ある日現れた真っ白の服を着た魔法使い とっても素敵な魔法を見せてくれる、凄い人 自分にも力はあるけれど、まねできないぐらいすごいもの その人の魔法の種は何にもわからない
いつも、優しい腕で抱きしめてくれて 幸せを運んでくれる魔法使い
そんな魔法使いが大好きだったんだ
初恋物語
「最近、新一はご機嫌だねぇ?」 滅多にかまってくれない我が息子のご機嫌な姿を見て、構いたいが邪険にされて、大人気ない嫉妬を見せる父、工藤優作。 「そうね。あの日からじゃないかしら?」 「そうだよな。やっぱりあいつが原因か?!」 敵はお前だなぁとなんだか人には見せられないようなところ。 ただ、母であり妻の有希子は楽しそうに見ているだけだった。
さて、その頃、大人しく読書中の新一はというと、読みながら続きの本を取り出している。 もちろん、取りに立ってはいなくて、本が勝手にやってくるのだ。 これが、新一の持つ不思議な力。 思いの他便利なので、有効に活用中である。 そこへ、鎌って欲しいというちょっとした期待を持ちながら、優作が現れた。 「新一。」
ぺしっ
邪魔するなと言わんばかりにちょうど読み終わったらしい本が飛んできた。 見事にヒット。角をぶつけてとても痛い・・・。 「新一君。君はなんてことを・・・。」 とりあえず、捕獲。抱き上げて抵抗しても大人の力にはかなわない。 本も取り上げられて、とても不機嫌な新一。 ぶすっとふくれて、それがまた可愛いのでちょっかいかけたくなる優作。 だからこそ、嫌われてしまうのかもしれないが、実際のところは新一しかわからない。 「それより、今日は出かけるよ。」 「やだ。」 「そんな事を言わないで。友人のマジックショーなんだ。」 「マジック・・・?」 「そう。とってもすごいマジシャンだから、きっと新一も気に入ると思うよ。」 そう、だって彼は・・・。 出来れば出したくはなかったのだが、新一の気を引くないようでなければ、お出かけしてもぶすっとした顔をして、挙句の果てには文句ばかり。 さすがにそれは、辛い父。 彼は、相当な親バカであったのだ。 「・・・・・・・・・行く。」 マジックなら、見てみたいと言う。 やっぱり、新一はと、心の中で涙を流すが、今は出かけられるので顔は笑顔である。 それが、のちに彼に胡散臭い理由のひとつとして上げられる。 優作の笑顔ほど、胡散臭いものはないと。本人にはかなり悲しい事を言われるのだ。
さて。出かける用意をして、いざマジックショーの会場へ。 友人ということで、楽屋裏に舞台前に来いと呼ばれているので、やって来た。 そこで会った、黒いスーツを着た人。 「あ・・・。」 その人は、間違える事のない。白い魔法使いであった。 「おや。優作か。来たのか?」 「来たのかって酷い言い方だな。来てやったんだ。」 「どうせ、新一君にまたふられたんだろ。」 「うるさい。」 なんだか二人は楽しそうに喧嘩していた。そう、喧嘩をしていたのだ。言葉になくても、かなりすごい発言が心の中で繰り広げられていたのだ。 「こんにちは、新一君。」 「こんにちは、魔法使いさん。」 しっかりとばれているようで、苦笑する魔法使いこと、黒羽盗一。 やはり、子供はすぐにわかるみたいだ。とくに、彼のような子供には。 「今日は魔法使いさんの魔法が見れるの?」 「そうだよ。でも、今日は魔法使いじゃなくて、黒羽盗一だよ。」 「黒羽さん?」 そこへ、現れた黒羽妻、薫。 「きゃー、新一君じゃないの。大きくなったわねぇ。」 と、二人を押しのけて抱きついた。さすがというか、強し母。 「あ、おばさん。」 「薫さんよ。」 にっこり。 「薫さん。」 「そう。賢いわね、新一君。」 ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。こののりは、間違いなく母と似ている。絶対に間違いないと思う。 「それにしても、残念ね。あの子ったら。」 「そうだな。こんな時に熱を出すなんてな。」 そうです。二人の息子も今日、ここに来るはずだったのです。 しかし、珍しく彼は熱を出して家でお休み中。賢い子なので、大人しくしていてくれるはず。 「新一君には滅多に会えないのに。自らチャンスを潰すなんて。なんて勿体無い子なのかしら?」 そう。このとき熱を出していなかったら、彼等はもっと早く出会えていたのである。 だが、運命が二人を結ぶなら、きっとどんな状況でも出会っていただろう。 現在、出会って一緒にいるように。
楽屋で楽しく過ごしたのち、舞台のはじまりを告げるスタッフの人間が現れた。 新一達は客席へと向かい、盗一のマジックを堪能していた。 このときすでに、しっかりと新一の心は盗一に向いていたのだった。 それを知ったら、快斗とキッドはどのような反応をみせるか、すぐに想像が付くが、生憎彼等は知らないまま。 真実を知るのはただ一人。
久々に思い出した過去の記憶。 今はあの時いなかった彼の息子を好きになるなんて。 「なんでだろうな。」 初恋は実らないものだとよく聞くが、それは本当なんだなと、新たに可笑しな知識が増えた新一だった。 +++++代リク5000 志乃香sama あとがき 本当に、リクエストどうもありがとうございました 李瀬紅姫 |