シャラン 鈴の音が夜の空に響く 今夜はホワイトクリスマス 可愛いサンタが子ども達にプレゼントを運びにやってくる 「今夜帰ったら一日遅れだけどクリスマスパーティしようね。」 「うん。」 そんな会話をしながら、可愛いサンタ達のクリスマスの夜は過ぎていく・・・ サンタさんの願い事 ここは全世界を回るサンタ達が学ぶ学校のある場所。 元気にサンタ達は走り回っている。昨日はサンタにとっての大事な大仕事の日であり、学校では進学と進路がかかった一大事の日。 ひと段落つけば、サンタ達はお祭り騒ぎになる。 ある意味、人が住む世界と違うこのサンタの国では、人が住む世界で言うお正月まではお祭り騒ぎをしている事が多い。 あえて言うなら、この日が過ぎるとやる事もなく、学校もないぐらいだからだ。 それと、このお祭り騒ぎの最終日、1月1日には来年、いや今年もサンタ達の仕事の繁栄と無事をサンタの神に祈る儀式というものもある。 その両方の準備でサンタ達は大忙しだった。 そして、ここに誤解騒動や容姿から毎回騒動を起こすサンタがぴょこぴょこと廊下を走っていた。 「快斗〜。見てみて〜。」 くるりんと部屋に入ってきたと同時に一回転するサンタ、新一。 「それ、どうしたの?」 「母さんがお祭り用だって、くれたの。快斗の分もあるよ。」 ある意味ハロウィンの仮想まがいなひらひらした服装を着て、いつもならひらひらを嫌がるのにご機嫌の新一は持っていた紙袋を快斗に渡した。 「・・・黒いマント??」 「どらきゅらだって。黒い羽もついてるんだよ。」 ちなみに、新一は天使のような白いひらひらした服に白い羽が背中にちょこんとついている。やはりこれはハロウィンの仮想なのだろうかと思わずにはいられない快斗だった。 そこへ、青子がやって来た。快斗としては新一の可愛い姿を見せるのが勿体無いというところであるが・・・。 「あ、快斗もう仮想用の服用意したんだ。さっすが、お祭り男だね。」 登場した青子もまたハロウィンの仮想まがいな魔女の格好をしていた。いったい、どうなっているのだろうか。 「あれ?知らなかったの?今年は快斗のいじさんがハロウィンは忙しくて出来なかったから、仮想ありのお祭りをしようって提案したじゃない。」 原因はあの親父か?!と心の中で叫ぶ快斗。まぁ、可愛い新一の姿がみれたからよいのだが、それに季節感無視なサンタの国ではあるが、突然やりやがってとぶつぶつ文句を言う。 その時、顔に出ていたようだ。新一の笑顔が歪んでいた。誤解される前に慌てて笑顔に戻して、服に手を通して一緒に行こうと言ったけれど・・・。 あとで親父にしっかり仕返しをしておかねばいけないと心の中で黒い笑みを浮かべる危ないサンタであった。 「あら、遅かったわね。」 大方用意が終わったらしい広場では、すでに騒いでいる大人と子どもがたくさんいた。 その中に、祭りにはかなり不似合いの間違いなく悪魔だと言える少女の姿があった。 「志保。今日は来たんだ。」 「新一君のおば様に服をいただいたし、家で一人着てても寂しいからね。」 それに、新一の可愛い姿を拝んでおくということもあり、研究室から出てきて賑やかなこの場所にいたのだった。 「場所はとってあるから大丈夫よ。」 ある意味志保の絶対零度の微笑みという名の力を使って手に入れたのだろう。志保の周辺は顔なじみしかいなかった。 新一は気付いていないが、快斗はしっかり裏の黒い笑顔を知っている。ある意味彼女達がいたからこそ、新一は無事だったのだろうと思えてしまう程だ。 普段から姉、母のような存在である蘭もまた、怖がりなくせに格闘技に長けていて、一歩間違えれば殺されてしまうような状態。 志保に関しては、妖しげな実験によって出来上がった薬品がまた、かなり危険なもので、実は黒サンタだろと思ってしまうぐらいだ。 そんなこと、絶対本人には言えないけれど。言ったら間違いなく、しばらくお日様を拝めないのは間違いない。断言できる。 今思えば、快斗もある意味危ない道を通ってきたのだなと思わざる得なかった。 今もこちらをじーっと見て、ふとした瞬間ににやりと見せる笑み。かなり恐ろしい。 やはり、新一をとったことを怒っているのだろうけれど、こればっかりは譲れない。それ故にこうして二年も経過したのだけど。 思い出すだけで恐ろしい先日の事。新一に手を出そうと企む愚かな者達がいた。知ってすぐ快斗はそいつらを潰すつもりでいたが、志保が笑顔で肩にぽんっと手を置いて止めた。 どうして止めるのか。その時怒りのままに言ったが、すぐに顔はひきつる事になった。 『あら。私だって、彼等のやり方は嫌だから、止めるつもりよ。私のやり方で。』 邪魔はしないでねと黒い笑みを浮かべた志保は歩き去ったが、しばらく快斗は動けなかった。今まで生きてきた中で見た事がないほど恐ろしい生物に遭遇した感じだった。 それから数日、その輩達は姿をくらませていた。いったい何をしたのかわからないが、聞けるはずがない。ちらりと見てしまった蒸気を発する不気味な色の液体が入った試験管が恐ろしくて。 誤解の旅に新一を泣かせている事は事実な自分。いつかやられるのではないかとびくびくしていたりするのは秘密である。 まぁ、味方であれば心強い友人だろうけれど・・・。新一が懐いているのだから悪い子ではないのは快斗もわかっている。しかし、新一に対する態度と笑顔と、快斗に対する態度と笑顔は違いすぎて苦笑いを浮かべる事もしばしば・・・。 「あら。何か言いたそうね。」 「いえ、別に何もありません。」 「そう?まぁいいわ。こんな日にまでもめごと起こしたくないもの。」 普段ならいいんですか?とつい突っ込みかけるのを止めた自分は偉い、と思ってしまう快斗だった。 「新一君。どうぞ。」 「ありがとう。」 満面の笑みがまぶしい。人に見せるなんて勿体無いといつもは思うが、志保と蘭相手にはまだまだ自分は未熟だと思わざるえない快斗は大人しくたこ焼をつつくのだった。 数日、祭り事で様々なイベントが行われ、毎日賑やかな広場は姿を変えていた。 今日は俗に言うお正月。つまり、サンタ達の今年一年の幸福を祈る儀式を行う日だ。 毎年祈りの祝詞を捧げ、『巫女』に選ばれた者が踊りを、『楽師』に選ばれた者が音楽を捧げる。その代表者達が毎年豪華な面々であり、祭り騒ぎ同様に人は集まるが、とても静かである。誰もがその後継に魅了され、昨年一年を振り返り、今年一年の幸福を祈るからだ。 「有希子さんや志保ちゃんもやったんだよね、巫女。」 「そうよ。衣装合わせとか、かなり面倒なんだけど。」 「嫌いそうなのに、よくやったわね。」 「新一君が楽しみにしてたからよ。」 「そうですか・・・。」 やはり、自分同様に彼女も新一馬鹿というやつだろう。 「今年は蘭だよな。楽しみだ。快斗、行こうよ。」 急がないと見るいい席がなくなっちゃうとせかす新一に、急いでこけたら駄目だよとと、抱き上げる。 「新一は巫女さんやらないの?」 「巫女は女の人がやるものなの。」 まぁ、巫女は女で楽師が男と決まっているが、新一なら依頼が来るだろうと思う快斗の耳に、あったけど有希子さんが断った事を教えてくれた。 やっぱりあったんだと思うと同時に、ちょっと見て見たいという好奇心がわく。しかし、自分だけではなく他の不特定多数の者が見れる事が出来るので、やはり見ない方がいいかもと一人心の中で悩む快斗。 その時だった。 「大変やっ!」 「どうしたの、遠山さん。」 「大変なんや。蘭ちゃんが!」 血相をかえてやってきたのは平次の幼馴染で面倒を見ている和葉。しっかり者で蘭同様に格闘技にたけているある意味強い彼女。 「行きましょう。」 何事かと、三人は数葉が向かう場所へと急いだ。走っている間に聞かされた事実に、えぇ?!と驚きながら、その場所にいた蘭の姿を見てどうしてと思う気持ちでいっぱいだった。 蘭は足を怪我してしまい、踊りを踊れなくなってしまったのだ。 「蘭・・・。」 新一は知っている。彼女が選ばれた時、最初は戸惑っていたがこの日の為に頑張り、楽しみにしていた事を。快斗や志保も、彼女の為にサポートをしてきて、近くで頑張りを見ている側としては、舞台に立てない事で申し訳なさそうにしている蘭に何と声をかけていいのかわらかずにいた。 「志保ちゃん。代理を頼めないかな?」 無理に笑顔を作って頼む蘭。だが、志保は首を振った。出来ないのだ。一年もやっていない慣れない踊り。 「なら、やる。」 「え?新一??」 ウイッグと合う衣装貸して下さいと言う新一に、スタッフの者達が急いで動き出す。 「でも、新一・・・。」 「大丈夫だよ。踊りは覚えてるから。」 前まで毎日母親の踊りの練習に付き合わされて、ついでといって踊りを一緒にやっていた経験がある新一。 「そんな顔しないでよ。足がはやくよくなるように祈りを込めて踊るから。」 そう言って、急遽『巫女』は変更されて練習なしで新一は舞台に立ったのだった。 「あれ?快斗?」 舞台にあがり、楽師の奏でる音楽を待つ新一だったが、その場所に座っている人物が快斗になっているのに気付いた。 「新一が出るなら俺もってね。一緒だから、安心して踊ってね。」 一番近くで見れて幸せだよと冗談めかしくいい、新一の笑顔が見れたのを合図に、音楽を奏で始める。快斗の両親もまた、新一の両親同様に巫女と楽師をしていた。聞けば毎年交互にしていたらしい。その練習を見てきた快斗は体がすでに覚えている。そのまま、新一の気配を感じたまま、曲を奏でる。 サンタの仕事をしている時と同じように。今年もまた、新一と一年一緒に楽しく過ごせるようにと祈りながら。もっと、新一と仲良くできるようにと・・・。 きっと新一は今、自分の事よりも蘭の怪我のことばかり思っているのだろうけれど、少しでも思ってくれたらいいなと思いながら、演奏する。 誰もが魅了され、自然と祈りを捧げる静かなその空間は、長く感じさせられる時間を終えた。 「今年もよろしくね、新一。」 「よろしく、快斗。」 2年前より成長して大きくなっている新一。そろそろソリは変え頃かなと思いながら、夜の散歩を楽しむ二人だった。
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