新(蒼)「…なんか、足りない」
快(蒼)「…何が?(冷汗)」
べったりとくっつかれたまま、冷や汗ダリダリ。
伸びた腕はしっかりと抱き締めていますが。
新(蒼)「ムー…う?」
むくっと立ち上がり、外に向かう新一。
快(蒼)「新一!駄目駄目!!熱があるんだから!!」
新(蒼)「でも〜!来るの〜!なんか来る〜!」
快(蒼)「なんか?」
新(翼)「っ!!」
がばっ
ぐいっ!
快(翼)「あいた!」
キ(翼)「新一?」
突然起き上がって両方に抱きついてきた新一。
新(翼)「…っふにゃ‥っ」
キ(翼)「し、新一!」
快(翼)「うわわわわ泣かないで〜(汗)どうしたの!?」
新(翼)「な、何か来るようぅう…っえっえぅ…っ快斗ぅ、キッドォ、怖いよう…っふうぅぅう」
快(翼)「…なにか?」
キ(翼)「来る?」
ボロボロ涙を零す新一を慰めながら、顔を見合わせる二人。
そのとき、バタンと扉が開かれた。
快(蒼)「そこの羽トリオ!ちょっといいか!?」
快(翼)「何だそれ羽トリオ?」
キ(翼)「せめてノックくらいして下さい、無作法な」
快(蒼)「悪い!でも…なんか新一がおかしくてっ」
新(蒼)「うわひでぇ快斗!俺おかしくなんかないぞ!むう、んなこと言う奴には抱きついてやるV」
快(蒼)「っだぁあ…っ罰といえば罰だ!とてつもなく嬉しいけど、今は理性と戦っている暇はないんだって!」
なんだか目の前ですごくうらやましいことが繰り広げられている…
新(翼)「ふえ…っ」
新(蒼)「だから、なんか来るんだって!ここ探してる!」
快・キ(翼)「「え?」」
新(翼)「なんか足りなくてさ〜…快斗に抱きついてりゃそうでもない気もするけどさぁ…なんか、一致しない何かがこう…ん〜」
快(蒼)「何を言ってるんだかわからねぇけど(照)もしかしてこの疫病の菌ってさ、ついた人間をつれてく習性とか、ないよな?」
目印をつけて攫っていく何かとか、よくあるじゃんか。
そういった快斗の言葉に、顔を見合わせる二人と、なんだかすごく泣きそうな新一。
そなの?
そこへ、突如現れる人。
新(蒼)「うにゅ〜。蘭の・・・英理さんだ・・・。」
快斗にくっついて甘えている新一を今は無視をして・・・。
英(翼)「言われていた情報を探してみたところ、一つ見つかりました。」
キ(翼)「それで?」
英(翼)「どうやら、かつての昔、この館に守護神が居られた頃、守護神にかかった高熱の例がありました。」
快(翼)「それって、やっぱり奴等の仕業?」
英(翼)「そうかと思われます。奴等、彼を狙っての事かと思われます。それ故に、似ている新一様にも同じような症状が出たのかと思われます。」
キ(翼)「嫌な予感どおり、というわけですか。」
快(翼)「そして、持つ力を判断して、そちらはこちらよりも軽い、というわけですね。」
さらにそこへ現れる人がいる。
紅(翼)「まずい事になったわ。」
快(翼)「どうしたんだ?」
紅(翼)「第四階級はほぼ全滅よ。たぶん、守りを壊す為に弱いものに対しても効くようにと、新たに何らかの成分が菌に含まれている可能性があるわ。」
新(翼)「ふぇ・・・。一人にしないでぇ、怖いよぅ・・・。」
うるうると見上げる新一。
キ(翼)「いろんな意味で困りましたね・・・(汗)」
その間にも、同じようにべたべたしている二人がいるが、今はそれどころではない。
キ(翼)「志保達に看護を。紅子達はお客の方をお願いします。」
快(翼)「わかってるって。ちょっと様子見てくるよ。・・・行くよ、真。」
真(翼)「おおせのままに・・・。」
現れて去っていく。忙しい奴等だと他人事のように観察する快斗(蒼)
新(蒼)「むっ。余所見とはいい度胸だな、快斗〜!!」
快(蒼)「うわっ、ちょ、新一?!」
紅(翼)「馬鹿をやるのは部屋にいってからにして頂戴。ほら、行くわよ。」
二人の腕をつかんで部屋から消えた。
キ(翼)「さて。どうしたものでしょう。」
新(翼)「キッド〜。来るよ〜。」
そうとう、過去にも酷い眼にあったのかもしれない。
そう思うと、絶対に許せないなと思う。その迫ってくる原因に対して・・・。
紅(翼)「あなた達はここから出ては駄目よ」
快(蒼)「言われなくても出ないって」
新(蒼)「ん〜V」
快斗にべったりな新一。
それを見てため息をつく紅子。
紅(翼)「…それにしても、弱い奴はかかる菌なのにあなたは平気なのね…強いのかしら。それとも彼らと似ているから?」
快(翼)「あの羽トリオは強いのか?って、トップだし…当たり前か」
紅(翼)「…」
羽トリオの辺りに顔を顰める紅子さん。
快(蒼)「あっちの新一も大変そうだったな…」
紅(翼)「ええ、本当にいろいろと大変よ」
新(蒼)「なあなあ小泉さん」
快(蒼)「っ!!?」
べたりと、今度は紅子にくっつく新一(蒼)
甘えたがりだからいちいちくっつくらしい。
紅(翼)「…どうかしたのかしら?」
上目遣いに見上げられてちょっと動揺している紅子さん。
そりゃあ、同じ顔だし。
新(蒼)「おっきくて黒いのな、西のほうから来るぜ」
紅(翼)「!」
新(蒼)「なんか、たくさんちっちゃいのもいるぜ?」
紅(翼)「…そう」
教えてくれてありがとうと頭を撫でると、えへへと嬉しそうに笑う新一(蒼)
我慢できずに快斗は紅子から新一を引き剥がして抱き締めた。
新(蒼)「快斗〜?どした?」
快(蒼)「新一は熱があるからさっさと寝ようね〜ということで、後は頼むよ」
紅(翼)「…やっぱり心が狭いのね」
新一から仕入れた情報を元に、対策を練るため部屋を出た。
キ(翼)「…西ですか」
紅(翼)「ええ、あちらの新一君の話では」
キ(翼)「恐らくそうなのでしょう。伏兵の可能性もありますから気をつけて…」
紅(翼)「ええ、そうさせてもらおうわ」
新(翼)「…くぅ」
泣き疲れて眠ってしまった様子。
紅(翼)「…彼、貴方たちと同じよ」
キ(翼)「は?」
紅(翼)「嫉妬深いところが特に」
キ(翼)「敵は西からのようです。」
快(翼)『西〜?ちょっと、今は東方向よ?まったく、無茶いってくれるね、キッド。』
連絡を取り合う二人。
双子という事もあってか、以心伝心というか、テレパシーが使えたりもする(便利?!
新(翼)「くぅ・・・にゅ・・・。」
少し顔をしかめる。
キ(翼)「どうやら、近づいてきているようですね。」
快(翼)「あー、でも。なんでキッドが良いとこ取りするかな?!」
ずるいずるいと騒ぐが、仕事をしろといって通信手段を切った。
その時、ふぃっと目を覚まして起き上がる新一。
新(翼)「・・・・・・来る・・・。いかなきゃ・・・。」
何故か泣いてはいない。何より、目がうつろ・・・。
キ(翼)「新一?」
新(翼)「いかなきゃ・・・。待ってる・・・。迎えに来る・・・。」
ふらふら〜っと導かれるように歩き出す。もちろん、がっしりと腕を攫んでベッドに戻すが。
キ(翼)「駄目ですよ。今は寝る時間です。外を出歩く事は許しません。」
新(翼)「・・・。」
キ(翼)「いい子ですね・・・。だから、大人しくしていてください。」
そういって、再び眠りに付かせたのだった。
どたどたどたどたどた
ばこん!
快(蒼)「羽コンビ!」
ちょっと前屈みに再び快斗が部屋に乱入。
キ(翼)「今度はコンビですか(ため息)」
快(蒼)「だってもう一人いないじゃねぇか」
キ(翼)「まあそうですが、どうかしましたか?」
快(蒼)「新一が逃げた!」
キ(翼)「は?」
呆然。
逃げたって何?
快(蒼)「寝てたんだけど、いきなり外に行くって言い出して…勿論止めたさ。でも、黄金の足を持つ新一を止めるのはさすがの俺にも無理でした(涙)」
どうやら腹部を蹴られたらしい。
キ(翼)「という事は…操られているのですか?」
快(蒼)「多分。目が虚ろだったし」
新(翼)「うにゅ?」
快(蒼)「こっちの新一は?」
キ(翼)「泣き上戸ですから止めるのは簡単でしたよ。困りましたね…彼らの狙いは新一ですが、そちらの新一ではありませんし…」
快(蒼)「し、新一が危ない!?」
快(翼)「むー、キッドばっかりずりーよ…絶対俺が先に新一の羽根を見たこととか根に持ってる…」
がさがさと、真と別れて西を目指す。
そのとき、向こうからがさがさと何かがやってくる。
快(翼)「ん?この気配…」
新(蒼)「(がさっ)あ、羽快斗!」
快(翼)「羽快斗って…」
パッと顔を輝かせて抱きついた新一。ちょっと戸惑いつつ振り払わないのはやっぱり新一だから?
快(翼)「何でここにいるのさ」
新(蒼)「呼ばれた〜えへへ、おめぇも何してんだぁ?」
快(翼)「俺たちはお前たちをこうした原因を…て、呼ばれたぁ?」
そのとき。
ぱかっと地面が開きました。
快・新(翼・蒼)「「わあああああ!!」」
落下していった二人。
何で穴が!?
キ(翼)「・・・どうやら。少々厄介な事になっているようです。」
快(蒼)「はぁ?どういうことだよ。」
キ(翼)「快斗の気配が途切れました。新一といっしょに。」
快(蒼)「なぁ〜にぃ〜〜〜?!
新(翼)「うにゅ・・・?」
快斗の声でお目覚め。
キ(翼)「まだ、無事でしょうが・・・。どうやら、私の感知できる範囲からはずれたようです。」
キッドは光のある場所限定なもので。
キ(翼)「新一・・・。貴方に探して欲しいのですが?」
新(翼)「にゅ・・・?快斗を?」
キ(翼)「そうです。」
新(翼)「わかった・・・。・・・えっと、西の方。ここから数十メートル。穴の中・・・。」
すっと、少し翼が透けて、意識もしっかりしているのか答える。
だが、すぐにこてんとキッドの肩にもたれかかって眠る。
キ(翼)「・・・との事のようなので、行きましょうか。」
快(蒼)「ああ。(透明になるもんなのか・・・?)」
快(翼)「あいたたた…」
新(蒼)「目ぇ回った…平気か?」
快(翼)「まあね。変な出っ張りに引っかかってよかったね。したにはなんか尖った物が見えるから」
そのまま落下していたらぐさり、ですな。
快(翼)「キッドたち気付くかなぁ…」
新(蒼)「平気だろ。黒羽に迷惑かけるな…」
快(翼)「…治ってる?」
新(蒼)「なんか体が楽になってな…菌っつーかウイルス?も外に出てってくれたみてぇだ。ほらなんか、親玉が近いんだろ?もしかしたら帰ったのかもな」
快(翼)「変わり身が面白いよ」
新(蒼)「う、うるせぇ!俺だって好きでくっついてたわけじゃ…っ(////)」
どうやら覚えているらしい。
後で新一(翼)の反応が楽しみだとにやける快斗。
新(蒼)「で、どうしようか。なかなか出にくいところだぜ?」
快(翼)「飛べば速いけど…」
新(蒼)「飛べねぇの?」
快(翼)「ここ狭い」
羽を広げたらはばたく隙間がないらしい。
ああ、なるほど。
新一はちょっと遠くを見た。
新(蒼)「じゃあこの横穴に入ってみるか?」
快(翼)「いつの間に…(汗)」
新(蒼)「待ってても誰も来なくちゃ意味がねぇからな。自力で出来る所までやらねぇと」
快(翼)「この先に親玉がいたりして」
新(蒼)「あはは、言うなよいそうじゃねぇか」
とか言いつつ進む二人。
結構いいコンビか?
キ(翼)「新一がいうには、このへんですね・・・。」
背中に新一をおんぶして、やってきました。
隣では、少しうらやましそうにしている快斗の姿もあります。
快(蒼)「呼んだら返事があるかな?」
キ(翼)「無理でしょう。ここはねじまがっていますから。」
新(翼)「うにゃ・・・。」
きゅっとキッドの背中にくっついて、すやすやと眠っています。
キ(翼)「とりあえず、邪魔なものを排除しますか。」
さぁっと翼を広げた事で姿を見せたそれ。快斗は今まで気付かなかった黒い陰の存在を見つけた。
キ(翼)「邪魔立てするのなら、容赦しません。」
翼から何かが放たれ、影はあっけなく消えた。
キ(翼)「奴等がいたということは、このあたりで間違いないようですね。」
快(蒼)「新一っ!」
どこだと叫ぶが、返事はまったくない。
その頃。
新(蒼)「・・・。」
快(翼)「どうかしたのか?」
新(蒼)「なんでもない。何か、聞こえたような気がしただけだからな。きっと、空耳だ。」
その声が快斗に似ていたような気がしたが、ここにいる快斗の声と混じり、気のせいだと判断した。
それが、本当に自分が会いたい快斗だとは気付かない。
歩くに連れて、だんだんと道が広くなっていく。
快(翼)「いかにも何かがいますって感じだな。」
新(蒼)「お約束って奴だな。」
面白みも何もねぇと文句をいう新一に対し、面白くはないでしょと苦笑する快斗。
さて、ご対面か?
新(蒼)「…」
快(翼)「……」
新(蒼)「ふう(ため息)まだ熱があるのかも…」
快(翼)「うつったか…?」(真剣)
新(蒼)「つかぬ事を聞くけどな、快斗」
快(翼)「何?新一」
新(蒼)「もし俺の目が正常ならいい。目の前に何が見える?」
快(翼)「そういう新一は何が見えるのかな〜?」(満面の笑み)
新(蒼)「……」
快(翼)「…せーのでいう?」
新(蒼)「…頼む」
快(翼)「じゃ、せーのっ」
新・快(蒼・翼)「「でっかい蛾」」
二人の目の前には自棄に毒々しい蛾が一匹。
新(蒼)「何で地下に蛾がいるんだ?」
快(翼)「あの菌っつーかウイルスって蛾のりんぷんだったんだ〜…」
新(蒼)「さすがにこんな近くで見てるのは気持ち悪いな…なんかうごかねぇし」
快(翼)「もしかして弱ってるとか?」
新(蒼)「…なあ、もしかしてだけど」
快(翼)「ん?」
新(蒼)「確信のないことはあまりいいたくないんだけど」
快(翼)「…言って欲しいな」
新(蒼)「こいつもしかして…俺たちに害を与えるとかそんなんじゃなくて…」
そのころ、三人は。
快(蒼)「…囲まれてねぇか?」
キ(翼)「そのようですね」
新(翼)「えう…っ」
ぐすぐすする新一を抱えながら、身構えるキッド。
快(蒼)「ああもう!新一はどこ何だよ!」
切れてきてます、快斗さん。
キ(翼)「しょうがないですね・・・。」
新一を近くの木の根元に下ろして、攻撃態勢に入る。もちろん、快斗はしっかり切れて、すでに交戦中。
そんな時。
新(翼)「にょ・・・。ん・・・?呼んでいる・・・?・・・誰?」
新一の様子がかわったことに誰も気付いていない。
新(翼)「お前が、教えてくれるのか・・・?」
その樹から感じ取る、この場所にいる何かの訴える声。
翼の色を変え、その樹から声を聞き取る。その時、キッドは新一の羽の様子が変わったことに気付いた。
新(翼)「・・・そっか。苦しいんだ・・・。」
どうやっていけばいいのかと聞こうと思ったとき、自分に向かってくるキッドが見えた。
キ(翼)「新一っ!!」
ずぼっと穴が開き、まったくどういう状況かわかっていないのか、ぼーっとしている新一は穴の中に飲み込まれていった。
キ(翼)「新一ーーーっ!!」
手を伸ばしても、それは間に合わない。
キ(翼)「新一・・・。しん・・・い・・・ち・・・。」
気配を感じられない。感じる事が出来ない場所に彼はいる。
そんな様子に、敵は倒した後近づいた快斗は声をかけられずにいた。
ずべっと何かが落ちてきた。
新(蒼)「何だ?!」
快(翼)「し、新一?!」
新(翼)「いてて・・・。・・・快斗・・・?」
こんなところで何してるんだという感じで頭に?マークが飛び交っているのか、首を傾ける。
また、それが可愛くてしょうがなくて・・・。
快(翼)「あ、えっと。新一も穴から堕ちたの?」
新(翼)「穴・・・?ああ、あれか。いや、俺は誘われただけ。」
どうやら元に戻っているようだが、意味がわからないのだが・・・。
新(蒼)「誘われた?何に?」
新(翼)「たぶん、あれだな・・・。」
新一が見た方向には、あの大きい蛾がいた。
新(翼)「またお前は、同じ事を繰り返しているんだな。」
かつて、守護神として君臨していた過去の新一の前にも現れたそいつ。
ただ、新一の持つ力を借りたいだけで、誘ったのだ。
蛾(翼)「・・・神・・・。やっと・・・見つ・・・けた。」
そりゃそうだ。今回は同じ顔と気配を持つ者がいるのだから、間違えるだろう。
新(翼)「ま、いいけどね。ほら、顔上げろよ。」
重々しく瞼をあけるそいつ。かなり大きな目。かなり気味が悪い・・・。背後で引いている二人は今は無視。
新(翼)「穢れを浄化し、彼の者の姿を戻せ。」
光が包み込めば、そこには大きな蛾はいない。いるのは、美しい人の姿をしているが、大きな蝶の羽を持つ女。
新(蒼)「弱ってて、おかしくなってたのか?」
快(翼)「そうなんじゃない?」
新(翼)「正確には、俺たちの敵の闇や邪な気にあてられて、この姿を保てなくなった。それを、戻して欲しいと願った。」
それが答えだと言う。
新(蒼)「やっぱり、悪い奴じゃないんだな。」
快(翼)「でも、いろいろと迷惑だよね。」
新(翼)「でもさ。あの姿はかなり苦しんでいる時にしかならないんだ。」
新(蒼)「そっか・・・。」
それだけ、あいつらは活動を広げている。はやく、食い止めねばいけない。
上に、戻ろうかといい、新一は翼を広げる。女もまた、羽根を広げ、道を開けた。
キ(翼)「…ふ、ふふふふふ…」
快(蒼)「お、おい?」
とうとう壊れたか、キッドさん。
キ(翼)「私から新一を奪おうとはいい度胸ですよ…」
なにやら目がいっちゃってますよ。(汗)
快(蒼)「穴は塞がってるぜ?」
キ(翼)「憎たらしい…はっ」
快(蒼)「どうした?」
キ(翼)「…快斗と、そちらの新一は私の感知出来ない場所にいます…まさか、この下に?」
快(蒼)「!?」
そのとき、二人の目の前でぱかっと穴が開いた。
そこから顔を出す見知った三人と、知らない人一名。
新(蒼)「あ、黒羽」
新(翼)「キッド!」
キ・快(翼・蒼)「「新一!」」
ダッシュで抱きつく二人。その他の二人は無視。
快(翼)「コラキッドー!ずるいぞ!」
キ(翼)「貴方も一緒に落ちていたのですね。真はどうしました?」
快(翼)「あ、忘れてた…まあ、館に戻ってるだろ」
快(蒼)「新一、新一〜逢いたかったぜ!」
新(蒼)「は、離せって黒羽!おい!」
快(蒼)「…この口調は何時もの新一だな…治ったの?熱は?どこかだるくない?」
新(蒼)「…(////)」
熱のある期間の行動を思い出している様子。
キ(翼)「ところで新一、この方は?」
ひっそりと佇む美人。
新(翼)「過去、俺に助けを求めてきた奴…同じ翼を持つ者だけど、俺たちとは微妙に違う羽を持つ。魔に影響されやすいんだ。あいつらの被害者だよ」
蛾(翼)「…かちょう、華蝶と申します…」
新(蒼)「蛾なのに蝶なのか?」
華(翼)「…はい」
新(翼)「もう、毒されるなよ」
華(翼)「我等が君には、ご迷惑をおかけいたしました。ありがとう存じます」
ふわりと頭を下げて、飛び立つ。
その解き放たれるりんぷんは仕方ない。
皆は口と鼻を抑えて見送った。
キ(翼)「人騒がせですね…」
新(翼)「仕方ねぇよ、あいつも被害者だ」
新(蒼)「…あー、ところでさ」
快(翼)「んー?」
新(蒼)「熱とか出してて忘れてたけど、俺たちってどうやって帰ればいいんだ?」
ちなみに帰り道もわかるか?
そこはかなり森の奥。
五人は顔を見合わせて笑って誤魔化した。
とりあえず、館に戻ってきた。
新(翼)「そろそろ離せ。」
キ(翼)「嫌です。」
嫌だと、きっぱり即答です。そりゃ、目の前で連れて行かれては当分無理でしょう。
新(蒼)「大変だな。」
新(翼)「お前もな。」
同じような状況であった。
快(翼)「・・・俺だけ仲間はずれ〜(涙)」
二人を独占していたのだから文句を言うなというのが彼等の意見。ちょっと寂しい。
キ(翼)「それで。何かつかめましたか?」
英(翼)「いえ。それはまだ・・・。今まで前例がない為、外の連絡待ちです。」
キ(翼)「そうですか。」
部屋から出て行った英理。
新(翼)「なぁ。」
キ(翼)「駄目です。」
新(翼)「話を聞け。」
快(翼)「ほら。話は聞いてあげなよ。じゃないと、奪うよ。」
キ(翼)「・・・。で、何ですか?」
新(翼)「もしかしたら、帰れるかもしれないぞ?」
新(蒼)「本当か?」
快(蒼)「どうすれば帰れる?」
新(翼)「俺は、ここの守護者なんだよ。」
快(蒼)「そうだったな。」
新(翼)「この館は特別で、俺が願えば願うとおりになるんだ。」
快(蒼)「それは便利だな。」
新(翼)「だから、俺が願えば、もしかしたら外への入り口を作ることは可能かもしれない。」
快(蒼)「それは本当か?!じゃ、帰れるんだな?」
新(翼)「良かった。警部に呼ばれてたし。」
そんな新一の言葉は無視。行かすつもりはない。(えっ?)
キ(翼)「相変わらず、むかつく屋敷ですね。まったく。」
快(翼)「たまに、新一を隠しちゃうしさ。」
なら、そんなところに住むなよ、あんたら。
新(翼)「とりあえず、試すな・・・。」
そして、壁に手を当てて、何かを呟く。その間に、翼は背中から現れ、蒼から色が抜けていく。
新(翼)「仮の者達の本来いるべき場所へ送るため、入り口となる扉を我等の前に開け・・・。」
なんと、あっけなく扉は開いたさ。
本当に、今までの苦労はなんだというほどあっけなく。
まったくもって、むかつく屋敷である。
キ(翼)「気に入りませんね。」
快(翼)「確かにね・・・。」
だが、こうして彼等は帰れる道が出来たのだった。
新(蒼)「すっげー!」
新(翼)「これで帰れるだろ」
新(蒼)「…なんでこっちに着ちまったかの謎は残ったままだけどな…」
快(翼)「それはこっちで解明するよ」
キ(翼)「我々が巻き込んでしまった可能性のほうが高いですから」
快(蒼)「つーか、俺たちは心当たりがない…」
そりゃそうだ。
そのとき、開いた扉が大きくぶれた。
新(翼)「さすがに長くは持たないな」
新(蒼)「挨拶はしたかったけど…そう悠長なこともいってられねぇか」
快(蒼)「だね」
がしっと、手を繋ぐ。はぐれないためにだ。
新(蒼)「じゃあな!推理談義、楽しかったぜ!」
新(翼)「ああ、俺もな!」
快(蒼)「羽コンビは見ていて飽きなかったぞー」
快(翼)「コンビいうな」
キ(翼)「貴方に言われたくありませんよ」
そうして、慌ただしく穴に吸い込まれていった二人。
同時に閉じる穴。
新(翼)「なかなか、楽しかったな」
さて、これからもまた忙しくなるぞ。
三人は結果を報告をすべく、他の者たちを呼んだ。
新(翼)「結局、原因はなんだったんだろうな?」
哀(翼)「どこかの馬鹿が穴を開けたのよ。」
新(翼)「ブラックホール?」
ここでいうブラックホールとは、他の世界へと繋がる穴の事です。
キ(翼)「まったく、迷惑な人達です。」
新(翼)「複数形?」
快(翼)「まだ、穴が残ってるから、心配なんだけどね。」
新(翼)「・・・じゃぁ、またあいつら来るのか?」
志(翼)「可能性として、私達が落ちる事もあるのよ。」
新(翼)「・・・。」
キ(翼)「はやく、全て塞げたらよいのですがね・・・。」
新(蒼)「…て、ここって黒羽の家じゃねぇか!」
ついた場所は、工藤邸ではなく黒羽邸。
快(蒼)「でも、ちゃんと戻ってこれたっぽいね」
新(蒼)「…なかなかにハードな冒険だったぜ」
快(蒼)「同じ顔の人が二人もいたし」
新(蒼)「性格違ったしな」
快(蒼)「新一はまんまだったね」
新(蒼)「うるせ(////)」
頬を染めて横を向く新一。快斗がくすりと笑った。
新(蒼)「…おい」
快(蒼)「んー?」
新(蒼)「この手は何だこの手は!」
しっかりと、腰に回った逞しい腕。
快(蒼)「甘えんぼ新ちゃんに散々煽られたから、責任をとってもらおうかと…」
新(蒼)「おい!それは俺の所為じゃ…っふ、」
快(蒼)「覚悟しなよ、新一」
あとがき
第一弾第二弾と、楽しんでやっていたのですが。
第三弾もやりましたよ。
前回は舞姫と黒鳥でしたが、今回は翼と蒼ですよ。
キッドさんきれてます。快斗蒼もきれてます。
新キャラも登場で、とってもたのしかったですよ。
新一の甘えん房とか泣いているところとか。
今回も楽しかった。満足。
メールでお付き合い頂き、コウsama、本当にありがとうございました。(感謝
戻る
|