家は退屈だ 毎日、同じような話をして、楽しみようのない だから、危ないと言われても外の世界がとても魅力的で興味を持つもので いつもこっそり家を抜け出して遊びに出かけた 危ないという理由が、自分の家の関係だとはわかっている 財力も権力もある貴族の家だ 恨みを持つものだっている だから、皆そう言うのだろう しかし、だからといって家に閉じ込められるのはまっぴらごめんだ そして、何度も抜け出したある日 その日は運が悪かったのかもしれない 「追えっ!」 「向こうだ!!」 「・・・っ、くそっ。」 子供と大人の足では、結果は決まっている しかし、彼はただの子供ではないから、それなりに対抗できた でも、体力は続かなくて、途中で転んでしまった 背後から追ってくる気配と声が聞こえる 慌てて立って逃げようとしたとき、茂みから何かが出てきて、茂みの中へと引き込まれた 慌てて逃げなければと思い、抵抗するも、しっかりと抑えられた身体 「大丈夫。・・・あいつらが行くまで大人しくしていてくれないかい?」 優しい、温かい声 人見知りをする方だったが、その時はすんなり相手の言葉を信用した そして、追っ手がどこかへ行ったとき、やっと相手の腕から解放され、はじめて相手の顔を見た 「しかし・・・追われるなんて。・・・何かしたのかい?」 「・・・。」 「どうした?・・・怖くて、声が出ないのかい?」 同じ目線の高さで話しかける、優しい笑顔 同じ男でも、格好いいと思える相手に驚き、見惚れていたから反応が遅れた 「あ、大丈夫。」 だけど、心配そうにしている顔を見て、それだけ答えた その時、ふと知っている気配がこちらに近づいてくるのに気づいた そのことに彼も気付いたようで、気をつけてと言って、彼は消えた 「まったく、探したで、シンイチ。」 「悪い。ヘイジ。ちょっと・・・な。」 苦笑いをしながら言うと、はよ帰るでと言って、小さなシンイチを肩に担ぎ上げた 相変わらず過保護な奴だなと思いながら、彼が消えた空を見上げた これが、新一と魔法使いの出会い そしてその後、さらに上をいく過保護な魔法使いと出会うのだった The Fantagy story−Reckless driving? がさごそ・・・。 大きな身体で白を身に纏った老人が部屋を荒らしていた。 「何やってるの、博士。」 「あ、シホ君。悪いんだが、あれはどこへやったかのぅ。」 そう言いながら、探し物がなんなのかを言う阿笠に、志保はため息をつきながら、手をすっと伸ばして、目を閉じた。 そしてしばらくして、どこかへ歩いて行ったシホが、彼の目的のものを持って戻ってきた。 「おお、これじゃこれ。すまんかったな、シホ君。」 「気にしなくていいわ。博士の物忘れは今にはじまったことじゃないもの。」 「ははは。そんなことはないぞ、シホ君。」 今日も、少し楽しそうなアガサ邸。 「紅茶でいいかしら?」 「ああ、シホ君の淹れてくれる紅茶は最高じゃからのぅ。」 適当にその場を片付けて、いそいそとアガサはテーブルへとやってきた。 しかし、楽しみにしていたお菓子は出ず、少しがっかりしたが、健康のためだからというシホの言葉に残念がりながらも紅茶を楽しんだ。 そんなアガサに呆れながら、ふと見たカレンダーで三日前にかかってきた電話のことを思い出す。 「そう言えば、今日だったかしら?」 「お、そうじゃの。もうそろそろ来るんじゃないかのぅ。」 時計を見て、三日前にここへ来ると言っていた騒音の元がやってくる・・・。 「今回は家を破壊されないといいわね。」 「そうじゃのぅ。」 過去に何度も破戒された経験を持っていたりする。 だが、それ以上に志保や阿笠もまた、この家の破壊を行っている原因の一つだが、二人とも言わない。 わかっているから、彼等にも大きくは言わなかったりする。 さて。その騒音の原因たる三人はというと・・・ 「新一。起きて下さい。」 「・・・ん・・・・・・や・・・・・・・・・すぅ・・・・。」 まだ寝ると、キッドが揺さぶっても起きる気配はなし。 「困りましたね。」 「キッド。新一は寝ている方が大人しくていいと思うけど?」 「そうですが・・・。」 こう、無防備に寝られていると、この手がわきわきと出そうになるので困っているのですと、真剣な顔で必死に手を押さえながら言うキッドに、さすがにコナンも呆れ果てる。 やはり、こいつは馬鹿だ。何度も言うし思うけれど、正真正銘の馬鹿だと。 「あー、どうしたらいいんだぁーーーー?!」 うおーっと唸ってその場でうずくまって叫びまくっている最強魔術師を横目に、修理してもらう予定のものを鞄に詰め込み、用意を進める。 叫び声がうるさいのに、シンイチは気持ちよさそうにすやすやと寝続けていた。 コナンも結構そういうところがあるらしいが、どちらかというとコナンはこの魔術師の腕は信用しているが、全ては新一のためであるが故に最終的には自分の身は自分でといった結論にいたり、新一程目覚めが悪いということはない。そのはず。 それを確認するには、今目の前で叫んでいる魔術師に聞くのが一番いいだろうが、別にそこまでして知りたいわけでもないし、煩いのに構うと余計に煩くなるので今は放っておく。 ちなみに、そんな三人は目的地の町、テイトのある宿屋にいたりする。 早く着きすぎたので、宿で半日つぶしていたのだ。といっても、ほとんどは夜であったが。 新一は本があったので満足していたが、コナンは退屈でしょうがなかった。 なので、少しばかり町をぶらぶらしていたら、ちょうど目に入ったもの。シホ・・・今は姿を世間から隠すためにアイと名乗っているアガサの家にいる少女にいいと思った。 「・・・嫌味で答えが返ってきそうだな。」 あまり、買いたくはないが、毎回お世話になっているために、たまにはいいだろうと、それを買って店を出た。 宿に戻った頃には、シンイチも本を読めたらしく、今日は早く寝ようねとキッドに寝床をこしらえてもらい、いそいそと就寝した。 ちなみに、その本は貸してもらっていたりする。 こんな感じで、それぞれ朝まで睡眠をとっていたのである。 しかし、朝が来てもシンイチは一向に起きない。結局、キッドが抱いたままということで、上記の文へと戻る。 もちろん、コナンを背中にのっけて、屋根を歩いていく。 街中を歩くと、シンイチの寝顔が一目について、見せびらかしたいけれど勿体無いという複雑な思いがあるのと、シンイチもコナンも人ごみがあまり好きではない。 なので、避けると自然にそうなるのだ。それにこの方が早いということもある。 「相変わらず、奇妙な家ですね。」 「博士の趣味が発明だからしょうがねーだろ。」 あれも博士が設計して作った仕掛けつきの家だからしょうがないと言うコナンに、かつてその仕掛けを見せられて実験にさせられたキッドは身震いをする。 もう、あんな思いはごめんである。出来れば穏便に済ませてさっさと立ち去りたい。 しかし、ここまで来てそうはいかないだろう。 「ほら、行け。」 「はい。」 「逃げるなよ。」 「・・・はい。」 宿に避難していようかと思ったが、それは無理のようだった。 アガサ邸で過ごしている最中。外の賑やかさに気づいた。 「何かあったのか?」 「さぁ?そういった情報はありませんでしたが・・・。」 人々が賑わい、どこかへと集まっていく。 窓から様子を伺っていた二人に、背後から答えが聞こえてきた。 「今朝、急に発表されたから、知らなくて当然よ。」 それは、ちょうど珈琲を入れに来たシホだった。 ついでよと、珈琲を二人にも私、本を読み続けている新一の前にも置いておく。 「今朝ですか。」 「そうよ。いくら情報が早い貴方でも、今朝のことまでいちいち耳を貸してられないでしょう。」 どうせ、ここの本の虫の相手をしていたのならねと言われて、苦笑するキッド。 「それで。どういったことがあるのですか?」 「どうやら、ここの新たな皇子のボディガードを募集しているみたいよ。あと、世話係みたいな雑用係をね。」 なるほどと納得する二人。 確かに、ここにはまだ成人を迎えていない皇子がいる。 それも、二人。本当は三人いるのだが、一人は女の子で、隣国との友好関係の為に養子に出ている。 「そっか・・・。」 試合のようなものをするのなら、それを見に行ってみたいですねと何やら行く気満々のキッドをよそに、窓から外を眺めて、ぼんやりするコナン。 キッドが新一に行こうと誘っている最中、シホはコナンに声をかけた。 「会いに行って来たらどうなの?」 「・・・行かない。」 「ま、それは貴方の自由だからいいけれど。」 そう言って、シホは地下でコナンの武器の修理をしているアガサの元へ、残りの珈琲を持って行くためにその部屋から出た。 「俺はまだ・・・。」 コナンの思いなど知りもせず、読書の邪魔をされたシンイチはキッドを蹴り飛ばし、追いかけていた。 「・・・彼等は気にしないわよ。貴方が何者であってもね。」 「・・・。」 「顔ぐらい、見せてあげたらどうなの?元ボディーガードさん。」 コナンは何も言わず、出て行ったシンイチ達を追いかけていった。 「まったく。・・・私もだけど、本当に、彼等は気にしないと思うわ。」 だからこそ、彼とは違って罪で穢れた自分は見せられない。そもそも、彼等と出会えたのだって、彼がいたからこそ。そして、自分が今生きているのも。 「貴方達の目的が、はやく終わることを願ってるわ。」 全て元通りにはならないかもしれないけれど、目的が終わらない限り、彼等はそのために旅を続けるだろうし、危険の中へ飛び込んでいくだろうから。 「おーすげー。」 キッドを捕獲し、一発頭を叩いてから、はたと自分が今会場の近くまで来ていたことに気付いたシンイチは素直な感想を述べる。 「シンイチィ〜、くるじい・・・。」 「あ、わりぃ。ついつい。」 思い切りネクタイを攫み上げていたため、首が締まっていた。 「危うく死んでしまうところでしたよ。」 「はぁ?大げさな。」 「・・・ま、いいですけどね。」 今生きているし。 さて、二人はこの盛り上がりがいったい何なのかと、会場へと近づく。 たかだか皇子の護衛。確かに腕に自信のある者達にとっては、よい職だろうし、報酬もいいだろう。 だが、それだけでここまで集まるものだろうか。二人はこの大会は何があるのかと受付周辺にいた男に聞いてみた。 「何?知らないのか?そっか、お前等は旅人か何かだな?」 「ええ。つい数時間前にここへ来たんです。」 「そうかそうか。なら、教えてやろう。この国には、たくさんの皇子がいてな、成人していない皇子が二人。」 「そうみたいだね。」 「お、知っているのか。ま、皇子のことを知らない者はあまりいないからな。」 それだけ権力と資源を持つ場所で、他国から同盟を結びたいというのが多いのだ。 とくに、この国一番の町テイトでは、商売の為にでてくる者達が多い。 と、話がそれてしまったが、その国の皇子の護衛というのは、大変な名誉をもらうことでもある。 もし、自分が仕えている皇子が高い位、王にでもなれば、将来を約束されたも同じ。 皇子の護衛というだけでも、その皇子が何か問題を起こしたり死ぬ事がない限りは安泰とも言われているぐらいだ。 「そして、なんと!今回は選ばれた者、つまり優勝者には王家の宝でもある剣が与えられるのさ。」 いつもなら、選ばれた後、他の皇子の護衛と王を守る護衛に認められてからなんだがな。」 ま、この大会も三年ぶり。なんでも、一番強いと言われた王の護衛がやめてしまったらしくて、その捜索をしていて、何もなかったらしいと男は言った。 その話をしている時に、コナンの様子が少し変わったことにシンイチとキッドは気付いたが何も言わなかった。 二人にはわかっていたからだ。その護衛が誰であったか。 止めた理由ははっきりとわからないが、この国の王女の一人が関わっているであろうことも知っていたから、何も言わなかった。 個人の問題でもあるから、口は出さない。本人が話すまで。 男はえらく陽気にしゃべって誰かに呼ばれて立ち去った。 「・・・どうします?」 「そうだなぁ。」 「・・・。」 護衛など、面倒なことには関わりたくないから出るつもりはない。 だが、見るだけはいいだろうと、中に入ろうとした。 すると、一人の少年がこの大会のことでの情報紙をばらまいていた。 一枚拾うと、そこには勝者に護衛の任務と剣を与えるということ。今回一番有力な人物数名の名前と写真が貼られていた。どうやら、賭けが行われるらしい。 「出ない奴の道楽だな。」 「そうで・・・・・・シンイチ。」 「・・・ああ。」 二人は気付いた。与えられるという剣の写真を見て。 「どうやら、出ないというわけにはいかなくなりましたね。」 「・・・。」 「出るか出ないかは、コナン。貴方は貴方で決めて下さい。」 「大丈夫だ。」 「コナン。」 「出る。お前等だけじゃ心配だしな。何より、お前等の補佐はしてやると最初に言ったからな。」 三人は、決して手の内を明かさない。時が来れば話す。その均衡は守られてきた。 だが、旅を共にする仲間として、何かあれば協力をするという約束を交わした。 約束がなくても、互いが助け合って過ごしてきたため、今更だし、約束は関係ない。ただ、手を貸すだけ。 きっと、そろそろ潮時なのだろう。コナンだけではなく、シンイチやキッドにとっても。 この旅をしてきた時間、お互いの素性を詳しく知らず、あえて聞こうともせず過ごしてきた。 だが、いつかはその目的の場所にたどり着けば、自ずと話さなければいけない。無意識に三人を繋ぐ絆が、黙っていることは出来ない。 「二つ必要なんだろ。」 「そうですね。」 三人が出れば、準決勝まで勝ち残れば倒す相手は一人だけ。 「決まったんだから、行こうぜ。」 どうせ、受付をしなければいけないだろう。 「そうですね。では、行きましょうか。」 三人は、受付をするために入り口へと向かった。 子供に細い男二人なので、かなり馬鹿にされたが、無視しておく。 まぁ、何もしないということはないが。 「人を見た目で判断する馬鹿は弱いんだよね。」 「口だけでうるさくて嫌いだ。」 「ま、言ってもわからない馬鹿でしょうから、気にしないのが一番でしょうね。」 三人は奥へと入っていく。 受付の男は哀れなことに、厄介な彼等を馬鹿にしたために、髪と服を消され、恥さらしで笑われることになった。
|