前日…

思ったより積もった埃に苦戦はしたが、綺麗になった部屋で、料理をする。面倒だからしないだけで、そこまで下手ではない二人はあっというまにディナーを作り上げる。

明日の為の仕込みも済ませ、テーブルにつく二人。

「今日はどこもキッドのニュースばっかりだ。」

「本当、人気者ね。寄り道してる暇があったら、ファンサービスでもしてきたらいいのに。」

「無駄にファンサービスやたらしてるじゃねーか。」

「そうかしら?鈴木さんには足りないみたいだけど。」

「ああ…あれは例外だろ。」

彼氏ができて落ち着くかと思えば、相変わらずの様子で、かといって彼氏である男もある意味例外的な存在で、上手く言っているのだと思うが…どっちもミーハーと強敵求めることを妥協しないと一緒にいることはできそうにない。

だが、園子はあの性格だから園子であり、京極真も格闘馬鹿だから京極なのだろうけど。

「さて、俺は出かけてくる。」

「あら、こんな時間から?」

「ああ。昨日借りたこれ、高木さんに返しておこうと思ってな。」

そう言って見せる捜査資料。

「明日はこの通りキッド一色だしな。あんまり警視庁の中に入りたくないしな。」

「そうね。気を付けていってらっしゃい。」

片づけを任せ、マンションを後にした新一は空を見上げる。

「今日も綺麗な月夜だよな。」

明日も晴れたら、あの怪盗にぴったりの月夜になりそうだ。そんなことを考えながら歩く。

高木に面会し、返却した。送るという少しだけ外の寒さを思って誘惑にかられたが、彼はあのマンションを知らない為に、言葉に丁重に断りを入れて歩き出した。

しばらく歩き、後をつける気配に新一は足を止める。

「それにしても、人をつけて何の用だよ。」

警察への潜入なら、逆だぜと、背後に話しかける。

「やっぱり気づいてたのね。さすがだわ。」

「お前に褒められても嬉しくねーよ。で、要件は何だ?」

組織のことか、それとも、他の企みがあるのか。

「組織は関係ないわよ。貴方がよく知ってるでしょ?」

あれだけ、盛大に暴れてくれたおかげで、縮小気味よという女をじっと見る。

「じゃあ、こんなとこで何してるんだよ。」

「今年最後に、せっかくだから貴方の姿を見ておこうと思ってね。」

見納めに。そういうと何だか縁起悪く聞こえて眉をしかめると、女は笑ってまた近いうちにと去って行った。

明日はクリスマス当日。面倒なことが起こりそうな予感がする日の前日に、厄介な女と会ったもんだと思い、新一は足を進める。

帰ったら、きっと彼女は気付いて、いい顔をしないだろう。

「あいつら、本当仲あんまよくないよな。」

絶対、彼女がいるときには姿を見せない女。敵ではあるが、そこまで嫌えない自分も悪いのかもしれないが。

帰宅すると、温かいミルクがでてきた。

もちろん、いただいた後に、不機嫌そうな顔をしていたので、気づいているが、口にしないので新一も口にしない。

明日という聖夜の前の幻をみたのだと思うことにして。

これが、クリスマス前日の出来事。