人は一人では生きてはいけないんだよ それはオレ達のようなものでも同じ 人という主がいて、いろいろ学事もある 人との交流を得ながら、自然の中で生活していく事もある 助け合って生きて行く それがこの世界での理だった だけど、オレのようなのは誰もがほしがり そして自由を奪おうとする オレは自由が好きだから 人との交流は持つつもりでも自然の中でのんびりと過ごしたかったんだ それを、黙って見過ごしてくれない酷い人達 でも、だからこそ出会ったのかもしれない オレがはじめて自ら自由を捨ててまで一緒にいたいと思った人と出会えたのは ちょうど、負われて怪我をしていた時に、手当てしてくれた人 オレが何ものかなんて気にせずに笑いかけて、励ましてくれた人 その人の笑顔が、オレを変えた そしてオレはその人にずっとついていくと思った その時間がとても好きだから でも、いつからだっただろうか 一緒にいるだけじゃ、物足りなくなってしまったんだ あの人…彼の全てを手に入れたいと思うようになった 彼にもっと感心を持ってほしいと思うようになった そして、愛しいと思い、愛してほしいと思うようになったんだ 旅をしながらどこまでも 舞い降りた美しい天使 町に入れば、森の中とはうってかわり、夕方だが熱気はすごく、人が多くて砂埃が結構すごかった。 人通りが多いのが苦手なシンイチにとっては、かなりつらいものである カイトは町へ入るには大きすぎるので、今は小型に変形している。 カイトにかかれば、変化なんて簡単に出来るので、その場に合わせて変化しているのである。意外と便利でお得な奴だと言えるだろう。 「さて。どこにするかなぁ?」 出来れば人があまりいない宿がいいのだけどと、賑やかな街中を進んでいく。 すると、もう目を付けられてしまったのか、中央の広くなっている場所で二人の人影があった。 「ちょお待ち!そこのん!」 肌の黒い男が呼び止めました。どうやら、彼等はシンイチ達に用があるようです。 「そこの貴方です。僕達と一度、勝負をして下さい。」 やはりといっていいのか、間違いなく自分の情報を知って現れたのだろう。 なんだかまわりでがやがやとギャラリーが集まりだして、あまりいいとは言えないが、勝負の場所を開けてくれるらしく、広場の端に人々はいる。 『どうやら、あの鳥の映像。町中で見られたみたいだね。』 そう言ってカイトはこの先にある時計台を示した。その時計台にはスクリーンのようなものがあって、聞くところによると、毎朝のニュースと夕方のニュースや、この町へ来る旅人の紹介などいろいろと活用しているようだ。 旅人が対戦ということで、リアルタイムで放送されてしまっていたようだ。 「やっぱ、あれ潰しておくべきだった…。」 もう休みたいシンイチにとっては、まったくとため息が零れる。相手はかなりやる気満々であるので、無視する事もできないだろう。 「…それで、勝負してどうしてほしいわけですか?」 この町では着て早々疲れて休みたいと思っている人間の意志は無視するんですかと言ってやれば、勝負が終わればすぐに休めると言い返す。 なんとも元気な人達だ。シンイチにとって嫌なタイプと見た。 まぁ、あいつらはそれだけではなくシンイチに邪な思いを持っている事は本人は鈍いので気付いていないが、カイトはばっちりと気付いている。 そりゃぁ、誰もを魅了する魅力の持ち主であるシンイチだから当然だけれども。簡単に渡すわけにもいかないし、まずは自分がご主人様の隣をゲットするのだから、邪魔者ははやめに始末しておくべきだなと思う。 「さぁ、やりましょう。」 明らかに販促と言うか、相手は二人でそれぞれ一体ずつ使い魔を出す。 使い魔とは、説明し忘れていたがカイトや森で戦ったココノの事。つまり、旅を一緒に共にする、人がだいたい一匹は持っている人外の生物の事。それも、互いに契約を結んだもののこと。 さてさて、話を戻して紹介をしましょう。 勝手に白馬だと名乗ったスーツを着た気障な紳士もどきのような男は、大きなこげ茶色の鷹を使い魔として側に置き、これまた勝手に服部だと名乗ったラフな格好の色黒な男は、カイトとは毛並みがあまりよくない黒鳥を側に置いていた。 つまり、この二頭がこの二人が持つ『使い魔』ということだろう。 かなり、やる気満々で、シンイチは断ろうと思っていても、行かせてくれる気はないのだろう。 『うざ〜い。ねぇねぇ、今すぐ始末していい?』 珍しく御褒美を強請らずに自分からやりたいといいだした。まぁ、御褒美がまたいろいろと面倒な事を要求してくるので、要求がない事にこしたことはないのだが…。 なんだか一暴れしそうで、いろいろと後始末が面倒そうなので、駄目だと断る。 『え〜、どうして〜。オレがやるって言ってるんだよ〜?』 「駄目だ。お前はあまり目立つな。」 まだ小さい姿のままのカイトにいい聞かして、シンイチは懐から小さな蒼い水晶珠を取り出した。 独り言を話していたかと思えば、今度は何かを取り出した事で、二人はやっと戦ってくれる気になったんだと勝手に思い込み、攻撃を仕掛ける用意をした。 「行きますよ、ワトソン。」 「行くでぇ、エルー。」 はぁと、そんな意気込みを一通り聞きながら、シンイチは面倒くさそうにしながら水晶球を二人の方へ軽く放り投げる。 ふっと、宙を彷徨う珠は次第に形を変え、最後には子供がシンイチと二人の間に現れた。それも、ぴんっと尖った耳としなやかな毛並みの尻尾を持つ子供。眼鏡をかけた、少しシンイチに似ているその子供。 何やとしかける気満々だった二人は首をかしげる。だが、すぐにこの子供が『使い魔』だとわかったので攻撃を始める。 しかし、攻撃は子供にあたることはなかった。 「コナン。ほどほどに相手をして、すぐに終わらせろ。」 『了解!』 片足を何やら動く板に乗せて、攻撃を難なく交わしていく。よく見れば、それは何処にでもあるようなスケートボードと言う奴だ。 コナンに馬鹿にされたようによけられるだけではなく、さっきの「ほどほどに相手をして、すぐに終わらせろ。」と言う言葉が傷ついたらしく、かなりお怒りの様子。 あれでは、二対一であっても、負けるのはわかりきっている。 「本当、宿どうしようか…?」 かなりお疲れの様子のシンイチ。実は彼、あまり体力がある方ではなかった。 『大丈夫。もしもの時はオレがどうにかするから。』 「…悪い…頼む…。」 だんだんと、目がうつろになって行くシンイチ。支えるように横に立つカイト。 その間にも繰り広げられる勝負の行方は…。 余裕で攻撃を交わしていくコナンが、突然攻撃に入った。 人の姿を保って言葉も話せていたコナンが突如灰色がかった毛並みの猫としては少し大型な姿にかわり、一気に走り抜けて風の刃を相手へと仕掛ける。 風の刃は容赦なく二頭に襲い掛かり、地面や建物の壁に風の刃ではりつけにしてしまった。 「…終わり…だな。…ご苦労様、コナン。怪我はないか?」 『大丈夫。それより、宿を探すんだろ?』 「そうだった…なぁ…。」 くったりとした新一に困ったなぁとつぶやくコナン。あっというまに二対一で負けた二人は呆然としていたが、それ以上の驚きが待っていた。 ギャラリー達もまた驚きが隠せない。 なんと、あの黒い獣が人の姿になったのだ。まぁ、耳と尻尾はやはりついているのだが…。 くったりとして眠りの世界へと旅立った主を抱きかかえ、苦笑する。その顔はシンイチにも似ているが、コナンにも似ている。ただ、くせっ毛のように無造作にはねている髪型という点が違う。 「コナン、行くぞ〜。」 「はやくしないとな。」 もう興味はないと言わんばかりに、周りを一切無視してシンイチを抱きかかえたままカイトは進む。コナンは側についてそのまま進む。 明日あたり、町長が勝負を挑みに来るだろうなと、町の物達は皆思った。 何故なら、使い魔で人形をとるものはあまりいないし、それ以上に人の言葉を理解して話すのはかなりレベルの高いものだからだ。 姿だけなら、思いの強さによって創られた塊、つまり未練を残してこの世に留まる人魂が宿ったものなら人の姿をしているからだ。 だが、これだけ区別がつかないほどはっきりと人目に触れるものはいないし、言葉を話せてもエコーがかかったりぼやけたりするのだ。 それがどうだ。カイトは他の人間となんらかわりがない。 だから、レベルが下手すればこの町長よりも上だと思われたぐらいだ。 明日が楽しみだと、皆が思いながら、散り散りになっていく中、敗者の二人は、たいそう悔しがっていた。 そんな様子を見る、時計台の人が上れる範囲以上に立っている人影と腰掛けている人影があった。 長い黒髪を風になびかせながら一部始終を見て何か考えがあるのか妖美に笑みを浮かべる女の側に、深紅の毛並みを持ち黄金の瞳を持つ獣を控えさせる。短めの赤茶色の髪を風に揺らしながら見ている女の側には、マントとフードでかたどって人の形に見えるようにしている影がいた。 「もしかして、彼が貴方の探していた人かしら?」 「そうよ…。どうやら、追い抜かしてしまっていたみたいだわ。」 どうせ、どこかの町で本を読み漁っていてその間に抜かしてしまったんだろうと推測する、赤茶色の髪の女。 「主に絶対の信頼を寄せ、主の意識が無くても考えて行動する…。すごいわね。」 「あの黒いのは、長い付き合いみたいだけどね。小さいのは旅に出る前に拾ってきたのよ。」 いつの間にか二匹を手名付けて、今では二匹が守ろうとしている。彼に手を出すもの、脅かすもの全てにおいて。 「とにかく、追いかけましょ。やっと、この町に天使が舞い降りたのですもの。」 「舞い降りた天使は気まぐれだから、すぐに何処かへ飛んでいってしまうわ。」 探していた天使が舞い降りた。 そう言う彼女達こそ、見かけた物達にはその美しさから天使が舞い降りたように見えただろう。 青い空を背景に、時計台から降りる姿が。 |