新しい年が明けた。 名探偵と大怪盗の新年の幕開けは… …深々と降り続く雪と元気に動き回る子猫の鳴き声から始まった。 Evolutionslehre -Schneehase-
「にゃん♪」 「元気だねぇ、キッド」 「雪が嬉しいンだろ? しっかし寒いなぁ」 「そりゃ、雪が降ってるンだもん。寒いって」 大晦日から工藤邸にやって来ていた怪盗サン。 張り切って大掃除をするつもりだった彼は、前日にハウスクリーニングが入っていた邸内の様子に玄関先で肩を落としたり、嬉しそうに自分を出迎えてくれた子猫に新しいおもちゃを差し出してやったり、「掃除が終わっているなら!」と気合い充分におせち料理の準備をしたり(←食材は買い込んで来ている・笑)、年明け前には特性のお蕎麦を振る舞ったり…とにかく年が終わるまで工藤邸に住む探偵と子猫にとてもとても尽くしていた。(笑) そして時計の針が天上に顔を向け、何も変わってないケド年だけは1つ新しくなって… 2人揃って口から零れた「明けましておめでとう。今年もよろしく」の言葉に笑い合って。 その後に「私には?」と言いたげに不満そうな声を上げた子猫にもきちんと新年の挨拶をして。 なんだか気分が良いからこのままお参りに行こうか…なんて話していた処で、外に降り積もっていた雪の存在に気がついた。 「にゃ、にゃ、にゃ♪」 元気に冷たい雪の中を飛び回っている子猫。 見てるだけで自然に微笑みが浮かんでくるその様子を、探偵はしっかりとコートを着込み、それだけじゃなく心配性な怪盗の手で彼のコートまで肩に羽織らされて(笑)眺めている。 「冷たくないのか?」 「にゃんv」 「冷たさよりも楽しさの方が勝ってるンじゃない?」 積もっている雪に小さな足跡を残して、その足跡を見て喜んでいる(らしい・笑)子猫に、探偵は柔らかく微笑みながらも口調だけは呆れた様に呟く。 そんな探偵の言葉に、先程から足元にしゃがみ込んでいた怪盗がくすくすと笑いながら子猫の気持ちを代弁し…せっせと動かしていた手の動きを止めた。 「でーきた♪」 「? 出来たって…さっきから何作ってたンだ?」 「ん? 見てみて♪」 結構上手く出来たよ〜、と続けた怪盗の言葉に探偵が視線を動かすと… 「…兎?」 「そ。雪兎v 耳の葉っぱは落ちてたのを使わせて頂きました♪」 …怪盗の足元に並んだ、緑色した耳をもつ真っ白なウサギが3匹。 「解かっちゃいたけど…器用だな」 「デショ? ちなみにコレが新一でこっちがキッドねv」 「…じゃあ、それはお前か」 「そう。だから3匹」 「どーりで1匹だけ小さいと思った」 「キッドは子猫だしね♪」 大きい2匹に小さい1匹。 2匹のウサギも微妙に大きさが異なっていて…それは探偵と怪盗の体格の違いなのだろう。 「…ヘンなとこで凝るなよ、ムカツク」 「なんで? オレ的にはこの体格差が1番良いと思うンだけどな〜」 「それこそなんでだよ」 ゆっくりと立ち上がった怪盗の言葉に頬を膨らませる。 寒さで赤くなった鼻頭と耳元でそんな表情をしても可愛いだけだって、と言うのはその時の怪盗のお言葉。(笑) 「だって…」 内心のお言葉(笑)はともかく。 ゆっくりと…大切なことを言うようにゆっくりと探偵へ言葉を紡ぐ。 …そっと探偵の肩を抱き寄せて… 「だって、オレの腕に納まるには…」 丁度良いサイズでしょ? そう続けて膨らませていた冷えて赤くなっていた頬にそっと自身の唇を寄せた── 「………バカ。」 「なんとでも♪」 「てか冷たい。お前、さっきまで雪持ってた手で触るな」 「あ、ごめん! 大丈夫?!」 頬に感じた冷たい唇の感触と、その後に続いた暖かな吐息。 それに恥ずかしさを覚えた探偵がぶっきらぼうに悪態を続ければ、自分の手が冷たいと自覚のあった怪盗は慌てて探偵から手を離す。 肩を抱き寄せられただけなのに、それだけで自分の全てを包まれていたような感覚に陥っていた探偵は、離れていった怪盗の手を慌てて掴み、 「…本気にするなよ///」 これだけコート着せられたの上からで冷たさを感じるわけねぇだろ… と、先程とは違った意味で赤くなった頬を隠す事無く呟いた。 「新一?」 「って、お前本当に冷たいぞ? マジシャンが手を冷やしてどうするんだ」 「え? …ああ。このくらい大丈夫だって」 「大丈夫って…、素手でそいつら作ったンだろ? ったく、お前って自分のことには無頓着だよな〜」 「…それ、新一には言われたくない気がする;」 地面に並べられたウサギを指差しながら呟く探偵に、怪盗は何とも言えない気持ちで溜め息をつく。 だけど自分の身を心配してくれた気持ちと…なによりも離れようとした自分の手を引き止めてくれた探偵の気持ちが嬉しくて… 「でも、ありがとねv」 「おう。つーかそろそろ中に入らねぇ? 寒い」 「そうだね。──キッド、家の中に戻るよー?」 「にゃん♪」 呼びかけにかけ寄って来た子猫は、夜露で少しだけ濡れた身体をふるりと震わせた後、探偵と怪盗の足元でもう1度「なぁう」と声を上げる。 その鳴き声が「抱き上げて欲しい」との催促だと理解した探偵がそっと抱き上げてやると、子猫は嬉しそうに鳴き出した。 「にゃ、にゃv」 「はいはい。お前もすっかり冷えたな〜」 「このままじゃ風邪引くかな? お風呂に入れよっか」 「その方が良いかもな。どーせ初詣では後回しだろ?」 「この雪だし。朝になって雪が溶けたら行くことにしようよ」 「にゃ?」 抱き上げた子猫が腕の中でたしたしと前足を動かす。 それはこの子猫が何かに興味を見せた時に見せる仕草で、小さな身体を一生懸命に伸ばしている。 …その先にいるのは、2人の足元に佇んでいる3匹のウサギ… 「コレに興味があるのか?」 「にゃん♪」 「右からオレ、新一、キッドだよ♪」 「にゃ? ……なぁう」 「? なんだ? 不機嫌そうだな…」 「どうしたんだろ? 上手く出来たと思ったンだけどなぁ」 不満があると全身を使って表現した子猫に、探偵と怪盗が揃って首を傾げるものの、寒いし時間も時間だから…と、暖かな部屋の中に戻る為に足を向けた。 先に部屋へと入った探偵の肩にかかっていたコートを手に取り、子猫を抱いている為に手が塞がっている彼の変わりに怪盗が傍に置いてあったハンガーへとかける。 そんな怪盗の行動を自然に受け入れ、探偵はそのまま子猫をお風呂場へと連れていく。 その間も子猫は不満そうな鳴き声を上げていたのだが…探偵は首を傾げ怪盗は「ヘタクソだったかなぁ?」とやっぱり首を傾げる。 いつもならすぐに理解してくれるはずの飼い主達に、子猫が再び鳴き声を上げるのは言うまでもなく… 「なぁぁぁう。」 ──この日の明け方。 今だ寒さの残るこの時間に、阿笠邸に住む少女は雪の降り積もった景色を珍しく思ったのか──もしくは過去にあった出来事を思い出したのか──庭に出てきた処で、隣家の庭先にポツンと置かれた雪ウサギを見付けた。 その大きさと数から、未だ同居(同棲?)することなく隣家に入り浸っているマジシャンがせっせと作ったのだろうと簡単に推測する。そしてそれが正解であろうことも解かっている。 …だけど… 「工藤君に黒羽君、それからキッド。…どうしてそこに私を入れてくれないのかしら…?」 ──思わず漏れた本音が、子猫の不満そうな鳴き声と重なったのも言うまでもなく。(笑) 【明けましておめでとうございます♪】 昨年は何かとお世話になりました。(土下座) 色々に様々な(笑)お礼を込めまして、桜月がお世話になっている(と勝手に思っている・笑)方へ僭越ながら小説をお届けいたします。 いきなり送りつけられて驚き、嘲り、「お前何様だよ」とお思いでしょうが(…そこまで思われたらちょっと悲しいケド;)、宜しければお受け取りください! それでは、今年も何かとお世話になると思いますが(←確定なの?)よろしくお願い致します。(平伏) ++++++++++ 雪花samaから頂きました。 あ〜、私も混ぜて頂きたいです。 確か、今年は前日に雪が降ったため、妹達が雪だるまを作っていたような気がしますが。 私は前日、忙しくて、そして寒くてパソの前(パソの前も寒いですが・・・涙) それにしても、相変わらずきっどは可愛いですね。 本当にありがとうございました、雪花sama 今年もいろいろとご迷惑をおけするでしょうが、よろしくしてお願いします。 戻る |