「あ、博士?」 コナンは誰かの場所へ連絡をいれているようです 相手は、コナンに合わせた武器を開発し、売ってくれる武器商人のアガサ だが、もともと発明家志望だった彼が博士と呼んで欲しいというので、コナンは今でも博士と呼ぶのだった 「どうしたんじゃ?」 「悪いんだけど、また・・・。」 「そうか。わかった。そうじゃな・・・三日後ぐらいに待ってるぞ。」 「サンキュ。」 一つ駄目にした武器の修理と、新しい何かをつけたもらおうとそれを片付ける 実は、それは組み立て方次第で、まったく別の機能を持つすぐれもの コナンはその時に合わせて素早く組み立て替えて敵を倒す、剣士 だが、その愛用のものが駄目になっては困る なので、アガサに連絡を入れたのだった ちなみに、現在三人が居る場所はというと、森の中だ しっかりとキッドが立てたお家の中 結構住み心地がよく、しばらく滞在していたのだった FantagyStory〜The dangerous object ふと、その人物は書類から視線を上げて窓の外を見る。 「帰ってきましたね。」 遠くの空からこちらへ向かってくる黒い影。それは、大きな鳥のもの。 「どうでしたか、ワトソン。」 窓から入ってきた鷹を肩に乗せ、どうだったかを聞く。長く生きて霊力を得た鷹のワトソンは、言葉を話す事が出来るため、サグルに頼まれていた内容を伝えた。 『・・・いた。先日、爆破した宿があった町の側にあるあの森だ。その中に作られた家の中だ。』 「あの森に家なんかはなかったと思いますが?」 そもそも、そこは人が住めるような場所ではない。 魔物や盗賊など、厄介なものが住み着いている為、誰も近づかなくなった森だ。 そんなところに民家があるはずがないし、野宿が嫌いな彼がいるようには思えない。 『あの魔術師が作った。お前も知っているだろう。世界で名を馳せる魔術師、キッドだ。」 「・・・本当ですか?」 前から報告で聞く同行者の名前。 『ああ。前にも言ったように、惚れた弱みで、見ている分にはかなりよわっちいぞ。結界の強度は強いけれどな。』 「そうですか・・・。」 さて、どうしたものかと考えながら、今後の予定はどうなっているかとちょうど部屋に入ってきた者に聞くサグル。 まだまだ、彼の苦労は耐えない。彼が帰ってくるまで。帰ってきても、脱走するたびに。 「一刻もはやく、見つけないといけませんが・・・。」 きっと、彼はすぐに移動してしまうだろう。いつも、報告が届いて追いかける頃には、姿を消しているから。 そして報告を聞くたびに見つけてしまう足跡。というか、被害の数。 まぁ、大事はなかったようだし、三人をそれぞれを追う刺客がいるからしょうがないのだが。 三人とも、巷では名の知れた者ばかり。だからこそ、腕比べや別の目的で狙われる事が多い。 「・・・書類は溜まる一方ですね。」 逃げてここずっと留守にしたままの彼。 自分も少し逃げたい気がしてしょうがないが、真面目に主が留守中の書類の片付けにあけくれるサグルだった。 それでも真面目に片付ける彼は優秀な彼の世話係だろう。 さて。そんな一人の男の苦労など知らず、原因である彼こと、シンイチは相変わらずのん気に本を読んでいた。 「・・・うるさい。」 「はう。」 構ってほしくていろいろ声をかけていたキッドだが、一言言われた言葉が突き刺さる。 しっかりとキッドによって渡された珈琲のカップは持っているシンイチは、それを飲む。 「・・・もうすぐで読み終わるから、それまで大人しくしてろ。」 「わかった。」 やったぁと周りから見たら丸分かりのその笑顔。好きとすでに本の世界に戻ってしまったシンイチを腕に抱きしめながら、構ってもらえるまで大人しく待つキッド。 「・・・やっぱり主人とペットの図だな。」 アガサに連絡を入れてこの部屋へと戻ってきたコナンが見た光景について一言感想を述べる。 「あ、コナンちゃん。どうだった?」 「三日後だ。」 「じゃぁ、二日後にはここを出ないとね。・・・出発の用意は大丈夫?」 「元々荷物はほとんどないだろ?」 それもそうかとキッドは思い、珈琲を入れようかと聞いてみる。 だが、いらないと答えて、コナンは自分で珈琲を入れるべく、キッチンへと向かうのだった。 そして入れて飲み終わった頃。 「・・・よし。なかなかのものだったな。」 少し満足そうなシンイチ。やっと読めたんだと、閉じられた本を取り上げてその場から消すキッド。 「おい。」 「えー、いいでしょー。構ってよー。」 擦り寄ってくる男に呆れつつも、どうしてか完全には拒めないんだよなと思いながら、好きなようにさせておく。 気が済んだら、大抵離れていくからだ。 それに、あまり構わなすぎると、ぐれたり強行手段をとられて迷惑なのである。 それは過去に経験済みなので、ほどほどの扱いをしている。 「で、今度はいつ次へ移動するんだ?」 「二日後ですよ。目的地は今アガサ殿がいるテイトです。」 「そっか。」 そこなら、大きな図書館があったよなぁと考えるシンイチ。すでに思考は再び本に乗っ取られていた。 夕食時のこと。 鼻歌交じりに夕食の用意をしていくキッドが、ふと結界内に入ってきたものに気付いた。 それは、いつも自分達の近くに現れては去っていくもの。 害はないので放っておいたが、まっすぐこちらに来ているようだ。 「シンイチー。お客さんだよ。」 過去に数回接触があったので、すでにお客と呼ぶ。 「んー。」 「コナンちゃん。そこの窓開けといて。」 「はいはい。」 手入れしていた予備のそれを机の上に置いて、窓を開ける。すると、すっと黒い塊が入ってきた。 「シンイチ様。」 現れたのは大きな鷹。 「・・・お前も大変だな。」 「コナン様。しかし、これが仕事なのです。」 最初は知らなかったが、シンイチはかなり有名な屋敷の生まれで、この鷹はその屋敷に仕える、簡単に言えばシンイチの世話係件執事の男の使い魔なのである。 「ついでに用意したし、食べませんか?」 トレイに四人分乗せてこちらにやって来たキッド。 今夜は暖かいスープらしい。おいしそうな匂いがシンイチを誘い、本をパタンと閉じる。そこでやっと、鷹の存在に気付いた。 「また来てたのか?」 「・・・シンイチ様。」 また、気付いてもらえていなかったのですねと、肩を落とす彼を、少し哀れに思うキッドとコナン。 この二人であっても、シンイチの本の邪魔をしては半殺しにされるし、本に勝つことなど今のところ出来ないのである。 とくにキッドなんて、構ってほしいのに構ってもらえず、毎日涙を流しているのだが、それも全て無視されている。 「で、何の用だ。ワトソン。」 用事があるんだろと聞かれて、本題に入った。 いつも、姿を見せるときは白馬が寄越す情報を持ってきているときだ。 連れ戻そうと当初は考えていたが、今も考えているかもしれないが、最近はあまり追いかけてこないし、信頼できる情報なので来る事を許しているのである。 「前回の町の被害。もう少し大人しくして下さいということ。」 「・・・あれはな、俺はキッドに任せたから知らない。」 「あはは。でも、あれぐらいでちょうどいいんですよ。」 「あれぐらいしないとわからない人だからな。してもわからない人達ばっかりだし。」 と、破戒の原因の二人からの意見。 「まぁ、それは終わったことですし、今更言ってなおるのならとっくになおっているでしょうから、これ以上は何も言いませんが・・・。」 白馬ともども、半分諦めているらしい。 「シンイチ様のお命を狙う輩が数名。動き始めたとの情報が入りました。・・・いつ、出発されるおつもりで?」 つまり、ここにいるのだという情報が知られているということ。 「二日後の予定ですよ。」 「急なのか?」 「できれば、早急に・・・。」 ワトソンの言葉に、うーんとキッドは悩む。歩いていくのならちょうどいいだろうが、この二人は歩きたがらない。ということで、自分が車を作るか、自分が飛んで行くかなど、とりあえず自分が動かないといけない。 だが、自分が動けば一日も経たずに目的地へとついてしまう。そうなると、博士の方にも予定があるのだから迷惑だろう。 「どうしようか。シンイチはどうしたい?」 キッドはシンイチ中心なのだ。シンイチの意見がまず通る。 「どっちでもいいぞ。」 来ても、お前等が綺麗に片付けてくれるんだろと言えば、もちろんと、二人は答える。 「たまには、ストレス発散したいし。技術を試すのにもちょうどいいしね。」 「シンイチに手を出す不届き物に手加減などしません。」 そう、はっきりと言うのだった。まぁ、こんな二人だからこそ、白馬も連れ戻したいけれど下手に連れ戻したりせず様子を見ているのだが。 「まぁ、一応は伝えたからな。」 夕食ご馳走になったと、食べ終わって頭を下げて、開けられたままの窓からワトソンは飛び去った。 「あいつも大変だな。」 「どっちが?」 「・・・。」 答えはなかった。 ただ、キッドが淹れてくれた珈琲を味わって、今の問いを無視するシンイチだった。 ぐっすりと睡眠に入っている三人。 もうそろそろ明け方だという頃だった。外は大分明るみを見せている。 そんな時間に、お約束というのかパターンというのか。 迷惑なお客さんたちが家を取り囲むように周りに現れたのだった。 「思ったよりも早かったですね。」 「ぶっ飛ばしたいけど、これ壊れてるからなぁ。しょうがないからこっちで我慢するけどね。」 「・・・片付けてこい。」 二人はすぐさま戦闘準備を完了させて、シンイチは一言言ってから任せて再び布団の中で眠る。 キッドの温もりがなくなったぶん、少し寒くて身体を丸くして布団の中に潜る姿を見て、すぐに戻ってこないといけませんねと、やる気充分のキッド。 相手がキッドの結界に穴を開けて侵入してきた。なので、それなりの術師なのだろう。 まぁ、この結界は雑魚かまだ見込みがあるかの差を見極める結界でもあるので、見込みのあるが、キッドにしては弱い術師である。 だって、二重にかけられ、その結界に気付かなければ、『結構見込みのある奴』として部類するものだからだ。それにまったく気付かないのだから、それなりに見込みがあるだけなのだろう。 弱い奴なんて、面白くないとぶつぶつ言いながら、階段の手すりを滑り降りてきたコナンがすぐに矢を放ち、階段の上からその矢を目印に糸を作り出して編み込み、作り出された網で彼等を捕らえる。 「まずは一匹。もう一匹も終わりっと。」 可愛い顔をしているコナンがにやりと相手に笑みを見せた瞬間、ザクッと細身の長い刃で相手の持つ武器を破戒し、それの持ち手にあるボタンをカチッと押してすぐに持ち替えて、長い棒となったそれの先で突き倒し、そのままそれを一回点させて、背後にいた別の者を横倒しにした。 その間に、キッドは背に靡く白い布を返して、それに目が言っている間に背後に回りこんで首に手で一発、背中に蹴りを入れて、そのまま回し蹴りで背後の者を倒す。 「ふぅ。片付いた?」 「まだいるみたいですけど。」 どんだけいるんだかとつぶやいてキッドは相手にしようとしたときだった。 「おい。」 「へ、あ、はい。何でしょう?」 すでに階段から降りているキッドは、しっかりと聞こえたシンイチの声に耳を傾ける。そういうところはさすがとしかいいようがない。 「ちゃんと片付けろと言っただろうがっ!」 階段の上から一人けり落としたシンイチ。どうやら、二階の窓からあの男が侵入して、シンイチの眠りを妨げたようだ。 綺麗な寝顔を見られたということで怒りと同時に、シンイチのお怒りに少しあたふたするキッド。 その間に、背後にいた男がシンイチに銃の焦点を合わせた。 狙いはシンイチなのだ。シンイチさえ殺せば彼等の任務は終わりなのだ。だから、狙って打つ。 気付いたコナンがその男の武器を叩き落として意識を奪ったが、弾はシンイチ目掛けて飛んで言った後。 キッドも急いだが間に合わない。 だが、相手はシンイチ。ただで殺されるような性格はしていない。 咄嗟に交わして持っていた本で避けた。 「「あ・・・。」」 キッドとコナンは冷や汗ものになる。 弾は本に当たった。シンイチにまでは届かなかったが、本には弾が刺さって穴が開いている。 ちなみに、その本は希少価値があり、なかなか手に入らないもので、やっとキッドが手に入れてきて、今日朝食を食べた後に読もうと思っていた本だったのだ。 「知りませんよ、貴方達。」 「殺人現場見れそう。」 そんな二人の言葉の意味が理解できず、シンイチの命を狙おうとしている。 「お前等・・・。地獄へ案内してやるよ。」 それはとても綺麗な笑みでした。 だが、相手も、何故かそれ以上足を踏み込めませんでした。 「消えろ。」 一言言って、指で宙を弾けば、一瞬で倒れいている男達もろとも、彼等は綺麗にその場から消え去った。 どこに飛ばされたかは知らないが、きっと生きて帰れない可能性の方が高いような場所だろう。だが、自業自得だ。 「はぁ・・・。」 男達を消し去っても、本は戻ってこない。怒りよりもショックが大きかった。 せっかく楽しみにしていたものだ。読み終わったらコナンも見せてもらおうと思っていたりする本。 近づいたキッドがシンイチを抱きしめて、その穴の開いた本を手に取った。 「キッド?」 「そんなにがっかりしないで下さい。シンイチには笑顔でいて下さる方がうれしいですから。」 そう言って、その本に魔法をかける。すると、まっさらの傷も穴もない本に戻っていた。中を見ても穴が開いている部分の字が消えているということはない。 「キッドっ!」 ありがとなと腕の中にいたシンイチは、キッドに腕を回して抱きついた。 「キッド、大好き。」 そういって、ご褒美としてなのか、口にキスをするシンイチ。 喜んでもらえたし、キスしてもらえて、キッドもご機嫌。 下ではコナンは相変わらず呆れていたけれど、二人は気にしない。 キッドはコナンに声をかけて、シンイチを抱き上げて再び部屋へと戻るのだった。 その後、一日は平和な時間だった。 そして、予定より早いが、夕食後に出発の準備をする。 家の戸締りを一応して、二重の結界を仕掛けておいて、三人屋根の上に乗る。 「シンイチ。」 腕を出せば、大人しく従って背中に腕を回して抱き上げられるシンイチ。背中にはコナンが飛びついて、出発用意完了。 「しっかりと捕まっておいてくださいね。」 二人ならば大丈夫だろうが、一応いつも言うキッド。 ふわりと、足を浮かせ、夜の空へと飛び出す。早めに出る理由は、今夜綺麗な月と星が見えるという事で、鑑賞もかねて移動を開始する事にしたのだ。 シンイチはふと、あの人から言われた事を思い出した。 「なぁ。キッド。」 「なんですか?」 少しだけ黙ってから、シンイチが口にした言葉。 「死んだ人はあの星の一つに変わって地上の残された者達を見守る。って、本当にあると思うか?」 シンイチにしては珍しいもの。きっと、誰かがシンイチに言った言葉なのだろう。その言葉はシンイチ自信のものには思えなかったから。 「そうですね。・・・そう考えたら、それはそれでいいかもしれません。」 死んでも尚、気にしてくれるのなら。その人の分も精一杯生きようと思うから。その人が無理だった目標へと向かって、それを見せてあげられるのなら。 「そっか。」 キッドを見上げていた蒼い瞳は閉ざされて、キッドの胸へと顔を押し付けるシンイチ。 優しく見つめ、まっすぐキッドは目的地へと向かうのだった。 三人の旅を見守るように、きらりと星が輝いて流れた。
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