終章 新しい仲間 次の日。起きればなんだか昨日よりやつれている快斗がいて、さすがに慌てる新一だったが、それ以上に下に降りて来て、快斗までも慌てる。 「なんでいるの?!」 そこには、いつもいる廉だけではなく、リオンとクラウドもいた。 もう、廉以上に清々しい笑顔で、手を上げて挨拶をするクラウドに、追い出してやろうかと考えるが、その前に言われた言葉で、動きが止まってしまった。 「今日から、二人も仲間になったから。」 「「はぁ?!」」 いつの間にと言えば、昨晩のうちに二人から楽しそうだから混ぜてと遊びに混ざるような感覚で言われ、それを廉があの父親に連絡を入れて、了承を得たのだという。 「また、あのクソ親父は!何考えてやがるんだ!」 電話をかけて父親に怒鳴るような勢いの新一に、さらに爆弾がおとされた。 「住む場所はどこか部屋を借りるらしいけど、しばらくここで頼むって。」 「え?ちょっと、それって!」 「つまり、同居?」 「だから、よろしくね、新一君。」 昨晩のうちに、しっかりと一階の客間は掃除して片付けて、二人が使いやすいように改造されているらしい。 もう、そこまでしているのなら何も言えない。 無駄に部屋も余っていることだし、勝手にしてくれと言う感じだ。 「改めて。よろしくね。」 にっこりと、それはもう裏のないようなまぶしい笑顔で言われて、それに対してどう対応したらいいのかと、これからの生活を思い、遠い目で相手を見る。 「で。これはどういうことかしら?」 午後になって、本を借りに来た志保がリビングでみたのは、どこにいったのかと思っていたリオンとクラウドの姿。そして、なんだかどうでもよくなっている新一と快斗の姿。 「だから、ANGELの仲間になって、部屋探している最中だから、しばらく居座るんだってさ。」 「へぇ。それで、ずっと居座っていたりしてね。」 「・・・それは困る!」 かなり強く困ると否定する快斗にどうしたんだと思えば、新一を落とす為にいろいろ仕掛ける予定がつぶれていくとぬかす。 「・・・快斗。」 「あ、何?」 「いっぺん死ね。」 「えーなんでー?あ、まだ俺の本気だって思い疑ってるの?本当に好きなの。好き好きー新一が好きー。」 わめく快斗に付き合いきれないわと、勝手に本を借りていくわよと、書庫へと向かう志保。 体ごと近づいてくる快斗に、離れろと必死に引き離そうとする新一。 「ある意味、幸せよね。」 「そうだよな。」 見ている限りは、嫌だとか馬鹿とかいうわりに新一もなんだかんだ言って快斗のことを本気で拒んではいない。 「無意識なんだろうな。」 「そうね。」 ずずずと珈琲を飲む二人。 「あー、新一。どうしたらわかってくれるの?返事の日は覚えてる?ほら、あと25日だよ?」 「わかってる!あーもう。暑苦しいんだよ!」 と、こんな風に、新たな侵入者や住人が増えても、工藤邸は賑やかな声が聞こえてくるのであった。 そんな様子を、外から伺っている者がいた。 「さて。いつまでその平和が続くでしょうね・・・。」 あの、機械仕掛けの羽根を手に入れた男だった。 クスクスと気味悪い笑みを浮かべながら、白衣ではなく、黒衣のコートをはためかせ、工藤邸から離れていった。 まだ、何もかもがはじまったばかり。
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