第八話 祝福の鐘が鳴り響く時

 

 

本当なら、そこで新一をいただきたかったが、いきなりはまずいだろうと、理性で押し留めた二人。

しっかりと思いが通じ合った事を知っている彼等は、理性は残っていたのねと、いろんな意味で感心していた。

それだけ、分かりやすいほど昔の態度はすごかったのだった。

「気付かない新一君もそうだけど、新一君も一目ぼれだったんでしょ?目の前の事で気付かないあの二人もそうとう馬鹿ね。」

気付いていれば、もっとはやく一緒にいられたはずだ。

紅子と志保は知っている。

かつての守護神と館の主との事。

「昔の彼、我慢できずにやったみたいだったけど・・・。今回はいつまで持つのかしらね?」

きっと、長くは持たないだろうというのが彼女達の感想。

聞いていた二人は苦笑し、新一はまったく意味がわからないのか、首をかしげていた。

 

 

今日は、久々に聞こえるかもしれない。

今頃、三人は向かっているから。

守護神がいなくなってから鳴らされる事のなくなった、鳴る事がなくなった鐘。

包み込んでいた闇は晴れたのだから、鐘は鳴るだろう。

守護神の帰りを待っていた鐘。あの美しい音色を奏でるだろう。

「今日、お茶会開きましょうか。」

鐘の演奏を聴きながら、お茶を飲んでお菓子を食べる。きっと楽しいものになる。

まだ、敵との事は決着が付いていないが、こちらには守護神と守護神を守る騎士が二人もいるのだから、心配には及ばないだろう。

 

 

カラーン カラーン・・・

 

 

聞こえてくる、数百年ぶりの鐘の音。

この地で眠る、かつて守護神が愛した人にも届くようにと、鳴り響く鐘。

「すごい・・・な・・・。」

大きな鐘が、生きているかのように音を鳴らす。

「新一の帰りを喜んでいるんだよ。」

右にはキッド、左には快斗。

「そろそろ、戻りましょうか。」

いつまでも、この場所にいるわけにはいかない。きっと、今日はお茶会を開くだろうから。

用事もない日に行かないとなると、後々言われるだろう。

「また、お茶とお菓子食べれるんだ。」

「そういえば、新一気に入っていたよね。」

今度は自分が作ったお菓子とお茶で午後を過ごそうねと約束する。

 

 

蒼い空は広がり、風がふわりと吹きぬける。

風に乗って鐘の音色は響き渡り、大地に子守唄を聞かせる。

大地を通り抜け、海を渡り、燃え盛る炎を鎮める。

そして、多くの生命に語りかけるように音は響く。

 

 

お茶会の場所では、皆がそろっていた。

「遅いわよ。」

「来なかったら、呪ってやろうかと思ったわ。」

そう言いながら、紅茶を飲んでいる紅子と志保。

「はよう、座り。」

「寺井さんなんて、こんなにしてくれて。」

「今日はめでたいから豪勢なのよ。」

「その主役がこなくて、今日ははじまらないわ。」

和葉に蘭に園子に美和子の四人。席を勧めてくれる寺井。

「今日の仕事はなしと伝えておいた。」

「白馬君、ちゃんと伝えてくれているかなぁ?」

「大丈夫だよ。そこまで馬鹿じゃないし。」

「お兄ちゃんたちだったら、きっと大丈夫だよ。」

今日は仕事がないから、ゆっくり出来るという。真に歩にコナンにあゆみ。

「何かやらかすようなら、しばらく動けないようにしてあげるから大丈夫よ。」

なにやら物騒な事をいう哀。

 

皆に出会えて良かった。

涙が出そうだ。

だけど、これ以上みっともないところを見られるわけには行かないから、ありがとうと笑顔で言う。

 

 

祝福される日が待ち遠しいのか、まだなり続ける鐘。

過去には結ばれなかった彼等の分も、幸せになるようにと願っているかのように・・・

 

今日も、館の一日は始まり、そして終わる。

いつか、完全な平和を手に入れるまでのしばしの休息。

 





     あとがき

  やぁっと完成!
  こっそり連載していましたが、お付き合いくださった方、ありがとうございます。


     戻る