それは偶然が重なった、突然の出来事。 「キッド・・・?」 「め、名探偵・・・?」 お互い、かなり間抜けな顔をしていたと思う。
アクシデント
組織が壊滅し、灰原の薬で元の生活へと戻った新一。 彼は、今日も学校へは行ったものの、呼び出しの為に三限目の途中で早退した。 その後、事件はあっけなく解決し、もう一つの殺人を食い止める事が出来た。 のだが、新一にしてみれば、むかつくほど簡単で、そして動機がまた些細な事で、そんな事で殺人計画なんかするなよと思うのだが、人というものは誘惑に弱い物だからしょうがないのかもしれない。 さて。新一は少しぶらぶらしながら、夜道を歩いていた。 事情聴取に付き合っていたので、日はとっくに暮れてしまっていたのだった。 送ってくれると馴染みの刑事達が言ってくれたが、今日は歩いて帰ると辞退し、今にいたる。 もし、今日事件の呼び出しがなければ、そしてこんなあっけないような事件でなければ、そして日が暮れてしまっていなければ・・・。 何より、今日が怪盗KIDの予告日である事を忘れていなければ、少しは違った方向へと変わっていたかもしれない。 さて、新一はもう少しで家につくというところで、なんと妖しい奴と遭遇してしまった。 しかも、なんと相手は拳銃なんて物騒なものを持っている。 どうすると考えた新一は相手が動くよりも先に動き、相手を転がしてその場から逃げた。 もちろん、逃げる最中にしっかりと警察へと連絡を入れる。 拳銃を所持しているだけで、銃刀法違反という、立派な犯罪だからである。それに、そこから叩けばいろいろ出てきそうな犯罪の匂いがする男だ。 現に、目撃者を消したと思うのか、追いかけてくるのが気配で分かる。 帰ったら隣や、送っていくといった事を断った警部達に何を言われるかと、少しうんざりとする新一だった。 やっと撒いたかと、物陰に隠れていた新一。 ふぅっと、そのまま反対方向へと歩き、帰ろうと思った。すると、今度はまたいろんな意味で物騒な人物とあった。 とっても夜の闇でも白くて目立つ気障でむかつくこそ泥がそこにいたのです。 だが、少し違っていたのは、何と彼が二人いるではないか! 「なっ。」 ことごとく、事件に好かれるのか、そして本人もここまで事件のようなものに巻き込まれるのかと、今日ばかりは思いました。 「名探偵・・・。」 「見つかってしまいましたね・・・。」 顔も声も同じ。だけど、どことなく雰囲気が違う二人。やはり、同じでありながら違う人物なのだろう。 「・・・。」 「名探偵?」 固まっているのか、一向に反応がない新一の目の前で手を振ってみた。 だが、どうやら完全にフリーズしているようだ。 「ま、しょうがないですね。」 「ドッペルゲンガーだとか、幻だとか言われると、俺は悲しいんだけど。」 この探偵君ならばありえる話だけに、片方の言葉に苦笑するもう片方。 ややこしいので、敬語をキッドと呼び、おちゃらけた彼を快斗と呼ぶ事にしておこう。今は。 とりあえず、いつまでもこの場所に居座るのはいいものではないので、キッドは名探偵を抱えてその場を後にする。少し不機嫌そうになりながら、快斗が続く。 実はというと、彼等二人は好意以上のものを新一に懐いていたりもする。 だが、鈍い彼なので、いまだにわかってもらえてないが。 そんな彼等は、固まって動かない新一をつれて、隠れ家へと帰るのだった。 「・・・あれ?ここどこだ?」 気がつけば、知らない部屋にいて、どうしてここにいるかという状況を理解できずにいたのだ。 「あ、やっと戻ってきた?」 「あのまま反応がないので、どうしようかと思いましたよ。」 「えっ?」 声がした方を向くと、そこには同じ顔がいた。そして、だんだんと途切れる前の記憶を思い出した。 「あ、お前等・・・。」 「その通り。私達は二人でキッドですよ。今までは単独犯だと言われていましたがね・・・。」 「それを、名探偵に知られちゃったんだよね。」 聞いて、なんて日だと思う。 最初は本当にいつもと代わりがなかったはず。 それが、可笑しな犯罪者と遭遇し、撒いたかと思えば今度はこんな目立つこそ泥と遭遇し、今では知らない部屋にいるではないか。 たぶん、間違いはなく彼等の隠れ家の一つだと思われるが・・・。 「あのまま置いておくのもいけませんし、何より説明しておいた方が、のちのち面倒な事にならないですむと思いましてね。」 「何より、せっかくだから名探偵を招待してみた。最近、招待を受けても来てくれないからさ。」 だから、ここに連れてきたのだと二人は言う。 いいのか、それで。探偵を呼び込んで、にこにこ立っているこの二人の男は馬鹿か?正体を知らせていいというのか? 「だいたい、俺の事は知ってるでしょ?前学校で会った時にあって何か覚ったみたいだったし。」 「そうだけど・・・。確信はなかったからな。」 しかし、目の前に立っているのは、間違いなくあのお祭り男である。 「絶対、馬鹿だろう?」 「そんな事はありません。名探偵以外には知られたことはありませんし、気配だけで確信するような方はいませんでしたから。」 「おい。いいのかそれ。俺も探偵だぞ?警察に知らせるかもしれないだろ?それに、気配が同じだって、証拠がない以上確信する事なんて出来ねーだろ。」 「だって、名探偵はそんな卑怯な真似しないもん。絶対、キッドなら現行犯逮捕派でしょ?」 確かにそうだし、元々興味がないし、どうしてだと問われると面倒なのでほぼ間違いなく通報はしないだろう。 しかし、いいのかそれで。 「いつか、怪盗KIDは二人いたって記事が出るぞ。」 「大丈夫。名探偵がいるから。」 もしもの時は、名探偵が変わりに演じるんだから。」 「は?」 何だか今、かなり聞き捨てならない事を聞いた気がするが、気のでせいだろうか・・・? 「これからよろしくね。だって、怪盗KIDを知った共犯者じゃない。」 「だ、誰が共犯者になったんだよ!」 「名探偵vv」 もう、怪盗KIDのイメージがつぶれまくりだ。絶対に今日は厄日だ。それか、誰かに呪われたんだと思う。 第一、こんなに事件に巻き込まれたり偶然が重なったりしてたまるものか。 「だぁってぇ〜。」 攻撃を仕掛けた新一。それを、慌てて避ける快斗だが、少々間に合わず、かすった。 しかし、かすったそれもまた、酷く痛いもので・・・。 だが、これからの事もあるので、微妙な顔になっているのだが・・・。 「KIDの事を知っても話さない。その時点で共犯者じゃない。」 語尾にハートマークがついているような気がしたが、気のせいだろうか・・・? なんだか、一緒にいるだけで疲れるし、おかしくなりそうだったので、そろそろ家に帰りたいと言えば、今日は泊まっていってというし、帰るのなら自分達ものと、なんだかどんどん言ってくる。 いったい、本当に彼等は何がしたいのか。 ただ単に世話を焼きたくて、側にいたいだけなのだが・・・。その事の真意を彼が知る日はまだまだ遠い。 偶然が重なって知ってしまった事。 それは、トップシークレット。 いつの間にか共犯者となったが、この先、あんな白い服を着て警察を欺くような事だけは避けたいなと思う新一だった。 |