嘘の日が終わって、あいつは隣にいるようになった ずっと、ほしいと思っていた白いあいつ 主治医にはあまりいい顔をされなかったが 何気に仲良くやっているみたいだ こうして、毎日が過ぎればいい そう思う もう、嘘の時間は、いらない シンデレラもきっと、そう思っていたんじゃないかな 嘘の壁が壊されて、幸せを攫んだ彼女 俺の場合はどうなんだろうか・・・? 嘘が真実に変わる後 「新一〜、起きて〜。」 ゆさゆさと、身体をゆすられる。だが、まだ眠いので、起きたくはない。 だが、相手がそう簡単に諦める相手ではないし、いろんな意味で危険な奴である事をすっかりと忘れていた。 「起きないと、このまま・・・。」 「うぅ〜〜。」 なんだか、気持ちよく寝ようとしているところへ、物騒な事が聞こえてきた気がした。 それ故にか、覚醒へと近づく。 うっすらと眼を開ければ、そこには満面の笑みを浮かべた、怪盗キッドこと黒羽快斗が立っていた。 「おはよう、新一。」 ちゅっとキスを一つ。あの日からこの家に居座るこの男のせいで、いつのまにか、朝にはそのキスに答えて、自分もキスをしていた。 まぁ、外国では挨拶のようなもので、両親ともよくあったので別に気にしてはいなかったのが事実だが。 別の意味で言えば、慣らされているというところか。 だが、今日はあまりいちゃいちゃしていられない。何せ・・・。 「いつまで馬鹿やっているつもりかしら?」 そう、今日はお隣の博士が泊りがけでお出かけという事で、一緒に食事をしようと誘っているのである。 あまり、長く待たせると後々いろいろと問題が快斗に降りかかってくるので、残念なところだが、新一にはおきてもらわなければいけない。 「おはよう、工藤君。」 「・・・はよ・・・。ってか、なんでいるんだ?」 まだ頭がまわっていないのか、昨日言っていた事をわかっていないようだ。 「ほら、工藤君。いつまでも寝ていないで起きてちょうだい。朝食が冷めてしまうじゃない。」 別に、冷めてもこの主夫がしっかりと暖めなおしてくれるだろうが、ぐだぐだと寝すぎるのも身体に悪いし、このままいくと朝食を抜かしそうなので起きてもらおうと思う。 「あと、じゅっぷん・・・。」 「だ〜め。ほら起きて。」 いつの間にか、快斗は服を着替えさせていた。相変わらず種が分からないそのマジック。しかも、このぐったりしている新一を着替えさせるにはかなりの早業だ。 そんな、まぁ彼等にとっては平和な一日のはじまりだったのだが、想わぬ来訪者が現れたのだった。 ちなみに、現在は午前8時。普段、新一が学校へ行くのならとっくに起きている時間で、ご近所も確かに起きている時間だ。 だが、今日は土曜日である。第二であるため、三人とも休みなのだが。 つまり、ご近所さんも休みということで寝ている家庭も結構いる事だろう。 そんな平和で幸せな時間を壊す騒音が現れたのだった。 ぴんぽんぴんぽん・・・ 連打で鳴らされる工藤邸のチャイムの音。さすがにうるさくて、眉間にしわを寄せながら新一が起き上がった。 「うるせぇ・・・。」 「まったく、いい迷惑だわ。」 「相変わらず、みたいなんだねぇ・・・。」 新一はこのチャイムを鳴らす主に気付いていないが、哀と快斗はばっちりと気付いている。 こんな迷惑な客は一人しかない。警察なら、一言連絡を入れてから来るし、こんなにチャイムを鳴らしはしない。 「くどー。大阪から遊びに来たでー。」 と、大きな声で呼んでくれる色黒探偵君。 「・・・っとり・・・?あいつ、来たのか・・・?」 「連絡の一つを寄越してからにしてほしいわ。」 「ちょっと、おっぱらって来るよ。」 だから、新一は哀ちゃんと大人しく下で待っていてねぇと言って、かなり裏がありそうな作り笑顔で部屋を出て行った快斗。 「なぁ、人の家で殺人はしねーよな?」 「大丈夫でしょ。私だって、彼と同じで貴方がいなかったら、あんな迷惑な人はとっくに葬り去っているわ。」 つっこむところを間違っているが、それ以上に返事も間違っている気がするが、新一はまだ眠いのか、気持ちのよい眠りを邪魔されて機嫌が悪いのか、何もつっこまなかった。 「それより、彼に言われたとおり、リビングに行きましょ。」 哀の呼びかけに応じて、新一が立ち上がる。 遠くの方で、なにやらあいつの叫び声のようなものが聞こえてきた気がしたが、たぶん気のせいだろう。 顔を洗ってさっぱりした後、椅子に座ればちょうどどこかへ行っていた快斗が戻って来た。 「何処行ってたんだ〜?」 「え?お隣だよ。ちょっと、彼にうるさいから黙ってもらおうと想ってね。あ、もちろん、今日一日うるさくしないように言い聞かせてきたから大丈夫だよ。」 いったい何をしたと、部外者がいれば思うかもしれないが、生憎いないし、何よりここの三人を敵に回す恐ろしさを知らないことは命取りで、新一がいれば誰もが見惚れていつのまにか帰っていることだろう。 哀れにも、すでに新一の頭の中からあの黒い彼は存在が消えていた。 こうして、どうにか穏やかな朝食につけた三人。 もちろん、あの黒い彼には哀が隣へ帰ればただではすまないだろうが。 そして一日、新一と快斗はリビングでのんびり過ごして一日を終えたのだった。 隣から奇妙な叫び声が聞こえてきた気がしたが、生憎新一は読書中で、快斗は同情の余地もない邪魔な奴という認識があったので、無視していた。 次の日、少しご機嫌な哀の姿が目撃された。 おまけ 「貴方たち、どこまで進んでいるのかしら?」 ふと、快斗が珈琲を入れてくるとキッチンへ引っ込んだ時、哀が言う言葉を聞き、新一は危うく手に持っていたマグカップをひっくり返すところだった。 「え、えっと、灰原・・・?」 どう答えていいものなのか、そしてどういう答えを目的にしているのか。戸惑っているところへ快斗が珈琲を入れて戻ってきた。 「はい、哀ちゃん。快斗君特製珈琲。」 笑顔で、それもハートマークが飛んでいそうな勢いでやってきた快斗が、それを哀に渡す。 「で、何の話してたの?」 出来ればさけたい新一だったが、哀はしっかりと先ほどの話に戻し、それについて、しっかりと快斗は答えてくれた。 「え?新一との関係?そりゃ、いけるところまでね。」 「じゃぁ、あの日、晩からずっとだったのかしら?」 その次の日は彼を見かけなかったものね。と、どうやら全てお見通しのような発言。 「だいたい、貴方がそんなに理性を保って、我慢するような人だとは思えなかったもの。」 いつも、ベランダで覗いたり、侵入したりなど、窃盗以外の犯罪まがいな行為をいままでしてきた人だものと、どうやらこのサイキョウな小学生は全てお見通しだったようで、新一でさえ気付かなかった事に気付いていたのだった。 「それで。昨日も彼を離さなかったわけね。」 まぁ、今日が休みだったからいいものの、平日だったら彼に散々文句を言われてこきつかわれていたところねと、痛いところをついてくれる。 「だって、新一があまりにも可愛かったから。」 幸せですといった笑顔で答える快斗。誤魔化す気もうせるような笑顔。もう、勝手にしろという感じで無視を決め込んでいても、側でそんな話を笑顔でされれば恥ずかしい。 「それは御馳走様。できれば、あと三時間後に検査するから、連れてきて頂戴。」 この前さぼったから、今日する予定だったのよと、釘を刺して出て行く哀。 つまり、今から盛ってやるなということだ。 「う、全部快斗のせいだ・・・。」 「でもねぇ、新一も悪いんだよ?」 「なんでだよ。」 「あまりにも可愛いから。」 「・・・。」 むかっとして、近くにあったものを放り投げてみるものの、相手は交わし、そして腕を捕らえられてしまった。 「そのむくれている顔も可愛いけどね。危ないし、無理はだめでしょ?」 またさぼれば、新一には何もないかもしれないが、自分は危ない。 前回新一がさぼる事になったのは自分のせいだったから。 「今から三時間、ゆっくりと布団の中でごろごろしていようか。」 そのごろごろがお昼寝になり、来ない事で怒りをあらわにして現れるお隣の少女が、無防備に眠る二人の姿を見て苦笑を漏らすのはあと数時間後。
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