最近、隣に何かが居ついたようだ。

 

「思っていたよりも、はやかったみたいね・・・。」

 

たまに外を見れば、隣の部屋に不法侵入したり、覗いていたりするかなり目立つ白いこそ泥の姿を目撃した少女がいた。

きっと、その少女の存在にその白いこそ泥は気づいていない事だろう。

 

「いつ、こっちへ来るのかしらね?」

 

こそ泥が居つくようになって、すでに一週間が経過していた。

 

 

 

 お隣と帽子の事情

 

 

 

久々に、訪問する事になるお隣。

すっかり、検診の事を忘れていたので、かなりお怒りであろうお隣の少女の顔を思い浮かべ、苦笑している新一。

その隣では、相変わらずにこにこと、あの気障な怪盗紳士と呼ばれる男と同一人物とは思えない顔をしていた。

まぁ、これが彼の地なのだから、一週間も経てば、何故かこれが普通に思えてきた。

普段ならば、他人が介入する事を快く思わないのだが、やはりそれはこの男だからなのかもしれない。

チャイムを鳴らせば、さっさと入ってきて頂戴という、いつもと同じようだが、少し怒りを含んだ物言いに、やっぱり危険だと覚る新一。

きっと、この男はまだお隣の少女の危険性を知らないだろう。

「まぁ、体験すると、後々学習するだろうから。それはそれでいいのかもしれない。」

独り言としてぽつりという新一の言葉に何〜?とのんきに聞き返す。しかし、それに新一はなんでもないと答えるだけ。

さぁ、ご対面の時間が来た。

新一は恐る恐る診察室へと続く階段を下り、そこにある扉を開いたのだった。

 

 

 

来た事がわかっているのだろうが、何も言わない少女。ただ、背を向けて何かをキーボードで打ち込んでいた。

だが、新一はそれに何も言うことなく、椅子に腰掛けた。

こそ泥こと快斗は、この少女がどうして主治医なのか不思議でしょうがなく、そして何より、新一に何も声をかけないとはどういうことだと、少しお怒りだった。

まぁ、彼女の怒りを買うのはごめんなんですがと内心思うが、出来れば二人っきりでべたべた過ごす時間がつぶれていくのが、どうしても嫌だったので、出来ればはやくしてほしいと思う快斗。

さて、そんな快斗を横目で見て、何だか怒りを持っていることに気付く。そりゃそうです。彼は探偵です。とっても人の心情に聡いのです。しかし、本人の恋愛に関しては駄目なのですが・・・。それがまた、難点であり、良いところなのかも知れませせん。

そんな快斗を哀れむように見て、すぐに、泣きを見るのは彼だろうというのが新一の予想だったが、さすがはこそ泥をやっているだけあるというか、こいつもやはり只者ではなかった。

しばらくして人段落着いたのか、画面から目を離し、新一の方を見た少女。

絶対に、只者ではなく、少女という皮を被った何か別のものだと確信する快斗。

やはり、それは怪盗として鍛えられた感覚からだろう。

「それで、言い訳でも聞いておこうかしら?」

まずはどんな言い訳をするつもりかと、先に聞き出す。

診察最中にぐちぐち言われればこっちが迷惑だというところだ。

「えっと、これを拾ったから来れなかった?」

「どうしてそこで疑問系になるのかしら?」

確かに可笑しいといえば可笑しいだろう。第一、彼がそう簡単にほいほいと人を拾ってくるような人ではないことはよくわかっているからだ。

どちらかというと、この気障な目立つ白いこそ泥にはいろいろ言われていつも文句を言いまくり、よっぽどの事がない限り、手を貸したりはしないと予想されるからである。

「だって、なぁ?」

なぜか説明を快斗にもとめ、首を傾けながら下から覗き見る。

きっと今頃、哀も快斗もそんなことを無意識だとしてもしないでちょうだいと思っていることだろう。確実に、間違いない。

「説明は、俺がするよ。いいえしょ?哀ちゃん。」

「まぁ、別にどっちでもいいのよ。そんな事は。どうせ、拾ってきた次の日が検針日だったとしても、昨日にどうせ、しっかりと頂いたんでしょ?こそ泥さん。」

「あはは、やっぱり?全部ばれてたんだ。」

何だか、まったく話の意図が見えない新一だが、全部ばれているということには、何がといわずともばれているということで。

「だいたい。もっとはやくその首を気にするべきよ。」

指摘された場所を、急いで近くにあった手鏡でみれば、くっきりと紅い痕が見えた。

それを見て、かぁっと顔を真っ赤にしてあたふたする新一。

「ちょっと。暴れてないで大人しくしてちょうだい。それで、居ついた経緯を説明してくれるかしら?」

もし、いつものように見ているだけでは飽き足らず、侵入してそのまま立ち去るだけでは駄目で、無理やり丸め込んで居ついたのじゃないでしょうねと、ぎらりと光るような鋭い目で見る哀。

やっぱり、さすがは哀ちゃんだよねぇと、のんきな快斗。

そして、やっとはなしはじめる。

もちろん、あの怪盗がシルクハットの中に知り合いの魔女から好意だと言われてとじこめっれ、それを親切に拾った新一の事。そして、時間がきたので外に出てこられた事。

「貴方、人間を止めたの?」

「・・・違います。まったくもって違います。れっきとした人間です。新一と同じような問いかけは止めて下さい。」

速攻で否定し、そして訴える。

どうしてこう、皆が皆自分を人として扱ってくれないのだろうか。よよよと、泣きまねをする快斗だが、ここには同情するものなどいないので、ただ寂しいだけであった。

その間に、ぱっぱと診察を終えて、今週も大丈夫だとおっけーをもらい、家に戻ろうと思った時だった。

「なぁ、灰原。」

「何かしら、工藤君。」

少し戸惑いながら、彼の口から聞いた言葉。

「あいつ、診てやってくれないか?」

言われた本人もびっくりだった。なんと、新一が快斗も診察して欲しいというのだ。

「それはまた、どうしてかしら?」

確かに、これだけいちゃいちゃするようになったのなら心配をするのかもしれないけれどと、無意識なのだろう新一がくっついてくる快斗に全てをゆだねているのを見て、思っていた。

「だって、こいつ・・・。」

「何か、問題でもあったのかしら?」

「こいつ・・・。昨日、学校から帰ってきたら、いなくて。そしたら、帽子から魔法のように沸いて出たんだ。」

沸いて出たという言葉に少し傷つくキッド。沸いて出たって虫や煙みたいなものと同等扱いされたと、嘆く。

だが、やっぱりこの二人は相手にしてくれないのだった。

「でも、そうなるといろいろな面で迷惑ね。」

「いきなりあれから出てくるからびっくりするんだ。それに、あいつが言うにはあれ限りっぽいんだけど、何かおかしい気がするから、一応診察してくれないか?」

少し考えた後に、哀はいいわよと言い、さっさと座りなさいと、新一に対する目とはかなり違う恐ろしい光を宿す目で睨みながらの命令。きっと、敵にまわしてはいけない最有力者ってところでしょう。

「えー、哀ちゃんが診てくれるの?じゃぁ、安心だねぇ。」

と、のんきな奴は大人しく座った。少し、実験に使われてしまうのではないかと思ったが、なんとか無事に終わり、お隣へと戻る事になった。

珍しいなと思いながら家に帰った新一。

 

 

 

そして、明日の朝叫ぶ事になる。

なんと、仲良く新一は快斗が行くという帽子の中の世界へと飛んでしまったのだった。

実は、科学者と魔女は知り合いだったりもする。

「やっぱり、タダじゃ駄目みたいだね。」

「なんじゃここはー?!」

最初にキッドとしてここへ来た回数を合わせて三回。その間に、随分とこの中身が変わったものだ。

現在、彼等がいる帽子の世界はなんと、猫だらけ。

「猫の王国って奴だろうね。あ、新一がこの国のお姫様だって。それなら、俺は姫を迎えに来る王子だね。」

なんだか、こいつはいたってのんきだ。そんな彼がみせるそれが余裕だと思えて、なんだかむかつくのであった。

「だいたい、どうして猫の王国が帽子の中にあるんだよ?!」

「紅子が何かやったんじゃない?」

「『紅子』って誰だよ!って、お前何するんだ?!」

「何って?そりゃ、お姫様に求婚を申し込んで、頂こうかと。」

「頂くな?!」

「あ、紅子ってのは、クラスメイトで、原因の魔女な。」

なんだか、会話が噛み合わない二人。

そんな二人が帽子から外へ出られるのは・・・?

もう少しこの世界を持ち主が堪能してからか、20分が経った後か・・・。

 




        あとがき

 地雷二作目。前回の続き。
 その後の彼等。お隣のあとに帽子の中へ・・・





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