登校初日 といっても、まだ授業もなく、好きなように学校の中を利用するだけの日々なのだが 新一は快斗と待ち合わせの塔へと向かう ぱたぱたと走れば、帽子についている白い兎の耳がふよふよと揺れる そんな新一の姿を校舎の窓から偶然見かけた鈴 「あら?」 新一だとわかるが、どうして今日いるのかと首をかしげている なぜならば、今日は快斗が学校へ来ないからだ サンタさんのお祝い 「あれ?」 来てみると、閉まっている。まだ来てないのかもと、新一は入り口の前で待つのだった。 だが、次第に待ちくたびれてうとうとし始めた。 そして、とうとう眠ってしまった新一。 目が覚めれば日がかなり傾いてしまっていた。 だけど、快斗は訪れた形跡はない。 「快斗・・・。」 今日約束したのに、姿を見せない快斗。 もしかして、塔じゃなくて部屋に変更になった連絡を、家を早めに出たから貰い損ねたのかもしれないと思い、ぱたぱたと快斗とまた過ごす部屋へと向かう新一。 だけど、そこは鍵がかかっていて、自分が開けて中に入っても、やはり人がいたような気配は一切ない。 ベッドの上に乗って、ぺたんと倒れる。 「快斗。」 もぞもぞと布団をかぶって、身体を丸くして、新一はその日また眠ってしまい、そのまま泊まったのだった。 次の日の朝。快斗の誕生日の三日前。 いつも隣で寝ている快斗の姿もぬくもりもなく、寂しい朝を迎えた新一。 「どうしたんだろう。」 約束の日を間違えたのだろうか。そんなことはないはずなんだけど。 そう思いながら、部屋を出ると、ちょうど鈴がこちらへとやってきたところだった。 「早いのね。」 「・・・泊まっちゃった。」 「あら、そうなの?ご両親に連絡は?」 首を横に振る。今からなのだろう。 だが、元気がない。もしかして、快斗が昨日来ないのを知らなかったのだろうか。 「昨日、快斗と約束していたの?」 こくりとうなずく。あー、そういうことかと思う。 「大丈夫よ。昨日は、幼馴染の子に無理やり今度の快斗の誕生日の準備をするから手伝えって、連れて行かれちゃっただけだから。」 それにしても、ちゃんと連絡しないなんて、駄目ねと呆れた声でつぶやく鈴。 連絡まず入れましょうかと、鈴が新一の背中を押して、電話のある案内所まで行くのだった。 その日の午後。 快斗が走ってやってきた。 「新一。」 勢いよく開けられた扉。 部屋にいた新一はかなり驚いたけれど、やっと会えたと思って、相手の名前を呼ぶ。 「昨日は本当にごめんね。」 連絡入れようにも出たあとだし、頼んでおいた奴がまた、別の用事で連れ出されたらしくって、伝わってなかったみたいで。 どうやら、伝えようといろいろしてくれていたらしい。 「大丈夫。」 やっと新一に会えたーとぎゅうっと抱きしめてくれる腕。 やっぱり、快斗の腕の中が落ち着くと思いながら、新一も快斗の背中に腕を回してぎゅうっと抱きしめるのだった。 さて。部屋の片づけを終わらせて、夕食を食堂へ食べに行こうかと行っていた快斗だが、部屋に来た幼馴染の青子に呼び出されて行ってしまった。 先に食堂へ行っててというので、快斗の席もとっておこうと、使命に燃えながら、戸締りをして部屋を出た。 その時、窓から見えた鈴の姿に、昼間のお礼を言わないとと、方向を変えて追いかけた。 だが、途中で見失って、諦めて戻ろうとしたときだった。 またタイミングがいいのか悪いのか、快斗と青子が何か話しているのが聞こえてきた。 ひょこっと廊下の角を覗いてみる。そこにはやっぱり、二人の姿がある。 このまま、立ち聞きなんてせずに立ち去ろうと思った。 が、耳に届いた言葉で、行動を止めて様子を伺う新一。 「だから、誕生日会。」 「俺が出るのは、自分だからしょうがないけどさ。祝ってくれるのはうれしいし。」 だが、それとこれとは話が別だと言う快斗。 何をもめているんだろうと、話の内容を全て知らない新一はこっそりと様子を伺う。 「新一君も誘って一緒にやろうって言ってるだけじゃない。けち!」 「新一は誕生日会には誘わないの。」 その言葉に、また今までと同じようにショックを覚える新一。 幼馴染なので、誕生日会をいつもしているのは聞いて知っている。それに出席するのは主役が抜けては意味が無いのでわかる。 だが、自分が混ざるのは駄目なのだろうか。 やっぱり、よそ者だからだろうか。関係ないと思われているのだろうか。 一人思考が沈んでいく新一。 「新一を連れて行くなんて、絶対駄目!」 「何よ。バカイトのくせに!いいもん。私が新一君を誘うから。」 「はぁ?ふざけんな。」 そんな言い合いを聞いて、そんなに誕生日祝ってほしくないんならいいもんと、その場から走り去った。 だからまたまた、聞き逃したのだった。 「だいたい、新一目当てがいっぱいいるようなところに連れて行けるわけがねーだろ。白バカがいる時点で却下だ、却下。」 「快斗が新一君独占しちゃうことないでしょ。新一君はバカイトのものじゃないもん。」 いーっといがみ合う二人。 また、聞いてしまった新一がいるとは気付かない。 ぐずっと、零れそうになる涙を堪えながら、沈んだ新一がとぼとぼと歩く。 すると、横から伸びてきた腕に捕らえられた。 何事かと驚いたが、聞こえてきた自分の名を呼ぶ声と髪と、振り返れば確実に誰かわかった。 「ベル姉。」 「どうしたの?新一君。」 ちょうど、不法侵入をして、いろいろとやろうとしていたベルモットが様子がおかしい新一を見つけて、見てられなくなって捕獲したのだ。 「ふぇ・・・っ。」 ぎゅっと腕にくっついて涙を流す新一に、うれしいけれど困ったわと思いながら、とりあえず小さな身体を抱き上げる。 「見つかると、私は駄目なの。だから、学校出るけれど、一緒に来る?」 その問いにこくりと頷いて、ベルモットにしがみつく新一。 まったく、誰が新一を泣かしたのかしらと少し相手を恨みながら、ベルモットは新一を連れ出して学校から出たのだった。 ちょうど、食堂では快斗と青子が姿を見せていた。 新一が行くというのなら、一緒に行くという事で妥協した快斗。だが、早めに帰らせてもらうからと、しっかり約束しておいた。 だが、新一がいないことで慌てて部屋までいき、何処を探してもいないということで、いなくなっている事に気付いたのだった。 ソリに乗って数分後。 隠れ家の一つらしい場所にやってきたベルモット。 新一を抱えたまま、中に入る。お帰りなさいと迎えたウォッカは攫ってきたんですかい?と言うので、違うわよとデコピンを食らわして、リビングのソファへと腰掛ける。 新一はベルモットの膝の上だ。 ジンはしっかりと向かえのソファに座って煙草を吸っている。が、新一の姿を見て、煙草の煙を消す。 以前、けほけほと煙のせいで咳き込む新一を見て、本人もやめたし、ベルモットにも散々言われたのだ。 この三人、新一には黒いサンタのわりには甘かった。 「で、どうしたんですかい?」 新一とベルモットに飲み物を出して、食べやすかと、クッキーを出してきた。 まだしょんぼりしているが、もらったクッキーにありがとうとお礼を言って、それを食べる。 「もう、このまま攫っちゃおうかしら。」 「やっぱり、攫ってきたんですかい?」 「違うわよ。泣いてたから、どうしたのかと思えばくっついて離れなかったから。見つかる前に出てもよいかと聞いたらうなずいたから連れてきたのよ。」 誘拐じゃなくて立派な合意じゃないと言い張る。確かにそうだけれども。 周りからみれば、立派な犯罪でしょう。黒サンタが泣いている可愛いサンタを連れてきたのなら。 新一自身が黒いサンタのことをわかってないし、この三人を良い人だと思っているのだし、うなずいたので合意だと思っているけれど。 「落ち着くまで話さなくてもいいから。」 どうせ、授業もまだでしょう?と聞けばうなずく新一。 「なら、気が済むまでゆっくりしていたらいいわ。」 その言葉に甘えようかと思う新一。 だけど、やはり何も言ってきていない。親にも学校にも快斗にも。 だから、しばらく泊まって、ちゃんと帰ると伝えなければいけない。 「ねぇ。」 新一はベルモットの方を見上げて、お願いした。 紙と鉛筆と。そしてそれを部屋に置いてきてほしいと。 それにはお安い御用よと、笑顔で答えてくれた。 そりゃ、新一と一晩でも一緒にいられるのなら、それぐらいやるだろう。 「ありがとう。」 やっと見せた、いつもの笑顔。 あー、もう少し、危険ということを覚えてほしいと三人は思うのだった。 そんな三人こそ、このサンタの国では悪人だったりするので、新一には危機感がまったくないのかもしれない。 結構なごやかになっている新一達を他所に、学校ではかなりの大騒ぎになっていた。 家出だとか、誘拐されたとか。 快斗としては、食堂に行ったはずなのだから、ちゃんと待ってくれているはずの新一がいなくなってしまったことで、どうして一緒に行かなかったのかと後悔していた。 絶対、新学期までには戻りますなんて、いくら本人の字であっても、信用できない。 何より、いなくなったとわかってからこっそりと部屋の机の上におかれていたこれ。 誰かが後からおいたに決まっている。 新一ならば、誰かしら目撃者がいるだろう。それだけ、誰もが新一と話がしたいと思っているのだから。 それに、いつも目に付くところに必ずいるのだから、誰の目にもとまらずにここへきてこれを残す事なんて不可能だ。 「新一・・・。」 新一に好意を持つ奴は多い。とくに、邪な好意も多い。 黒いサンタだって、態度を変えるぐらいだったのだから。 「元気だしなさいよ。」 「そうだぞ。」 心配して沈んでいる快斗を励ます鈴と月斗。 こうして、そのまま彼等は一日を終えるのだった。 ウォッカが用意してくれたパジャマや着替えをちゃんと並べて、今夜の分だけ持ってお風呂場へと向かう。 ベルモットが一緒に入ろうといってくれたが、新一も男の子だ。ちょっとはずかしい。 なので、ジンと一緒に入る事になった。 もうっとむくれていたベルモットがいたが、うるさいと、ジンが睨んで、新一を脇に抱えて風呂場へと向かった。 「あれ?ジンは入らないの?」 おぼれないかどうかの監視役といわんばかりに、上着は脱いだが、ズボンとシャツは着たままの状態に、一緒に入ろうよとお願いする。 お願いされれば弱い彼等。ジンも例外ではない。 お願いされるがままに脱いで中へと入るのだった。 身体を洗ったあと、頭は今日はいいという新一に、無理やり頭からお湯を流してシャンプーで洗う。 大きな手が新一の頭をがしがしと洗う。 その後はざばーっと一気に流されて、大きな湯船へと入れられた。 無駄に広いお風呂。洗い場も広い。まるで銭湯みたいだと新一は思いながら浸かっていた。 しばらくつかっていたら、どうやらジンも洗い終わったらしいので、入ろと誘う。 そして現在お隣に座ってお風呂を堪能していた。 が、長時間入りすぎた。 「頭が・・・ぼんやりする・・・。」 「おいっ。」 気付いたジンが慌てて沈みかけている新一の身体を抱き上げる。 ウォッカを呼んで、冷やさせる為にリビングへと連れて行くように言った。 すぐにジンも着替えて、渡し忘れた新一の着替えを持って向かう。 バスタオルに包まれて白い肌が赤く染まってぐったりしている新一をある程度冷やした後、服を着せる。 「大丈夫か?」 「うー。」 「兄貴。どうしやす?」 「・・・。」 「まったく。ちゃんと見てないと駄目じゃないの。」 「・・・うるさい。」 とりあえず、ある程度復活した新一は、ベルモットに担ぎ上げられて寝室へと連れて行かれた。 あんた達には任せられないわと言う半面で、これ以上離れるのは嫌という感じで連れて行った。 「あっしらも、そろそろ寝やすか?」 「そうだな。」 良い一日だったけれども、やっぱり最後はベルモットに取られてしまった二人だった。 その頃、ベルモットと同じ布団の中で、逃げられないようにといわんばかりに覆いかぶさる腕の中ですやすやと眠る新一がいたとか。 安心してゆっくり眠れなくても、朝はやってくる。 結局新一は帰ってこず、一人寂しい夜をすごした快斗。昨日の新一がそうだったのかと思う反面、何かしてしまって嫌われてしまったのだろうかという不安でいっぱいになる。 「起きた?」 ノックしたけど、反応がないから勝手に入らせてもらったわよと、鈴が姿を見せた。 「ほら、そんなに沈んでないで。手紙では、ちゃんと帰ってくるって書いてあったんでしょ?」 しかし、一緒にいてほぼ一年は経った。こんなことは一度もなかった。まぁ、いろいろトラブルはあったけれども、こんなにも長い間、相手の居場所がわからないということはなかった。 こんなことがなかったから、余計に心配になって不安になってくる。 「約束破ったから、嫌われちゃったのかしらね。」 ぼそりと言う鈴の言葉に、ぴくっと反応したかと思ったら、ぐったりとその場に倒れていじけだした。 快斗にとっては、本当にあれは不本意だったのだ。 確かに、誕生日を祝ってくれるのはうれしいけれども、新一がいないと何の意味もないのだ。 「快斗。」 そこへ、新たな訪問者が現れた。本日のパーティの主役として迎えに来た幼馴染。 入ってくる時はいつもと変わらなかったが、部屋の中の空気と快斗の滅多に見ないほどの落ち込みようから、さすがにどうしたのだろうかと心配になる。 「どうしたのですか?」 一応先輩なので、敬語で鈴に聞く青子に、原因が新一であると言い、昨日から置手紙はあるが、誰にも知られず行方を眩ましたということを話した。 すると、青子もそれには慌てだす。 知らなかったとは言え、そんなことになっていたとは。かなり新一のことを大事にしている快斗のことを知っているから、この落ち込みようも理解でき、どう言葉をかけていいのかわからなかった。 その時だった。 「快斗?」 ぴくりと快斗が反応し、顔を上げて部屋を飛び出した。 ちらりと見えた何かは、すぐさま快斗に捕獲されて部屋の中に入ることはなかった。 「帰ってきたの?」 「そうみたいね。・・・パーティ、するなら夕方からの方がいいんじゃない?」 「大丈夫です。予定はちゃんと夕方ですから。」 「そう。」 「あ、先輩も良かったら来て下さいね。」 そう言って、部屋の外で新一〜っと抱きついて離れない快斗の様子を見て、夕方には元気になってるだろうと思いながら立ち去ろうとしたが。 「・・・新一君?」 気がついた、新一の服の色。サンタの制服ではないにしろ、普段見ることはない黒い服を着ていた。 「何処行ってたんだよ、新一。」 そう言って、新一の顔しか見ていなかった快斗が怪我をしてないかと確認しようとして、青子同様に黒い服に気がついた。 「どうしたの、それ。」 「あ、これは・・・。」 数日前、あまり彼等のことをよく思っていないことを知ったために、新一は言っていいのか迷った。彼等自身もあまり快斗の事をよく思っていないようだし、言わない方がいいのかなとどう答えるべきか戸惑っているのを見て、快斗の目が細められる。 「黒サンタと一緒にいたの。」 聞かれたから、素直に頷いた。 「え、黒サンタって例の?!じゃぁ、かなり一大事じゃない。先生にっ!」 「青子。黙ってろ。」 「どうしてよ。つまり、黒サンタが侵入した形跡があるってことでしょ。」 そもそも、無事で帰ってこれたのだって奇跡に近いって言われているぐらいなのよ?!と感情のままに言う。 彼女にとっては、父がその黒サンタにせいで家に帰ってこないことがあったり、約束が破られることもあり、いいように思っていないのは事実だし、世間一般でも、黒サンタはいけないものとなっているから、当然と言えば当然の意見である。 しかし、新一にとっては良い人達で、皆が言う悪いサンタではないと思っているし、そのことを快斗は知っているから青子を黙らせようとするが、おしゃべり好きな彼女は言い続ける。 そして、鈴がやばいと思って止めようとしたが遅かった。 彼女は言ってはいけない言葉を言ってしまった。 「どうして、黒サンタなんているんだろうね。多くのサンタが被害にあってるんだから、皆この世界からいなくならせたらいいのに。」 彼女にとっては悪気はない。事情を知らない者たちは皆そう思うだろうから。 だが、彼等を良い人と思っている新一には衝撃的な一言であった。 彼等は黒を纏い、嫌われている集団だと言われているのは知っている。 彼等自身も、嫌らっている奴に好かれたいと思っていないと言っている。 確かにそうだけど、いつか仲良くなれたらいいなと思っている。 本当に悪い人なら、今頃自分はここにはいない。彼等が良い人だったから、自分はここにいるのだ。 だから、彼等のことを信用しているし、両親や快斗とは別の意味で好きな人達なのだ。 そんな彼等をはっきりと嫌う彼女の言葉は新一にショックを与えたのだ。 どんっと快斗を力いっぱい押す。青子に気を取られていた快斗はよろけてしまい、新一から腕を離してしまった。 その隙をついて、新一は快斗達と逆の方へぺたぺたと走っていった。 「しまった。」 そう思っても遅い。こうなった時の新一は逃げ足が早い。追いつけないし、上手く隠れられて見つけられない。 「新一君?」 知らない青子は首を傾げたが、快斗は追いかけてしまったので、鈴が新一のことを話し、知った瞬間に真っ青になって、探して謝らないとと同じように走っていった。 青子も新一には甘い。確かに父との様々な関係を壊されてきたが、もし本当にそうならば、全ての黒サンタを勝手に嫌いと見てもいけない。 もしかしたら、まだ自分達と同じサンタだった時に新一は出会い、彼等が黒をまとっても本質が変わらなかったら、新一は手を引こうなんてことはせず、同じように付き合うと思うから。 「まったく。どうしていつもタイミングが悪いのかしらね。」 急いで探さないと夕方には間に合わない。時計を見てため息をつきながら、月斗を呼びに行く。 どのみち、『皆一緒にパーティへ行く』のだから丁度いいだろう。 「新一っ!やっと捕まえた!」 飛び降りて距離をなくして捕獲に成功した快斗は、今度は逃げないようにしっかりと捕まえておく。 嫌だと言って暴れても、快斗の力に新一は適わない。 「ねぇ、どうして昨日は帰って来なかったの。」 抵抗が無駄だと思ったのか、大人しくなってから聞いてみた。 どんなに考えても、まったくわからなかったから、聞いてみた。迷惑なら、一緒にいる時間を減らす努力をしようとも思ったぐらい。でも、減らせないのが現状だったりするけれど。 「どうして?俺のこと、嫌いになったの?」 そう言うと、首を横に振って否定したので、それには少し安心した。 ならと、快斗は考える。また、前と同じように何らかの『誤解』をしてしまっているのではないかと。 「教えて。どうして昨日、帰ってこなかったの?俺が約束してた日に来れなかったから?」 その問いに首を横に振って、快斗を見上げる。 今にも泣きそうになっているその顔に、いったい新一に何があったのかと少し不安がでてくる。 「黒い・・・あの人達と一緒にいたのは事実。でも、どうしたらいいのかわかんなくて。」 あの場所にいるのが辛くて逃げる場所を与えてくれただけで、彼等は悪くないと主張する。 それに関しては、青子の父のことがあってよく思っていないことと、誕生日にも『悪さ』をした者がいて、別の課と共同で捜査する羽目になり、結局約束はなくなったことなど、いろいろ話した。 青子は別に、本気で嫌いなわけじゃない。何も知らないから。 でも、父を仕事へ行かせて奪うのが黒いサンタだから嫌いであって、彼等を嫌っているわけじゃないと話す。 すると、もういいと答えた新一。 新一だって、父が父であるため、黒いサンタの事を耳にすることはあるし、いろいろ問題もあるから知っている。 だけど、悲しかったのだ。 それと、快斗といつでも隣にいることが出来るあの幼馴染の子が。 ぽつりぽつりとこの前聞いた話と、自分のことを話して、快斗は頭を抱えたくなった。 確かに、その会話だけを聞いていたら勘違いしてしまうだろうけれど。 また、やってしまったのかという感じだったが、今回は新一も自分のことを嫌ってはいないし、好意を持っていることが再確認できて、よしとすることにした。 向こうから、鈴達がやってきた。 「じゃ、行こう。」 どこへと立ち上がる快斗をきょとんと見て反応を待つ新一。 「誕生日パーティ。」 「え・・・?」 「本当は連れて行きたくないんだ。」 そう言えば、悲しそうな顔をする。 「本当は、新一と二人でやるつもりだったからさ。」 新一をパートナーとして紹介したいけど、新一に興味持った奴等が二人の間とると、嫌だし。 「知らないサンタもたくさんいるだろうから、あまり新一の負担になるようなことはしたくないんだ。」 そういうと、別に自分が行ってはいけないということではなかったんだとわかって、笑顔に変わる。 「大丈夫。快斗が一緒だから。」 「新一君。ごめんね。私っ!」 首を横に振って、新一もごめんと謝った。彼女のことを知らなかったから。彼女もまた新一のことを知らなかったから。 「行こう。」 「まだ、時間に余裕があるから・・・。」 三人に半ば強制に拉致られて服を着替えさせられ、会場となるある一件のお宅へと向かった。 そこで、ある意味思い出に残るパーティーが開かれ、賑やかに騒いだ後、全員疲れて眠ったのでした。 きっと、いい夢をみていることだろう。 ・・・新一に手を出そうとした、快斗に目を付けられた者達以外は。
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