クリスマスも終われば、あとは簡単な授業と進級の手続きとペアに関する手続きぐらいで、来年も新一と一緒にさんたをするんだ〜と鼻歌を歌う快斗の姿が見られた。

 

そんな快斗の姿を見つけて意気込みのままにぺたぺたと走っていく新一。

そんなことに浮かれている快斗は気付く事もなく。

 

「快斗君っ!」

 

突然前方から女の子が一人走ってきた。

 

「あれ?梨奈ちゃん?」

 

どうしたのとご機嫌のままで笑顔で聞く快斗。

普段彼が人には見せない飛び切りの笑顔だったので、顔を赤くする梨奈と言う名の少女。

 

「はい。クリスマスプレゼント。」

「へぇ、ありがとー。」

 

ご機嫌だったし、もらえるものはもらう快斗である。

しっかりと受け取って、ありがとうという言葉と笑顔付だった。

 

「来年、貴方となれることを願ってるわ。」

 

その答えに快斗は何も言わなかったが、またねという梨奈にまたねという言葉は返す快斗。

誰からも好かれて人気なのは知っている。

そして、誰からも去年も一昨年もお誘いが多かったのも知っている。

 

そんな彼へ、一年ペアを組んでくれてクリスマスプレゼントまでもらったから、25日は過ぎてしまったけれど何か渡そうと一生懸命考えたのだ。

なんだか先を越された気がして、その時は渡せずにとぼとぼと快斗とは反対方向へと歩いていくのだった。

 

 

 

サンタさんのお願い

 

 

 

そんなことも何も知らない快斗は、うきうき気分で昨日もらったところのペアに関する紙を提出してきた。

この時期になって、ペアをこのままでいるか、それとも解消して解消した者同士か、来年入る新入生からペアを選ぶ。

解消する場合は相手を指名する事も可能だが、快斗はこのままを選んだ。

快斗にとって一目ぼれで本気の初恋だ。なぜわざわざ解消する必要があるというのか。

提出して担当は呆れていたが、新一のおかげでさぼっていた授業も参加してくれていたので、それに関してはいいかと思っていたが。

「快斗―。」

再びチャレンジだと言わんばかりにぱたぱた走って快斗のもとへやってくる新一。

どうやら、次回からは帽子には猫ではなく兎のようで、白い耳がぴょこぴょこ動いている。

ちなみに、快斗は兎から犬に変わっているので、帽子には茶色い犬の耳がついている。

「新一―、どうしたの?」

走ってくる可愛い新一を捕まえようと思ったが、そこへやってきたのは前回一緒だった先輩と相変わらず煩い探と、悪友とも言う年上の鈴という女。

「快斗?」

三人が快斗を呼んで自分から気がそれたので、それはしょうがないと思いつつ今は駄目と聞いてみる。

「あ、ごめん。あとでね。」

どうやら、後回しらしい。でも、この三人だったら自分より付き合いが長い分、それに先約だったのかもしれないから引く事にした。

でも、話が終わるまでと、歩いていってしまった快斗を追いかけてみる。

一度見失ったが、いろいろ快斗が行きそうな場所を探していて、ふと声が聞こえた。

快斗がいたと思ったが、角を曲がる事はできなかった。

「なぁ、お前ペア解消しねーのかよ。」

前回組んでいた先輩の声にどきっとする。

「はぁ?するわけねーだろ。」

それを聞いて、自分も出来れば快斗とまたやりたいと思っていたのでほっとした。しかし・・・。

「はぁーもったいねーな。」

やっぱり、快斗には自分なんか駄目なんだろうか。少し泣きそうになってきた。

「いいだろ、別に。それに、新一は寝顔が可愛いんだよ。気がついたら結構寝ててさ。無防備で困っちゃうよ。反応がまた可愛くてさ、それにまだまだお子様でさ、他の奴になんかまかせられないね。」

快斗の言葉にさらにショックを受けた。

確かにすぐ自分は寝てしまっている事が多い。よく考えると寝ている間は快斗が変わりにやってくれていたということだ。

それに、お子様と言われて、困るといわれて。だけど、涙は堪えていた。

「甘やかしてるな。」

「いいでしょ。」

「お前なしじゃ駄目な奴にするつもりか。」

「あ、それいいかも。今でも新ちゃん俺にべったりだし、今更かもしれないけど。」

ガーンとさらにショックを受けた新一。

一人前になって快斗の足を引っ張らないように努力しようと思っていたのに。

甘やかされて、駄目な奴だと言われて。快斗には迷惑なんだと思い始めた。

「それに、新一がペア解消なんて申し出るわけないでしょ。」

「そうだよなぁ。お前のこと慕ってるからな。」

「可愛いでしょ。」

「そうだな。うらやましいねぇ。」

そこまで言うのなら、無理に付き合わなくていいもんと、ペアの紙をポケットから出す。

その時ちょうど、姿が見えなかった鈴が現れた。

「まだこんなところにいたの?」

「あ、鈴。」

呼び捨てで呼んだことで、やっぱり親しい人なんだなと思いながら、新一は例の紙と睨めっこしていた。

「それにしても、もうペアの紙出してくるなんてね。おかげで、ペア組めなくなったじゃない。」

残念そうに言う鈴に、快斗と組みたかったのかなと思いながらこっそりと顔を出して覗いてみた。

さっきも見たとおり、とっても綺麗な人だ。あんな人が、快斗の好きな人なのだろうか。

「お前とだったら、扱き使われそうだしな。それに、新一だって、ペア解消なんてしないだろうし。」

「あら、自信満々ね。」

「あたり前でしょ〜。」

このまま快斗を頼りすぎてはいけないんだと、快斗がペア解消をしないのなら、自分がしたらいいんだと、新一は紙をにぎりしめてその場から立ち去った。

だから、誤解だと気付かずにいたのだ。

「もー残念だわ。今回は快斗に奪われたけど、新ちゃんと組もうと思ったのに。」

「残念でした。」

「あ〜、先輩を思いやる気持ちはねーのかよ。俺とはさっさと解消したくせに。」

「先輩に新ちゃんはあげません。」

「へっ、口はよく言うね。」

二人とも快斗よりも新一と組みたいと快斗に解消させようと言い寄っていたのだった。

絶対に新一は解消の紙を出さないとわかっていたから。

 

 

 

 

 

泣くのを必死に堪えてとぼとぼと歩いていた時。

「貴方、新一君ね?」

知らない女の子が二人、自分の前に立っていた。

「次も快斗君とペアを組むつもりかしら?」

「ペアの解消って、相手を傷つけることもあるから、優しい彼はしないだろうけれど。」

二人からはっきりと釣り合わない、迷惑だと言われた。

やっぱり迷惑なのかなと落ち込む。うりゅっと涙が滲む。

「彼ほどの実力なら、本当はペアなんていらないのだろうけれど、制度だからしょうがなく選んでいるのよ。」

年下で優れた取り得もない人なんかには勤まらないわと言われて、ぽろりと涙が零れる。

さすがに異変に気付いたらしいが、良い気味とでも思っているようだ。

「わかってるもん。次は快斗と一緒にやらないもん。」

と二人の顔をやっと見て言い切って走った。

少しだけ新一の魅力にかかったのか、新一の顔を見て少し良心が痛む二人。

彼だから、快斗も気に入ったのかもしれないと少し思ってみたりした。

そして新一は二人から逃げるように部屋に帰ってきて、堪えていた涙が溢れていく。

ぎゅっとペンを握って、あの紙に解消の文字に○をつける。

そして、ペアを指名する欄には誰もいらないと解答した。

新一はその紙をそのまま何も言わずに担当に押し付けて走って逃げた。

どうしたのかしらと担当は思いつつ、その紙を見て慌てる。

「どうしたものかしら・・・。」

新一が誰もペアはいらないと書いて解消を申し出てきた。快斗は新一以外とは組まないと宣言もしている。

「困ったわね。」

次回は平穏な授業が開催されるかどうか、めまいで倒れそうだ。

そして、これを快斗に言うべきか言わないべきかすごく悩んだ。

そのまま休みは過ぎ、最終授業の時間がやってきた。

休みの間、快斗はいろいろ呼ばれて新一に会う機会がなかった。

だが、新一とこれから一緒に過ごす為の時間を思えば、惜しまずに出かけていた。

だから余計に新一の誤解は大きく膨れ上がっていたのだ。

 

 

 

 

 

さて。朝起きたらすでに新一は部屋から出て行った後で、珍しいなと思いながら快斗はクラスへと向かった。そこで驚くことになった。

「新一・・・?」

いつもいる場所はほとんど指定席状態になっていたのだが、その場所に新一はいなかった。

ちょうど窓ではなく廊下側の後ろの端に新一はいた。

どうしたのと快斗が近寄ってきたが、顔を合わせようとはしない。

その隣には紅子と志保がいる。

だから、必然的に快斗は新一の隣で授業を受けられない。

「ねぇ、どうしたの、新一?」

「貴方が原因じゃないのかしら?」

事情がわからなくてもぶすっとしている新一を見て、しかもわざわざこっちの隅っこに座るなんて今までなかったので、快斗が原因だと志保は思っていた。

「俺は別に何もしてないよ?」

「本当に・・・?」

「本当だって。」

新一主義な志保にさからうようなことはしないし、好きでしょうがない新一をわざわざ不機嫌にさせるようなことだってしない。

からかう事はたまにあるが、こんなことは本当にはじめてである。

「そう。」

なら、どうしたのかしらねとため息一つ。

その時ちょうど担当が入ってきた。

「来学期でのペアの決定表を配ります。」

と、既に報告されて配られた紙。そこには上から順にペアの名前がびっしりと書き込まれている。

だが、そこに快斗と新一の名前はなかった。

「・・・どういうことですか?」

かなり冷え切って低い声になった快斗。滅多に見られない静かな怒りに触れ、担当も少しびくびくする。

「それは・・・新一君がペアの解消を申し出たから無効になっているのよ。」

と、事実を話した。

「どういうこと、新一?」

新一の席まで歩いて、自分の方を向けさして理由を問い詰める。

数日前までは、次も一緒に仕事しようと言えば、うんと頷いていたというのに。

「快斗とは次は一緒に仕事しないって決めたの。」

「だから、どうしてなの、新一。」

「うるさい。」

「うるさいじゃない。」

はじめて怒った快斗を目の当たりにして、少し怖いと思った新一。

だけど、もう解消すると提出したのだ。引き下がれない。

「なら、わいとせんか、新一。」

「嫌。」

「でしたら是非僕と。」

「嫌。」

「なら、私と組む?」

「志保は紅子さんとだろ。」

「私が一緒に組もうか。」

「もうペア決まってるだろ。」

「でも、どうして。」

「嫌だから。ペアはいらない。」

だからその嫌な理由はと、今度はいつもの快斗の声で聞かれた。

最初はこの二人と組むようにそそのかされたのかと思ったが、嫌だとはっきり答えペアもいらないというところから、別に他の誰かと組みたいわけではなさそうだ。

「どうしてですか、新一君。」

「そうやで新一。」

解消するならと、必死に組もうと話しかける探と平次。

鬱陶しいなと思いながらも、ここでまた怒っては新一は何も答えない。

さっきのはいけないと反省している。かなり怖がっていたから。

「別にいいでしょ。俺のことなんて。」

「よくないよ。新一とぺアできなかったら、楽しくないし、面白くない中から面倒なことにまたペア探さないといけないし。」

その言葉が新一の感情に火をつけてしまった。

ペアを探すのが面倒だから、新一とまた組むのだと、快斗の言葉の意味を間違えてしまったから。

「快斗なんかと組まないもん。快斗なんか、快斗なんか大嫌いだっ!」

馬鹿っと叫んで教室を飛び出していった。

探と平次にもしっかりと絶対嫌だと言われてすでに風化している。

だが、それ以上に快斗は大嫌いといわれたのがショックだった。

「ちょっと、快斗っ!」

青子もびっくりする。あの快斗がかなりショックを受けて固まって真っ白だ。

そして、ずーんと黒い影をしょって沈んでいる姿を見て、なんといっていいのかかなり困るものだった。

「それにしても、何があったのかしらね。」

「困ったわね。」

真面目な新一がはじめて授業を抜け出してしまった。

そして何より、快斗も授業を受ける気力すらないぐらい、沈んでいる。

「まず、彼を探して事情を聞かないとね。」

そうしないと、復活もしないし納得もしないだろう快斗だから。

「快斗君は、新一君探して連れ戻して来てくれるかしら?」

それを聞いて、よく考えれば新一を一人にしたら、誰に手を出されるかわかったものじゃないと、とりあえず見た目だけは復活した。

実は、快斗と同じくらい、新一も人気があったりするが、近づく際に快斗の話を持ち出す輩が多いことと、近寄ってきても、全て快斗が対応していたので、全然気付いてはいなかったりする。

だから、新一の行動範囲は誰も把握していなかった。

快斗を追いかければ、その先には必ず新一がいたからだ。

しかし、快斗も新一の行動範囲はわからなかった。

自分がいつも新一を連れまわしていたし、行く場所といっても図書館とあの塔と待っていてと指定した場所ぐらい。

図書館にもいなかったから、あとは塔だと一応学校中駆け回ってみたものの、塔のあの場所についても新一の姿はなかった。

「どこいったんだよ、新一。」

好きだとは言われた事はないが、大嫌いというのは、本当に快斗にはこたえた。

とぼとぼと、見つからないままクラスへと戻るのだった。

戻ってきてため息ばかりで暗いオーラを漂わせている快斗に声をかけられるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

なんだか暗い雰囲気のまま、授業はとりあえず進んだ。

そしてもうすぐで授業が終わるかと思われた頃。

「少しお邪魔するよ。」

窓から突然何者かが現れた。

それは、偉大なるサンタ達には神とも言えるパーフェクトなサンタ。別名キッドと呼ばれる盗一だった。ちなみに、あの快斗の父親である。

「何しにきやがった、クソ親父・・・って、新一っ!」

盗一の腕の中ではすやすやと眠っている新一の姿があった。

そういうところにはしっかりと見ている快斗。さすがというしかない。

「ほら。クリスマスプレゼントだ。」

と、盗一が快斗へと包みを一つ投げ渡す。しっかりとそれをキャッチしながらも、新一を離せとわめく。

大きな親子喧嘩のようなものに発展しそうな勢いだったので、とりあえず今は解散と担当が言い、皆教室から出ていった。

やっぱり、この二人に巻き込まれるのは皆ごめんらしい。

それだけ有名でもあった。この二人のやり取りは。

「さて、息子よ。」

「何だよ。さっさと新一離せ。」

父親であっても、新一を抱きかかえているというのが許せない。相当心の狭い快斗であった。

「プレゼントは開けないのかね?」

「後で。今は新一。」

「そうか。なら、それを返してもらおうか。」

「どうしてわざわざ貰ったものを返さなきゃいけねーんだよ。そんなこというなら最初から渡すな。」

少し意識が浮上し始めてきた新一は、最初から渡すなという言葉を聞いてびくりと飛び起きた。

「あ、新一。」

目が覚めたことに気付いた快斗。だが、それと同時に泣きそうな顔をしている新一を見て、わけもわからずに慌てる快斗。

どうして新一が泣きそうになっているのかわからない。

「いらないなら、もらわなくてもいい。」

盗一の腕から降りて、快斗が机の上に置いたプレゼントを攫む。

「え?」

「何も私からだとは言っていないだろう。」

「それって・・・。」

つまり、それは新一からのプレゼントだという事だ。

実は新一は塔まで来たものの、ここは快斗が来るし、何より鍵は快斗がいないと開かないから入り口から入らずに塔の裏まで歩いてそこで座り込んでいたのだ。

その時、空を散歩していた盗一が見つけ、事情を聞き、誤解だと知りながらも何も言わず、プレゼントは渡さないとせっかく用意したのだからと言い聞かせてやってきたのだ。

その途中、うとうとしだして眠っていたのだが。うとうとしだした理由は、盗一が快斗と同じだったから安心していたのだ。

それが、起きた時に聞いた言葉で傷ついていた。

そんなに迷惑なら、あの子にもらう方がうれしいのなら、無理にもらってくれなくてもいいもんという考えである。

「えっと、新一。」

「・・・無理に貰ってくれなくていいもん。ただのお返しだし。」

そこでやっと、新一が自分に遅いがクリスマスプレゼントを用意してくれていたことに気付いた。

そして、上手く父親に諮られたと気付いた。

よく思い出してみれば、後でと言って呼ばれたときに追い返した記憶がある。

あの後も別の用で呼ばれて結局今日まで会えなかったのだが。

「新一がくれるのは何でもうれしいよ。」

「無理に喜ばなくてもいいもん。もう、快斗とはペアでもないもん。」

確かにそうだが、ここで引き下がる快斗ではない。

「ごめん。お願い、それ、頂戴?」

「・・・。」

「駄目・・・?」

いつもの優しい快斗。

だけど、それは上辺だけのもので、駄目な子供に言い聞かせるようなものなんだと思い込んでいる新一は、頑なに拒絶する。

その態度に、やってしまったこともあるが、大嫌いといわれたままでもあり内心悲しみでいっぱいだが、どうにかして新一と話をしなおそうと思って手を出したら、逃げられた。

「新一・・・。」

本当にどうして解消したいなんて言ったのともう一度聞いてみる。

「・・・快斗のお荷物は嫌だもん。」

「お荷物?そんなことないじゃない。新一一生懸命だし。」

「でもお荷物だもん。」

そこで、誰かに言われたのかと言ったが、首を横に振る。

「とにかく、話は二人でじっくりしなさい。新一君をこれ以上泣かしたら招致しないからな、快斗。」

はっはっはと相変わらず謎ばかりの盗一は窓から退場した。

残された二人はかなり複雑なムードを漂わせていた。

「俺は次もこれからも、新一と一緒に・・・。」

「快斗は俺じゃなくてもいいでしょ。」

「どうしてそんなこと言うの?」

「ペア見つけるのが面倒なんでしょ。」

「違うよ。ペアは新一以外にいないと思ってるからそう言っただけで・・・。」

「・・・自分ひとりででも、見習いのお仕事できるもん。」

「でも、新一は・・・。」

「出来るもん。快斗いなくても、一人でできるんだもん。一人前になるんだもん。」

やっぱり、自分が知らない間に何かあったんだなと快斗はすぐに考える。

誰かが新一に何かを吹き込んだのだと、後で調べて二度と同じ事をしないようにしてやると決める。

「できなかったら、サンタ止めるもん。夢もないから、サンタになれないなら、止めるもん。」

と言い切られて、新一がサンタを止めるのなら自分も止めると言おうとしたが。

「快斗みたいに出来ないよ。取り得も何もないもん。足手まといは嫌なんだもん。」

「それって・・・。」

もしかしたら、新一は誰かに自分に合わないと言われたのだろうか。

だから、解消するなんて言いだしたのだろうかと考え付き、言った奴絶対焙り出して消すと物騒なことを考えるサンタがここにいた。

「違う違う、そんなことないよ。俺にとって、新一は支えになってるよ。それに、新一じゃないと、俺本当に困るんだ。」

「やっぱり困るんだ・・・。」

俺がいるから快斗困るんだと言い出して、慌てて違うと否定する。

もう、どうしてここまで可笑しなことを言い出すんだろうと、別の意味で困り果てる快斗。

新一は、ずっと自分の足を引っ張らないように努力をしていた。

その事は側にいた自分がよく知っている。そんな姿を見て、余計にたくさんの新一を狙う奴が増えたのだが。

「あのね、新一。教えて。俺が嫌いだから、俺と一緒に仕事をするのは嫌?」

首を横に振る新一。どうやら、大嫌いと言われてショックだったが、嫌いではないようなのでほっとする。

「そんなに、俺のこと大嫌い?」

それにも首を横に振る。なので、あの言葉はかなり傷ついたが勢いだったんだなと、忘れることにした。

「俺はね、ペアを探すに当たって、新一を見つけて、新一しかいないって思ったんだよ。」

「嘘だ。」

「嘘じゃないって。新一のためなら何でもするよ。本気で新一がペアをやりたくないっていうのなら、俺も諦める。」

だけどと、快斗は続ける。

「新一の本心からじゃないのなら、絶対に解消なんてさせないよ?」

「どうして。」

「新一が好きだからだよ。」

「好き?」

「どうしようもなく、好きなんだ。新一と一緒にいるのが、一番落ち着くんだ。」

だから、次も一緒にペアやらないと言われても、今更勝手なことをしたのも事実だし、やっぱりまだ迷惑という言葉が心に引っかかっていた。

「だって、快斗が・・・。」

「俺が何?」

「快斗が・・・。寝てばっかりって。一人じゃ駄目だって。それに、俺がいるから快斗迷惑って。・・・快斗と組めないって。」

ぼろぼろと涙を零しながら、新一が区切れ区切れに快斗に言う。

ぽんぽんとあやしながら聞いていると、自分はそんなことを言っただろうかと過去を回想してみる。

そこでふと、ある会話を思い出した。

数日前、新一に声をかけられてあとでと断った日の事。

偶然新一が聞いていて、間だけだったから誤解したのかもしれないと。

「違うよ、違う。それ、あいつとの会話だろ?それ誤解だって。新一が好きだから、寝顔を見れて幸せだなって。だから余計に他の奴に見せるのはもったいないなってさ。だって、あんなに可愛いんだよ?」

そんな事を言われても、寝顔なんて自分では見れないのでわかるわけがない。

「もし鈴が言っていた組めないだったら、俺じゃなくて新一と組めないって意味だよ。あの二人ったらさ、新一と組む為に数日前から俺に解消させようと紙提出しやがれって言い寄ってきてさ。」

ぶつぶつと文句を言いながら説明していく快斗。

「だから、本心じゃないんなら、新一とは次も一緒だよ。」

「でも。」

「あー、大丈夫。俺、新一意外と組まないって言ってるし。」

今すぐ言いに行ってきて、手続きなんて終わらせてくるしと答える快斗。

「でも・・・。」

やっぱり別に迷惑じゃないとわかっても、あの子達の事もあるし、それに今回迷惑かけたのも事実だ。

「ねぇ。」

「何?」

「新一は俺のこと好き?」

「嫌いじゃない。」

「じゃぁ、好きなんだね。ねー、一回ぐらい言ってよ。」

「俺も快斗好き。」

「もー新ちゃん可愛いー。これからずっと一緒にサンタさんしようねー。」

ぎゅうっと抱きしめる。その拍子に新一の帽子が落ちる。

よくわからないが、とにかく快斗に迷惑だと思われていないようだし、次も一緒にいられるんだと少し気持ちが明るくなる新一。

だが、すぐに思い出すのはあの二人のこと。

「でも、やっぱり。」

「何?まだ何かあるわけ?」

「俺・・・。取り得ない。」

「取り得?あるだろ。」

「・・・ない。」

「そんなことないよ。新一が側にいてくれるのが、俺にとって一番うれしいことだしね。」
「本当?一緒でいいの?」

「そうだなぁ・・・。俺の我侭聞いて。新一と一緒にいたい。」

「俺でいいの?」

「新一じゃないと嫌なんだよ。新一だって決めたんだし。好きだっていったでしょ?」

さて、手続きしにいくかと、新一のプレゼントをしっかりと持って、新一を自分のソリに乗せて。新一は快斗がいう好きという言葉の本当の意味を理解していないが、とりあえず丸く収まった。

校長室まで乱入する。

相変わらずめちゃくちゃな快斗に、自然と笑みが零れる。

「やっぱり、新ちゃんは泣き顔も寝顔も可愛いけど笑顔が一番だよね。」

それをいわれて、馬鹿とポカポカ叩くが、効果は一切なし。

とりあえず、本人は己の魅力と言うものに無知のまま、ペアに関する問題は解決(?)したのだった。

 

 

 




    あとがき

クリスマスに送りつけたお話のその後の二人でした。
何気に甘いはずなのに、相変わらず誤解して迷惑かけないようにと頑張る新一。
でも、結局次もペアとなりました。二人は一緒じゃないとね。
皆さんはよいクリスマスを過ごせましたか?
李瀬はばたばたした慌しいクリスマスでしたよ。
あ〜、二人のサンタさんに訪問してもらって、プレゼントがほしいなぁ。
クリスマス気分なにもなかったもので・・・。


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