ふにゅ〜

っと、気持ち良さそうにぎゅっとシーツを攫んで眠っている新一

 

「・・・いつまで我慢できるだろ。」

「私達の理性と新一によってかわるでしょうね。」

 

可愛い寝顔を見て、嬉しい反面、心の中でははぁっと溜息が零れる

 

そんな今日も平和な一日が始まると思われた・・・

 

 

 

新たな争いの兆し

 

 

 

起こされても、寝起きがよくない新一はいつもぼーっと上半身だけ起きてあがって、頭は寝ている状態。

その間、快斗とキッドは新一の服を着替えさせて、抱き上げて部屋を出るのだった

食堂に着く頃、はっきりと目を覚ます新一は、もう慣れたのか、キッドに抱き上げられていても文句を言うことなく、一緒に食事をする志保達におはようと挨拶をするのだった。

それが、この館の朝の光景となっていた。

「まったく。毎朝毎朝見せ付けてくれちゃって。」

ぼそりと新一には聞こえない声でいう志保に苦笑するキッドと快斗。

食事も済んで、寺井のお手伝いをするのだと走っていったのを見送った後、外に関する内容や今後のことでの話で残っていた時に言われるのだった。

「これで、まだ手を出していないなんて。珍しい事もあるものよね。」

「まったくだわ。」

「でも、いつまで持つのかしらね。」

志保と紅子が容赦なく二人に言う。

隣では、左藤が苦笑して、真はただ無表情に聞いていた。

「とにかく、話を戻しますが。今度も警戒が必要です。何があるかわかりませんから。」

「了解。」

それぞれの色のトップだけが集まっている中だが、全員に警戒するように伝える。

いつ、この平和が壊れるか知れないから。そして、この平和を守り続けたいとみなが思うから。

新一には何も言わずに水面下で行動を起こすのだった。

 

 

 

「上手くなりましたね。」

褒められてご機嫌の新一。

現在、彼等はお茶の用意をしていた。今日はお茶会だから。

いつもは寺井が用意するのだが、今回は新一もお手伝いだ。

この前から教わって練習していて、今日は本番。おいしいといってもらえて、うれしくなる新一。

「次は、お菓子の用意をしないといけませんね。」

「はい。」

寺井と一緒にお菓子の生地を作って、焼く。

「大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ。新一ががんばってつくりましたから。」

うんとにっこりと笑みを見せる新一を見て、うれしく思うと同時に、また二人の主に嫉妬されてしまうと苦笑する寺井だった。

早く焼けないかなとオーブンの前で目を輝かせて座っている新一を見ると、こんな日常がこれからも続いたらいいなと思うのだった。

 

 

 

さて。お茶会を始めるぞというときだった。

「・・・あれ?」

新一が感じた気配。きっと、他の皆も気付いた事だろう。

だって、こんなにも強く、そして歪んで君の悪い気配だ。トップであるキッドや快斗が気付かないはずがない。

「・・・二人のところに行ってみようかな。」

自然と、不安になる新一の足が向かう先はキッドと快斗がいるであろう部屋。

少し早足になりながら、向かう。

その時だった。

はっと、背後を見たときに、見えた、にやりと笑みを見せる不気味な人影。

「・・・っあ・・・。」

見た瞬間怖いと感じ、走る。だが、逃げ切れる事はなかった。

すぐに背後にその気配はあり、手が腰と首に伸ばされ、嫌悪感と寒気、そして恐怖で動けなくなってしまったのだった。

「見つけましたよ。・・・くくく、探したんですよ。」

しっかりと腕の中に閉じ込められて、逃げる事は出来なかった。

「やだっ、は、離せっ!」

じたばたとやっと動けるようになった足や腕で抵抗するにも、相手の束縛から逃れる事は出来なかった。

「では、行きましょうか。御方様がお待ちですから・・・。」

嫌だ嫌だと叫んでも、どうにもならない。力の使い方もあまり知らない新一は、ただ、なすがままに連れて行かれるだけ。

「・・・っど、キッド!快斗!」

「呼んでも無駄ですよ。諦めなさい。」

ここから離れるのは嫌だった。だから、必死に抵抗した。だけど、やっぱり力の差は歴然で、このままでは本当に連れて行かれてしまう。

あの時は無意識に力を使ったし、冷静さがあったから出来たが、冷静さが欠けた今の新一は、どう力を使えばいいのか迷い、そして慌てるがためにコントロールさえ出来ない状態だった。

そこへ、二人の間を裂くように通りぬける、鋭い風の刃。

その隙に、影に潜んでいた影が新一の身体を捕らえて距離を取った。

「まったく、迷惑な方ですね。人の屋敷へあがるさいは、許可を取って玄関からお願いしたいものです。」

「くくく・・・玄関から許可をもらえないのだから、しょうがないでしょう。」

今回は少し油断していたなと、相手は慌てるそぶりもなく相変わらず不気味な笑みを浮かべながら、言う。

「大丈夫、新一。」

「か、快斗・・・。」

助けてくれた快斗にぎゅうっと抱きつく新一。がたがたと震える身体をみて、相当怖かったのだとわかり、一層目の前の相手が憎く感じられた。

「まぁ、いいでしょう。今回は退散させていただきます。」

マントで身体を包み、黒い中に顔だけが浮かぶような状態で、相手は言う。

「近いうちに必ず彼を頂に参りますよ。神はそちらだけのものではないってことを、よくわかっておいていただきたいですね。」

相手は二人に挑戦的にいい、姿を消した。

現れたときと同じように跡形もなく。

「・・・もう、大丈夫ですからね、新一。」

快斗の腕の中で顔をうずめている新一の頭をなでるキッド。

何も出来なかった自分が悔しくて涙を流す新一だが、快斗とキッドはあの男が原因で新一を怖がらせたのだと、勘違いしていた。

 

 

 

新一を部屋で寝かせ、寺井に部屋で待機するように指示して、今後、もっと警戒するべきだと、トップの志保と左藤と真と紅子を集めた。

「まったく。もう少しはやく対処しなさい。」

志保に指摘されて、ごもっともだが、志保自身も遅れた事もあり、それ以上はいう事はなかった。

「今まではまだ序の口。雑魚だったといっても過言ではありません。完全に、本腰を入れて新一を手に入れようとしていると思います。」

「そうね。」

「だけど、渡すわけにはいかないし、もう大切なこの屋敷の住人で仲間だもの。嫌ね。」

「ですから、必ず独りにさせないように協力を願います。」

「いいわよ。」

「普段は貴方達が一緒にいるんでしょ?」

新一のことを気に入っている人達だから、側にいて守るぐらい出来る。

「下の二人にも伝えておくわ。」

「そうして下さい。」

「じゃぁ、俺たちは部屋に戻るよ。」

キッドと快斗が戻ったのを確認し、見るからに恋人同士なのにどうしてくっつかないのか謎だと誰もが思うのだった。

 

 

 

「坊ちゃま。」

「どうでした?」

「起きられて、二人をお待ちです。」

礼をして、仕事に戻る寺井。中に入る二人は、起きて不安そうにしている新一を見て、もう少しはやくもどってくるべきだったと反省するのだった。

「新一。」

「キッド。」

キッドが差し出した腕をつかんで、ぎゅうっと抱きつく。

相当怖かった事で、一人でいたのが寂しかったのだろう。

寺井がいても、新一がすきなこのぬくもりがなかったから。

「すみません、新一。」

「ごめんね。もっとはやく気付いていたら・・・。」

首を横に振って、さらに服を攫む力を強める新一。

「ありがと。助けてくれて。」

「いえいえ。新一を守りたいだけですから。」

「そうだよ。新一に何かあったら、その時こそ大変な事になるからさ。」

自覚はある。狂気が表に現れ、人を殺す事さえ冷めた眼で見ているだろう自分達。

繋ぎは現在、仲間や新一。

「今日はもう、休みましょう。疲れたでしょう。」

「寝よ。一緒に。」

首を縦に振って、そのまま三人でベッドにもぐる。

すぐに聞こえてきた穏やかな寝息を聞き、もっと気をつけないといけないと自覚するのだった。

そうしないと、この平和な日々は簡単に壊れてしまうから。

二人は新一の左右それぞれの頬にキスを落とし、新一と一緒に眠りに落ちた。

 





     戻る