たった一滴のエッセンスで幸せの味が増えるお菓子

たった一粒の可愛い角砂糖で幸せが増える紅茶

貴方もいかがですか?

 

 

 

 

Suger

 

 

 

 

 

一件の小さなお店。名前は『Moon』。

最近出来たばかりで何も宣伝はしていないが、毎日客足は耐えない。

だが、決してたくさんくるわけではない。

だって、お客さんは必要以上にこの店の事をしゃべらないから。

一人一人のお客様を大切にしたいという気持ちの元、帰り際にふと店員に言われる言葉。

『今日、この場所へ来た事は、貴方方の秘密ですよ。』

そっくりの同じ顔の店員がそれぞれ言う言葉。たまに、綺麗な赤茶毛の女の人が言うが、客は皆うなずく。

最後に、これはお土産にどうぞと渡されるのが、月代わりで、それも日替わりの砂糖菓子。

毎日数が限られているが、なくなっても誰も文句はいわない。次の機会にねと笑顔で帰っていく。

そもそも、この店の主達三人は、お客様の笑顔のためにこの店をやっているのだ。

別にもうけたいわけじゃないから、一人一人を大切にして、今にいたる。

なので、密かに穴場としてささやかれるが、場所はあまり把握されていない。

店主は工藤新一。紅茶や珈琲などの飲み物を担当している。クールだが、笑顔はさわやかということと、きっと本来持つものがそうさせるのだろう。来た客皆に好かれている、いい店主。

そんな彼にそっくりでたまに店でマジックを披露する黒羽快斗。店のお菓子やお土産の砂糖菓子の担当である。人懐っこさと明るさでお客の心をゲットしている。

最後が店の内装やラッピングや食器の担当の宮野志保。ミステリアスで時折見せる笑顔で、男の客でファンも多い。

彼等は今日も朝早くから店をオープンする10時まで大忙しで動く。

「まだかしら?」

「もうちょっとー・・・はい、できたよ。ラッピングお願いね。」

「快斗。あの限定ケーキ作ってねーぞ。」

「げっ。」

やばいと、時計を確認する快斗。まだ二時間ある。

「今から頑張るから、しばらく新一頼むね。」

「おう。」

新一もお菓子を作れないことはないので、下準備をして作り始める。

やっと10時で開店できても、彼等に休む暇はない。

なぜなら、片付けも接客も用意も全て自分達でするのだ。バイトを雇うつもりもないので、しょうがない。

「いらっしゃい。あ、蘭ちゃん。園子ちゃんも。」

どうしたのと快斗がひょっこり顔を出して第一号のお客様を迎える。

「久しぶりにいいかもと思ってね。それに、もうすぐ青子ちゃんも来るし。」

「げ、青子も?」

また喰いすぎて一人怒ってるんだろうなと言うと、私達も気をつけないとねとくすくす笑う二人。

「でも、美味しいのが悪いのよ。」

「美味しくなくちゃ店におけませんから。」

「それもそうよね。」

「ちょっと。何してるの。席に案内してあげなさい。・・・奥へ。」

志保が彼女達を含めた知人が来た時用にといつもあけている奥の場所を示すが、二人はいいよと断る。

「でも、せっかくだしさ。限定ケーキもあるからさ。のんびり食べてよ。今回も力作なんだよ。」

「そう。じゃ、それをもらおうかな。」

おくから、新一は何飲むんだと聞いてくる。それに二人はケーキにあうものお任せと答える。

新一に任せておいて外れのときなどはなかったからだ。

「おう。ケーキと一緒に持っててやるから、座ってろ。ほら、快斗さっさと行け。」

「はいはい。じゃ、こっちね。」

二人を案内する快斗。

新一が二人の元へケーキと紅茶を運んだ時、また客が現れた。

「いらっしゃいませ。げ、アホ子。」

「アホ子じゃないもん。・・・ごめんね、二人とも。」

「大丈夫。私達も今来たところだから。」

「中森さんの分も、ちゃんと用意しておいたから。ごゆっくりどうぞ。」

来るとわかっていたので、新一は三人分用意しておいた。

「ありがと。さすが工藤君。快斗とは大違い。」

「なんだと!」

「ほら。仕事仕事。じゃ、ごゆっくり。」

喧嘩モードに入ろうとした快斗を止めて、次に入ってきた客の接客しろと入り口へ追いやった。

新一は中へ引っ込んで、快斗の注文が聞こえたらすぐに答えられるように待機した。

 

 

 

 

こうして、今日も彼等の一日は終わった。

「お疲れ様。」

「今日も一日ご苦労様でした。」

「また明日も頑張ろうね。」

いつもと同じ言葉で終わる。

「・・・そうね。貴方が彼を使えないようにしてくれなければ明日も無事に出来るでしょうね。」

「あはは。」

ひそかに新一と快斗は恋人同士というものになっている。黙っていてもしっかりと志保にはばれているので、今は彼女に隠してなどいない。

たまに、新一を使い物にならないようにしたら、次の日はお休みだったりもする。

そんなことで、お客が増えすぎるのが困るということもある三人。

「だって、新一が誘うんだよ?」

「新一君。貴方の色気をどこかにしまっておいて頂戴。」

「んなもんねーよ。」

わかってないので何を言っても無駄とわかっていますが、ため息をつく二人。

この人は無意識でたくさんの客を虜にしている人なのです。

「ま、いいわ。今日は帰るわね。」

快斗と新一はこの店の二階で寝泊りしている。だが、志保は自宅に毎日帰っているのだ。といっても、近いのだが。

一度住まないかと聞いたら、男二人の中に女一人で?と聞かれたあげく、貴方達の情事の様子を聞きたくもないものと言われたら、それ以上誘えなかった過去がある。

「じゃーね。」

「また明日な。」

「明日も同じ時間に来るわね。

見送ってから、二人は店の中に入った。

また、三人にとって同じようで少し違う一日が始まる。

 




   あとがき

少しやってみたかった、お店のお話。