突然、携帯の着信音が鳴り響いた それは警察でもお隣や快斗でもないし、何より快斗は隣の部屋なので、無視して寝ていようと思った しかし、決して鳴り止むことはなかった 「・・・はい。」 すると、向こう側ではむかつく陽気な声が聞こえてきた 「今日そっち行くからな。待っとってな、工藤。」 言いたいことだけ言って、電話は切れた なので、もういいやと電源を切って再び眠るのだった HANDLE WITH CARE 2 なんだか、少し寒い気がする。 最近冷え込んできたので、寒くないようにと快斗がしっかり布団をかぶせてくれていたというのに。 いったいどうしたんだろうと、片目を開けて状況を見ようと寝返りを打つと、そこにはかなり笑顔の快斗がいた。 「新一、おはよ〜。」 布団を捲っている犯人がいた。 そして、温かいそいつの体温が近づいてきた。 温かいので、それはよしとしておこう。 「ねぇ、聞いて。外雪だよ、雪っ!初雪っ!ねぇ、ご飯食べて一緒に雪だるま作ろうよ〜。」 「何だよ。寒いと思ったら雪かよ。」 寒いので出るのは嫌だと、快斗に一人で遊んでろと言う。 「え〜、新一と一緒がいいのにぃ。」 頬を膨らませてごねる快斗。男子高校生がする仕草ではない。 「・・・わかった。少しだけならな。」 言い出したら聞かないのは身を持って体験済みである。 とくに睡眠や食事ではお隣よりもうるさい。 諦めさせるには、少しだけでも付き合えばいいのだ。 「じゃー、朝ご飯食べよ。もう、用意したし、部屋もあっためてあるしね。」 まだ眠くて身体を起こすのでいっぱいいっぱいの新一の服を手際欲で着替えさせて、ひょいっと抱き上げた。 快斗の体温は高くて新一は好きなので、寒い最近では好きなようにさせている。 「温い・・・。」 「抱きつかれるのはうれしいけど、理性は辛いねぇ。」 「黙れ。色欲魔。」 「口は元気だねぇ。」 席に座らせて、向かいになるように快斗も座っていただきますで食べ始める。 食が細い新一は、最近食べる量が増えてきて、おいしいとも言ってくれるので快斗も満足そうに日々の幸せに慕っていた。 ごちそうさまと、快斗が食器を洗うために流しへ行こうとした時だった。 ピンポーン チャイムが部屋に鳴り響いた。 哀ちゃんかなと快斗は思いながら、そういえば、朝の電話は誰だったんだろうと思いつつ、警察に連れて行かれるのは嫌だなと思っていたら、新一がインターフォンで相手の顔を見て顔を歪めたのを見た。 「どうしたの?」 「忘れてた。」 「何を?」 「朝さ、早くから電話があって、しかも勝手にしゃべって切っったみたいだけど・・・。服部だ。」 「へぇ。」 新一の朝の時間の邪魔をするとは言い度胸だ。それも、せっかくの休みの、二人でのんびり過ごす時間を壊しに来た不届き物だと、お隣へ連絡しに行かないとなと考える。 「出るの?」 「出ないとうるさいしな。」 こんな会話の間も、チャイムは鳴り続ける。 毎回のごとく、いい迷惑である。 「常識ないのかね、あの人には。」 「さぁ。服部には無理だろうな。」 とりあえず、近所から、とくにお隣から苦情が来る前にドアを開けるのだった。 「よお、工藤。久しぶりやな。・・・って、誰や?その兄ちゃん。」 「失礼な人だね、服部平次君。」 「俺のこと知っとるんけ?」 「そうだね、噂を聞くからね。」 「さよけ。」 どんな噂かは聞こうとしないので勘違いしているだろうが、きっとここまで噂で知られているのだと笑顔だった。 内心は文句ばかりだが、快斗は表面上客として笑顔で対応するのだった。 「それで、何の用だ?」 「せやせや。あんな、もうすぐクリスマスやろ?工藤と一緒に騒いで過ごそう思てな。」 来たんやと言うが、せっかく恋人になってはじめてのクリスマスだというのに、本当に迷惑だ。 「無理だ。」 「どないしたん?そないに照れんでもええんやで?」 何を勘違いしてか、自分に気があると思っている彼。 今日これだけで、あのノートの欄のチェックで正の字が完成していることだろう。 これからまだまだ増えるだろうが。 「無理なものは無理だ。先に予約が入ってる。」 しっかりと、快斗と過ごすという約束をしているので、事実は事実。」 「なんや。あの姉ちゃんとか?」 「違う。」 「それじゃぁ、隣の城じゃんか?」 「違う。・・・お前にわざわざ言う必要もないだろ。」 「せやかて。」 引き下がろうとしないが、さすがに新一もいらいらしてきた。 言っておくが、ここは玄関である。ドアは開いている。追い返すために閉めていないのだ。 だから、風通しがよくてとても寒いのだ。 「電話も今朝で、突然来るな。迷惑だ。」 じゃーなと扉を閉めようとしたが、相手もしつこかった。 「せやかてな、工藤。わざわざ大阪から・・・。」 「来いなんて言ってない。寒いし閉めさせろ。」 「せやったら中にいれてーな。」 「嫌。」 「そっちの兄ちゃんだって入っとるやんけ。それも、朝早くから。」 「こいつはここに住んでるからいいの。」 「住んで・・・って、そんなんわい、聞いてへんでっ?」 「ああ、言ってないからな。そんなこと、わざわざ言う必要もないだろ。」 最後の力を振り絞って、住んでいるという言葉で打撃を受けて少し力が緩んだ隙に扉を閉めた。 「はぁ。疲れた。・・・それにしても、寒いなぁ。」 外はあまりゆっくり見れなかったが白かった。雪の力は強いなと、しみじみ思う。 「もう、冷えちゃったねぇ。」 背後からおんぶおばけのようにくっついてきた快斗。背中が温かいし、重たくないように体重はかけていないので新一は気にしない。 「中でちょっと待ってて。哀ちゃんに電話してくるから。」 「おう。」 さっさと迷惑な黒い人を引き取ってもらおう。 取り扱い注意物の黒い奴だと言えばすぐに来てくれるだろう。 「あ、哀ちゃん?」 『朝からいい度胸ね。』 「実はね、朝から新一の安眠妨害する、出来れば取り扱いは厳重注意でお願いしたい黒い奴のことなんだけど。」 『・・・引取りに行くわ。』 「ありがと。」 すぐに来てくれるだろうから、快斗はもう頭の中からあの男のことは抜いて新一が待つリビングへと向かうのだった。 そしてドアを開けたら、突如新一に真正面から抱きつかれた。 さすがにこれには驚いて、危うく転びそうになった。 「どうしたの、新一。」 「寒い。」 どうやら、ドアを開けっ放しでいたみたいで、部屋は少し冷えていた。 「快斗、あったかい・・・。」 「いいけどね。・・・手が出たら許してね。」 「嫌。」 「相変わらず、口は文句と否定ばっかりだね。」 その割には、なんだかにこにこしてうれしそうな顔をしている快斗。 少し不思議に思って下から上目ずかいで、新一曰く睨んで快斗見ていた。 「・・・なんだよ。」 「別に。そんな新一も好きなんだなと思ってね。」 「・・・馬鹿///」 「新一馬鹿だからしょうがないでしょ。」 「もう、紅くなっちゃって可愛い〜。」 ぎゅうっと抱きしめられて、最初は暴れたが、やっぱり寒さには勝てなくて、温かい腕の中でいるのがとても心地よくて大人しくなった。 しばらく二人はのんびりと時間を過ごし、お昼を食べてから一緒に雪兎や雪だるまを作った。新一が楽しんでマントとモノクルつけたりしていたが、誰かが見てもまぁ、問題はないだろう。 部屋に戻ってきて、一緒に夕食の買出しに行くのだった。 一方、お隣の地下では・・・。 「懲りないわね。」 しっかりと厳重に逃げないように縛り上げて実験台の上に乗せた、例の黒い奴の反応を見ていた。 ある意味、彼等にとっては黒い奴が取り扱い注意かもしれないが、彼女もいろんな意味で取り扱いには注意が必要かもしれない。 そんなこと、口に出して言っては何をされるかわからないが・・・。
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