世界には天と地があり、その狭間がある 天と地にはそれぞれ、統べる者がいて、安定した関係を築いてきた だが、時の流れの間に、天には神が、地には魔王がと言われるようになった 決して、神がよいというわけでも、魔王が悪いというわけでもない ただ、名称がそうなってしまっただけ そして、天には白い翼を持つ者が、地には黒い翼を持つ者が住むようになった だから、次第に互いを嫌うようになった そんな時だった 神から多大な愛情を受ける天使がいた それは神をも凌ぐ力と知恵を持つ蒼の賢者とも呼ばれる天使 神の愛を受ける事で、たくさんの者から疎まれたが 天使を見た者は皆、その天使の虜となり、誰も文句を言わなかった だから、今日も天使は好きなように飛び回って、狭間で休憩しては本を読む日々を過ごすのだった 天使を手に入れる方法 お日様はちょうどよい温かさで世界に光と温もりを届けていました。 天と地の狭間にある泉の畔。そこに生える一本の大きな木の枝に、一人の天使がおりました。 名前は新一。神に愛された本と謎が大好きで、それを追い求める最強天使です。 あまりにも気持ちが良かったので、本を読むのを止めて、お昼寝モードです。 すぴ〜っとそれはもう、見ている方も気持ちよくなるほど、可愛い無防備な寝顔を見せて寝ています。 そこへ、一匹の黒い羽を持つ青年がやってきました。 「ん?」 すぴぃ〜っと音が聞こえるので、なんだとうと彼は音がするほうを見ました。そして、新一を発見したのでした。 そして、一目見て一目ぼれをしてしまったのでした。 なので・・・。 「彼に決めた。」 そっと起こさないように腕で抱き上げて、木の枝から飛び立ちました。 実は彼、快斗という名前なのですが、地の世界を統べる魔王だったのです。 最近、周りの女が煩いので、運命の相手を探そうとあちこち飛び回っていたところだったのです。そこで、新一を見つけたのです。 まぁ、彼以外いなかったので目撃者はいませんが、これは一歩間違えると誘拐です。だが、本人わかちゃいません。 かなり笑顔でるんるん気分で自分のお城まで帰って来たのでした。 その数分後、迎えに来た神が、いないことに気付いて城に戻ってばたばたするのはお約束。 神自らお迎えに来るほど、愛されちゃっている天使なのです。 さて。相変わらず気持ち良さそうに寝たままの新一でしたが、なんだかとても柔らかい何かの上にいたので、何か違うなぁと、気持ちが良いけれどこれはなんだろうと目を覚ましたのでした。 「・・・あれ?」 目を開けてびっくり。いつの間にか知らない部屋の中にいました。それも、誰かのベッドの上で寝ていたようです。 「そんなに寝相悪かったっけ?」 見た事がない部屋ですが、神が自分に与えてくれた部屋と似ていたので、城の中にある違う部屋なのだと勘違いしていました。 そして、狭間の木の枝で寝ていたのに、こんなところまできてしまうほど寝相が悪かったのかと思っていました。 だから、気にすることなく二度寝なんてものをしようと、再び布団の上に倒れて目をつむりました。 しかし、ふと気付いた知らない気配にぴくりと羽根を動かして、やっぱり起き上がりました。 「誰?」 今まで知らない気配なので、誰だろうと、ここへ近づいてくる気配を伺っていました。 そして、姿を見せたのは、普段お目にはかかれない黒い羽の青年でした。 それに、その着ている服から、こいつがあれかと理解する新一。 「あ、起きた?」 気持ち良さそうに寝てるから、起こすのが勿体無かったんだ。と、彼は言います。 どうぞと、持っていたグラスを渡されて、ありがとうと受け取った。 「あ、俺は快斗ね。キッドとも呼ばれてるけど。」 「魔王だろ?」 「そう。よく知ってるね。」 「有名だから。」 「へぇ。」 しっかりと新一の近辺を調べているので、どう有名なのかはわかっている。なので、見えれば少しばかり怒っているとマークがついていそうだ。だが、新一にはそんなもの見えないのでわからない。 「新一と会えたお祝い。飲んで。」 「名前・・・。」 「知ってるよ。新一も有名だからね。」 最初は男なので興味なかったが、出会ってみれば落ちた。なので、速攻お持ち帰りしたのだが。 あんな神なんかには勿体無い。今頃気付いているだろうが、とうぶんは来ないだろう。 なので、ゆっくりとお話をしようじゃないか。 「・・・お祝い?」 「そう。出会えた事がうれしいから。」 飲んで飲んでと進めるので、ただの水っぽいのでまぁいいだろうと、新一葉それを飲んだ。それはごくりと一気に。 「・・・何、これ。」 飲み干してグラスを快斗に渡してから、頭がふらふらするーと新一がいうと、さすがに快斗も慌てた。可笑しな薬は入っていないはずだ。ならば・・・。 「あ、もしかしてお酒って駄目だったの?」 熱い。どうにかしてほしい。とろんとした、それも少し潤んで瞳が揺れ、少し頬が染まった新一の顔が快斗を見る。 それが快斗を誘っているようにみえた。だけど、嫌われては困るので、ここは我慢だと抑える。普段なら襲っているが、一目ぼれの相手なのでとくに。 「快斗・・・。」 熱い〜っと、へにゃりしなった羽に触れると、こそばいらしく、もぞもぞ動く。だけど、がばりっと快斗に抱きついたまま、うーっと唸る。お酒で酔って熱いらしい。 「熱いよぅ。」 うるうると目で訴えられて、がっと新一の肩に手をかけて、そのおいしそうな唇に触れた。その瞬間、獣のように貪ってしまった。 息を塞いでいるので、苦しいらしく、少し暴れる新一に気付き、あっと思い出して解放する。 そこには、それはもう可愛い新一の姿があり、本気で抑えられなくなったらどうしようと、出来るだけみないようにと努力する快斗がいる。 「快斗?どうしてキス?・・・好きな奴としかしたらいけねーんだぞ。」 恋愛音痴な新一は悪い虫がつかないようにと、神や両親から散々言い聞かされてきたのだった。 決して、好きな相手としかしてはいけないよと。もししてしまったら、その相手が新一の恋人で花嫁だよと。 それを聞いて、使えるとすぐさま賢い頭が働く。 「大丈夫だよ。」 「どうして?」 「俺は新一の事が好きだから。・・・花嫁にはなれないけれど、新一が花嫁さんになってくれない?」 そういわれて、しばらく考えてから新一はうなずいた。 だって、さっきのは神や両親と交わす挨拶とは違う。それに、こいつといるとドキドキする。恋するとどきどきするものだと教えられていたので、そうなんだと思い込んだ。 実際は、お酒に酔って、心拍数が上がっているだけなのだが。 快斗が側に居ても気にならないということも事実なので、いいやという答えの結果。 「本当?ありがと。愛してるよ、新一。」 「・・・好き?」 「疑問系はやめてよ。それに、名前呼んで?」 「・・・快斗。・・・好き。」 「うん。」 ぎゅうっと新一を抱きしめる。これで新一は俺のものと。 その後、新一を美味しくいただいて、それはもう綺麗な声で鳴かれて、彼の全てを暴いて、大満足の快斗。 次の日、目を覚まして忘れられていたらどうしようと思ったが、そんなことはなく。 新一も頂かれてから以外にもすんなり好きになっちゃっていたりして、今では快斗の膝の上、腕の中がお昼寝の場所に変わった。 もちろん、しっかりと夫婦の証として指輪をしっかりつけている。これはお互いでしかはずせないもの。 こうして、仲良く過ごす二人だった。 さて。新一がいなくなってから五日が経った頃。すっかり新一は快斗の側にべったりな状態になっていた頃である。 やっと居場所がわかってやってきた神・・・快斗にとっては憎い奴の探が城へとやってきた。 「快斗君っ!君って人は。新一君を今すぐ返しなさい。」 新一は今、快斗の部屋で読書中なので、対応は快斗のみ。邪魔させないようにと、玄関でお出迎えなんて状態なのだが。 「君が彼をさらったということは、すでにつかんでいます。今すぐ彼を解放しなさい!」 「うーん、無理?」 「何故です!」 「だって。」 その後続けられた言葉で、一瞬白馬は固まった。 「新一は俺の可愛い花嫁さんだから。」 それはもう、今までみたことがないような快斗の笑顔。さすがにその笑顔は本物なので、見た事がなかった探は一歩引く。 「し、しかし。」 お互いに知らない間柄だったし、たった五日でそんなことになることなんて・・・。それに、彼も結構警戒心が強い方なのだ。だから、余計に信じられなかった。 「ってことで、ばいばい。」 もう話は終わりだと言わんばかりに扉をしめようとしたが、探も引かない。 自分が大事にしてきた天使を、魔王なんかに渡してたまるかという根性でだ。 「彼に合わせて下さい。そうしたらわかります。」 「駄目。もったいない。」 嫌だとはっきり言う男に、最後まで食い下がる探。 そこへ、いつまで何馬鹿なことをしているのと、快斗の右腕左腕と呼ばれる二人の黒い天使が姿を見せた。片方は主治医の志保。もう片方は予言の紅子。 「早く戻りなさい。そんなのに構ってないで。新一君が待ってるわよ。」 「うん。そうするー。」 一気に部屋まで飛んでいく快斗。すぐに視界から彼の姿は消えた。 「・・・で、いいかげん帰ってくれないかしら?」 「しかし・・・。」 長い間可愛がってきた天使がいきなりどこぞの誰かにとられれば、探以外でも同じ行動をするだろう。 しかし、最近快斗よりも新一至上主義になってきたこの二人は、容赦なく追い出す。 「見たければ、少しだけ見せてあげるわ。」 そう言って水晶を取り出して、探へと見せた。 そこには、新一から快斗に抱きつく姿が映り、そして・・・ 「そ、そんな・・・。」 あれだけ自分達以外にキスをしてはいけないと言ったのに、快斗に口同士でキスをしているじゃないか。それも自分から。 なんということだ。この五日の間にこんなことがあっていいのか。 呆然としている探を、紅子の魔方陣で神の城まで飛ばし、これでしばらく平和ねと、玄関を閉めた。 しばらく、神は落ち込んで姿を見せなかったらしいが、姿を見せた瞬間、必ず取り戻して見せますと、やる気満々の神がいたらしい。結構復活ははやかったようだ。 さて。そんなことなどお構いなしに、らぶらぶオーラを撒き散らしているこの二人はというと・・・。 「・・・ぃと。」 「そんな声だしたら、我慢できないでしょ?」 軽く口付けを交わし、ぎゅうっと腕に抱きしめる。最近では新一も快斗の背中に腕を回してくれるようになっていた。 「愛していますよ。愛しい花嫁殿。」 「花嫁は嫌。」 「そうでしたね。名前がいいんでしたね。」 ベッドの上に新一を押し倒して、逃げられないように腕と足で塞いで。 「・・・いいですか?」 「快斗。」 きゅっと腕を伸ばして首に巻きつく腕。それが、彼からの了承の合図。 今日も、魔王様は可愛い天使をおいしくいただいたのでした。
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