サンタさんには、日本で言う春から夏にかけての時期は長いお休みです よしっとなにやら気合を入れるサンタがここに一人 前回ペアを組まないと宣言して、相手に多大なショックとともに幸せを運んだ新一でした 今回は珍しく側に快斗がいません だから、密かに計画(?)していたことを快斗に伝えようと思っているのですが・・・ そこへ現れたのは、最近新一が誤解して敵と定めたサンタ、探だった 「新一君じゃないですか。」 むうっと睨んでも、新一ではまったく効果はない それを、まったくわかってないのが新一だけれども 新一にとって、彼は快斗を狙う敵として認識されているのだが、彼は知らず、新一に近づいてくるのです サンタさんのお誘い せっかくの決意が台無しだと、走って逃げた新一。 追いつかれるかと思ったが、なにやら勝手に語っているようだったので、放っておいた。 おかげで、今は追って来ることはない。 さて、快斗を探そうと新一は校内を走る。もうすぐ休みが始まり、そうなっては新学期が始まるまで会えなくなる。 その前に会う約束もとい、泊まりに来ないかとお誘いする為に。 現在、快斗のことを好きだと言っている割には、新一は好きを友達としての好きとしか見ていなかったりするので、あの日の後、快斗は心の中で涙を流したのは知る由もなく。 そして今回お泊りのお誘いも、嬉しい反面涙が零れるようなことであろう。 だが、そんな新一も自覚がないだけで、結構傾いてきているのだが・・・。 まぁ、それは置いておいてだ。新一は快斗がいそうな場所を探した。 あの先輩か鈴さん(名前で呼んでと言われた)の元へ行こうとした。 二人の声が聞こえる。そして、目的の人物の声も。 「泊まり、行くだろ?」 「おう。今年もだな。」 快斗と名前を呼ぼうとして、また出て行けなかった。 どうやら、快斗は二人とお泊りに行くようだ。つまり、先を越されてしまったのである。 そして、なんだか前回と似ているパターンだ。 「今年は先輩の家だろ。」 「嫌ね。」 「おいおい、二人とも何嫌そうな顔してるんだよ。」 「だって、絶対・・・。」 「私は一度行ってるから知っているけれど。」 やっぱり、お泊りに行くらしい。 先を越されてもいいもんと、今度は少し前向きに行く事にした。 その時に感じた胸の痛みを振り切って。それが快斗を好きになっている心が悲しんでいたのだが、気付かずに。 「そうそう。新ちゃんは連れて行くのか?」 「誰が連れて行くか。お前の家なんぞに。」 「まぁ、それは無難ね。」 「で、休みの間に泊まりには誘うのか?」 快斗をはやしたてながら言う。 「泊りには誘わないよ。」 と、きっぱり答えた。 その言葉に、また同じようなパターンでショックを受ける新一。 お泊りは迷惑なんだと、シュンっと沈んで、ぽてぽてと帰っていくのだった。 だからまた、最後に聞きそびれたのだ。 「だって、あの親父がいるんだぜ?新ちゃんとるんだよ、あのクソ親父!」 「そうだな。結構気に入ってるみたいだったからな。」 「そうね。ま、頑張って頂戴。」 「おう。絶対親父に近づけないぞ。」 と、自分の父親に前回嫉妬した快斗は、さらに何度か新一と会った事があることについて嫉妬し、絶対これ以上会わせてたまるかと、二人だけで会えるように計画を立てていたのだった。 そして、じゃーなと去っていった快斗。 「・・・いいわね。」 「そうだな。うらやましいねぇ。」 そんな事を思いながら、自分達も戻ろうと思ったが、ふと曲がり角で気付いたもの。 「・・・これ。」 それは、サンタの帽子だった。兎の耳がついた奴だが、快斗はすでに兎ではない。 「・・・ねぇ、私の知ってる中で一人いるのだけど?」 「ああ、俺もいるよ。」 「・・・また、かしら。」 「・・・殺されたくはないのだが・・・。」 それは、二人が見間違えることなく新一の帽子だった。 だってほら、他にもたくさんいるので、しっかりと名前が書いてあるので。 「・・・どうする?」 「・・・まずは会いに行こうかしら?」 話をしないといけない。また、快斗と喧嘩するのも、前回かなりショック受けていた彼を知っているなだけに、そして新一が悲しむのはできる限り見たくはないので、誤解をしていたのなら正しに行こうとする、優しい先輩達だった。 部屋の鍵をしっかりとしめて、布団の上にぼすっと倒れた新一。 ぎゅうっと布団をつかんで、涙を堪える。こんなことで泣かないもんと、相方としてしっかり頑張るんだという思いで、必死に頑張っていた。 そこへ・・・。 チリンチリン 部屋に誰かが訪問してきたことを継げる鈴の音。 「どちら様?」 新一は扉を開けて、訪問者の顔を確認する。 「や。はじめまして。」 「急にごめんね。」 現れたのは、さっきまで快斗と話をしていた二人のサンタ。 二人の姿を見た瞬間、ぐずっと我慢していた涙が溢れ出す。 「ちょ、ちょっと待ってっ!」 「あ、あのね、お話が・・・。」 いきなりなかれては、いくらこの二人でもどうしようもなく。とりあえず、新一を抱き上げて、扉を閉めて中へ入る。 「よしよし。頼むから、泣かないでくれよ。快斗に殺される。」 「何言ってるの。新一君抱いてる人は既にその対象でしょう。」 「・・・それはそれだ。」 膝の上に新一を乗せて座る彼、月斗。やっと名前が出てきたが、快斗とかつてペアを組んだ先輩の名前である。 「実はね、落し物を届けにきたのよ。」 と、鈴は持っていた帽子を見せた。それを見て、あっと、新一も気付く。頭に被っていたはずの帽子がなくなっていたことに。 「ありがとうございます。」 「敬語じゃなくていいわよ、新一君。」 可愛いから許すといわれても、いまいちこの二人のことはよくわからない新一は、先輩に簡単に素で話すことはない。一応礼儀のつもりだけど、壁つくってる? 「あった場所からして、聞いていたのよね?」 何をとは聞かないし、彼女も言わない。 「あれはね、誤解なの。彼は貴方が誘えばそれに応じるわ。」 「でも。」 快斗ははっきりと新一をお泊りには誘わないと言ったのだ。 簡単に説明すれば、この休みの間にお泊りする行為は、人の子の修学旅行みたいなもので、もっと分かりやすく言えば親睦を深めるもので、互いが心を許す相手しかしないということで、その間にカップルなんかが出来ちゃったりなんかしたりなかったりするようなものだが。 新一はそんなことなど気にせず、ただお泊りということが許されるのが今までなかったので、少し興味がわいて、快斗とならと今回予定を決めたのである。 「実はな、あいつ親父と仲がよいけど悪くてな。」 「前回、新一君との件で父親に取られたと嘆いていてね。」 「今回は邪魔されず旅行に誘うらしいんだ。」 「・・・旅行?」 旅行も確かに問題はないが、保護者の許可がなければ、新一みたいな下級生はいけないはず。それに、快斗もその規定年齢より下のはずである。 「だからね、きっと今日中には誘いに来るだろうから、待っててあげて。」 「本当は俺達もお誘いしたいんだがな。快斗がうるさいし、それに新一君は快斗と一緒にいるのがいいみたいだし。」 よしよしと頭を撫でる月斗の手。大きくて、お父さんみたいだと思う。お父さんほどじゃない気もするから、もしもいたらお兄さんがこんな感じなのかもしれない。 「だから、泣かないでくれよな。泣かれると困るから。」 苦笑する顔が、どこか快斗と似ていた。 チリンチリン 無事に話は終わった頃、訪問者が来た事を知らせる鈴が鳴った。 「どうやら来たみたいだな。」 「そうね。開けてきてもいいわよね?」 相変わらず月斗の膝の上にいる新一は、立ち上がって開けて来てくれるという鈴の言葉にうなずいた。 快斗なら、部屋に入ることに問題はないから。 「いらっしゃい。」 「しん・・・な、なんで鈴が?!って、なんで新一をっ!」 最初に眼に入った自物に驚き、さらに奥で座っている月斗に怒鳴る。 だって、大事な新一を膝の上に乗せているなんて、しかも新一が大人しくそれを受け入れているなんて、どうしてという言葉でいっぱいだ。 しばらく、部屋の中に入った快斗が月斗から新一を奪い返し、うがうがと警戒している姿があった。 ぶすっとしている快斗と、少し機嫌が直ってすでに涙の跡もない新一。少し対照的な二人をみて、にこにこしている先輩ズ。 「楽しみだな。今度のお泊り。」 「そうね。」 「うん。」 「・・・。」 結局、快斗がお泊りに行くこの二人を含め、新一も混じる事に。確かにそこには父親はいないし、旅行は親の許可がいるので先輩というものがあるので心強いのだが。 快斗にとっては、この二人も父親と同じように邪魔でしかなかった。言葉にしたら鈴あたりに殴られるから言わないが、態度で出ているのでばればれであったりする。 「快斗とお泊りだね。」 にっこりと笑顔を見せて、自分を抱きしめて離さない快斗を振り返って見る。すると、さっきまでの不機嫌な顔は一気に消えて、にこにこした笑顔でそうだねと答える快斗がいた。 「・・・ひねくれたわね。」 「そうだな。」 新一が現れるまではどこか冷めて『演じている』ようにも思える子供だったが、今ではまるっきし子供である。 もう、お気に入りのおもちゃを取られないようにという独占欲あたりなんて・・・。 「・・・あの人が原因の一つだろうな。」 「そうでしょうね。あの人ですし。」 目の前では、一緒に何をしようかと仲良く計画を立てている二人がいた。新一がいたら、それはもう飛び切りの笑顔を見せるようになった快斗。 「また、周りがうるさいわね。」 「新一君の周りは彼がガードしているからね。」 今回のお泊りは自分達も彼と一緒にいけて楽しみであるが、周りがどう動くかが少し心配である。 「おい、快斗。」 ちょっといいかと聞いてくる月斗に何と不機嫌な顔で睨んでくる。邪魔するなということだろうが、そうはいってられない。 「新一君。あらかたの予定や流れは鈴から聞いて。自由時間の間は快斗と好きなように決めていいから。」 やはり、お迎えや食事や就寝時間と場所の予定はしっかりと教えておかないといけない。 それに、お邪魔虫が顕在の今、早めに手を打っておくべきである。 「あの二人が黙ってないだろうからな。」 「・・・そうだったな。あの馬鹿黙らせねーとな。」 新一との休みを邪魔されて溜まるかと、闘志を燃やす。 そんな快斗を見て、苦笑するしかない月斗だった。 ともかく、せっかくの新一からのお誘いだ。これ以上の邪魔はさせるかと、快斗が頑張り、情報で捜査された彼等は、新一が休みの間何をするか、空いているかなどの予定を一切わからないまま、休みに入るのであった。 そして、四人のお泊りの日はやってくる。
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