何故か、出来たわけのわからん組織もどき そして何故か、家に何時く気でいる白い奴
「なぁ・・・。」 「何〜vv」
いかにも幸せオーラというに相応しいようなハートマークが飛び交っている 本当に、これが警察を手玉に取る神出鬼没で気障な怪盗紳士なのだろうか
もう一つのゲーム
「今すぐ、家に帰れ。」 「嫌vv」 「・・・明日から、学校じゃねーのか?」 「ここから通うから。あ、ちゃんと新一を学校まで送っていくよ?」 「・・・。」 どうやら、本気でこのお馬鹿に見える怪盗は探偵の家に居座るつもりらしい。 しかも、両親の許可まで取っている。 はぁっとため息しか出ない。 だいたい、得体の知れない何でも屋もどきな組織を作った理由も馬鹿かと思う理由。 それに乗るあいつらもまた、馬鹿じゃねーのかと思う。 全ては、自分自身の魅力という物に気付いていない彼だからこそ。 「はい、珈琲。」 やっとくっついていたそいつが離れたかと思ったら、どうやら珈琲を入れてきてくれたようだ。 とりあえず、飲みたかったのは事実なので、それを口にする。 過去に珈琲は入れてもらっているから美味い事も知っているし、可笑しなものを入れることはないと分かっているので口にする。 「で、話を戻すけれど。」 「出来れば、家に帰って欲しいけど?」 いくら自分の生活があれでも、この怪盗にも家の事情というものがあるのだ。 だから、頼ることなんか出来るわけがない。 「あのね、わかってないだろうから言っておくけれど。」 「何だよ。」 「俺はね、ボランティアでいるわけじゃないんだよ?」 ほらみろ。つまりは、これが仕事だと言いたいんだろうが。そう言おうとしたら、ちょうど空になったカップを取り上げられて、腕をつかまれた。 「あのね、何度も言うけれど。」 「何か言ってたか?」 帰らないなら聞かないぞといえば、かなり目が点になる事をいってのけてくれた。 「だから、俺は新一の事が好きなの。」 「・・・はぁ?」 確かに、白い怪盗もよくそんな事を言っていたが、冗談にしか思えない。 だって、こいつはフェミニストで、いつも女を口説いていた。 自分にも同じようにしているだけだと思っていたのだ。 だが、今までおちゃらけたむかつくような奴ではなく、真剣に言ってくるので、どう応えればいいのか迷った。 「だから、俺は少しでも新一の側にいたいわけ。わかった?」 「・・・。」 驚いて反応がない新一に、やっぱりわかってもらえてなかったのねぇとめそめそ心の中で泣く。 「ですから、いくら仕事だとしてもこれは俺の意思。お願いだから、追い出さないで。」 きゅうっとまるで捨てないでと訴える犬のようで、さすがにきつく馬鹿な事を言うなと照れて叫ぶなんて事は出来なかった。 「今日告白して、すぐには返事もらえるとは思ってないから。」 それだけ、恋事には鈍い彼だ。困っているに決まっている。 「だから、俺と一つのゲームをしてほしいんだ。」 「ゲーム?」 「俺に今日から一ヶ月、時間がほしい。」 「時間?」 「そう。新一を絶対に落とすつもりだから。」 「なっ。」 言われた事に顔を紅くする。それがまた、快斗にとって初々しくて可愛いと思わせているなんて、わからない彼であるが。 「返事は、一ヵ月後にちょうだい?」 もし、断られても、出て行く気はないけれど、新一が嫌なら大人しく従うから。 そこまで言われると、断るに断れなくなった。 なんだかんだ言っても、新一もこの怪盗の事を気に入っていたのだ。 だから、情けなくもしゅんっとしている彼を無碍に扱う事が出来なかった。 その思いがどんなものなのか、彼自身が理解する事があれば、今少し変わっていたのかもしれないが。 「わかった。一ヶ月、考えといてやる。」 ぶっきらぼうに言いながらも、照れているのはわかる。 ありがとうと、ぎゅっと抱きしめれば文句を言いながらも大人しくしてくれていた。 それがまた、快斗にとっては幸せな時間で、新一にとってはどうしてこんなにドキドキするんだと困惑する時間だった。
「そう言えば、あいつ等は?」 「あいつ等?」 「服部と白馬。」 「あ・・・。そう言えば、そうだな。」 今頃思い出したが、よくよく考えればあの二人が無事に帰ったかどうかは知らない。 というか、今の今まですっかり綺麗に忘れていたのだった。 「・・・連絡してみるか。」 もちろん、連絡先は蓮だ。 「明日から学校だろ?大丈夫かなぁ?」 まだ中にいるのなら、彼等が出る事は不可能。自分達が屋敷から出てきてすでに一日は経っている。 「・・・なぁ。あいつも忘れてたって。」 「・・・。それで?」 「とりあえず、取りに言ってくるって。」 「荷物扱いだな。」 「・・・。」 やはり、彼等は大人しくしていたらよかったのかもしれない。 さて、明日彼等は無事に学校へ行く事は出来るのだろうか? そして、快斗の恋の行方は・・・?
それは全て時の流れのままに・・・
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