初代のキッド、盗一の時からずっと支えてきたという寺井という老人 その人がしているという店へ寄った かなり人がよく、少し快斗には勿体無いというか、苦労をかえかけているのだろうと思いながら、出された飲み物にありがとうとお礼を言って、快斗の話で盛り上がったりする 簡単に言えば、悪口や過去のちょっとした本人としては不本意な出来事など 謎の塊のような男だと思っていたが、意外と人間っぽいなと失礼な事を思った優希 しばらくして、帰らないといけないと店をあとにして、家の扉を開けて、玄関で少々お怒りの様子の小学生に迎えられた 「お帰りなさい。遅かったわね。それに、知らない人もいるようだし?」 「ご、ごめん・・・。」 「誰?」 すっかり忘れていた志保の存在 リビングへと向かえば、ちょっと肩身の狭い思いをするのだった 保健室の秘め事−問題な秘め事 とりあえずリビングにて、快斗が入れた珈琲を飲みながら、快斗を紹介して事の次第を説明する。 そして、快斗には志保のことについて、お隣で、今はこんな姿だがクラスメイトだと説明する。 「これはこれは、はじめまして、お嬢さん。」 「子ども扱いはしないでちょうだい。」 「いえいえ、貴方に敬意を見せているつもりですが?」 「そう。ま、いいわ。」 優希だけが気づいていないが、お互い優希を大切に思っているもの同士で、内心では荒れたにらみ合いをしていたりする。 「それで、志保。戻れそうなの?」 「大丈夫よ。数日のうちに片付けるつもりだから。」 「戻るのか。可愛いのに、残念だ。」 「本当にそう思ってるのかしら?」 「さぁ?」 仲はよろしくないのかもしれない。 さすがにこの二人の会話から、会わせないようにした方が良かったのかもと思うが後の祭り。 「それに、私はこれから鬱陶しいものの駆除にとりかからないと。」 「なんの?」 「うるさい周りを飛ぶハエをね。」 にやりと見せた笑み。関わらないでおこうと決める優希。だが、少し快斗は楽しそうにしている。 「なぁ、是非それを手伝わせてもらえないか?」 「いいわよ。」 あとで隣に来たらいいわと、待っているわと快斗にだけ聞こえる声で言う志保。 さすがに快斗も最後に呼ばれた白いこそ泥という言葉に、ばれてるんだと驚いたが、すぐにいつもの自分に戻って、優希に今日の夕食は何がいいかと聞くのだった。 夕食後、お風呂に入る優希にちょっとお隣に呼ばれたから行ってくると伝え、戸締りをしっかりしてお隣の門を潜った。 そして、あの小学生・・・ではなく、優希と同い年もしくは年上の同じ顔と髪型の女が迎えてくれた。 「もう、戻ったの?」 「ええ、なんとかできたから。」 丸二日徹夜をすでにしていて、それでやっとよと言われて、もしかして機嫌の悪い時に現れてしまったのだろうかと、今更冷や汗ものになる。 「とにかく座っててちょうだい。何か持ってくるわ。」 その何かが、危険物じゃないんですかと、ちょっと言ってみたくなるほど怖かったが、言ったら言ったでさらに怖そうだったので黙っておくことにした快斗。 その時、いつも勝手に声で現れる紅子の声が聞こえてきた。 『あらあら。駄目ね、貴方。』 情けないわと言いながら、姿を見せた魔女の姿に、さすがに慌てる快斗。 ここは人様の家だ。それも、ちょっと危険そうな家なのだ。そこに部外者が入ったらまた何かあるのではと思って慌てたのだ。 だが、それは取り越し苦労だった。 「あら、紅子。遅かったじゃない。」 「ごめんなさい。ちょっとじいやがいろいろとね。」 どうやら、知り合いのようで、ほっと胸をなでおろす思いの快斗だった。 そんな中、どんどん進められていく計画に、最初はなんて話をしているんだと思っていた快斗だったが、次第に二人の意見に耳を傾け、快斗自身も意見を出してその話し合いに積極的に参加していた。 ちなみに、彼等三人が話し合っている内容は『うるさいものの排除方法』についてだ。 いいかげん、うるさいし、志保としてもせっかく薬をたくさん作ったのに、いい実験体がほしいというところ。 快斗からしても、優希に手を出そうとしている不届き物としてすでにブラックリスト入りをしている者達なので、喜んで二人の計画に手を貸す気満々である。 こうして、怪しげな計画は進められ、あのうるさい者達の運命がちゃくちゃくと決まっていこうとしていた。 「じゃぁ、決行は明日という事で。」 「志保、明日は学校来るのね?」 「ええ、もちろん。」 首謀者が出なくてどうするのよと、見せたその笑みは滅多に見られないほどのものであったが、やはり裏を知っている二人(快斗は今日だけでしっかりと理解した)は悪魔だと思ってしまう。 だが、そう思う二人も充分悪魔だと思われる。 「じゃぁ、また明日ね。先生。」 「じゃぁ、明日例の場所で。」 そう言って、快斗はお隣を出て、紅子は姿を消した。 「明日が楽しみだわ。」 二人が帰った後、地下室に降りて行く志保。もちろん、明日の計画の用意をするためである。 一刻一刻と、例の二人の命の危機は迫っていく・・・。 次の日の朝、家を出る前にチャイムが鳴り、誰だろうと思いながら優希はインターホンで確認すると、それは志保だった。 「戻ったの・・・。」 「ええ。あの姿のままでも良かったけれど、私も行ける時には学校に行っておかないとね。」 優希が無茶して看病してつっきっきりになると学校行けないものと痛い言葉を並べてくれた。 優希は何度も学校行ってと言うのだが、生憎この主治医も兼ねているお隣の志保は本を読んで悪化させるから見張り代わりと言われて、それ以上言えなかったりしてそうなっている。 さらに、家には快斗という存在が現れて、どうもこう、不規則な生活で本に没頭できる日は減っていたりしているのに。 「とりあえず、行くわよ。」 「あ、二人とも。送っていくよ。」 ついでだから〜と、家の前で待っててと、鍵を取りに行ってしまった。 「お言葉に甘えようかしら。」 ちょっと、お隣さんもお疲れの様子。 「・・・本当に大丈夫なの?」 一応、不可能を可能にしてしまう恐ろしい薬を作ってしまいそうな彼女だが、昨日あんなことがあったのだから、さすがにちょっと心配になるが、口の悪さはいつもと変わりないので、大丈夫だろうと判断するのだった。 さて、学校にて。 今日はどうしてか、朝は保健室(第二)に来たら駄目だからねーと珍しく言う快斗に、面倒なのでまぁいいやと、直行で教室へ行った優希。 そして、また新たに情報屋な園子からいろいろ聞く事になるのだった。 「聞いて。とうとう今夜がキッド様の予告日よぉ〜〜。」 今日こそ会うためにっ!となにやら気合が入っている様子の園子を見て、そう言えば今日予告があったことを思い出した。 快斗やキッドや志保のことでいろいろあったし、解けた謎はどうでも良かったりする優希は普通に忘れていたりした。 「で、園子は何をしでかすつもり?」 なにやら快斗も何かをしでかすつもりらしいとは気づいているので、ついそう言ったが、暴走中の園子は気にしていない。 「もち、園子様がキッド様が狙いそうなビックジュエルを持って誘うのよ。」 やっぱり、それらしい。 「もう、危ないから駄目だって言ってるのに。」 蘭も止められずに少し困っているらしい。 「大丈夫よ。キッド様が守ってくれるわ!!」 この一人暴走娘をどうにかしたいが、生憎始業のチャイムが鳴ったので、席に座らせて自分達も座る事にした。 そして、優希はHRが終わった後に、こっそりと呼び出され、一時間目は結局出席しない事になった。 いつもいないことは多いので、多少がっかりするクラスメイトがいるが、これといってあまり気にもとめられない。 そして優希は、とんでもない事を学園長から頼まれる羽目になった。 だが、まだ問題ありな企みをしている三人は知らない。 夜。白い衣装を身に纏い、ほどほどに吹く風が彼の白いマントをゆらめかす。 「用意はいいですか?」 『ええ。ばっちりよ。』 『それにしても、暇な男ね。』 盗聴している先から聞こえてくる二人の迷探偵のわめき声。 お隣のおっちゃんがちょっとかわいそうと思いながらも、すでにキッドの気配を身に纏った快斗は頭を切り替える。 「さぁ、ショーのはじまりだ。」 『へましないでよ。』 「大丈夫ですよ、お嬢さん。最高のショーにしてみせますよ。」 それで、お互いの会話を繋ぐイヤホンマイクの電源を切って、夜の空へと飛び立つ。 「こんばんは、皆様。今日もご苦労様です。」 「キッドー!今日こそお前の最後だぁ!!!」 相変わらず熱い男、中森は部下に指示を出してまっすぐ逮捕の為に突き進んでくる。 だが、今回は宝石を盗むことだけではなく、このうるさい二人組みの処理が入っている。 なので、余計なことをしないで、宝石を盗んで夜の闇へと消える。 そうすれば、案の定追いかけてくる警察。そして、あの二人の探偵。 「ダミーで散らせます。・・・あとはお任せしますよ。」 『わかったわ。』 『あとで合流しましょ。』 そして、キッド達三人の思惑通りに、ばらばらに散らされ、最初から煙たがっていた二人の姿が途中から消えても、誰も気にする事は無かった。 中森も、今回も逃げられたーと悔しそうに叫んで引き上げていく。 「今晩は楽しめそうだわ。」 引き上げた警察を見送って、足元に転がる二つの物体に、志保は意識を取り戻そうとしている二人を気絶させるためにも一発思い切り手加減梨に蹴りを入れて、紅子が深い眠りへと導いた。 「持って帰ればいいの?」 「ええ。」 「私が運ぼうかしら?」 「お前の怪しい魔術で、ちゃんとつけるのかよ。」 「あら。なら貴方だけは置いていくわよ。」 「スミマセンデシタ。」 とりあえず、これから優希にまとわり就く害虫へ、お仕置きもかねた一晩の長い長い悪夢を始めるために、とりあえず阿笠邸へと帰るのだった。 快斗がしばらくして家に帰ってみると、リビングに電気が付いているので起きているのかと思ったが、まだキッドの件の放送をしているテレビをつけたまま、ソファの上ですやすやと眠っている優希の姿を見つけた。 心配して、テレビで見ていたのだろう。だが、犯行を終えたことを知って、待っている間に寝てしまったのだろう。 こんなことなら、早く帰ってこれば良かったと思いながら、苦笑する。 「それにしても、こんなに無防備に寝てくれて・・・。」 手が出そうで怖いと思いながら、テレビの電源を消して、優希を抱き上げる。 起こさないようにそおっと優しく抱き上げ、二階にある優希の寝室までつれていく。 降ろした時に、起こしてしまったかと思ったが、どうやらまだ寝ているようなので、ほっとしながら、布団をかける。 そして、これだけはちょっとだけ許してもらおうと思いながら、ここまで運んだお礼として、眠る優希の頬に軽く触れるキスをした。 「おやすみ、優希。」 まだまだ、距離は遠いけれど、こうやって無条件で信頼するように寝ている姿を見せてくれる分は、距離が少しでも近づいていると思いたい。 「さて。明日の仕事を少しでも片付けますか。」 キッドの犯行のせいで、まだ残っている仕事がある。まぁ、すぐに片付くだろうけれど。 リビングに戻り、自分のためにホットミルクを用意しようと、小さな鍋にまだ温かいミルクが入っているのを見つけた。 「ありがたいね。」 せっかくなので、それをカップに入れて、好意をいただくことにする。 それは、いつもより甘く、そして温かく感じるものだった。
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