お隣のばかっぷるは相変わらずだった 惚気るのは勝手にしてくれたらいいが、こっちいはまわさないでほしい
今、西のお邪魔虫対策用の用意をしているというのに・・・。
第六話 貴方を心配する理由
「いつになったら帰るんだよ、真っ黒。」 「当分は帰らないよ。仕事もないしね、白いの。」 仲がいいのか悪いのか。 コミュニケーションは悪くは無いと思うのだが、言葉に棘がある。 だが、新一にはそれが毎朝の日常で、快斗も楽しんでいるのかと思うと少し寂しかったりもする。 「・・・楽しそう。」 つい、言葉に出た新一。それに、二人揃って速攻で否定する。その言葉もまた、『違〜うっ!』とタイミングもずれずにそろっていた。 そんな二人が羨ましいと思っている新一。その間、彼等は気付かず喧嘩をするのだった。
だが、そんな午後。 当分は帰らないと朝に宣言していたはずのバードはいなかった。 隣で座っている快斗に新一から意味も無いがぴとっとくっついてみる。 「どうしたの、新一?」 滅多に恥ずかしがってくっついてはこない恋人。またそこも可愛いのだが、こうやって素直に自分からくっついてくれるのもまた可愛いしうれしいのだが。 健全な男子学生だ。こんなに可愛くぺたってくっつかれて、横でにこにこしている恋人を見て我慢できるほど出来た人間ではない。 「新一。あの・・・。」 「どうしたんだ?」 相変わらずうれしそうににこにこしている新一。そのにこにこの意味は一緒にいられてってことなのだろうが。 無防備に見たいけれど見せないで欲しいと願うのは間違っていないはず。 にこっと笑顔でこっちを見ている新一にちゅっとキスを仕掛けた。 だが、嫌がる気配はなし。ちょうど、邪魔な奴もなし。 「?快斗???」 ?マークでいっぱいの新一に苦笑気味でにっこりと笑みを見せて、そのままその場に押し倒した。 「お前っまさか?!」 ここまで来て気付かない新一ではない。 「う〜ん、新一が可愛いから?」 「可愛いじゃねー!」 抵抗を一応はしてみるが、やはり快斗に勝てるわけがない。 「・・・駄目?」 我慢は出来ないが、出来れば新一の意見を尊重したい。 「・・・う〜、ここじゃ嫌だぞっ!」 顔を真っ赤にして、またそれが可愛いのだが、はいはいと答え、抱き上げる。 「う〜。」 「唸らないの。それに、その顔は反則な程可愛いだけだから。」 「可愛いっていうな。」 「恋人を褒めて何が悪いのさ。」 「褒めてない・・・。貶してる・・・。」 「貶してないって。もう、そんなところも可愛いけどね。」 ぶぅっとふくれる。お姫様抱っこの状態も少々気に入らない模様。 だが、こうしておかないと逃げられるし、蹴りを食らわせられるのも困るので諦めて頂こう。 部屋に入り、ベッドの上に新一をおろす。 「新一・・・。」 ぎゅっと相変わらず不安そうに服を攫んで、キスを受け入れてくれる。 それが合図であるかのように、二人は甘い時間を過ごす。 そして、快斗にとってはまだ満足というわけではないが、新一の身体の心配もあるので、それ以上はやめておく。 「このまま一緒に寝てようか?」 「うん・・・。」 うなずいて、ふと思ったことを口にしてみた。 「今度の仕事、ちゃんと帰って来いよ?」 下手に隠したら許さないぞと言うと、苦笑しながら必ず帰ってくるよと頬にキスをした。
相変わらずぴとっとくっついてくれる。そんな新一を腕の中に閉じ込めて、優しく抱きしめて、快斗も眠りにつく。
久々に大きな鎌を持って、ふよふよと工藤邸にやって来たバード。 実は、仕事で持っていたノートパソコンにある報告書が来ていたので、一時死神界へと戻っていたのだった。 もし、快斗が知っていたら、そのまま来るなとまた喧嘩をしていただろうが。 「あれ?」 珍しくリビングには誰もいない。 部屋で寝てるのかと思えば、仲良く二人で布団の中だった。 「報告で知っていたけれど、寂しいねぇ。」 お帰りも言ってくれない。 だけど、仲良く気持ち良さそうに寝ている彼等を起こす事は出来なかったし、それよりも書類を整理する時間がほしかったので丁度良かった。 「さて・・・。お姫様の笑顔を守る為に頑張りましょうか。」 電源を入れて、中にあるファイルの一つを開く。 そのファイルはこれから起こる事に対する内容。 「お気に入りに手を出されるのは誰だって嫌なんでね。」 悪いが、変えさせてもらう。まだ、この時間の中にいたいから。
さて。時刻は午後7時。 いつもは賑やかなお隣が音沙汰なしということで、少々不審に思った哀が尋ねてきた。 「あ、お嬢ちゃん。」 「・・・?何かしてたの?」 「一応、仕事をね。」 「・・・彼の家で彼の一番嫌な事をしているのね?」 「ああ、違う違う。そっちの仕事じゃない。」 にやりと、見せるその笑みは何かを企んでいるあの白いこそ泥とまったく同じ。 「何を企んでいるのかしらないけれど、彼を泣かすようなら容赦しないわよ?」 貴方もお邪魔虫よりは信頼しているけれど、完全に認めたわけではないのよといわれれば少々悲しい。 「彼を泣かすのは御免だからねぇ。涙は綺麗だけれども。」 「・・・。」 「これは、西の彼の件を片付ける前にある、どこかの白いののための工作なんだよ。」 お姫様を泣かせるのは不本意なんでねと、言う。 「それより、何か用事があったのかい?今二人はお疲れでおやすみ中だよ。」 「お疲れ・・・?何か今日はあったかしら?」 事件で呼ばれていた記憶も、こそ泥さんが準備に追われているという事もない。 「違う違う。らぶらぶな彼等はいちゃいちゃしてたのさ。ちょっと出かけている間に。」 「ああ、そう。」 よくわかった。つまり、言葉の通り、いちゃついていたのだろう。 日常自分達が見るいちゃいちゃとはまた違うが。 そして、この死神は失恋は悲しいねぇと言いながら本当に悲しんでいるのか話を聞いて欲しいのか、とりあえず嘆いていた。 「そうそう。白いのが心配していたぞ?あと、新一もな。」 「彼が?それに工藤君も?いったい何を心配していたのかしら?」 少し興味があるわねといえば、哀の実験による実験体の状態の事と応えれば、賛成してくれているのにどうしてと思う。 「ちょっと違うな・・・。」 「違うの?いったい何がいいたいのよ。遠まわしに言わないで頂戴。貴方とは構造が違うからわからないわ。」 「確かに。」 人と死神ではもともとの構造が違うので言い回しもまた違うだろうし、考えている事も感情もまた違うだろう。 「白いのの罪とお嬢ちゃんの罪。そして、穢れを知りつつも穢れぬお姫様の事。」 罪という言葉はどこまでもこの三人に付きまとうようだ。 「そこではっきりと胸張って言ってくれないと、困るんだけどねぇ。」 かなり悔しそうで辛そうで、複雑な思いを抱えて何も応えない哀に困り果てるバード。 「本当に、お嬢ちゃんも白いのも似ているよ。そして、新一ともね。」 「工藤君と私は違うわ!それに、彼とも!」 「いや、似ているよ。」 最終的に考えるのが互いの事。 心配する理由。貴方がとても大切だから。 二人が新一が真実へと真っ直ぐ進む心優しい存在であるから、犯した罪を黙らせている事に罪悪感を覚える。 新一は二人がそんな犯した罪で苦しんでいるのを、探偵であるから完全に助ける事は出来ないのだと悲しんでいる。 「今ある幸せを大事にしていたら、何も問題はないよ。」 それに、あっちは三人を真偽では天国へと通す予定らしいし、それか死神界で過ごしてもらうのもいいと思っているから。 さすがは何処へ行ってもアイドルというのか。 新一が一人天国へ行けば、独り寂しくなるし、そんなところへ行くのなら二人と一緒に行くというに決まっているから、既に三人は同じ場所へと決められているのだ。 それを、話す事はしないが。 「それにしても。夜寝ないのはいけないし、昼から食べていないようだし。一度起こしましょうかねぇ?」 どうしますか、お医者さん?と聞けば、夕食は食べてもらうわと応えた。 「起こしてすぐに降りてきなさい。夕食は私が作るから、20分以内に降りてくるように言ってから。」 「はいはい。」 新一みたいに人使いがあらいねぇといいながら、ふよふよとバードは漂いながら二階へと向かった。
賑やかな声が聞こえ、夕食が始まるのはもう少し。
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