一人は闇に覆い隠された真実を求め もう一度彼の人に会える事を願い 一人は闇に葬り去られた真実を暴き 己の持てる力を持って終わらせる事を願い 一人は闇に消えようとする光を取り戻し 己が願う望みを追い求め、叶う事を願い それぞれ三人は思いを胸に秘め、旅をする FantagyStory〜The strength? 今日は快晴で、風もおだやか。とてもいい環境に恵まれた日。 そんな日に、ある宿の部屋から聞こえてくる声があった。 「シンイチ。」 「うるせぇ。」 べしっと見事な音が聞こえるぐらい、綺麗にキッドの顔に、既に読まれて積まれていた本の一冊がヒットした。 ぱさっと落ちた本を取って、ぶつかった場所を手で擦るキッド。 「痛い。」 一言言ってから、めそめそと泣きはじめた。その姿は、大の大人が、それも男がしても可愛げもなければ気味が悪いだけであった。 そんな彼を無視してシンイチはひたすらに本を読み続ける。 「ひどいよぅ。コナンちゃ〜ん、そう思わない?」 無視されたことで、ひどいでしょとコナンに同意を求めようとしても、呆れた顔でため息をつき、さらに冷たく突き放す一言を言う。 「お前、本当に世界一の最強の術師なのかよ?」 どうみても、そして考えてもただの馬鹿じゃねーかと言われて、ショックで固まるキッド。シンイチのこともあって、ダメージは大きい。 だが、ここでへこたれて沈んだままにならないのが最強の術師なのか、復活して言い返す。 「これでも、かなり名の知れた術師です。勝手に名前が知られたので、私自身はあまりよくわかりませんが。」 大抵、名の知れた術師には勝ちましたから、他ではシンイチ以外に強い術師は見かけませんがと何でもないように言う。 もし、負けた術師達が聞けば、ぶち切れて『貴様・・・っ!!』っと、襲撃にきたかもしれない。だが、それを返り討ちにするだけの力は持っているので、キッドは気にしない。そんなところは、やっぱり最強術師の名で知られるだけのことはある。 すでに、なんどもリベンジに来る者がいたし、それをあしらって追い返すことも多かった。なので、最近は周りが静かで平和だと彼は言うが・・・。 「・・・でも、馬鹿だな。最強でも馬鹿だったら救いようがないな。」 「ひどいぃ!」 二人ともひどい。そしてとうとういじけた。それはもう、黒いどろどろしたオーラを背負って隅っこでいじける。 ぶつぶつと、これでも頭はシンイチやコナンと同じかそれ以上にいいんだもんとぐれる。確かに、頭は良いかもしれない。体力は二人より上だし、技術も二人に劣ることはない。だから、足手まといにならないので一緒につれているのだが。 中身は幼稚園児かというぐらい、情けない姿に、しかもそんなどよどよしたオーラは、二人にとってはうざいものでしかない。 「・・・いじけたけりゃ、外でいじけてこい。うざい。」 「ひどっ!ひどい。こんなにシンイチに愛を捧げているのにぃ。」 「いらん。迷惑だ。」 「あ、やっぱりそうなんですねっ!あの狼がっ!悔しいです。」 うがーっと一人叫ぶ。恋敵だという点では、しっかりと元恋人だったような話をシンイチから聞いているからだ。実際のところは本人しかわからないことだけれど。 さっきまでいじけていたかと思えばこれだ。まぁ、こんな奴だから飽きないし、たまにからかうのも楽しかったりするのでいいけれど。 いい加減、本を読むのには邪魔である。黙らせる方法はないかと考えた末、シンイチは行動に出た。 「キッド。」 ちょっとこいと、手でちょいちょいと手招きする。呼ばれてうれしいキッドは近づいてくる。滅多に名前を呼んで手招きなんてされないからだ。この辺が恋人関係よりも主従関係に見えるところ。 そして・・・。 「・・・///。」 「これで文句ないだろ。・・・しばらく黙ってろ。」 「シンイチ〜。もう、大好きだよ。」 シンイチから頬だったがキスしてもらえて、好きーと身体に巻きついた。しかも、犬のように擦り寄ってくる。 まぁ、大人しくなったし、黙ったし、巻きつくだけでこれ以上は邪魔しないだろうから、これでいいやと放っておくことにした。今のシンイチにしてみれば、邪魔がなければいいのだ。 それに、シンイチからしてみれば家庭が家庭だったのでキスなんて挨拶代わりだし、こいつは自分の事が好きらしいので、大人しくさせるには一番よい方法なのでたまに使われていたりする。 「・・・主人とペットだな。」 そんな二人を横目に、コナンは武器の手入れをするのだった。 そんな、三人の平和な午後の時間。 夕食を食べた後、お風呂入るのが面倒だと言うシンイチを引っ張ってキッドはお風呂に入り、その後にコナンも入って、就寝することにした。 もちろん、キッドはシンイチと同じベッド。まぁ、人肌は嫌いではないシンイチは今まで気にすることなく一緒に寝ていた。なので、たまに調子に乗る事があるが、その時はしっかりとお仕置きされるので、最近は少し学習したのかそれとも別の理由なのか、手を出す事はなくなった。 シンイチからしてみれば、大人しくしていれば、寒い冬なんて時にはキッドの体温は暖かいので湯たんぽの扱いなのだが。キッドはわかっていても、冬は自分からくっついてくれるシンイチに幸せを感じているので、どっちもどっちなのかもしれない。 そんな二人を見て呆れているのはコナン。横目で見ながら最後の武器の手入れを終わらせて片付けて寝る事になった。 さて。寝静まってからしばらく経って・・・。 「・・・迷惑な人はまだいるみたいですね。」 「そうだね。」 「・・・うざい。」 この部屋に近づいてくる複数の気配に、気分最悪のキッドとコナンと、睡眠を邪魔されて怒りがMAXのシンイチが気配を伺う。 「シンイチは寝ていますか?」 「・・・じゃぁ、寝る。」 キッドに任せると、されるがままの状態に。といっても、こんな時に手を出そう何てことをキッドは考えないが。 シンイチを抱き上げて、ベッドから降りる。コナンも、寝る前にしまい込んだそれを取り出して構える。 「お邪魔な方々の排除といきますか。」 ばんっと扉が開いた瞬間、突風が相手を襲い、地響きがしたかと思うと、相手は黒焦げになっていた。 「さすがですね。」 風を起こして近づくのを防いだキッド。 「博士はこういうことには天才だからね。」 博士に作ってもらった、火炎放射器の処理をするコナン。 「とにかく、逃げましょうか。」 腕にはシンイチ。いつものようにコナンは武器を収めた鞄を持ってキッドの背中に飛びつき、キッドはコナンが背にいることを確認して窓から外へと飛び出した。 最強の魔術師の名を持つキッドにとって、空を飛ぶ事は簡単なことだった。 羽根もないのに、空を自由に飛ぶ。逃がしたかとわらわらと集まる者があるので、コナンに頼んで、一発お見舞いてもらった。 たぶん、綺麗にぶっ飛んだ事だろう。音がすごかったので。 「・・・さて。これからどうする?」 「このまま次の町へ行きますか?」 「確か、この先はなかったような気がするが?」 「で、では、森で野宿・・・。」 にっこりとそれは笑ってないコナンの笑みがキッドの側にあった。 「お前、ちゃんと家をつくれよ。」 「はい。」 最強魔術師は、もしかしたらシンイチ以外に、コナンにも弱いのかもしれない。 こうして、また魔術師の秘密のお家が増えるのでした。
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