死神の日記その2 5月4日 今日、新一の誕生日。 快斗や哀、幼馴染やらなにやらやってきて、思い切り騒いでいた。 しかも、相変わらず黒いのは新一にべったべたにくっついていた。 わかってはいるが、何だかたまにこちらを見る目が腹立たしい限りだ。 こんなことなら、彼に譲らず、奪い去れば良かった。 と、今日は何度も思った。 それにしても、見えないというのは結構面白い。 客は皆見えないものだから、ちょっかい出すのが少し面白い。 たまに、殺気に近い視線が背中に刺さるのはほどほどにして引っ込んだが。 こんな日もあっていいだろう。 新一がこんなにも笑っているのだから。 追加。 とりあえず、これだけ騒ぐと片づけが大変そうだ。 盛大にどんちゃん騒ぎすることになった工藤邸。今ではしんと静まり返っていた。 「まったく、いい迷惑だったわ。」 「たまにはいいんじゃないか?」 「まったく、貴方も貴方よ。見える私達にとっては心臓に悪いわ!」 と、隣でふよふよ浮いている死神に文句を言う哀。 「しかし、地下室に篭るよりもとても健康的だと思うがな。」 「・・・。」 横目でチラリと睨みつけ、そっぽ向く哀。 「寝ないのか?」 「片づけが残ってるでしょ?」 リビングでは、散らかし放題で、騒ぎ疲れた面々が転がるようにして床の上で眠っている。 何気に、本日の主役である新一は、快斗に連れて行かれて二階で就寝している。 「明日でもいいだろう?」 「まぁ、ね。・・・片付けは彼等にしてもらおうかしら。」 床で眠る祝いに来た客達を一通り見下ろし、哀は部屋を出た。 「帰るのか?」 「ええ。明日、またくることにするわ。」 あそこでは、きっと眠れないだろうから。 バードは家の中に入った哀を見送り、新一たちの部屋の窓を見上げる。 このまま、また一年、未来を迎えられたらいいなと思う。 まだ、彼等の寿命はきていない。それを邪魔する奴等がいれば始末しよう。 「だからさ、邪魔しないでくれる?」 バサッと、翻す黒いマント。 振り返ればそこにいるのは黒い影。 「あっちで大人しく罰を受けててくれ。」 鎌を大きく振り下ろし、影を切り裂いた。そうすれば、影は奇妙な悲鳴をあげて消える。 「彼等の魂は、お前等みたいなのには勿体無い。」 取り出したパソコンから、脱走者の送還完了のメールを送る。 すると、すぐに了解という簡潔な答えが返ってくる。 「それにしても、最近は多いな。」 逃げ出す数もだが、ここへ集まる数もだ。 バードがいるということもきっと原因の一つだろう。それ以上に、輝きの強い魂を持つあの二人が揃っているのも問題だ。 「さて、俺も寝るかな。」 休める時に休んでおかなければ、彼等を守ることはできない。 勝手に使わせてもらっている客間の一つに入り込み、そこで夜を明かすのだった。 |