。
「私の邪魔をするのはどちら様でしょうか?」
「なっ…!?」
「怪盗キッド!?」
「なんでキッドがこんな所にっ!?」
マフィアたちは追いかける視線の先にキッドを見つけると、動揺しながらその場に立ち止まった。
だが、その腕に先ほどから追いかけていた少年がいるのを見ると、彼らの表情が一転した。
にやにやとした表情で、全員が手にしていた銃を構える。
そうして、お決まりのパターンを口にするのだ。
「怪盗キッドとあの工藤新一がこんな所で逢い引きか?」
「そうだと言えば、貴方方はどうしますか?」
「無粋な真似をするつもりはないが……、俺たちはソイツに用があるんだ。大人しく渡してもらおうか」
「嫌ですね。名探偵に用事があるのは貴方方だけではありませんから。この方を捕まえたければ……」
いったん言葉を切ったキッドは、袖に隠していた閃光弾を地面へと落とす。
まばゆい光が当たりに包み込む中、彼は新一の身体を抱き上げた。
小さな声で文句を言われるがそれを気にするキッドではない。
怪盗はまぶしさのあまり悲鳴を上げている男たちに向かって、先ほどの続きを投げかける。
「私を追ってくることですね。まあ、貴方方に名探偵を渡すつもりはこれっぽっちもありませんがv」
それだけを言うと、キッドはそのまま路地の出口へ向かわず近くにあった廃ビルへと入っていった。
閃光弾が消えたと同時にビルから飛び降りれば、必ず彼らの目につくだろう。
それを狙っての行動だった。
そんなキッドの考えは新一にもすぐさま理解できたことで。
だが、いかんせん今の格好は彼にとってプライドを傷つけられるものでしかなかった。
となると当然――――
「おい、いい加減降ろせよっ!自分で歩けるっ!」
「どうせもう一度抱き上げるんですから、このままでいいでしょうに」
「男に軽々抱き上げられて黙ってられるかッ!」
「……名探偵が標準よりも軽すぎなんです」
「うるせぇっ!いいから――――」
「せっかく貴方をこの腕に抱けたというのに、はいそうですか、と降ろすわけないでしょう?」
もうちょっとお肉つけた方がいいけど、今のままでも抱き心地いいからな〜v
内心でにやけながらも、絶対に離さないと意思表示する。
すると、このまま言い合っていても埒があかないと思ったのだろう。
新一は溜息を吐きながら大人しくなった。
キッドは苦笑を浮かべながら、古ぼけた階段を上っていく。
もうそろそろ閃光弾の光が消えるころだろう。
急がなくてはならない。
腕の中の人を抱きしめる腕に力を入れて、キッドは屋上を目指した。
ようやくついた屋上の扉を新一が開く。
キッドは足早に屋上に設置されている手摺りへと近づいた。
新一を抱えたままだというのに、彼は優雅な仕草で手摺りの上に飛び乗る。
その仕草に、新一は内心でむすっとしていた。
どうしてコイツはなにをしても気障に見えるんだろう…と。
ていうか、コイツの存在自体が俺のプライドに引っ掛かりまくりなんだよな。
そうだそうだと頷く新一を、キッドが不思議そうに見つめている。
「名探偵?どうされました?」
「なんでもねぇ。ところで、グライダーは1人乗りだろ?大丈夫なのかよ」
「怪盗キッドに不可能という文字はありませんよ。それに、私が名探偵を落とすようなヘマをするはずがありません」
そう言いながら頬に口づけてくる男に、新一は口元を攣らせながらも文句を言うことはなかった。
おそらく、先ほどの言い合いで学習したのだろう。
今この男になにを言っても疲れるだけだけだと。
賢い選択だ。
「さて……。名探偵、私にしっかりと掴まっていてくださいね?」
「……落とすなよ」
「名探偵……」
ぼそっと呟かれた言葉に、さっきの言葉を聞いてなかったのぉ〜とキッドは心の中で滂沱する。
だが、自分の首に両腕を回しぎゅっと抱きついてくる新一の態度に、すぐさま機嫌が戻った。
なんとも現金な男である。
「それでは、いきますよっ!」
「………ッ……」
キッドの声とともに身体がふわりと浮くような感覚に陥るが、すぐさま重力にひかれて落下しはじめる。
それもほんの少しの間で、グライダーが開くとがくん…という衝撃を感じた。
グライダーは風にのって安定した飛行を続けている。
心臓をバクバクさせていた新一はおそるおそる瞳を開いてみた。
すると、優しい色を浮かべた藍色の瞳とぶつかり、思わず視線を逸らしてしまう。
心なしか頬と耳が赤く染まっていることに、本人は気づいていない。
「名探偵、大丈夫ですか?」
「あ…ああ。ところで、どこに向かってるんんだ?」
「米花埠頭です」
「…米花埠頭?ンなトコに行ってどうするつもりなんだ?」
「私の方は警察がしつこく追いかけているようですので、中森警部に協力していただこうかと……」
「ま、その方がいいかもな」
怪盗の言葉を聞いた新一は彼の作戦に納得する。
彼らをおびき寄せてそこへ警察を向かわせれば、マフィアたちはその場で警察達と鉢合わせになるだろう。
中森警部のことだから、キッドが彼らの所業を口にすればすぐさま行動に移してくれるはず。
そこまで考えて、ハタ…と思い当たる。
今現在、新一はキッドと共に行動をしている最中だ。
――ということは。
自分はこのままキッドと共に米花埠頭へ向かうわけで。
…………。
「お前との関係を疑われるじゃねぇかよっ!」
「大丈夫ですから、私に任せてください」
「……お前の言うことは信用できねぇ」
頬を膨らませてそっぽを向く新一。
彼の言葉は内容的には落ち込むようなものなのに、キッドの表情はポーカーフェイスが半分剥がれかけ、にやついている。
もしも初代が見ていれば、恋する息子に対し呆れてものが言えないだろう。
それほどまでに崩れかけているのである、彼のポーカーフェイスは。
表情をにやつかせ、内心ではデ〜トvデ〜トvと子供のように相好を崩すバ怪盗。
……もとい、怪盗キッド。
彼は徐に新一へ声を掛け、こう言った。
「名探偵、スーツの内ポケットから無線機を取り出していただけませんか?」
「はぁ…?いいけど……」
ごそごそと彼の内ポケットを探り、目当ての物を取り出す。
だが、彼の両手は塞がっているというのに。
いったいどうするつもりなのだろうか?
きょときょとと無線機を眺めている新一を見たキッドの頭の中はピンクに染まっていた。
しかも垂れ流し状態だ(笑)
このままでは米花埠頭に向かわず、隠れ家まで拉致しかねない。
我慢を強いられたキッドは視線を逸らしながら新一に話しかけた。
「えーと。スイッチを押して無線機を私の口元へ近づけてください」
「?……ほれ」
言われたとおり無線機のスイッチを入れ、キッドの口元へと近づける。
その細く白い指に目を奪われたキッドは、にやりと笑みを浮かべてその指にちゅっと口づけた。
驚いた新一は落としそうになった無線機を慌てて握りしめる。
なにをするんだと文句を言いそうになったが、スイッチが入っているため視線だけで抗議した。
キッドは新一が文句を言わないのをいいことに、1本1本の指に口づけていく。
真っ赤になっていく名探偵の可愛い様子をみながら口づけを終え。
彼はようやく無線機へ言葉を発したのだった。
「怪盗キッドを発見!現在米花埠頭へ向かって逃走中。応援を願います!」
+-+-+-+-+-+-
追いかけていた少年を怪盗なんぞにかっ浚われてしまった男たち。
眩い光がゆっくりと消えていき、怪盗が消えていることに気がついた。
辺りを見回し、ふと空を見てみると。
怪盗がビルから飛び降り彼らの上空を飛んでいったのだ。
慌てて追いかけ辿り着いた先はというと。
「キッドめ、米花埠頭になんの用事があるんだ?」
「そんなことはどうでもいい。さっさとあのガキを捕まえるんだ」
早くしなければ今回のことがボスに知られてしまう。
いや…もう知られているかもしれないのだ。
そうなれば……自分たちが消されてしまう。
焦る彼らは、自分たちの頭上に影が落ちたことを知らない。
そして――――
「ようこそ、私のステージへ」
「――ッ!怪盗キッド!」
彼らが振り返った先には、名探偵を腕に抱きしめた怪盗の姿があった。
両腕を彼の腰に回し、白いマントで護るようにしている彼の口元には不適な笑みが浮かんでいる。
瞳はひどく楽しそうに彼らを見つめていた。
マフィアたちは銃を握りしめながら、キッドへと鋭い眼差しをぶつける。
「ちゃんと貴様の後を追いかけんだ。ソイツを渡してもらおう」
「名探偵を渡すつもりはないと言いましたよね?」
「なら…実力行使だ」
そう言って銃を構えるマフィアたち。
だが、キッドも新一も表情を変えることなく彼らを見ている。
とそこへ聞こえてくる、けたたましいサイレンの音。
それがパトカーだということにすぐさま気づいたマフィアたちの顔色が変わる。
慌てて逃げだそうとするが、この場所は一通のため抜けることができなかった。
派手なブレーキ音をたてて次々とパトカーが彼らの前に止まっていく。
倉庫の上からそれを眺めていた新一は小さく溜息を零した。
「相変わらずだな、中森警部」
「私を捕まえることに情念を燃やしている方ですからね……」
呆れたような言葉にキッドも思わず苦笑を浮かべてしまう。
初代の頃から彼はまったく変わっていない。
それを嬉しく思うのはやはり隣人だからだろうか。
パトカーから降りてくる幼馴染みの父親を見ながらそんなことを考える。
「ところでお前。俺のことはどうするつもりなんだよ」
「そうですねぇ…。とりあえず、大人しくしていてもらいましょうか」
「……は?」
怪盗の言う意味が分からなくて、新一は思わず間抜けな声をあげてしまう。
どういうことだと問いかけようとしたが……
それが叶うことはなかった。
―――なぜなら。
「……ッ!?…んっ……ぅ…」
唇を塞がれ、唾液とともに錠剤を飲まされてしまったのだ。
新一の喉がこくりと鳴ると、キッドはそのまま思う存分彼の唇を貪った。
柔らかなそれは一度触れてしまえば我慢ができなくて。
彼の意識がなくなるまで、キッドは唇を離そうとはしなかった。
身体を緩急させぐったりと自分に凭れかかる名探偵。
その頬を愛おしげに撫でていると、無粋な声に邪魔されてしまう。
「キッ…キッドぉー!貴様、目暮んとこのガキになにを……ッ!!」
「これはこれは中森警部。よくここまで追いかけてきたものですね」
「貴様を捕まえるためなら地の果てでも追いかけていくわい!」
上司の言葉に部下達は一斉に嫌そうな顔をした。
地の果てまで追いかけるのは警部だけにしてください。
彼らの表情はそう語っている。
おっちゃん可哀相〜と内心で呟きながら、キッドはマフィアたちに視線を移す。
ぎくりと身を強ばらす男たち。
「ところで警部。そちらにいらっしゃる方が私の名探偵を捕らえようとしているんですよ。どうやら殺人現場を目撃したようでして……」
「なんだとぉーッ!」
中森はキッドの言葉を聞くや否や、自分たちの前に立っている邪魔な男たちに視線を向けた。
彼らは顔面を蒼白させながら思い切り首を振り否定している。
だが、彼らの格好をみればマフィアだということは一目瞭然で。
中森以下、刑事たちの視線がますます厳しくなる。
そして追い打ちを掛けるかのようなキッドの言葉。
「彼らは、現場を目撃した名探偵を手籠めにしようとしていたんですよ。怯える(そんなことは絶対にないですが…)彼を壁に押しつけ、無体な真似をしようとしていたところを私が救い出した、というわけなんですが……」
「「「「「なんだってぇ―――――――ッ!!!」」」」」
怪盗の言葉に激怒したのは、工藤新一の隠れファンである二課の面々であった。
その表情は激昂しているため真っ赤である。
もちろん、中森もキッドの話を聞いて激怒していた。
まあ彼の場合、新一を自分の娘と照らし合わせてしまったのだろう。
「全員逮捕だぁぁぁぁぁ〜〜〜〜ッ!!」
怒声のような号令に、刑事や警官たちが一斉にマフィアたち目がけて走っていく。
目が血走っている彼らから逃れることができるはずもなくて。
「「「「「俺たちは無実なんだぁぁぁぁ〜〜〜!」」」」」
お約束の言葉を叫びながら、手錠を掛けられたらしい……
――数日後。
久しぶりに警視庁を訪れた新一は、馴染みの刑事たちからキッドとの関係を問いつめられた。
なんのことかと逆に問いかけて。
彼の表情がみるみるうちに怒りへと変化していく。
『さて、名探偵は私が責任を持ってお送りしますよ。まあ、ご自宅にお送りするのは明日の朝になるかと思いますが……』
『今すぐ自宅に送らんかッ!』
『無粋ですねぇ…中森警部。愛しい人が私の腕の中にいるんですよ?隅々まで味わいたいと思うのは男の性でしょう?』
男たちを逮捕したあとに交わされた会話は、その日のうちに警視庁内を駆け巡ったとか。
新一は拳を震わせながらキッドに対する罵詈雑言を心のなかで呟く。
今度から絶対にアイツの協力を受けるもんかぁ――――ッ!!
その後、怪盗の仕事日には名探偵による数々の嫌がらせがあったらしい……
そんなキッドの想いが新一へ届くのは、まだまだ先のこととなる。
1000hit記念フリーSSです。
サイトを開設して早1000hitを達成することができました。
ありがとうございますv
それもこれも夏岐の駄文を読んでくださる皆様のおかげです。
つたない駄文ですが、よろしければお持ち帰りくださいませv
2004.08.10 夏岐志乃香
+++++++++++++++
夏岐志乃香samaのサイトから、1000HITのフリーを頂いてきました。
楽しそうなキッドさんと不機嫌な新一さんがまたよかった。
最後なんかとくに。
それにしても、ファンがいっぱいですね。
中森警部が出てくるお話は好きなので、楽しかった。
やっぱり、彼はいい人だ。
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