聖なる夜は嫌いだ。 聖夜 「…クリスマスも仕事なのか?比翼」 「新一に言われたくはないかな」 「それいえてるかも」 「…イベント時は事件が多いんだよ」 「イベント時は何処も商売時だからな。展示品に力をこめるものだよ」 「という事は快斗も仕事かよ」 「うー…実はねぇ…」 「ちっ。つまんねえ」 「あーもう拗ねないでよ。早めにとんで帰ってくるからさ、ね?比翼さんも来るでしょ?」 何の疑いもなく問い掛けられて。 比翼は顔の筋肉だけで笑った。 「すまぬが仕事が続いていて暇はなさそうだ」 「え、ほんと?」 「ああ」 「でもそんなにあったっけ候補…」 「他にも用があってな」 ――――嘘だ。 クリスマス、仕事以外に用などない。 この夜は人と過ごしたくはないのだ。 例え自分の灯火とて。 この夜は真の闇に沈みたい。 「…比翼?」 新一が不思議そうに比翼を見上げた。 不思議そうに、揺れる青が蝋燭の炎にも見えた。 「…案ずるな。プレゼントくらいは用意してある」 「いや、そうじゃなくて」 「××推理小説」 「くれ!」 「新一…(汗)」 その夜は、何よりも聖なる夜だから。 闇にまみれた私は居心地が悪い。 だというのに。 「ならさ、次の日来いよ。ご馳走はちゃんと残しといてやるからさ」 新一の言葉に、比翼は目を丸くする。それに快斗も頷いた。 「じゃあクリスマスの日は俺と新一と哀ちゃんで集まって、次の日に比翼さんが集合ね」 「早く帰って来いよ。灰原と楽しんでるから」 「うー。即行で帰ってきます」 「ん?比翼?どうした?」 新一が首を傾げる。それにはっと我に帰り、比翼は苦笑した。 「何も二日連続で騒がずとも…」 それにその日はクリスマスでもなんでもないのに。 比翼のその言葉に、新一はきょとんと首を傾げた。 「だって比翼、クリスマスこれないんだろ?」 「ああ」 「クリスマスなんてイベントは騒ぐ目的みたいなもんだから、一日や二日どうでもいいって。全員で騒ぐんだから、比翼もいないと意味ないだろ?」 「そうそう。比翼さんがいてこそ盛り上がるからさ」 「だよな〜」 あ、でもお前のマジックは楽しみだぜ? 勿論とびっきりのをお見せいたしましょう名探偵。 ケラケラとなにやら盛り上がっている二人を、比翼は呆気にとられたように眺めていた。 この二人は…。 こうもあっさりと人の感傷を吹き飛ばしおって…。 だが二人らしく、まったく持ってその通りだ。 比翼はなんだかおかしくなって、口元を歪ませた。 本当に愛しいよ、お前たちは。 「では、参加させていただこうか。その日は寝かせんぞ新一」 「だから、その誤解を招く言動をどうにかしろって」 「その日は新一の昔話でもさせてもらおうか」 「聞きたい聞きたい聞きたい」 「快斗ぉ!!」 聖なる夜。 やはり一人で過ごしたいけれど。 それでも、悪くはないなと、思えた。 彼らの心遣いがとても嬉しかった。 ああ、今年は言えるかもな。 「メリークリスマス」 |