「名探偵vv

「また、お前か・・・。」

 

窓からの突然の訪問者

相変わらずうれしそうに登場する怪盗にあきれ果てる探偵は、なんだかんだいいながらも相手をするために読んでいた本を閉じて机の上に置いた

 

「で、今夜は何しにきた?」

「いつものように、お話をしにきました。」

 

今頃、こいつを追っている警部は叫んでいるのだろうと思いながら、捕まってもいいのか探偵の家に来ようとするこの馬鹿の様子を伺った

 

「それと、今夜は特別な日でもあるんですよ。」

 

にこにこしながら、そいつは言った

 

 

 

クリスマスに交わす杯

 

 

 

まだ、ANGELなんてものが出来て、得体の知れない面々が集まる前のこと。

相変わらず探偵の家に楽しそうにやってくる可笑しな怪盗の対応に呆れながらも、結構楽しんでいたころの事。

「今夜はイブです。事件で杯を交わせなかった名探偵と交わしたいと思いましてね。」

持ってきちゃいましたと、どこからかワインの瓶を一本。

「・・・未成年に勧めるか?」

「すでに飲んでいらっしゃる名探偵にはもういいかと思いましてね。」

それに、私も未成年ですしと、簡単にばらす。

「・・・馬鹿?」

「違いますよ。ほら、乾杯しましょうよ。」

グラスもしっかりと用意されていて、中へと注ぎ、にっこりと笑顔で渡された。

まぁ、こいつが変なもの飲まそうと思っていないだろうから、いいやと受け取った。

「乾杯、名探偵。出来れば、次回の現場には来て下さいね。」

「へいへい。寒くなかったらな。」

「あの。冬はいつでも寒いと思われますが?」

「なら、駄目だな。」

隣に夜の外出は厳しく言われてるからなと言えば、少し顔が引き攣った。

どうやら、何かあったようだ。知ったことではないが。

「・・・美味いな。」

「そりゃ、名探偵が夜に飲まれても問題ないようにあっさりしたものを選ばせていただきました。」

「心遣いどーも。だが、俺は何も返せるもんねーぞ。」

「いいんです。もういただきましたし。」

自分のことを理解してくれた探偵。

その存在がどれだけ支えになっているかは彼にはわかっていないだろうが。

今は偽りの姿であっても、いつか、昼間の姿でも一緒にいられたらと願いつつグラスを傾ける。

 

 

 

 

次の日。

あれは夢だったのかなと、ぼんやり起きてみれば、どうやら夢ではなかったようだ。

しっかりと、机の上に置かれたカードが物語っている。

「夢じゃないのか・・・。」

ご丁寧に言葉を書いて残していった怪盗。

「馬鹿だよなぁ。」

だけど、なんだかうれしかったような気もする。

「さてと。今夜も誰か来るのかなぁ?」

いつも、ことあるごとにいろんな奴が現れるから最近は家でも一人でいることはなくなった気がする。

こいつもその一人だなと、思いながらそのカードをしまい、朝食を食べる為に下へと降りる。

お隣がきっと来るだろうから、二人分用意して。





      あとがき

 地雷品です。今回は天使〜の過去の番外編です。
 いつもの倍短いですが、こんなのでよろしければお受け取り下さいませ。
 良samaのみお持ち帰り可能です。



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