昔々、あるところに。 とっても綺麗なお姫様がいました。 決め細やかな白い肌に全てを見極め、そして偽りを見抜く深くそして輝くような蒼い瞳。 そして、漆黒の艶やかな髪を持つ、誰もを魅了するお姫様でした。 「って、違うだろ!てめぇ、何勝手にナレーション入れてやがるんだよ!」 と、お姫様はナレーターとして、勝手に話を進めようとする、格好いい王子様である快斗に怒鳴りつけるのでした。 「だから、一人で格好いいとか馬鹿いってねーで、どうにかしやがれ!」 お姫様の叫びを聞きながら、どうしようかと、考える王子様・・・。
帽子の世界の事情
ここは、猫の王国です。ここにはとっても綺麗なお姫様がいます。 シンプルだが綺麗なドレスを身に纏い、黒い耳と尾を持っているお姫様。 かなり不機嫌なお姫様。まぁ、それはしょうがないでしょう。 何せ、彼はいろいろと複雑なお年頃です。悩みも抱える青年です。 そう、青年という事が彼には問題だったのです。 「何で、俺がこんな耳つけて尾がついて、こんな女物を着なきゃなんねーんだよ。」 聞いてるのかよと、かなり不機嫌に文句をいうお姫様事、日本で知られるとっても有名な探偵さんです。 しかし、ここは日本でもなければ地球でもないかもしれない、猫ばかりがいる王国です。 猫の国という、かなり名前からして胡散臭い場所に、彼等はいるのです。 「だいたい、どうしてあのシルクハットの中にこんな広い敷地があるんだよ!」 それが、彼にはかなり謎であり、納得できない問題でした。 彼は、三度の飯や睡眠やその他の欲よりも、本や事件や謎といったものが大好きなのです。 しかし、こんなにありえない事ばかりだと、反対に現実逃避したくなるでしょう。 「だってぇ〜、知らないよ。それは、紅子に言ってっていってるでしょ?」 「だから、その紅子って誰だって聞いてるんだよ。」 「だから、魔女だと名乗るクラスメイトだって言ってるでしょ?」 「信じられるか!」 こうして、彼等の会話は再び同じ事を繰り返す為に戻るのでした。
さて、まずは彼等の状況ですが、たまに帽子に引き込まれる白いこそ泥さんが家にいついて、すでに数日が経ちました。 お隣へ行った次の日、なんと新一までもがこの可笑しな帽子の中へと引っ張り込まれてしまったのです。 まさに、ミラクルです。驚きいっぱいで、最初は呆然としていました。 しかし、すぐに八つ当たりの対象を原因でもあるこのこそ泥君に言いました。 だが、相手はかなりへらへらと不気味な笑みを浮かべて、まったく日本語が通じているように思えません。 きっと、この世界に来ると、彼は壊れてしまうのだと、自分を納得させました。 だって、あの怪盗KIDがまさかこんな間抜けな顔でへらへらと笑って近づいてくるなんて、気味が悪いからです。 それにしても、どうしてこういう状況になるのか。 いったい、このこそ泥はそのクラスメイトの魔女とやらに、何をやらかしたのか。 聞いてみても、相手が勝手によってくるだけで、自分は反対に被害者だという答えしか返ってきません。 よって、余計にこの状況が気に入らない新一にとっては不機嫌になっていく原因となるのでした。 どうやったら戻れるかと、ぶつぶつ考えていたからか、気付くのが遅れた新一。 いつの間にか、ふかふかのベッドにいて、しっかりと押し倒されていたのでした。 「何してやがる。」 「もちろん、新一を頂こうかなって。」 「馬鹿野郎!何考えてやがるんだー!!」 離れろ、変態、気違い、馬鹿、ボケ、阿呆などなど。散々文句を叫びまくりましたが、彼が手を緩めることはなく、そしてその力に勝てるはずがなく。 キスをされて、思い切り感じてしまい、へなへなになったところをおいしく頂かれてしまう結果になってしまいました。 遠くの方で、部下だったかなんだったかの猫の声が聞こえた気がしましたが・・・。
さて。眼が覚めてみれば、どうやら自分の家の部屋でした。 「・・・戻ってきた・・・のか・・・?」 まるで夢のようでしたが、この体の状況を思えば、夢ではない事は間違いないでしょう。 「・・・あの馬鹿野郎・・・。」 どうしてくれようかと、何だか物騒な事を考える新一。こういうときに、殺意が芽生えるのかと、少し感情を理解した瞬間だったかもしれません。 といっても、結局許してしまう優しい彼です。 夕食時に少し仕返しをしてやりましたが、結局いつのまにか許していました。
後で聞きましたが、しっかりと20分後に戻ってきていたみたいです。 どうやら、帽子の中での時間はこちらとは違う事もあるらしく、さらに謎が深まるものでした。 さて、次の帽子の中は・・・? それは誰も知らない・・・。
おまけ
「二人とも、猫科だと思ったから猫の国にしてみたけど・・・。」 「黒羽君の力は強いみたいね。」 戻ってきてほっとしている新一君がいる頃、お隣にいるクラスメイトの魔女と科学者がのんびりとお茶を飲んでいた。 「まさか、彼をお姫様に仕立て上げるとは、思わなかったわよ。最初は王子様だったはずなんだけど・・・。」 「こうなればいいという、想像の力が働いたからなのよね・・・。」 そう、あの世界は基準は紅子がつくったが、ほとんど快斗の想像の世界でもあった。 なので、紅子だけのせいではなかったりする。 それを知れば、間違いなく快斗は新一から何らかの贈り物(?)を頂戴するだろう・・・。 「それにしても。気付かないなんて、怪盗失格なんじゃないの?」 「そうなのよね・・・。帽子が違っているって事に、いつ気付くのかしら?」
その帽子を持っている限り、彼等が帽子の世界へ飛ばされる事があるだろう。 それまで、帽子との付き合いは長い。 |