これで終わりかと思われたら・・・。

びゅおー

新一はまだ戻る気配なし。そして、風で比翼を含め皆をゲートから離した。
そして、すたんと構え、扇をすっと右から左へと水平のまま腕を動かし、ステップを踏んだ。
軽やかに舞うその様は、まるで天女のように・・・

キ(舞)「そういうことですか・・・。」
快(舞)「なかなか考えるね。」
快(黒)「しかし、これで手加減する必要はないことはわかりましたね。」
ゲートは復活していた。
そして、すっと別の構えになった瞬間、新一がこちらへと向かってきた。


時(舞)「参ったな・・・。」
新一は己の身を最低限守る為、様々な技術を独自の型で手に入れた。
そして何より、現在彼が何を懐に持っているかさえ、不明である。
ある意味魔法のポケットを持っている?!
ベ(舞)「なら、まずは手持ちの持ち物全て出してもらおうかしら。」
と、やはり銃を撃つ。
比(舞)「まずはそれが先決だろうな。」
動きを止め、あのゲートを切り、そしてデータを回収し、新一舞を操る元を絶つ。
そうしなければ、どんどん新一舞は力と体力を使っていく。
新(舞)「悪いけれど、邪魔はさせないよ・・・?」
はじめてにっこりと笑みを見せた。ある意味怖いよ、君。
キ(舞)「・・・必ず壊します。」
快(舞)「高みの見物をしていられるのは今だけだっ!」
時(舞)「さってと。まずは手加減なく行かないと、姫は強いからね・・・。」
複数の戦闘には今までの経験が・・・。
快(黒)「また、厄介な・・・。」
なんと、召喚魔術もなんでもありのようで。
比(黒)「見事なものだな・・・。だが、容赦はせぬ。」
現れたのは漆黒の竜と漆黒の獅子と、漆黒の鳥獣。
キ(舞)「邪魔をするのなら、容赦はしません。」
比(黒)「新一を切るよりはよい。手加減なくいけるというものだ。」

 

 

 

漆黒の竜が火を吹いた。
快(舞)「へえ、黒い火だね」
キ(舞)「竜…ドラゴンですか。さすが新一です」
快(黒)「まずはこれを何とかしなくてはならないのですね」
三人が、漆黒の竜へと挑む。

比(黒)「…黒鳥同士、争うとしようか」
いつも以上に無表情で、比翼は日本刀を翻らせる。
天空を、漆黒の鳥獣が駆ける。

時(舞)「となると必然的に、漆黒の獅子は俺が相手…か」
面倒臭そうに、そういう時矢。ベルモットは新一の手持ちを減らすために銃を撃ちまくっている。
二人の体力と気力が尽きる前に倒して、新一を何とかしなくてはならない。
時(舞)「…覚悟する必要ねえぜ。その前に殺す」
そう言って、ナイフを取り出す。

その場は地獄絵図と化した。

快斗(黒)が、竜を誘い出すように前方へと駆けた。
とりあえず快斗(黒)が持っているのはトランプ銃だけ。それを発射して、タイミングを計る。
だがやはり、硬い鱗はトランプを弾く。
キ(舞)「魔法の使えない貴方が粘っても無意味ですよ」
快(舞)「下がってろ!」
そう言って、魔法で強化された刃で切りかかる。
引っかき傷はできるが、致命傷は与えられない。
快(黒)「魔法が仕えなくても出来ることはあります」
そう言って、トランプ銃を放つ。
それは竜の関節を狙い、刺さった。付け根の柔らかい部分を狙ったのだ。
悲鳴が上がる。
再び炎が吐かれ、その瞬間に、快斗(舞)が竜の口内に刃を付きたてた。
快(舞)「この野郎!」

突き刺さった刃から、緑色の血が噴出して、竜の絶叫があたりに響いた。

 

 

 

悲鳴をあげて、大きな地響きと共に倒れた竜。
だが、まだ生きているので止めをさそうとしたその時だった。

獅(舞)「・・・っぐぉーーーっ!!」
獅子が雄たけびのような声をあげる。
時(舞)「さて、終わりだ。お前に逃げ場はない・・・。」
隣で戦っていた時矢の冷たい言葉が耳に届いた。
気がつけば、獅子を取り囲むように、糸が張り巡らされていた。
まるで、一種の結界のように、完全に動きを奪われた。
時(舞)「あんたに恨みはないが・・・、作り出した本体を恨むがいい・・・。」
実は、これらのもとになるデータはあのゲートだった。
それをもとに、新一が生み出した人形のような本物だったのだ。

ザシュッ――

比(黒)「こちらも終わりだ。」
鳥の片翼を切り落とし、再び高く飛び上がり、真っ直ぐ刀を卸して切る。
鳥が甲高い頭に響くような叫びとともに、少し黒ずんだ紅い血を飛び散らせて倒れ
た。

さて。三匹の始末は終わり、お片づけできました。
快斗(黒・舞)はしっかりとそいつらをしばってお土産用に・・・。
やっぱり、ないと自分達の身が危ないしねっ!
これで、残るは新一舞とゲートと、なぜか復活している数体の羽虫。

キ(舞)「本当に、いい加減にしていただきたいものですね。」
快(舞)「そうだね。新ちゃん返してほしいし、何よりいつまでも手元にあるっていうのがむかつくんだよね。」
もう、笑顔が笑顔ではない笑顔でお二人さんが並べばちょいとゲートもひるむ。
そんな二人へ、あの妖艶な新一の笑みが。
新(舞)「そっちこそ、いい加減にしやがれ。」

ズシャッ

手加減するつもり一切なし。
あ〜、こういうとき、新一さんの力がうらめしいというか怖いといいますか。
突然生えた木が襲い掛かってきます。
葉もまるで刃物のように降って来ます。
快(舞)「いいかげんにしようね、新一。」
すっと、近づき、怪我も無視して新一の腕を捕らえて押し倒す。
そして・・・

キ(舞)「っ!快斗!!」
時(舞)「やったのか。」
快(黒)「な、なっ・・・っ!!(///)」
比(黒)「うむ。」
抵抗するも、酸素奪って力が抜けていく新一舞。
おかげで、樹の化け物も大人しくなって枯れて消滅っ!

 

 

 

酸欠でぐったりしている新一。
…うわあいいとこ取り!

快(舞)「ぷは」
新一が酸欠で目を回した。
キッドの回し蹴りを快斗(舞)は見事な動きで止めた。
快(舞)「何するんだよ!」
キ(舞)「いえ、少々悔しくて…」
快(舞)「ちょっと俺がとって何が悪い!」
キ(舞)「この戦いの中、どうも私に嫌がらせをしている人がいるとしか思えず…」
ああ、比翼さんに踏み台にされたりね。

時(舞)「失礼」
快(舞)「あれ」
気絶した新一から、時矢はそっと何かを取り外した。
それは卵だった。
時(舞)「これで意識を操られていたんだろうな。一体どこの怪物をコピーしたんだか」
比(黒)「ああ、それはこちらの新一の知識やも知れぬ。確かとあるホラー小説の怪物の親玉がそんな小手先細工をしていた気が…」
快(黒)「余計な知識が増えていく原因はそこでしょうか…」
快斗と新一の(自主規制)を目の辺りにしても意識を保っていられるのは恐らくキッドモードだからかもしれない。
時(舞)「さてと…新一は取り戻したから、あとは一つ」
心なしかゲートがビクリと震えた気がした。

だがそのとき、止めを刺し忘れていた竜が起き上がり咆哮を
あげ、火を吹いた。
快(舞)「わあ!」
快(黒)「――しぶといですね!!」
快斗(黒)のトランプ銃が、竜の眼球に突き刺さった。

それが頭部にも突き刺さり、今度こそ絶命する。
ゲートがその隙に逃げようとした。
それを、ベルモットが阻止する。
べ(舞)「私を忘れてもらっては困るわね」
大人の女の笑みが怖いです。
ゲートの代わりには虫が何かしようとしたのを、一振りで大破
させる比翼。
比(黒)「さあ―――お楽しみの時間だ。破滅を差し上げよう」


邪微笑。


…みんな切れてます。
聞こえるようで聞こえない悲鳴が響き渡ったのは、明記するまでもないかもしれない。

彼らは正気を取り戻した新一、そして意識を結晶にして剥ぎ取ったゲートを抱えて女史たちのもとへと返っていった。


…真夜中だった。

 

 

 

現在、女三人組は実験中・・・。
そして、快斗舞から新一舞を奪い取ったキッドがふてくされながら、新一を抱きこんで座っていた。
快(舞)「独り占めするなっていってるだろ。」
キ(舞)「・・・(聞く気なし)」
比(黒)「そうとう、荒れた戦いだな。」
快(黒)「いろんな意味で、すごいね。」
キッドモードがとけた。
ちなみに、お疲れの新一黒はお休み中。
新一舞はキッドの腕の中ですやすやと。
快(舞)「だって、キスで酔わして呼吸を整えさせなかったらいいと思ったし、新一を傷つけない方法だったじゃんっ!」
キ(舞)「確かにそうですね。新一からキスをしてくれるまで、徹底的にキスを教えましたから。」
快(舞)「どうしてその時に俺も混ぜてくれなかったのっ?」
キ(舞)「新一との時間を邪魔されるのは御免でしたから。」
快(舞)「何それっ!結局三人で夫婦なのにぃ!」
キ(舞)「だから、それは許します。もともと、違っていても同じである私達は運命の出会いも同じなんですから。」
なんだか、ある意味低レベルな争いが・・・。

快(黒)「やだよ、ここ・・・。」
キスを連呼されて、顔を真っ赤にする。
キ(舞)「とにかく、先に休ませてもらいましょうか。」
快(舞)「一人だけは許さないよ?」
キ(舞)「それぐらいわかっています。そもそも、それを決めることも新一です。」
新一が許さなければ、快斗でさえ近づけさせないとはっきり言うキッドに、呆れながらも自分も同じ事を言うのだろうなと思い、それ以上何も言わない。
キ(舞)「貴方方も、ゆっくりと休んで下さい。」
比(黒)「問題ない。」
快(黒)「そのへんは大丈夫。」
時(舞)「じゃぁ、一回帰るかな。」
もしかしたら、まだ彼女がいるかもしれないから・・・。
比(黒)「明日の為に、休むとするか。」
快(黒)「そうだね。」
少し、成長したのか、新一の寝顔を見て可愛いなと思いながら布団にもぐる快斗。
いつもなら顔を紅くしていたのにねぇ。
やっぱり、今回の件で多少は免疫ついた?
すでにキッドと快斗と新一舞は上の部屋へと戻り、皆が就寝した。

 

 

 

朝になった。
…新一はまだ眠っていた。
比(黒)「寝かせておこうか」
快(黒)「…あの体験のあとだしね

心なしか魘されてますよ?
と思ったら比翼さんがひょいと新一を抱えてしまう。
快(黒)「あ?!」
比(黒)「さて朝食だ」
そのまま?!しかも新一、何気に魘され止んだし!!
快(黒)「…お、恐るべし刷り込み…!」

そしてこっちも。
キ(舞)「起きて下さい新一」


ちゅ。

新(舞)「にゅー…」
快(舞)「し〜んいち〜、おはよ〜」


ちゅ。

新(舞)「…ん」


ちゅ。

時(舞)「…なんというか、ここだけ空気がピンク色だ」
起こしにきた時矢さんはどこで声をかけようか少し迷った。

朝食の席で、相変わらず新一(黒)は比翼の膝の上で夢の中。
新(舞)「…もしかして俺もあれやった事あるのか…?」
キ(舞)「おや、覚えていませんか?」
新(舞)「え(ぎく)」
快(舞)「いーなー比翼さん」
抵抗なくあっさりとあんなことが出来るのは比翼ぐらいだろう。
…敵意もなにもないから。(身の危険もない)
朝食の横で、快斗(黒)は始終いじけていた。
や〜いへたれ〜へたれ〜。

快(黒)「うるせー!!」

 

 

 

新(舞)「とりあえず、用意をするか。」
ゲートの準備を一からしないといけないからね。だって、昨晩破壊して女子三人組の手に渡りましたし。
キ(舞)「新一は休んでいて下さいね。」
快(舞)「そうだよ。それにあんなののところへ新一連れて行きたくないし。」
だって、ねぇ。あれだしさ。
キ(舞)「ということで、準備は彼女達と彼がしてくれるということなので、もうしばらく休んでもらいます。」
抱き上げた。
時(舞)「ってことで、逃げないように見張っててくれ。」
キ(舞)「言われるまでもなく。」
快(舞)「そうそう。」
新(舞)「(別の意味で不安・・・)」
確かに、そうかもね。ま、頑張れ。

同時にこちらでは
新(黒)「・・・ょくぅ・・・。」
比(黒)「まだ、寝ていてもかまわぬぞ、新一。」
新(黒)「うん・・・・・・すぅ・・・・・・・・・。」
再び夢の中へ。
快(黒)「いいんだいいんだ。わかってるから・・・。」
諦めていてもやはり悲しいのであった。

新(舞)「もう降ろせよ。」
キ(舞)「嫌だと、言ったら?」
新(舞)「・・・どうしたら降ろして離してくれるんだよ?」
快(舞)「しばらくの間、俺達の相手してくれたら。」
新(舞)「(しばらくじゃないだろうという予想が・・)」
キ(舞)「昨日は、本当に辛かったのですよ・・・。」
新(舞)「・・・ごめん。」
心配させたことはわかっているので、素直に謝る。
快(舞)「あんなのが新一に手を出したかと思うと・・・っ!」
確かに、おかしな不気味な気持ち悪い手のようなものはいっぱい生えてましたけどね。
キ(舞)「いつも、新一のことで心配しているのですよ。」
出会ったあの日、関係が変わりだした日、不器用でお互いの気持ちをわかりあえなかった間。
長い時間をかけてやっと結ばれた。
快(舞)「ちょっと、過去に走るのはなしっ。俺はなんにもないんだから。」
キ(舞)「そうですね。まずは、新一。」
新(舞)「・・・(諦めた)」
快(舞)「しばらく、相手をしてね。」
逃がさないよと笑顔の二人が前後に。
新(舞)「それで気が済むのならどうぞ、旦那様。」
キ(舞)「やはり、いいですね。私の愛しいお嬢様。」
独占欲の塊めぇ〜〜!
新(舞)「(はぁ・・・)俺だって、キッドと快斗が好きでほしくてしょうがないんだぞ・・・。」
快(舞)「うれしいことを言ってくれるね。今日はどうしたの?珍しいじゃん。」
実は、操られている間中、意識はあり、攻撃している手を止めたくて止められない事でかなり傷ついていたり。
キ(舞)「手加減、できなくなりそうですね。」
時間はあと数時間。
一人によって吐息は飲み込まれ、一人のよって着物の帯を解かれた。
甘いちょっとした時間がはじまる。

比(黒)「今回は11時だったな。」
時(舞)「そうだな。」
快(黒)「出来ればかかわりたくないけれど・・・。あの三人、降りてくる?」
比(黒)「それはわからぬ。」
時(舞)「ってことで、ゲートの件はやるから、お前はそっちの新一が起きるまで側にいてろよな。」
比(黒)「では行くか。」
二人は立ち上がる。
ちょいと、快斗黒もいいところがやってくる?!

 

 

 

甘〜い時間を過ごしている三人は無視して、快斗(黒)は命じられたとおり、新一(黒)の傍で、じっと時間が過ぎるのを待っていた。
ここで手が出せないのは彼がへたれだからである。
快(黒)「…」(真っ赤)
新(黒)「…ぅ〜」

時(舞)「さてと、粉々になったなゲート」
比(黒)「この成分を組み立て直し、新たなるゲートを作る、か…だが、こう何度も行き来していては世界に穴が空く。自然消滅するよう仕掛けを施さねばなるまい」
時(舞)「もしものために少し取っとくか。いるか?」
比(黒)「やめておこう…時に関わるのはパンドラの呪いだけで充分だ」
時(舞)「…呪い、ね」
パンドラという言葉に、何となく事態を理解した時矢。
ちなみに女史三人は実験に満足して睡眠を取っている。
…徹夜したらしい。
時矢と比翼は、せっせと新しいゲートの作成に入った。
比(黒)「これはお前の趣味か?」
時(舞)「さてな♪」
え、どんなゲートが出来るのさ(汗)

そしてそのころ相変わらずな二人。
快(黒)「…」
なぜか新一は快斗に抱きついていた。
恐らく、温もりを求めてそうなったのだろう。
快(黒)「(何度か比翼さんにしてるのは見てたけど、対象になるのは初めて…!!)」
どうしよう。
かちんこちんな快斗。
困っていると、むにゃむにゃと新一が何か呟いた。
新(黒)「ょく〜…」
快(黒)「…」
泣かないもん。
新(黒)「…ぃと…」
快(黒)「え」
吃驚して、快斗は目を丸くした。
新(黒)「…ぁいすきぃ…」

間。

快(黒)「…〜〜〜〜〜〜!!!??////」
お寝惚け新ちゃん。
寝言だし。
快斗は暫らくパクパクと真っ赤のまま口を閉口させて、
固まり…。
快(黒)「…、愛し、てるよ、新一」
そう言って、意識のない新一の額に口付けた。

 

 

 

キ(舞)「新一・・・しばらくはゆっくり休んでくださいね。」
快(舞)「目を覚ました頃には、あいつらとお別れだろうね。」
散々愛されて泣かされて(え?)疲れて眠った新一。
しっかりと事後処理をして、服も着せました。
快(舞)「やっぱり、新一を抱いてるのが一番心地いいんだよねぇ。」
キ(舞)「誰か、他の女でも抱いたのですか?」
快(舞)「うんにゃ。んなわけないでしょ。興味ないし。」
キ(舞)「愚問でしたね。」
快(舞)「そうそう。それにしても、新ちゃんよく寝てるよねぇ。」
寝顔可愛いと、頬をつつく快斗。
結局甘いなあんたら・・・。
付き合いきれないわっ!

ってことで、ところかわりましてこちらに・・・。

ドンガラガッシャーンッ?!

何事だ?!
哀(黒)「困ったわね・・・。」
起きて少しよろけた拍子に・・・。
志(舞)「帰るまで、もうあまり時間はないわよ?」
紅(舞)「でも、どうにかしないとまずいわ・・・。このままじゃ、ゲートが消去されてしまうわ。」
え?せっかく作ったあれが?!
哀(黒)「とにかく連絡をいれないとっ。」
走って部屋から出て行きました。


さすがに時間が迫っているのであせる?
ちなみに、現在の時刻は9時ぐらい?
残すはあと2時間(?)?!
急げっ?!

 

 

 

新(黒)「どうした!?」
飛び起きた新一さんと快斗さん。
舞姫の方々はまだ降りて来ていないがその理由をあえて誰も突っ込まなかった。(新一は不思議がっていた)
哀(黒)「大変な事が起きたの」
快(黒)「一体どうしたの?」
志(舞)「一見は百聞にしかず。まずはこれを見なさい」
そう言って、引きずられていく二人が見たのは…。

新(黒)「…比翼?」
快(黒)「と、時矢さん…?」
小さくなった二人だった。
比(黒)「ああ、新一」
時(舞)「よ」
快(黒)「よじゃないだろ!?」
何があったんだと慌てる快斗の所へ、舞姫のメンバーが
やってきた。新一はよれよれだ。
キ(舞)「騒がしいですね」
快(舞)「何があったのさー…て、あれま」
新(舞)「…時矢?」
時(舞)「ああ新一。悪い。なんだかこんなことになった」
時矢&比翼版幼児化。
新(舞)「…っ」
時(舞)「実は…」
新(黒)「…か」
比(黒)「む?」

新(舞・黒)「「可愛い〜VV」」


ぎゅむっ

快・キ(舞・黒)「「ああ!!」」
新一らが比翼と時矢をぎゅっと抱き締めた。
…確かに普段の冷静沈着な二人とは思えないほど可愛らしい状態だ。
志(舞)「状況説明をすると」
紅(舞)「彼らの作り直したゲートに私たちが突っ込んでしまって、彼らにぶつかり、それが二人の生気を吸収してそれが何者かに持っていかれてしまったの。恐らく先程のゲートの自我
がかすかに残っていたんだと思うわ。あの羽虫が一匹生き残っていたの」
哀(黒)「彼等を元に戻して、ゲートを再び元の状態に戻すには、ゲートを捕まえて彼らの生気を元に戻すしか方法はないのだけれど…」

新(舞)「時矢お前可愛いぞ!」
時(舞)「え、そうか?」
新(黒)「これっていくつだ十歳ほど若返ってるよな?比翼、
このままでもいいんじゃないか?」
比(黒)「仕事上困る(そりゃあな)」
話聞いてる??

 

 

 

べりっ

新(舞)「はれ?」
キ(舞)「確かに、喜ぶのはわかりますが、抱きつくのはいただけません。」
快(舞)「そうだよ。どんなかわってももとは時矢だし。」
やっぱり、我慢できずに新一舞は捕獲された。
キ(舞)「で、ゲートの行方はわかってるんですか?」
時(舞)「おう。それはばっちりだ。ってことで、快斗。ちょっとばかし肩貸せ。」
快(舞)「しょーがねーな。」
やっぱり、いつも手を貸してくれるから?

そしてこちらでは
比(黒)「別に、歩けるからよいぞ?」
新(黒)「駄目か?」
比(黒)「疲れるであろう?」
快(黒)「体力残しておいてほしいからね。あのゲートに関しては。」
新(黒)「確かにあれには体力ないと付き合いきれない。」
思い出したら気持ち悪くなりそうだ。
快(黒)「ってことで、比翼さんは俺が預かっとくよ。」
比(黒)「ふむ。すまぬな、快斗よ。」
快(黒)「気にしないで。その代わり、なるべく新一の方を気にしておいてね。」
比(黒)「ソレは問題ない。」
新一黒の左右には快斗と比翼と哀がそれぞれいる。

時(舞)「行くか。頼むな、新一。」
新(舞)「大丈夫だ・・・。お前こそ気をつけろよ。その力を暴走なんかさせるなよ?」
時(舞)「まぁ、気をつけるさ。」

その年ですでに世界旅していろいろやってるような人ですから。力もね。

とにかく、風に乗ってレッツラゴーッ

と、やってきました。
快(舞)「何にもないね。」
志(舞)「本当にここなの?」
哀(黒)「間違えたの?」
紅(舞)「いえ、いるわ。」
新(舞)「この下だ・・・。」
その言葉とともに、地面が盛り上がる。
そして・・・

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォ・・・・

扉が現れた。



間。



快(黒)「・・・何、これ・・・?」
比(黒)「ゲートだ。」
時(舞)「作ってみた。結構、面白いしいいだろ?」
そこに現れたのは、あの禍々しい扉ではなくかなりメルヘンチックな淡い色を使った可愛らしいゲートだった。(何それ?!)
時(舞)「いやな。以前あの妹君についてというかな、異次元にいた時に見たものの一つでさ。」
内容にはでていませんでしたが、こんなメルヘンなこともしていたりしました。はい。
時(舞)「でも、相変わらず凶暴だぞ。」
比(黒)「力を手に入れて、レベルアップしたからな。」
誰もがそんなの相手にするのはとちょっと引く。

びしっ

その時、新一舞が前に出てゲートをびしっと指出して睨んで怒鳴った。
新(舞)「てめぇ。この前はよくも人の頭んなか侵入してきやがってっ!」
皆が許しても俺が許さねぇと叫ぶ。
いや、誰もゲートに対して許してはいませんって。

 

 

 

メルヘンな扉(時矢が作ったとは思えないような)を前にして戦意喪失気味な面々。
だが、捕まえなくてはならないし許せないし、何とか自分を奮い立たせる。
快(舞)「止めくらいさしてよね」
時(舞)「じゃないともどれないしな」
比(黒)「…しまった。日本刀が重い」
そりゃあね。
新(黒)「…快斗。ここでちょっと安心してしまった俺は人間失格だろうか」
快(黒)「大丈夫…俺もホッとしたから。比翼さんの腕力は修行の賜物だったんだね」
比(黒)「当然であろう。名家の姫であった私だ。最初剣を振れずして苦労した」
あ、意外な過去発覚。
キ(舞)「のんびりしている暇はありませんよ!」
新(舞)「来る!」
メルヘンな扉が開いて、中からグロテスクな羽虫が飛び出してきた。
それは小さな目が五つあり、羽が四枚、そして口元から長い舌のようで、鋭利な刃を持つ羽虫だった。

ギャップが酷い!!

快(舞)「今度は誰の記憶!?」
時(舞)「あー、俺かも」
比(黒)「あの刃は何だ」
時(舞)「あの舌先で相手の血を吸い尽くす吸血虫だ。弱点は超音波」
快(黒)「そんなもの出せるか!!」
新(舞・黒)「「…」」



シーン…。



じっと、数人が新一たちを見た。
快(黒)「えーと、もしかして?」
哀(黒)「全員耳を塞いで伏せなさい」
志(舞)「彼の華麗なる歌声が聞きたいのなら遠慮する事はないけれどね」
一斉に、皆が耳を塞いで地面に伏せた。
新(黒)「そこまでするか…(ちょっと傷ついた)」
新(舞)「何で俺が…っあのゲートの所為で!(責任転嫁・だがその通り)」
二人はやけくそで口を開いた。



…超音波発生。



ぼとぼととは虫は落ちていった。
快(舞)「…わ〜…」
快(黒)「…(真っ青)」
比(黒)「子守唄は唄えんな」
時(舞)「唄ってやると寝るんだけどな」
キ(舞)「…あとで慰めなければなりませんね」
歌が止まると、新一たちは拗ねて暫らく皆を振り返らなかった。
それをあやすのを快斗たちに任せて、時矢と比翼はゲートに向かって二人がかりで、比翼の日本刀を構えた。

二人一緒に止めを刺さなくてはならないため、このほうが効率がいいのだ。
先程の超音波(失礼)のため、ゲートですらくらくらとなっている。

時(舞)「さて、仕上げと行くか!」
比(黒)「まったく懲りないものだ。行くぞ!」

ざしゅり!

力が、二人に戻った。

 

 

 

新(舞)「戻った。」
時(舞)「やっぱ、これが一番だよな。」
比(黒)「ふむ。重くはない。」
新(黒)「さっきのでもいいけど、やっぱり比翼は比翼だよな。」
戻った事に満足。

哀(黒)「さて。このゲートはどうしようかしら。」
再び粉々に粉砕された、ゲートの跡があった。
時(舞)「確かにどうすっかな。・・・最終手段を使うか?」
ちらりと新一舞を見る。
何かを感じ取り、キッドが新一舞を抱きこんで時矢を睨む。
キ(舞)「・・・。」
新(舞)「あいつまだ何も言ってないだろ?」
快(舞)「でも、今までの経緯でだいたいわかるって。」
時(舞)「賢くなったものだな。」
キ(舞)「お蔭様で。」
時(舞)「じゃぁ、どうすっかな。お前等ここに残る?」
比(黒)「それは困るな。まだ遣り残している事があちらにあるからな。」
快(黒)「そうだよ。まだ見つけてないしっ!」
新(黒)「呼ばれたときに困るし。」
哀(黒)「実験ではまだしたい事があるけれど、片付けたいあのお邪魔虫の件が住んでいないものね。」
どうやら、帰る気はあるらしい。


少し考えて、キッドに文句はなしだと目で訴えて、言う。
新(舞)「なら、今夜まで待ってもらえるか?」
快(黒)「えっと・・・?」
新(黒)「あと、数十分後がゲートの動く時間じゃないのか?」
新(舞)「ここまで壊れるとなると、動かないし、準備に時間もかかるし、俺が直してまた手間取ることになってもいけないからさ。」
比(黒)「何か別の方法でもあるのか?」
時(舞)「そりゃ、新一が送ってくれるに決まってるだろ?」
新(舞)「さっき、四大精霊に頼んで、聖霊王に伝えてもらったし、天界人にも伝えて、この世界の理をつくり流れを作る神へ伝えてもらうように頼んだ。そして、闇人に、闇の力を安定させるようにも頼んだ。自然界に住む妖精や精霊たちも支えてくれる。」
時(舞)「だから、その力を働かせて新たなゲートを開かせるってことだ。だが、その為にはちょいと時間がな。」
快(黒)「時間?そんなにかかるものなの?」
結構紅子は簡単にしていたものね。
キ(舞)「体調が万全ではなく、疲れの見える新一の状態でして、成功するわけがないでしょう?」
新(黒)「疲れるようなことしたのか?」
時(舞)「本来、自分を移動させる事でさえ難しいとされる高度魔術でもあるもの。妖精の力を借りても、大人数をここまで運ぶ事は体力と力が必要だ。それに、先日の疲れが完全に抜け切ってないしな。」
体力、精神的な面とは違う場所なので、なかなか難しいのである。
それに、あれだけ、暴れたもんね。無茶しまくって。
比(黒)「わかった。帰れるというのなら、待っていよう。」
新(黒)「そうだな。」
快(黒)「そっか、ちゃんと帰れるんだね。」
時(舞)「わかってもらえたところで、帰るとするか。」
すでに粉々に崩れたゲートは無視・・・存在忘れられてます。

 

 

 

そしてまた暇になる面々。
新(舞)「俺は体力回復のために寝てるから」
志(舞)「ええ、そうして頂戴」
新(舞)「おう」
キ(舞)「それでは皆さん」
快(快)「適当に寛いでろな〜」
両脇を固めてさっさと引き下がる三人。
というかやっぱり、彼らがいないと眠れないのね新一。
快(黒)「俺たち、どうする?」
新(黒)「夜まで、することがないなぁ…」
比(黒)「私と時矢は最低限のゲートの元を作成する」
時(舞)「少しでも負担を減らすため、基盤は作っとく」
新(黒)「ああ、なるほど」
納得。
時(舞)「移動が快適、という訳でもないだろうから、一応のため疲れはとっておいたほうがいい」
比(黒)「ということで休め、二人とも」
快(黒)「比翼さんは?」
比(黒)「案ずるな。平気だ」
時(舞)「でもあんたも休んでたほうがよくないか?これは俺一人でもできるぜ」
比(黒)「しかし」
紅(舞)「休んでいなさいな」
志(舞)「貴方が傍にいたほうが彼も安心する事でしょうし」
快(黒)「…(複雑)」
哀(黒)「私たちも休んでいましょう」
比(黒)「…うむ」
お休み決定。
…というかよく寝てるな、あなた方。

 

 

 

ごろん

新(舞)「・・・ぃと・・・・・・き・・・っど・・・・・・・・・・・・っき・・・。」
むにゃむにゃと相変わらずキッドの方へとくっつく新一。
すでに夢の中
快(舞)「名前呼んでくれるのも好きって言葉もうれしいけどね。」
キ(舞)「それは、過去のことがありますからね。」
結構ここまでくるのに苦労してきている人である。
快(舞)「たまにはこっち向いてよ〜。」
キ(舞)「起こさないで下さいよ。」
快(舞)「起こさないって。」
新(舞)「・・・にゅ・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・し・・・てる・・・。」
どんな夢を見ているんですか?!
キ(舞)「ええ。愛してますよ、新一。」
快(舞)「愛してるよ。大丈夫、独りになんかしないから。」
二人に回された腕に包まれる。
自然と、顔が穏やかになり、二人もまた愛しく思いながら、今度こそ眠りについた。

時(舞)「で、お前は行かないのか?」
快(黒)「だって・・・。」
哀(黒)「彼だからしょうがないのよ。」
志(舞)「相変わらずへたれてるわね。」
紅(舞)「さっきまでの戦闘での勢いはどこにいったのかしらね。」
快(黒)「ひどい、皆がいじめる。」
時(舞)「でも、事実だろ。それにしても、どうしてこんなに差があるんだろな。」
哀(黒)「確かに、ほとんど同じなのに、不思議よね。」
調べたがってる・・・?
快(黒)「そ、それより。この基盤できたけど、この後どうする?」
まだ、お日様はあんなに高い。
志(舞)「そうね。どうしましょう。」
時(舞)「カードゲームとやらでもするか?」
とりだしたのは異国のカード。
快(黒)「トランプ?」
時(舞)「この国にはまだ普及してなくてね。珍しい代物だが、仕事先でちょっとね。」
哀(黒)「ま、時間つぶしにはいいかもね。」
快(黒)「そうだね。」
実験よりも。

 

 

 

新(黒)「むにゅう…」
比(黒)「…ふ、まだまだ幼いな」
無防備に眠る新一を母親の心境で見守る比翼さん。
…お母さん?

快(黒)「勝ったあ!!」
時(舞)「おお、意外と強い」
哀(黒)「工藤君といい勝負よ、彼」
志(舞)「やっぱり悪運の強さ?」
紅(舞)「こんなときにIQの高さがでるのかしら」
快(黒)「カードゲームで俺に勝てるのは新一ぐらい」
へたれにもとりえが!!
快(黒)「へたれいうな!!」
ごめんよ。
哀(舞)「負けが続くとつまらないわ」
志(舞)「どうしましょう」
紅(舞)「カードを使っている人にカードゲームを行ったのが間違いかしら」
うわ、実験するの?
それは後勘弁なので、別のゲームを探す快斗。
時(舞)「…あれ?」
快(黒)「う、どした?」
時(舞)「このカード、何かおかしくないか?」
快(黒)「へ?…わぁ!!」

ぼん!!

カードが爆発した。
…あれ??

快(黒)「…あれ。消えた」
時(舞)「…トランプ、じゃなかったし」
哀(黒)「タロットでもなかったわ」
紅(舞)「――白紙のカード」
志(舞)「どういうこと?」
紅(舞)「占いのカードよ。物を白紙にしたり、無から有を生み出すカード。主に物を無に返すカード…あなた一体どこから」
時(舞)「適当に盗って来たからな…」
おい。
快(黒)「うわ、困るじゃないか!!探さないと…!!」
さあ、どこへ行った?

 

 

 

時(舞)「でも、大丈夫だろ。」
紅(舞)「・・・そういうことね。」
気楽に次の暇つぶしは何にしようかなと考えている時矢をみて、ふと紅子も気付いたようだ。
哀(黒)「大丈夫なの?」
紅(舞)「ええ。すぐに彼が持ってきてくれるわ。」
志(舞)「・・・強い力を無に返すつもりかしら?」
紅(舞)「そういうことね。有を無に返すのが得意だもの。大きな有の塊へと勝手に飛んでいくわ。」
私よりも強い力が近くにあるもの。
休んで力も戻ってますし。
快(黒)「ねぇ。また帰る時間が延びるってことはないよね・・・?」
志(舞)「保障はないわね。」
快(黒)「・・・(涙)」
実験される時間が出来るのか?!

キ(舞)「また、彼女達ですか・・・。」
快(舞)「どうだろうね。」
近づいてくるものに、目を覚まして起き上がる。
しかし・・・

ぎゅっ・・・

キ(舞)「・・・。」
快(舞)「・・・はぁ。」
キッドの袖をつかむ手があった。
ぬくもりがはなれようとしたので、無意識にである。
キ(舞)「・・・困りましたね。」
快(舞)「いいよ。別に。邪魔されることには俺も気に入らないから。」
すっと、持っていたものを投げると、壁に突き刺さった。
キ(舞)「お見事。」
快(舞)「キッドに褒めてもらってもうれしくないね。」
立ち上がってそれに近づく。
快(舞)「珍しいな。白紙のカードだ。」
キ(舞)「彼女達・・・もしくは時矢ですか。」
快(舞)「どっちでもいいや。」
マッチを取り出して、すって火をつけ、カードを燃やす。
こういうものは燃やしてしまうのが一番だ。
快(舞)「さて。もう一眠りしますか。」
キ(舞)「そうですね。」
三人仲良く、再びお昼寝。
シリアスモードが最近崩れ気味じゃないかい、君達。

時(舞)「どうやら、カードは消えたみたいだな。」
紅(舞)「そうね。」
快(黒)「そうなの?」
哀(黒)「いいからさっさとやりなさい。」
現在、彼等はカードから時矢がまたどこからか取り出したバランスゲームをしていた。
例の、長方形の立体の木が三つずつ順番に縦横に並べて積み上げられたそれを下から取って上に乗せるという例の奴だ。
志(舞)「はやくしてくれない?」
快(黒)「せかさないで・・・よっと。よし、とれた。次は哀ちゃんね。」
結構平和・・・?

 

 

 

そのころ。
比(黒)「懲りんな、あやつら」
しっかり状況把握していた比翼さん。
まあ、害はなかったけれど。
比(黒)「白紙のカード、か…」
嫌な予感。
比翼はそっと立ち上がって、部屋を出た。
新(黒)「にゅにゅにゅ…」
そして新一はまだ夢の中。
…寝すぎ!!

快(黒)「あ」

がらんがらん

時(舞)「お前の負けだ」
哀(黒)「結構危うい所まで続いたものね」
志(舞)「当然といえば当然の結果ね」
だって支える柱が一本だけだったし。
快(黒)「えう〜。順番が悪かった…」
時(舞)「それもあるな」
哀(黒)「人生ゲームがあるわね」
紅(舞)「何でこんなにいろいろあるのかしら…」
快(黒)「…この人生ゲームやっても大丈夫?」
いわく、また何か起こるんじゃ?と。
時(舞)「大丈夫だろ」
快(黒)「…」
時(舞)「…」
快(黒)「…」
時(舞)「…多分」
快(黒)「多分じゃ駄目ー!!」

新(黒)「…わあああああ!?」

時(舞)「なんだ?」
新一(黒)の悲鳴。
瞬時に快斗は駆け出していた。
速いな!!
快(舞)「なにごとー?」
キ(舞)「新一が起きてしまいます」
まだ寝てるんかい。
快(黒)「新一!!どうしたの!?」
新(黒)「か、かいと〜」
一同「「!!??」」
動転している新一の腕の中には。




…赤ん坊が居た。



一同「「なんでーーーーーー!?」」

?(?)「あ〜…」
完全に赤ちゃん語。恐らく舌が回らないのだろう。
新(黒)「これ、比翼みたい〜」
快(黒)「はあ?!」
また幼児化?!しかも行き過ぎ!!
時(舞)「…ああ、なるほど。『白紙に戻された』のか」
哀(黒)「あら、カードは消えたのではなくて?」
時(舞)「…お前ら、カード燃やしたろう」
キ(舞)「え?はい」
時(舞)「宿る器を燃やされたカードの力が彷徨って、それを何とかしようとして逆に不意打ちされた、てとこかな」
新(黒)「ひ〜よくぅう〜!!いくら何でも小さくなり過ぎだって〜〜!!」
半泣き。
志(舞)「…じゃあ新しい器を用意して彼女に付いた力を切り離し、正式に力ごと燃やすしかないようね」
時(舞)「そういうことだ」
キ(舞)「新一はまだ疲れて寝ていますので」
快(舞)「起こしちゃ駄目だよ」
…じゃあ、どうしろと?

 

 

 

時(舞)「でも、俺がやってもいいが、安全性にかけるからなぁ。」
快(黒)「ならやめて。」
時(舞)「やってもかまわないっていってるだろ?・・・安全に事が進むとは限らないがな・・・。」
にやりという笑みがちょいと怖い。
キ(舞)「そんなことをしていないで。どうするんですか?」
快(舞)「いつまでもこんなのいるのは困る。」
いちゃいちゃできないし。
快(黒)「いちゃいちゃって・・・っ。お前等ずっとくっついてるだろーが!」
目に毒だと訴えるが無視された。
新(舞)「・・・ぃど・・・?」
騒動で起きたらしく、だが眠いのか目をこすってもぞもぞやってきた新一舞
新(舞)「どっか、したの?」
舌がまわってない不安定な呂律でしゃべる。
キ(舞)「少々困った事になりましてね。新一は気にしなくていいんですよ。」
新(舞)「・・・・・・すぅ。」
もう寝てる。
快(舞)「寝ぼけてただけね。でも、よかった。」
キ(舞)「確かにね。彼ならなんとかすると言い出しかねませんし。」
時(舞)「で、比翼さんは何年ぐらい戻されたんだ?」
新(黒)「・・・。」
快(黒)「正確にはわからないな。」
時(舞)「三桁ぐらいとしかわからんのか。さて、どうしよっかな。」
ぶつぶつ一人で何か言っている時矢。
哀(黒)「で、器はどうするつもり?」
志(舞)「一番いいのは新一君だけど、寝ているし、彼にさせると帰れないから問題なのよね。」
時(舞)「あ、俺がやる。」
立候補制なのか、これ。
快(黒)「今度は何をやらかすつもりだ?」
快(舞)「そもそも原因はあんただろ。」
時(舞)「無に還せるもんなら還せって感じだしな。」
俺を無に還すのは至難の業だろうしな・・・。くくくと見せる笑みはまさに悪人だった。
時(舞)「ってことで、比翼さんかしてくれる?」
新(黒)「大丈夫・・・?」
時(舞)「大丈夫だって。ほれ。」
不安そうな新一に安心させるように笑顔でいって比翼を抱き上げる。
快(黒)「別にいいけどね・・・。」
相変わらず情けなさというか、出遅れるのはいつものことだな。
時(舞)「ということで、さっさと出てこいや。」
比翼の額に手を触れて、何かを引き抜いた?!えっ?!
快(黒)「見間違い・・・?」
哀(黒)「私も見えるから違うと思うわ。」
キ(舞)「相変わらず非現実な人ですね。」
いや、怪盗とかしているあんたたちも充分非現実だって。
時(舞)「悪いけど、しばらくしたら戻るだろうから、頼むな。」
ひょいっと新一黒に比翼を返して、窓から出て行った。
快(舞)「何がしたいわけ・・・?」
キ(舞)「・・・さぁ?」
まったく意味がわかってません。
その時。
新(舞)「・・・と・・・きや・・・。」
キ(舞)「起きたのですか?」
第一声が時矢だというのがちょっとばかり気に入らない。
この独占欲の固まりめっ。
新(舞)「・・・っ、あの馬鹿!」
突如覚醒?!
新(舞)「おい、そこの快斗。」
快(黒)「え?俺?」
指差されて迫られた。ちょっと迫力があって怖くてびくつく。
だって、背後にいる怖いのが・・・。
新(舞)「俺連れて時矢追いかけろ。」
はやくとせかされて、とにかく新一舞を担いで出て行った。
キ(舞)「新一・・・。」
快(舞)「俺達も追いかけるか。」
新(黒)「何かまたトラブルでもあったのか?」
赤ん坊の比翼を抱いて不安そうにしている。
キ(舞)「大丈夫ですよ。あの男がへましませんし。女史達には彼等のことを頼みます。」
快(舞)「戻るとしても、他の面でね。」
哀(黒)「わかったわ。」
志(舞)「さっさと行きなさいよ。」
ということで、こっちも追いかける。

時(舞)「・・・ぐっ・・・どうした、俺の持って生まれたこの呪われた力は白紙に戻す力がねーのか?」
なら、お前の力は全て俺が吸収しちまうぜ?
・・・なんだか物騒だな、あんた。
それが地かい?
新(舞)「時矢ー!」
時(舞)「あの馬鹿っ・・・。」
またわざわざ心配してきたわけね。相変わらずお人よしだ。
快(黒)「おい。大丈夫なのか?」
時(舞)「おうよ。問題ないね。・・・っ・・・・・・・・・死にたくなきゃ、近づくなよ。」
今の彼はまさしく裏の人間だった。
その目と気配は良く知っている。
新(舞)「時矢・・・。」
時(舞)「大丈夫だって。もう少しで、カードの力は消えるからさ。」
そうしたら、比翼も戻るだろうさ。

数分後、気配が治まれば、意識はあるが、しばらく動けなさそうだと苦笑する時矢がいた。
キ(舞)「一人で無茶をするからです。」
快(舞)「俺達も原因があるけどさ。」
とにかく、快斗黒にかつがせて、新一舞を抱きしめて帰ってきたのでした。

 

 

 

帰ってきた彼らに、半泣きな新一(黒)
新(黒)「おかえり!!無事だったか!!」
快(黒)「新一〜大丈夫そうだよ〜」
時(舞)「あはは。まだ動けないけどな〜」
新(舞)「大人しくしてろ」(ばこ)
時(舞)「いて」
快(舞)「新一」
キ(舞)「彼のことは放って起きましょう」
おいコラそこの独占欲の強い方々。
新(舞)「…あれ。比翼さんは?」
もとに戻ったはず…。
志(舞)「ああ、彼女なら」

比(黒)「ここに居るが」
一同「「わあ!!」」

新一(黒)の足元に、見覚えのある小さな物体が!!

快(黒)「ひ、ひひひひ比翼さん〜〜!?なんでまだ小さいの!?成長はしてるけど!!」
時(舞)「おかしいな。失敗したか?」
比(黒)「失敗してはおらんよ。こうして成長し始めている…ただ少々副作用が」
新(舞)「副作用?」
比(黒)「先ほどは油断したがな、あのカードは私の存在を白紙にするつもりだった。だが、私には『パンドラ』の呪いがかけられている。その呪いのおかげで赤ん坊になる程度で、何とかなった。時矢が力を吸収してくれたおかげでカードの効力が消えたはいいが、その反動でなにやら成長が緩やかでな。まあ、目に見えた速さで成長しているのだから心配はない」
確かに、何となく、大きくなってきている気も…。
快(舞)「ちなみに好奇心で。何年くらい若返ってたの?」
比(黒)「何年だろう…」
自分でもわからないらしい。
下手すると三桁どころか四桁だし。
というか年数えていないから正確な生きた年数知らないし。
新(黒)「まあ、害はないからいいとして…時矢さんは大丈夫?」
新(舞)「休ませるから大丈夫だろ。…さてと、俺ももっかい寝よ」
まだ寝るの!?

 

 

 

新(舞)「で、本当に大丈夫なのか?」
時(舞)「大丈夫だって。心配しすぎだ、新一。」
比(黒)「だが、人であるかぎり、もしもということもある。」
快(黒)「確かに、一応時矢さんは人だよね。」
時(舞)「そうだな。あんたのように可笑しな曰く付だがな。」
キ(舞)「で、身体に変化は?」
快(舞)「そうだよな。あの力吸収したんだろ?」
時(舞)「あれか?なら、お前等の存在を無効化してやろうか?」
一同「「・・・。」」
時(舞)「吸収した、すなわちその力を己のものにしたということだ。」
なんなら、黒兎のもってた魔王召喚もしてやろうかと言ってくれる物騒な人がここにいた。
新(舞)「元気そうなら、いい。」
キ(舞)「ということで、寝ましょうね。」
快(舞)「じゃぁ、あとでね。」
相変わらず三人一緒。
新(黒)「本当、あいつら仲いいよな。」
わかってない。
新(黒)「俺達も仲良くやってみるか?」
快(黒)「えっと・・・(汗)」
やっぱり、わかってない新一黒を見て、泣きたくなる快斗黒だった。
哀(黒)「それにしても・・・。おかしな体質ね。」
志(舞)「一度・・・。」
時(舞)「実験はお断りだよ。それに、俺なんかに手を出したら、たぶん厄介ごと背負う羽目になるぜ?」
そのリスクは負えきれないだろうから・・・。
紅(舞)「本当にあなたといい、彼といい。」
厄介なものを背負った人ばかりね。

そして時間は流れて・・・。
比(黒)「あと数十年ほど残っているが・・・問題はなさそうだな。」
基本的にあまり気にしないらしい。
ということで、とにかく見た目はもとに戻った比翼。
哀(黒)「あちらも問題なさそうだから、起こしましょうか。」
志(舞)「そうね。」
ということで・・・。
新(舞)「やっとだよな。」
快(舞)「さっさと帰れ。」
キ(舞)「もう会わない事を願ってます。」
快(黒)「こっちもだよ。」
新(黒)「なかなかない体験だから、よくないか?」
快(黒)「だって・・・。」
へたれには刺激がきついからね。
新(舞)「よし。はじめるか。」
扇用意。
新(舞)「迷いし彼の者達を、本来あるべき場所へ導き送り給え・・・。」
すてっぷを踏んで舞を舞う。
新(舞)「迷わずあるべき場所へ還せ。導きたまえ、我と契約を交わし、与うる者達よ。」


スタッ


新(舞)「またな。・・・別れの時、開け、時空の扉よ。」
現れたのは光の扉。開かれ、彼等の姿を飲み込んだ。
キ(舞)「これでしばらくお別れですね。」
志(舞)「ちゃんと、彼女成長しきるといいのだけど・・・。」
やっぱり、それだけが心配だったり。

 

 

 

新(黒)「…う、うーん…あれ?」
新一は状態を起こし、驚いて辺りを見渡した。
そこは自室だった。しかも寝台の上で布団もきっちり被っている。
そしてついでに、快斗と哀も一緒の寝台に居た。
あれ?
新(黒)「帰ってきたってことだよな…あれ?比翼は?」
居ないぞ〜?
快(黒)「うー…あ、あれ?新一!?////」

がばっ!

快(黒)「ぎゃー!!なぜ新一がと、隣に!?」
新(黒)「灰原も居るぞ」
快(黒)「わー!!」
哀(黒)「失礼ね」
起きていたらしい。
新(黒)「比翼は?」
比(黒)「案ずるな。いる」
哀(黒)「ああ、もとに戻っているようね」
比(黒)「ああ、こちらに戻ってパンドラの呪いも勢力をました」
あっさりと。
という事はここに三人を運んだのは比翼か。
比(黒)「今までと違う送迎方法だったので身体に悪かったのだろう」
だからもう少し寝て居ろと、三人を横にさせる比翼。
哀(黒)「…私は下がらせてもらうわ」
比(黒)「わかった」
快(黒)「え」
あっさり、比翼は哀をつれて下へといってしまった。
新(黒)「…まあいいか。じゃ、とりあえず頭ぐらぐらするし寝てようぜ快斗」
そう宣言してすぐに就寝する新一。
それに戸惑って…でも何となく。
快(黒)「…まあ、いっか」

 

 

 

新(舞)「で、なんなんだ、この手は。」
キ(舞)「なんでしょうね?」
快(舞)「新一・・・。」
部屋に連れ込まれて、押し倒されて逃げ場なし。
新(舞)「・・・(半分呆れめた)」
キ(舞)「いいですか?」
新(舞)「駄目だっていってもする気だろ?」
快(舞)「そうだね。もう、我慢限界だし。」
全然持たない奴だな、お前等。
キ(舞)「ということで。」
快(舞)「いただきます。」
手を合わせて合掌。
はぁと一人はため息。
二人は嬉々としていた。

とりあえず、甘い夜を過ごすということで。

 




     あとがき

 相変わらず暴走して完結したのですが、如何でしたでしょうか。
 そして、いつもお付き合い下さるコウsama、どうもありがとうございます。
 とりあえず、今回でベルモットさん再登場で、ゲート破壊編でした。
 ひっそりとゲートは生きているとは思いますが・・・。どうなんでしょうね?
 今回は、快斗少し言い思い編でもありました。
 どちらの快斗にもね。へたれ卒業はたぶん無理そうですが・・・。
 次回作はあるか、そしてできるかどうかさえ未定ですが、よろしかったらまたお付き合い下さいませ。



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