その日、いつものように遭遇した事件で謎を解き明かした。
そこまでは良かった。

今朝から、少しふらふらするなと思っていたが、あまり気にしていなかった。


とうとう、帰宅途中で倒れる羽目になってしまったのだった。




風邪の日は安静に・・・






バタバタっと慌しい足音と共に、ノックもなしに扉を破壊する勢いで開かれた。

「うるさいわよ、黒羽君。死にたいの?」

「死にたくない・・・っていうか、今はそんなこといってる場合じゃなくて、新一がっ!」

と、快斗は抱きかかえている新一を哀に見せた。

そこには、ぐったりと息の荒い熱を持った新一がいた。

「まったく、工藤君は何を考えてるの!」

今日も事件があってそれに熱中していることは知っていた。連絡しろと言っていたので、一応昼間に連絡をもらっているから知っているのだ。

それなのに、夕方にはこんなことになっているなんて。もし、彼が見つけてこなかったら、まだ道で倒れたままか警視庁が大慌てになっているかのどちらかだっただろう。

「そこに寝かせて。」

「わかった。」

処置を施し、後ろで立って待っている快斗を振り返る。

「しばらく安静ね。・・・これ、薬。家の中で大人しくさせといて頂戴。」

「了解。」

「夜更かしも駄目よ。」

「もちろん。・・・本も与えないようにしておきます。」

「わかってるならさっさと帰って頂戴。続きがしたいから。」

と、机の上の放り出されて途中になっている実験器具を指差して言う。

ありがとうねとお礼を言って、快斗は地下室をあとにした。

「まったく、困った人ね。」







気がつけば、そこは自分の部屋だった。

「あ、眼が覚めた?」

「・・・快斗。」

「一応認識してくれてるようで良かった。・・・何か食べる?」

「・・・いらない。」

自分の体が熱いからか、額に触れる快斗の手がとても冷たくて気持ちがいい。

「快斗、うつる。」

「大丈夫だよ。新一の方が心配すぎてそれどころじゃないから。」

何より、体調が悪いのに倒れるまで気付けなかった自分が腹立たしい。

あの日は哀から事件で警視庁にいると聞いていたから、早退して迎えに行くつもりであの道を歩いていた。

帰る新一と入れ違いにならないように、彼が通る道を通りながらだ。そうしたら、見つけたのは倒れて熱でうなされている新一。

「もう少し、寝てなよ。」

頷き、目を閉じる新一。規則正しい寝息が聞こえ出し、安堵する。

「お疲れ様、新一。」






次の日、熱が下がった新一だったが、今度は快斗が風邪をこじらせた。

いや、風邪という可愛いものではなかった。

「インフルエンザ?」

「そうよ。まったく、どこからもらってきたのかしらね。馬鹿は風邪をひかないというのに。あ、インフルエンザは風邪というより伝染病になるのかしら?」

「哀ちゃん・・・。」

「というわけで、しばらく彼に会うことは禁止します。・・・私が心を込めて看病してあげるから覚悟してなさい、怪盗さん。」

恐ろしいことに、目が輝いている気がしたのを快斗は見てしまった。

新一に助けを求めても、きっと無理なのだろう。

「いや〜!!」

そして、しばらく新一と離れ離れの生活をした快斗だった。






あとがき
妹がインフルエンザになった。ので、そんなお話を書いてみようと思っただけの話。