朝が来たようだ。 ふかふかの布団で気持ちよく寝ていたが、そろそろ起きる必要がある。 なぜならば・・・。 あのにぎやかな二人組みが、ちょっかいをかけてくるからだ。 せっかく、気持ちよく寝たいというのに・・・。
シホさんとシンイチさん
「寝顔がまた、可愛いですよねぇ。」 「そうなんだよねぇ。」 そんな、うれしくもない言葉を並べる声の主を寝ていながらも聞き取っているのか、ぴくっと耳が動く。 そこへ、シホがやってきたのだった。 もちろん、ノックをきちんとしたが答えることはないので、ほぼ無断状態だが、一応報せたという彼女が入ってきたのだ。 「シホちゃん・・・。」 少し、機嫌が悪いらしい彼女の顔を見て、少し顔が引き攣るカイト。キッドもさすがにポーカーフェイスが崩れ気味である。 「貴方達。今日は上から呼ばれているはずだったわよね?」 さぼるつもりと、いつまでもここでいるであろう二人を呼びに来たのだった。 「あ、そういえば、今日だったね・・・。」 「もちろん、忘れてはいませんよ。」 というが、彼等にとってはかなりどうでも良い事で、そんなことのために出向くよりも、ここでシンイチとごろごろしている方がいいのだ。 だが、それをシホは許してくれる気配は無い。 「とっとと行きなさい。」 「「はい。」」 素直に従い、部屋からすごすごと出て行く二人。もちろん、何かあった時の為を考え、シホにシンイチの事を頼む事は忘れない。 まぁ、シホがシンイチに危害を加えないし、彼女が珍しく認めて、そして好意を持っている人だ。それは彼等が知らないところだが、その点、ぬかりはない。 「さて、彼にもそろそろ起きてもらいましょうか。」 こうして、今日も一日の幕があける。 そもそも、シホとシンイチがどうやって知り合ったのか。 それはとっても簡単だった。 もともと、シホはこの王宮にいたわけではなく、いろいろ後ろめたい過去を持ち、その際にあの泉で出会ったのだ。 姉の死で絶望していたが、彼に助けられたのだった。 といっても、彼はかなり変わり者というか、照れ屋というか。皮肉なことをよく言った。 そして何より、天然というのか、自分の魅力というものに気付いていないらしく、たまにやってくる馬鹿な連中に首をかしげながら倒している彼をよく見た。 そんな彼といるようになって、少し落ち着いてきて、自分を取り戻せた。 あそこが、他から隔離された場所だったということもあったのかもしれない。もう、ここなら追われることはないのだと。 その後、なんとか自分らしくなったと彼に言われた後、このままここにいても彼の迷惑になる為、王宮で丁度仕事の募集があったので出向いた。 そして、今に至るのだ。 その彼が、今ここにいるとは思えないぐらい不思議だったが、あの二人ならなんでもやってしまいそうである。 しばらくここで過ごすようになって、つかめてきた彼等の性格。 「貴方も厄介な人達に目を付けられたものね。」 だけど、一緒にいられる時間があるのなら、それはそれで良かったのかもしれない。 また、会いたいと思っていたから。 「それよりも・・・。起きて貰わないと、朝食が取れないわ。」 起こすのが少し可愛そうな気がしたが、心を鬼にして起こす。 「シンイチ君。起きて・・・。」 耳元で囁けば、ぴくりと動き、うっすらと眼を開ける。 彼は、耳がとても弱い事を、あの日から知っているから。 「シホ・・・か・・・。」 「おはよう、シンイチ君。朝食、ご一緒しましょ?」 そうだなと、むくりと起き上がるシンイチに着替えを渡す。 「この部屋でいいわよね?」 すぐにとってくるから、着替えて待っていてちょうだいと言い、シホは部屋を出て行く。 その間に、シンイチは言われたとおりに渡された服に着替えた。 その後、久しぶりに二人の食事を楽しんだ。 もちろん、食べ終わった頃にあの二人は帰ってきて、騒ぎ出し、いつもの賑やかさに戻るが・・・。 終わり
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